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【世界のかたち、日本のかたち】大阪大教授・坂元一哉

2011.1.7 02:47

 ■民主党自身の「天命」

 昨年9月の民主党代表選挙後、幹事長に就任した岡田克也氏は、その人事を「天命」と表現した。菅直人、小沢一郎両候補による激しい選挙戦で亀裂が走った党内をまとめ、菅内閣を支え、政権交代の成果をあげて国民の期待に応える。その決意を感じさせる言葉だった。

 だが岡田幹事長の決意にもかかわらず、その代表選挙から3カ月もたたないうちに、菅内閣の支持率は危険水域とされる20%台に急落し、民主党自体も政党支持率で自民党に抜かれる、という苦しい状況に陥った。小沢氏の政治とカネの問題をめぐる党内対立も、抜き差しならぬものになっている。

 新年を迎え、菅首相も岡田幹事長も、政権と党への支持率回復をはかることで頭がいっぱいだろう。だがそれに特効薬があるわけではない。民主党自身の「天命」を自覚し、地道な努力を積み重ねていくしかないように思われる。

 政権交代という「天命」のことである。民主党は一昨年、単独政党によるものとして55年ぶりの政権交代を成し遂げた。この政権交代は、自民党の長期政権が続いたことによって生じた政治のよどみを一掃するため、いつかは日本の政治に必要なものだった。これをきっかけに政権交代が常態化すれば、日本の政治はこれまでとは異なる緊張感とダイナミズムのある政治に変わる。その意味で、政権交代を根付かせることこそ、民主党に下された「天命」と言ってよいのだろう。

 そうだとすれば、政権交代前の民主党に、政権交代後の実際の政治運営に関する熟慮と準備が足らず、それが政権交代自体への失望を招いているのは残念なことである。たとえばマニフェストに掲げた子ども手当などの目玉政策は、無駄遣いをやめれば十数兆の巨額の財源が出てくる、という極めて甘い見通しを前提にしていた。また「政治主導」というスローガンも、そのために必要な見識や能力が民主党にあってのものではなかった。

 ただマニフェストや「政治主導」の実行に関して国民の失望を招いたとしても、それだけで政権交代の意義が否定されるわけではなかろう。半世紀以上なかった本格的な政権交代である。多少の試行錯誤には目を瞑(つむ)るべきかもしれない。

 だがもし、その試行錯誤に国民の安全や国家の浮沈に直結する外交・安全保障政策まで含まれるのなら話はまったく別である。そもそも戦後の日本政治に長く政権交代がなかったのは、野党第一党、社会党の外交・安全保障政策が日本の歩む道を根本的に変えるものであり、国民の多くがそれを嫌ったからだった。

 民主党の外交・安全保障政策はそういうものではないはずである。しかし鳩山前政権は、普天間飛行場移設問題などで、日本の安全の基盤である日米同盟を揺るがす事態を招いたし、菅政権は尖閣漁船事件などで腰の据わらぬ対外姿勢をとり、日本の国際的影響力を低下させている。

 このままでは、外交・安全保障政策のあまりの不出来のために、政権交代は時期尚早だった、との評価になりかねない。民主党はそこのところをよく考えて今後の政権運営に取り組んでほしい。まさに民主党自身の「天命」にかかわることである。(さかもと かずや)

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