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菅首相:揺れる胸の内 内閣改造、焦点の仙谷長官処遇は

今年初めての閣議に臨む菅直人首相(右)と仙谷由人官房長官=首相官邸で2011年1月5日、藤井太郎撮影
今年初めての閣議に臨む菅直人首相(右)と仙谷由人官房長官=首相官邸で2011年1月5日、藤井太郎撮影

 菅直人首相は5日、通常国会前に内閣改造と民主党役員人事を行う方針を固めたものの、仙谷由人官房長官の処遇を巡ってはなお揺れている。大幅改造で交代させて野党との連携を探るのか、小幅改造で続投させて「正面突破」を図るのか。仙谷氏は小沢一郎元代表が交代を求める「脱小沢」路線の象徴的存在。野党の協力を得られる成算のないまま改造に踏み切れば、かえって政権の求心力低下につながりかねず、首相は情勢をギリギリまで見極めたい考えだ。【田中成之、野口武則】

 ◆ケース(1)交代

 ◇「小沢切り」セットで与野党協議促進

 揺れる首相は4日夜も首相公邸に北沢俊美防衛相を呼んで対応を協議した。北沢氏は5日の記者会見で閣僚と民主党役員の入れ替えに言及し、野党に配慮して仙谷氏を交代させる場合は党幹部として処遇する可能性を示唆した。

 昨秋の臨時国会で野党との連携を探る国会対応が機能しなかったとの反省もあり、内閣改造に踏み切るなら、党の態勢強化も必要となる。首相は5日夜、テレビ朝日の番組で改造方針を表明したうえで「野党にもしっかりと議論に出てきていただいて、より国民にとってプラスになる政策を決めていける国会にしていきたい」と付け加えた。仙谷氏続投なら通常国会の審議を拒否する構えの自民、公明両党に対し、11年度予算案の審議や、税と社会保障の与野党協議に応じることが仙谷氏交代の前提だとの認識を示したといえる。

 その場合、首相は「小沢切り」と内閣改造のセットで内閣支持率の回復を図り、野党との協議につなげる戦略を描く。仙谷氏の後任には小沢氏系ではなく首相に近い江田五月前参院議長や玄葉光一郎国家戦略担当相の名前が取りざたされる。

 首相は強制起訴された場合の「出処進退」の判断を小沢氏に求めた4日の発言について、5日も「(考えに)全く変わりありません」と明言。首相と岡田克也幹事長ら党執行部は小沢氏に国会開会前の衆院政治倫理審査会出席を求めており、同審査会での招致議決や、その先の離党勧告などを見据え、党の役員会や常任幹事会から小沢氏系を排除する人事も視野に入れている。

 ◆ケース(2)続投

 ◇「野党に主導権」「問責ドミノ」回避

 昨年12月、たちあがれ日本に連立参加を打診し、同党の平沼赳夫代表に入閣を求める大幅改造へいったんはかじを切った首相だが、連立工作は頓挫。政権浮揚の材料なしに野党の求める仙谷氏の交代を受け入れれば、野党に主導権を奪われる形で通常国会の開会を迎えることになる。

 そのため首相は4日の年頭会見で、参院で問責決議を受けたことを理由に仙谷氏を交代させることには慎重な考えを示した。首相が連携を期待する自民、公明両党は、昨秋の臨時国会で仙谷氏と馬淵澄夫国土交通相に対し野党が多数を占める参院で問責決議を突きつけたことを理由に両氏の交代を求めている。

 仙谷氏も5日の記者会見で、自民党の谷垣禎一総裁と公明党の山口那津男代表を名指しして「両方、法律家なので(首相が解散権を持つ衆院の参院に対する優越を定めた)日本国憲法を熟読していただきたい。審議拒否で(衆院)解散に追い込むようなことは国民の望むところではない」とけん制した。

 自民党内にも国会冒頭からの審議拒否には慎重論があり、民主党内には「予算案の審議を放棄すれば、批判を浴びるのは野党だ」とみて、仙谷氏続投による正面突破を主張する声も根強い。問責を受けた閣僚の辞任を一度認めれば、「問責ドミノ」につながるとの懸念も首相を慎重にさせている。ただ、野党が審議に応じたとしても、正面突破をすれば、その後の予算審議は全面対決となり、子ども手当法案などの予算関連法案の審議で野党の協力を取り付ける道が閉ざされる可能性が高い。

毎日新聞 2011年1月6日 東京朝刊

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