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首相年頭会見 政権の起死回生なるか '11/1/5

 きのうの年頭会見に臨んだ菅直人首相はさすがに厳しい表情だった。支持率は低迷し、崖っぷちともいえる政権運営。強い決意を国民に示すことで、何とか浮揚を図りたいとの思いをにじませた。

 具体的に目指す国のあり方として挙げたのは3点だ。「平成の開国元年」と位置付けた貿易自由化の促進と農業再生、「最小不幸社会」を実現するための社会保障制度と税制の改革、「不条理をなくす」ことの一つとして挙げた「政治とカネ」の問題の解決である。

 難局の打開に向けた意欲のほどは見て取れよう。だが実現可能性となると、いずれも疑問符が付くものばかりだ。

 まず政治とカネの問題。「けじめをつける年としたい」としながらも、民主党の小沢一郎元代表の国会招致はいまだに見通しさえ立っていない。

 この日の会見では、あらためて衆院政治倫理審査会への出席を促した。さらに強制起訴された際には「自ら出処進退を判断し、裁判に専念されるのであればそうされるべきだ」と述べた。事実上、議員辞職や離党も含めて自ら進退を判断するよう迫った形だ。

 当の小沢氏は昨年末、政倫審に出席する意向を明らかにしたものの、首相の発言には強く反発しているという。党内抗争の新たな火種となりかねない雲行きである。

 党内のあつれきだけではない。自民党など野党側は強制力のある証人喚問を要求している。もし小沢氏が政倫審出席を了承しても、それでは済まされまい。

 消費税率引き上げを含めた税制の抜本改革はどうか。超党派の協議を野党に呼び掛けた。しかし野党は拒否の意向を示している。

 「開国」の旗印といえる環太平洋連携協定(TPP)への参加問題にしても、農業関係者の反対が根強い。具体的な道筋は見えていないのが現状だ。

 もちろん、どれも国民的議論が必要なテーマである。しかし党内外の逆風にあえぐ首相が世論の受けを狙い、あえて難題を持ち出したとしたのなら、国民の批判は免れまい。

 今月下旬とみられている通常国会の召集日は決まっていない。参院で問責決議案を可決された仙谷由人官房長官の進退問題が最大のネックになっている。

 国民の暮らしに直結する新年度予算案の関連法案審議には、野党の協力が欠かせない。このままでは早晩、政権が行き詰まることは火を見るよりも明らかだ。

 この事態を切り抜けるため、通常国会前に内閣改造に踏み切るのは当然だろう。その上で小沢氏の問題に決着をつける必要がある。

 いくら「ねじれ国会」とはいえ場当たり的な連立に走るべきではない。昨年末、たちあがれ日本に断られたことでも明らかだ。

 詰まるところ国会の場で与野党が歩み寄る熟議を重ねていくしかなかろう。予算案を人質に取るような国会対応は許されるものではない。野党側もしっかり肝に銘じてもらいたい。




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