[小沢氏政倫審出席]条件付けず説明尽くせ

2010年12月31日 09時38分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 菅内閣は支持率を回復させることができないまま、大きな「爆弾」を抱え、年を越すことになりそうだ。

 民主党の小沢一郎元代表は1月に召集される通常国会で衆院政治倫理審査会へ出席する考えを一転して表明した。強制起訴されることが決まり、司法手続きに入っているとして菅直人首相らの説得を拒否し続けていたはずなのに。なぜ態度が急変したのか。

 小沢氏の出席表明には、政争のにおいが漂う。二つの条件を付けたからである。(1)2011年度予算案をはじめ国会審議が円滑に進むなら通常国会冒頭に(2)そうでない場合は予算成立後速やかに―。

 通常国会で菅内閣が立ちゆかなくなる懸念材料が二つある。小沢氏の国会招致問題と参議院で問責決議された仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国交相の辞任問題である。

 自民党などは政倫審より虚偽証言をすれば偽証罪に問われる証人喚問を求めている。野党側は仙谷氏らの辞任がなければ審議拒否する構えだ。

 小沢氏は政倫審出席をカードに、菅首相が検討している通常国会前の内閣改造で「小沢切り」の急先鋒(せんぽう)、仙谷氏を更迭させることを狙ったといえる。菅首相が小沢氏の離党勧告など出処進退に言及したことへの意趣返しでもあろう。

 菅首相は党役員会の決定に従い、「通常国会が始まる前」の出席を求め、小沢氏の条件を拒否した。党内抗争が激化しそうな様相である。

 小沢氏は条件をつけず、疑念を持たれている「政治とカネ」について真摯(しんし)な姿勢で説明を尽くすべきである。

 小沢氏の「政治とカネ」の問題が菅内閣の足を引っ張る原因の一つになっているのは間違いない。

 共同通信社による最新の全国電話世論調査では、菅内閣支持率は23・6%。不支持率は67・0%に達し、発足後最も高くなった。不支持率が支持率を3倍近く上回り、墜落しそうな失速ぶりである。

 小沢氏に国会での説明を求めたのが70・0%。菅首相が指導力を発揮していないと回答したのは81・1%に上る。

 小沢氏自身による説明はやはり必要なのである。菅首相も「小沢切り」で反転攻勢をかけようとしているはずだが、自らの指導力のなさが低空飛行の支持率につながっていることを知るべきである。

 本来の「政治とカネ」の根本的な議論は与野党いずれにもなく、政治的な駆け引きに終始しているだけである。猛省を促したい。

 菅政権は、小沢氏の政倫審問題と仙谷氏らの問責決議を理由とする野党側の審議拒否を抱えながら国会運営をハンドリングできるか。野党側は衆院解散・総選挙を求め、攻勢をかけてくるはずである。

 政争を繰り返す政治に不信感が広がり、経済は上向く要素が見当たらず、閉塞(へいそく)感に覆われている。経済、財政など内政も、外交も待ったなしの課題ばかりだ。「政治とカネ」はもういいかげん決着をつけなければならない。その上で菅首相は将来ビジョンを示し政策課題に全力で取り組むしかない。とはいえ、政局は年明けから波乱含みである。

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