社説
2011年1月5日

首相年頭会見/国会冒頭からの空転避けよ

 菅直人首相は年頭の記者会見で、内閣改造については具体的に触れず、小沢一郎民主党元代表に対しては同氏の出処進退にまで踏み込む考えを示した。「小沢切り」の決意を表すことで再度の政権浮揚を期待したのだろうが、かえって党内政局の深刻さを印象付けた。

支持を失う党内政局

 菅首相にまず求めたいのは、通常国会冒頭からの空転を避け、予算案審議のため国会を動かす環境を整備することだ。そのためにも、参院で問責決議が可決された仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の交代を含めた内閣改造人事を早急に示すべきである。

 野党の自民党と公明党が国会審議に応じる前提条件として挙げているのが、問責2閣僚の交代だ。菅首相は、仙谷官房長官が閣外に去ることで政権基盤が弱体化するのではと懸念し、先送りしている。年頭の会見でも「できるだけ迅速な予算成立に向け最も強力な体制をつくりたい」と述べるにとどめた。

 13日の民主党大会後にも改造人事が明らかにされよう。だが、「仙谷切り」を早く決断して野党との話し合いの場を確保し、11年度予算案の審議入りを図るべきだ。それが可能となれば、本予算は憲法上、衆院優越の規定のため参院で否決されても成立できる見通しが立つ。

 一方、首相は予算案の修正について「多くの政党に理解をいただき、賛成をいただきたい」と述べた。それなら、野党側の提案に謙虚に耳を傾け、同予算案に欠落している日本経済復興への道筋や理念を盛り込むなど大幅に修正する考えを明らかにすべきだ。

 予算の成立と同様重要なのが赤字国債発行のためなどの予算関連法案の成立である。実はこれが国会最大の対決点になろう。関連法案の場合は、参院で否決されたら衆院で3分の2以上の賛成で再可決しなければ成立しない。それが民主、国民新両党では不可能なため社民党に秋波を送ったが、予算に絡む政策協議は不調に終わっている。

 それ故、他の野党の理解と協力がなければ予算が成立してもその執行に支障が出ることになる。民主党にはこれまでにない低姿勢が求められよう。そうした最中、小沢氏の扱いで党内の亀裂を深めているようでは国民の支持をさらに失おう。

 もともと民主党執行部は小沢元代表が衆院政治倫理審査会に出席することを求めていた。ところが、小沢氏がようやく出席を表明するとさらにハードルが高くなった。首相が会見で、小沢氏が起訴された場合には離党や自発的な議員辞職を考えるべきだとの認識を示したのは、「小沢切り」を鮮明にして政権浮揚につなげたいからだろう。しかし、小沢氏がそれに応じなければどうなるのか。

政策に本気度を示せ

 首相は昨年6月の政権発足時と同9月の内閣改造の際、「脱小沢」色を出して内閣支持率をアップさせた。だが、今度は国民も首相の発言の狙いを見抜いている。国民生活を後回しにし政権事情を優先させるようではいけない。与野党ともに党利党略を超えた政策実現への本気度が問われている。


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