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回顧2010《下》

2010年12月29日

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ノーベル博物館でサインした椅子を手に笑顔を見せる鈴木章さん(左)と根岸英一さん=12月6日、ストックホルム、葛谷晋吾撮影

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衆院5区補選で、自民・町村信孝氏に敗れ、頭を下げる民主・中前茂之氏=10月24日、江別市、杉本康弘撮影

●道内初 ノーベル賞
●鈴木さんに化学賞
●北海道一筋に「勇気」もらう

 ノーベル化学賞受賞の知らせを受け、自宅を出た鈴木章・北大名誉教授の第一声は「アンビリーバボー」。宝くじに当選したかのように、「当たっちゃったみたい」と言う姿が印象的だった。

 北海道では、駒大苫小牧の甲子園優勝以来ともいえる喜ばしい大ニュース。それを一層際立たせたのが、鈴木さんの経歴だ。

 生まれも育ちも北海道。北大卒で、2年間の米国時代を除き定年退官まで北大一筋。行政も企業も大学も、中央集権的な指向の強い日本にあって、この経歴に胸打たれた道民は少なくないのでは。私もその1人。ひと言で表すならば、「勇気」をもらった。

 受賞後、数々のメッセージを発している鈴木さんだが、その中にこんなものがある。

 「どの分野の人にも幸運に巡り合う機会は必ずある。しかし、新しいものを見つけようとする努力、真摯(しんし)な気持ちを常に持っていなければ幸運を生かすことはできない」

 自らの経験から出た言葉であり、まねをしたところで鈴木さんになれるわけでない。しかし、この心意気を励みにする若い人はきっといる。

 鈴木さんは来年も、中国、米国、ギリシャ、スウェーデン、ブラジルと、講演で世界を飛び回るスーパー80歳だ。一方で、町内会の会合でも講演する。その絶妙なバランス感覚を生かし、若者だけじゃなく中高年層にも勇気や、学ぶ豊かさを広めてくれることだろう。
(小林舞子)

   ◇

 ■7月■

 3日 希代の人気馬オグリキャップが、新冠町の牧場で死んだ。25歳。人間なら70代だった。オグリキャップは三石町(現新ひだか町)の牧場で生まれた。地方競馬の岐阜・笠松競馬に所属。12戦10勝の成績を残し、1988年に中央競馬に移籍。中央馬を相手に6連勝するなどスターホースになり、昭和から平成にかけての競馬ブームを盛り上げた。中央ではG1レース4勝を含む20戦12勝。

 11日 参院選道選挙区(改選数2)は自民党の長谷川岳氏と、民主党の徳永エリ氏=国民新、新党大地推薦=が初当選を果たした。民主党は昨年の政権交代の勢いから初の改選議席独占を狙ったが、連合北海道が支援した藤川雅司氏は次点に終わった。

 24日 旭山動物園(旭川市)で飼育されていたホッキョクグマ「コユキ」が死んだ。コユキは推定34歳のメスで、国内最高齢だったという。

●鉄砲水・豪雨、命奪う
 ■8月■

 2日 日高山系のヌカビラ岳(1808メートル)に登っていたツアー登山の一行が尾根付近で沢の増水のため身動きが取れなくなり、道警などがヘリコプターで登山客8人を救助。ガイド4人は自力で下山した。一行は入山禁止のゲートを合鍵で開けて侵入していた。

 3日 高校総体女子バスケットボール決勝で、札幌山の手が中村学園女子(福岡)を破り、全国制覇を果たした。道内勢の優勝は、1949年の男子の札幌第一(現札幌南)以来。女子は50年に岩見沢西が準優勝しているが、その記録を60年ぶりに塗り替える初優勝となった。札幌山の手はその後、国体、全国高校バスケットボール選抜優勝大会でも優勝し、北海道勢では初の「3冠」を達成した。

 15日 大樹町の日高山系の沢でテントを張って野営していた東京理科大ワンダーフォーゲル部の男子部員4人が鉄砲水に流され、3日後に3人の遺体が発見された。死因はいずれも水死だった。

 24日 激しい大雨に見舞われた東川町の旭岳温泉と天人峡温泉の宿泊客ら約760人が一時孤立。道路の陥没なども相次ぎ車が転落、2人が死亡した。上川総合振興局旭川建設管理部の当日の当番管理職が、大雨警報発令後や雨量がパトロール出動指示の基準に達した後も自宅待機を続けていたことも分かった。

 ■9月■

 7日 北海道開発局の工事や林野庁の行政処分をめぐる汚職事件で、最高裁第一小法廷は、不正に口利きした見返りに業者から現金計1100万円を受け取ったとして、受託収賄やあっせん収賄など四つの罪に問われた新党大地代表の衆院議員・鈴木宗男被告の上告を棄却する決定をした。異議申し立ても棄却、懲役2年の実刑、追徴金1100万円とした一、二審判決が確定、鈴木被告は失職。食道がんの手術の後、12月6日に収監された。

 11日 旭川市出身で柔道の「上野3姉妹」の次女・順恵(よしえ)選手(三井住友海上)が、世界柔道選手権63キロ級で2連覇を達成した。

   ◇

●参院選と衆院補選
●「組合頼み」の選挙 転換点

 昨年の衆院選で道内12小選挙区のうち11勝1敗と圧勝し、「民主党王国」と言われる北海道。だが今年は、王国の土台が大きく揺らいだ1年だった。

 政権交代後、初の全国レベルの国政選挙となった夏の参院選は、改選数2の道選挙区に新顔2人を擁立したが、1議席獲得にとどまったうえ、自民党新顔にトップ当選を許した。北海道教職員組合(北教組)による違法献金事件が発端の衆院5区補欠選挙では、新顔候補が自民前職の町村信孝氏に約3万票の大差で敗れた。

 内閣支持率の低迷に加え、北教組事件の影響から労働組合が動けず、労組に依存した党組織の弱さが露呈した結果と言える。特に補選では如実に表れ、陣営幹部は「次にきちんと態勢がとれるのか」と不安を漏らした。

 かつて労組は、田植えや昆布採りの手伝い、冠婚葬祭など、地域に根ざした活動をしていた。しかし、組合員数も減少し、「地べたをはってやる組合員なんかいない」と関係者は嘆く。民主党北海道幹部も「これからどう戦ったらいいのか」と頭を抱える。「組合頼み」の選挙は転換点にさしかかっている。

 来春には統一地方選がある。国民が選択した「政権交代」を魔法の言葉のように繰り返すだけでは支持は得られないだろう。議員は出身労組の代弁にとどまらず、有権者に耳を傾け「民意」をくみ取るべきだ。
(天野みすず)

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●佑ちゃん、日本ハムへ
 ■10月■

 6日 スウェーデンの王立科学アカデミーは、今年のノーベル化学賞を、鈴木章・北大名誉教授=むかわ町出身=ら3人に贈ると発表した。北海道出身者のノーベル賞受賞は初めて。

 6日 高橋はるみ知事が道議会で、来年度以降も道営ホッカイドウ競馬を存続させる考えを正式に表明。道営競馬は多額の累積赤字を抱え、今年度の単年度収支が均衡できなければ廃止されるはずだった。高橋知事が存続に舵(かじ)を切ったのは馬産地への配慮と、収支均衡が見通せるとの判断からとみられる。

 19日 サーカス団体「キグレサーカス」(札幌市中央区)が事業を停止した。キグレサーカスは1942年創業で、木下サーカスやポップサーカスと並んで日本3大サーカスと呼ばれていた。

 24日 菅直人改造内閣の発足後、初の国政選挙となった衆院道5区(札幌市厚別区、江別市など)の補欠選挙で、自民党前職の町村信孝氏が、民主党新顔の中前茂之氏ら4氏を破り当選した。

 26日 旭川空港への着陸に向け旋回していた全日空系のエアーニッポン機が管制官の誤った指示で降下、大雪山系の比布岳(標高2197メートル)の山頂の上空約220メートル付近まで異常接近していたことが分かった。地表への異常接近を知らせる対地接近警報装置の警報が作動し、操縦士が機体を急上昇させて事故を回避した。

 28日 プロ野球のドラフト会議で、4球団の1位指名が競合した早大の斎藤佑樹投手は、抽選で日本ハムが交渉権を獲得した。斎藤投手は日ハムと契約、札幌ドームで入団会見を行い、背番号18を披露した(12月9日)。

 ■11月■

 1日 ロシアのメドベージェフ大統領が、北方領土・国後島を訪問した。旧ソ連時代を含め、ロシアの最高指導者が北方領土を訪れたのは初めて。

 1日 さっぽろテレビ塔を運営する「北海道観光事業」(札幌市中央区)の元社員らが売上金を着服したとされる事件で、道警は元社員2人を業務上横領の疑いで逮捕した。さらに元社員4人が、同容疑で逮捕された(19日)。

 9日 知床の離農跡地を買い上げ、乱開発から守ろうと1977年に始まった斜里町のナショナルトラスト「しれとこ100平方メートル運動」は、最後まで残った民有地11・92ヘクタールについて地権者と売買契約を結んだ。33年を経て、目標としていた土地471・18ヘクタールを取得した。

 ■12月

 4日 前原誠司外相は、空と陸から北方領土を視察した。根室市内では元島民との対話に臨み、「四島は日本固有の領土」と政府の立場を繰り返し表明した。

 8日 パロマ工業(名古屋市)製のガス湯沸かし器をめぐる一酸化炭素(CO)中毒事故で、苫小牧、北見、帯広で死亡した5人の遺族らが、同社と販売会社を相手に計約4億800万円の損害賠償を求めた札幌地裁(橋詰均裁判長)の訴訟は、3人の遺族との間で和解が成立した。残る2人の遺族らは、パロマ側が法的責任を認めた謝罪を拒否したことなどから和解に応じず、判決を受けることになった。和解したのは、苫小牧(1987年、2人死亡)と北見(88年、1人死亡)の事故の遺族5人。パロマ側は和解金計約1億4386万円を支払う。

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