話題

文字サイズ変更

子供への性犯罪:出所時住居不明、108人 警察庁、面談実施へ課題

 子供への性犯罪歴を理由に警察庁が「再犯防止措置対象者」に登録した人のうち、刑務所から出所する時点で帰住先が不明だった人が108人に上ることが同庁の調べで分かった。全員が満期出所者だった。警察庁は、措置対象者のうち再犯のおそれの高い人に警察官による面談を実施することを検討しているが、導入に向け、満期出所者の所在把握が課題になりそうだ。

 05年6月~10年5月に出所した措置対象者740人について、刑務所から法務省を通じて警察庁に提供された帰住先情報を調べた。内訳は刑期満了による出所者が440人、仮釈放による出所者が297人、病気などによる刑の執行停止が3人。このうち、満期出所者の4分の1にあたる108人の帰住先が、「不明」や「未定」だったり、市や区のレベルの情報にとどまっていた。

 仮釈放者には、更生保護法に基づく保護観察所長への住居の届け出義務がある。満期出所者にはこの義務はないが、出所前に刑務所職員が任意で聞き取りをしている。

 ただ、出所後の受け入れ先が見つからないまま刑期を終える受刑者もあり、帰住先不明の108人にはこうした人も含まれるとみられる。

 措置対象者の所在確認について警察の現行の運用は、原則として本人や周辺への接触を避け、表札など住居の外からの状況を見る程度にとどめている。しかし、再犯防止への効果に懐疑的な見方も強く、警察庁は11月、警察官による訪問や、同意に基づく面談の導入の検討を始めた。実施には居住地の把握が欠かせないため、その資料となる帰住先情報を重視している。

 一方、法務省の担当者は「措置対象者の帰住先は刑務所で特に配慮して把握に努めている。だが、満期出所者には、家族などから見放されて帰る場所の定まらない人が多いのも実態だ」と話している。

 性犯罪者対策として、韓国は全地球測位システム(GPS)で所在を監視する制度を導入。欧米諸国で、警察や司法機関による住所登録や薬物療法の措置が行われている。米国ではインターネットでの市民への情報提供が行われているが、プライバシー侵害に当たるとの批判もある。【鮎川耕史】

==============

 ■ことば

 ◇再犯防止措置対象者

 性犯罪の再犯防止を目的に、定期的な所在確認の対象として警察庁が登録している出所者。13歳未満を対象にした暴力的性犯罪(強姦=ごうかん、強制わいせつ、わいせつ目的の誘拐など)で服役した人に限られ、出所時に帰住先情報が法務省から提供される。奈良市の小1女児誘拐殺人事件の犯人に性犯罪歴があったことが問題になり、05年6月に運用が始まった。警察庁科学警察研究所は、措置対象者のうち満期出所者の再犯リスクが仮釈放者の約2倍であるとの分析結果を出している。出所後の転居などで居住地が分からなくなった人も含めると、所在が確認できていない措置対象者は5月末時点で200人いるとされる。

毎日新聞 2010年12月28日 東京夕刊

検索:

PR情報

話題 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド