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  平成23年1月4日 年頭のご挨拶 凧
謹賀新年
門松 望月所長 門松
うさぎ
(独)農研機構 野菜茶業研究所  所長 望月 龍也
こま
にんじん

あけましておめでとうございます。

昨年の年明けは、歴史的な政権交代を受けて次々と打ち出される施策に新しい時代の到来を実感したところでしたが、普天間問題等により鳩山前首相は約9ヶ月で退陣し、後を受けた菅首相も財政難や党内問題に注目が集まり、内閣支持率は20%前後で年を越しました。アメリカの景気にようやく明るい兆しが見えてきたものの、世界は一極集中から多極化への傾向が顕著であり、とりわけ日本を抜いてGDP世界第2位となった中国はあらゆる分野で存在感を強めており、長期デフレに苦しむ日本だけが一人負けの状況とも言われています。このような状況を打破すべく、「平成の開国」としてTPP交渉への参加を打ち出した菅首相に対して農業関係者は強く反発しており、TPP推進派である経済界との溝の深さも改めて浮き彫りにされたところです。そのような中、人口増加に食料供給力が追いつかない状況は一層深刻であり、地球規模での異常気象の頻発等もあり、食料や農業の将来に対する国民の懸念はこれまでになく高まっています。

昨年の国内農業は、3月末の全国的な低温により茶が十年に一度の霜害を受け、また夏期には記録的な高温が野菜等に大きな影響を及ぼし、その後も天候不順により野菜の高値は年末まで尾を引き、生鮮野菜の輸入は4年ぶりに70万tを超えました。一方、宮崎県では口蹄疫が猛威をふるい、基幹産業である畜産に甚大な被害を生じました。農業現場では、担い手の急速な高齢化に伴う構造的な脆弱化が一段と進行し、長引くデフレ下での農産物価格低迷がこれに追い打ちをかけている状況は、自立した専業農家が多い野菜や茶業も例外ではありません。このような状況に対して、政府は戸別所得補償を中心とする食料自給率向上のための生産基盤強化、6次産業化による農山漁村の再生・活性化等の農業政策を着々と実行に移しています。本年4月から第3期中期目標期間に入る農研機構には、これを技術面から支える研究開発の効率的な推進と、そのための確固とした組織運営が求められており、野菜及び茶業分野を受け持つ野菜茶業研究所の責任もこれまで以上に大きいものがあります。

このように時代は不透明さを増していますが、人間にとって最も基本的かつ必須の生活素材である食物生産を担う農業、そしてこれを支える研究開発の重要性は、どのような時代になろうとも変わりません。野菜茶業研究所は、第2期中期計画の5年間に、短葉性ネギ「ふゆわらべ」、複合病害抵抗性トウガラシ台木「台パワー」、複合病害抵抗性中早生チャ「さえあかり」等の先導的品種、重要難防除病害のトマト黄化葉巻病やウリ類果実汚斑細菌病の防除マニュアル、ユビキタス環境制御等による施設栽培トマトの多収生産技術、チャ品種「べにふうき」の機能性解明とこれを活用した各種製品開発等、基礎研究の成果を踏まえつつ、生産と消費の現場に新たな可能性を提供する多くの研究成果を世に問うことができました。本年4月からの第3期中期計画においても、日本の野菜と茶業の将来を切り拓くべく、新たな可能性を秘めた先導的な研究シーズを開発するとともに、その成果を現場課題の解決に資する斬新な技術提案へ展開することに全力を注ぎます。

今年は辛卯(かのとう)です。辛には草木が枯れて新たな世代に生まれ変わること、また卯には草木が地面を覆い茂ることの意味があるといいます。すなわち辛卯は、これまで地下部に蓄えたエネルギーを一気に発露させ、新たな時代の可能性に向かって上昇する年とのことです。独法の抜本的見直し等のため次期中期計画の策定作業は遅れてきましたが、本年を野菜茶業研究所の新たな飛躍に向けたスタートの年とするよう、所員全員が目標を明確に共有し、辛卯の心で広い視野と強い信念を持ち、次の5年間に向けて邁進いたします。

本年も、皆様のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。