これは、ゼロ魔の才人君が帰還してみたら故郷はリリカルな世界だったという話です。
このようなクロス作品を探しても見つからなかったので、パンがなければケーキを食べればいいじゃない!?
と、悪い頭で自分で書いてしまえーと思い立ってしまったものです。
読み専でしたので文章力はアレです。酷いというアレだと思います。
どうかご容赦のほどを。
ご注意、ご感想お待ちしております。
1/7 文章量が短すぎなので、1話から5話まで統合しました。
1/8 NG投稿 深くは突っ込まないでくださいな。
二話投稿 タイトル変更。語弊与えて申し訳ないー
1/9 三話投稿
三話修正
1/10 NG投稿 本文は明日です。
四話投稿 と思ったら今日のうちに投稿。ペースがまだ掴めません。
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地図に記されたシティ・オブ・サウスゴータ、その南西百五十リーグにある丘でその日
──奇跡が起こっていた。
「……馬鹿な!?何が起こっているのだ!」
「はっ速すぎるッ!!魔法が当たらん……!」
小柄な影が通り過ぎ、次々と落馬する騎兵隊。
雨あられと降り注ぐ破壊の魔法、だがそこに影はなく……
兵士の倒れる音が彼の足音となった。
七万の軍勢。
文字にすれば、あっけないものである。
しかし遥か上空、鳥の視点でも借りて見下ろしてみれば、それは大河が流れているようなものだっただろう。
そして、大河の流れを押し流そうとする小蟻。
それはひどく滑稽なものであろう。
どんな覚悟を決めていても、どんな決意であっても、例え大事な存在を守るためであっても。
いや、それがあるからこそ皮肉の効いた喜劇にしかなるまい。
──そう、それが本当に流れを押し止めてしまうまでは。
幻獣マンティコアに跨った一隊は、各々の騎獣を解き放ち、魔法を放つ。
どんな強者もこれで葬ってきた、大型の幻獣もこの波状攻撃の前では一分とはもたせない。
そんな矜持が一秒と続くことはなかった。
吹き飛ぶマンティコア。肋骨を折られ、あるいは手を折られ、あるいは昏倒させられ、殺されることなく無力化されていく兵士達。
「相棒……どうして殺さねぇ?」
影──少年の剣からそんな声が漏れる。
「俺は軍人じゃない」
少年は短く答えた。
飛び、跳ね、駆け、あるいは敵の間をすり抜ける。
魔法の矢を避け、炎を剣で切り裂き、ブレイドを纏わせた杖を切り飛ばす。
槍を構えて突いてきた一隊をさらに低い姿勢で潜り込み、足を払う。
隊長格と思しき敵を蹴り付け悶絶させる。
前衛の混乱は激しくなっていった。
「気に入らないな……」
軍勢をまとめるために配置している風メイジの報告を聞き、軍を率いる将、ホーキンスは呟く。
曰く、敵は単騎である。
曰く、敵はメイジである。
曰く、十数騎の部隊である。
曰く、エルフの魔法戦士であった。
曰く、エルフの一部隊である。等等…。
曰く、復帰した烈風のカリンの攻撃であるという報告には知らず冷たい汗が流れた。
しかし、歴戦を重ねた将であるホーキンスには最初の報告が最も正しいと判断を下していた。
速く、強く、的確で、揺るがない。
気に入らない敵だった。
まるで子供の頃に読んだ英雄譚のようだ。
自分には絶対になれない英雄。
「本当に……気に入らないな……」
一つため息をつき、ホーキンスは再度呟いた。
中隊長と思しき杖を払い、少年は狙いを定める。
メイジに囲まれ、混乱の中いまだに整然と構えている一部隊。
「お偉いさんがいそうだな」
少年は剣の声に返事すらできなくなっていた。
右腕は炎で焼かれ、全身に負った傷から命が零れ落ちてゆく。
──だが、足は前へ、闘志は変わらず、最高の相棒は刃こぼれの一つもなし。
一分一秒でも混乱させ、押し止め、最愛のものを守るために。
少年はメイジの群れを目指し風となった。
ホーキンスは己めがけて飛び込む一陣の風を見た。
速い。
杖を抜き呪文を唱え、風の刃を放つ。
ことごとく避けられ、あるいは剣で切り払われる。
護衛隊がマジックミサイルを次々と放つ。
全身にそれを受けながらも、剣士は止まらない。
剣士は身体ごと剣を突き出し、
――その剣がホーキンスに突き刺さることはなかった。
止まってしまった剣を杖で払うと、剣士はそれが限界であったのか、どうとばかりに倒れこんだ。
「ご無事ですか閣下!」
護衛隊が駆け寄る。
「大丈夫だ。……戦闘は終了。損害をまとめて報告しろ」
報告を命じたがホーキンスには概ね理解していた。
ここまで混乱させられた以上、部隊を整え進軍を再開するまでに三時間といったところか。
そして倒れ伏した剣士を見下ろす。
かろうじてまだ息はある。が、もうじき終わるだろう、この英雄の生涯は。
一つ思う事もあり、馬から降り剣士に近づいた。
「閣下!危険です!」
手振りで部下を留め、剣士の顔を見る。
童顔、というよりまだ少年なのだろう。
「──―…見事だった、剣士の少年よ。君の力により我が軍は押しとめられた。確実に数時間は動けまいよ」
ホーキンスが言った言葉が聞こえたのか、少年の口角が上がる。
「……一つ聞かせてくれ、トリステインの勇敢なる剣士よ。君の名前は何という?」
ホーキンスは英雄に憧れていた。
単騎にして一軍をはね返す。幼き頃の夢を追いかけ、軍属に。
そして現実を知り、一個の才能の限界を知り、生き残る為に軍才に磨きをかけた。
将にまで昇りつめた今の自分に不足はない。不足はないが──
目の前にかつて憧れた光が倒れ伏している。
名前だけでもせめて拾いあげたい。
「……ヒラガ……サイ……ト」
「ヒラガサイト……若き英雄よ。貴方の武名は私の名誉に誓ってトリスタニアに届けよう」
「……好きに……してく……れ」
――そして、英雄は力を失った。
「……相棒、思い出したぜ、最後の手段。
これを使えばなんとかなんだろうがな……」
剣の呟きを聞いたものは誰もいなかった。