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[25318] 【習作】白騎士物語 書いてみた
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/01/08 16:11
かつて栄し古の都。
その都の王が住まいし塔の最上階で二人の男性が互いに睨み合っていた。

その片割れは圧倒的な存在感を持ち、全てを見下すかのような傲慢さを持っている。
彼はこの都の王だった。

「・・・貴様はあの時、ミューレアスと共にいた人間か?」

愚物をみるような眼差しで王はもう一人の人物へ問う。
問われた青年は何も語らずただ王を睨む。

「・・・そういうことか・・・面白い!」

王は、佇む青年を忌々しげに見てさらにその苛立ちをつのらせる。

「愚民風情が!余の前から消え去るがよい!」

叫ぶと共にその手に持った杖を掲げる。
王が掲げた杖からは邪悪な力が溢れ、青年に今にも襲い掛かろうとしている。

その恐ろしい様相を見て、青年は背中に携えし大剣を構える・・・!












~白騎士物語 只人の英雄~


1.始まりの始まり


透き通るような快晴の下、小さな村の入り口に十数人の人だかりができていた。
村の外側に一人の青年が、村側に人々が青年を囲むように集まっている。

「・・・にいちゃ・・・本当にいっちまうのか?」

人だかりの先頭に立つ少女が青年へ話しかける。
いまだ幼さを残すあどけない少女は、泣きそうな顔で声も震えていた。

「んだ・・・決めたことじゃけん。」

青年は答えにくそうに、だがしっかりとした口調で答える。

「このままじゃ、この村も隣の村みたいに廃れていくさ。」
「おらが都で働いて、がっぽり稼いでくるけん心配せんと。」

彼は少女の頭をなで、安心させるように優しく微笑む。

集団から一人の老人が青年へ歩み寄る。

「アヴァタ・・・すまんの・・・」

老人はこの村の村長であった。
そして青年-アヴァタ-がこの村を出て行くきっかけを作った人でもある。

「村長もそんな心配せんと!」

申し訳なさそうな老人へ青年は快活に笑う。

この村は小さいながらも特産を持ち、隣村との交易で村人全員が笑いながら
暮らせる程度には豊かであった。

しかし、隣村が10年ほど前に滅びてからは、交易も途絶え
日々の糧を得ることのみに専念せざるをえなかった。
幸いにもこの村の特産「超大型かぼちゃ」のおかげで
食うには困らなかったが、それだけだ。

閉鎖した村単体では、だんだんと廃れていくことを防げなかった。
このまま村が滅び行く様を良しとしなかった村長が思いついたのが、
アヴァタを都へ出稼ぎに出すことであった。

「おら、この村の特産さ絶対に広めて見せるけん!」

アヴァタの目的は2つ。

ひとつは出稼ぎによるお金の獲得。
もうひとつが「超大型かぼちゃ」の普及だ。
このかぼちゃは大の大人3人でやっと抱えられるようの代物だ。
きっとこのかぼちゃは都でも売れる!というのが村長の考えだった。

事実、この国は隣国との戦争が続き食糧難であったのでかぼちゃの
需要は高いものであった。
閉鎖した村の住民はこの世情を知るよしもなかったが。

知らないが故に村人達は村長の言うことを半分も信じていない。
そのため、少女や村人たちはアヴァタのことを心配そうに見つめているのだ。
本来なら、彼一人ではなく数人の男集で行くことが最善であったろう。
しかしこの村の男集はアヴァタ一人を除いて所帯を持っていた。
さらに「超大型かぼちゃ」の育成には多くの男手が必要であったのだ。
自由で若く融通の利くアヴァタに白羽の矢がたったのである。

「にいちゃ・・・絶対に帰ってきてね・・・!」

「おう!行ってくる!」

青年は村の未来と住人の期待を背負い都へと歩む。

少女は青年の背中が消えるまで彼を見守っていた。











「待ってろよバランドール!」

青年は使命感と不安、そして初めて向かう都へ大きな期待を持って山を駆ける。


・・・その行先に壮絶なる運命が待っていると知らずに・・・







あとがき
最上階クリア記念にやっちまったナリ
後悔はあるが反省はしない!

と、いうわけで稚拙な物語をお読みいただきありがとうございました。
この話はPS3ゲーム「白騎士物語」のプレイヤーの分身であるアバターを主人公としております。
ゲーム中アバターは果てしなく空気なので、この話ではアバターの設定は全て捏造です。
ぶっちゃけオリ主。
アヴァタ君の口調はなんちゃって方言なのでテキトーです。

基本的にはゲーム通りに進むのですが、アヴァタ君を交えてオリジナルな展開も見せたいと思います。
ゲームのままの部分はキングクリムゾン!するかも。

隔週ぐらいで更新していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします!

処女作ゆえに粗が目立つと思いますので、助言・苦言なんでもお待ちしております。





[25318] 2.まだ始まってない
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/01/08 15:24
~アヴァタ~

村をでて早2週間、いまだ都は見えず・・・

てか遠!遠いべ!
この前出会った商隊に拾ってもらわなかったら餓死してたっぺ!

村長も村の皆も都はあっちに行けば着けるって言ってたから4日くらいだと思ってたのに・・・

でも、ラッキーだったなぁ。
餓死直前に商隊に出会えて。
しかも!ご飯付きだし途中のアルバナって町まで一緒につれてってもらえるべ!

うんうん、これも日頃の行いだな!皆ーおらがんばってるだよ!

すぐバランドールに着いちまうかも!

都についたら何しようかなぁ・・・

おっとその前にこの口調さ、気ぃつけんとなぁ。
昔、隣村のかっちゃんとぐらっちんによく馬鹿にされたもんなぁ・・・

別に変じゃないと思うだども・・・
いやいや、あの2人が言うんだべ。
ぐらっちんみたいな都会の香り漂うクールな男におらはなるさ!

ぐらっちん、同じくらいの村に住んでたのにしゃべり方とか格好良かったもんなぁ・・・

そういえば、かっちゃんもぐらっちんも随分前にどこかへ引越したけど元気してっかなぁ。

お・・・?商隊の隊長さん?仕事け?

あいあい、おまんまのためならしっかり働くど!









~商隊 隊長~

新たに商隊の護衛になったあいつに声をかける。
鋭い眼光、鍛え抜かれた肉体。
なによりも、その背中に背負った赤黒い大剣に目が行く男。
あいつ、アヴァタに出会えたのは幸運だった。

俺たちは自由都市グリードと砂漠の町アルバナを行き来する商隊だ。

この都市間には2つの難題がある。
ひとつはフランダール山脈。
もうひとつはラグニッシュ砂漠だ。

今回の仕事はグリード発アルバナ行き。
アヴァタと出会ったのはグリードから出発して第一の難題、フランダール山脈の中腹だった。









~フランダール山脈~


鉱脈豊富な険しい山々フランダール山脈。
この山は様々な鉱石や金属がとれることで有名だ。
しかし、この山に人の住んでいる気配はない。

なぜならば、鉱脈の価値を超える危険が存在するからだ。

「フランダール山脈には竜が住む」
そう言い伝えられているこの山には数種の竜が住んでいた。

「竜」・・・巨大な体躯に強靭な皮膚、はては魔法まで使ってくる恐ろしい存在だ。
彼ら竜にとってみれば、人間など有象無象。
竜を倒せたる傭兵は凄腕として重宝されるほど、人間にとっては脅威であった。
故にこの山に好んで住む人間などおらず、精々が町へ行くために足早に通り過ぎるだけであった。

そして、人がいないことによって竜以外にも脅威が増えた。
討伐されないために増えていった獣たちだ。
ジャッカルと呼ばれる種類の獣は、人間大の体躯を持ちすばやい動きで襲い掛かってくる。

ジャッカル単体でいえば、たいした脅威ではない。
訓練をつんだ人間なら十分に対処可能である。
しかしやつら獣の恐ろしさは単体ではなく集団であることだ。
ジャッカルは集団で暮らす性質をもち、その行動は統率されまるで軍のようでもあった。


多くの脅威に満ちた山々は、そこに鉱脈という魅力があっても人は近づかないのだ。



その山の中腹で、今命の灯火が消えようとしている人々がいた。


「隊長!後方護衛の傭兵がやられました!」

「クソッ!隊列が伸びすぎだ!守りきれねぇぞ!」

「ジャッカルだけじゃねぇ!」

「なんでこんなところに”あんなの”がいやがるんだ!」

彼らはこの山へ何度も踏み入る数少ない人間、商隊だ。
商売のために何度もこの山を通っている。
そのため山の危険はそこらの人間より知っており、もちろん備えは万全のはずであった。

傭兵を多く雇った。自分たちも十分に訓練を行った。
荷を守る荷車はジャッカル程度では傷つかない代物だ。

なにより、20を超える山超えの経験が彼らをこの山で生かしている。
竜の住処の場所を避け、夜行性の獣の通り道を避け、万全を期した今回の旅もすぐに終わり砂漠の町で祝杯をあげているはずだった。

「ちっ!サイクロプスにアイスジャイアントだと!?冗談じゃない!」

彼らを襲っているのは「巨人」
人の3倍以上の体躯を持つ巨大な亜人族だった。

巨人達の豪腕に商隊の人間がぼろ雑巾のように跳ね上げられる。

商隊はこの予期せぬ襲撃に対処できず何人もの犠牲が出ていた。




~商隊 隊長~

「隊長!・・・たいちょ「うわぁぁぁ!」」

くそっ!傭兵共め!なにが鷲の一団だ!
いつも雇っている傭兵達に都合が付かなくて初めて雇った結果がこれか!

フランダールで護衛を何度も請け負っているっていうから雇ってやったのに!
これじゃ鷲じゃなくて食われるチキンだ!

いや、今はそんことよりも・・・

「お前ら!荷はいい!置いていけ!逃げるぞーーー!」

声を張り上げ、隊全体に聞こえるように叫ぶが・・・ちっ!隊が伸びすぎだ!
後ろまで届きやしねぇ!

今は荷よりも人間だ。これまで危険な運送を請負、結果も出している。
その結果をだしてきたうちの連中のほうが荷なんぞよりも大事だ。

「荷を囮にしろ!巨人どもは酒の匂いにつられてきたんだ!」

叫びつつも逃げる先を探す。
・・・本当にいやなところで襲撃されたもんだ。
グリードに戻るにしろアルバナへ行くにしろどっちも同じくらいに遠い。
逃げた先にも巨人がいる可能性がある。
いや・・・巨人じゃなくてもジャッカルでもこの状況じゃやべぇ!

「・・・っ!?」

巨人の棍棒を盾で受け・・・!

「ぐぅぅ・・・」

腕がいかれたか!?

・・・くそっここで終わりか・・・

・・・運がねぇ、巨人なんぞ滅多に見ないのに6体もいやがるとは・・・

・・・傭兵どもが酒ダルなんぞ持ち込まなければ・・・

・・・こんなことならアルバナで踊り子くどいときゃよかった・・・

アルバナの踊り子の笑顔が脳裏に蘇る。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ぶぅるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


巨人の咆哮が聞こえる・・・!?

違う・・・悲鳴か!?

「隊長!あっち!」

指差された先には巨人の脳天に剣を突き刺した男がいた。

ゆっくりと倒れ伏す巨人。

噴出す血にまみれたそいつは、まるで死神のようで・・・

「っ!お前ら!巨人の気があいつに向かっているうちに体勢をたてなおせ!」

その死神を巨人へ差し出す・・・知らないやつより身内が大事なんだ・・・すまねぇ!





~アヴァタ~


腹・・・減った・・・

持ってた食料ももうない・・・

ここ・・・どこだべ・・・

あ・・・犬・・・犬って食えたっけ・・・

肉・・・肉・・・肉肉肉肉肉!!

肉が逃げやがった!

待てや肉!こちとら4日も飯食ってねぇんだべ!

肉が逃げた先にいたのはでっかいおっさん。

おっさんは食えねぇ!

どけ!!!






~商隊 隊長~


目の前で起きているのは現実なのだろうか。

死を前にして見ている幻か?

「なにもんだ・・・あいつ・・・」

隊の連中もあまりのできごとに呆然としている。

巨人を一体倒した死神に、仇を討とうと別の巨人が襲い掛かったそのとき、
死神は一瞬で巨人の懐へ入り、膝を大剣で串刺しにした。
膝をやられたんだ・・・巨人は耐えれなかったんだろう、
倒れるざまに手を大地に突こうとして頭を下げたそのとき・・・!

巨人の頭が消えた。

いや消えたんじゃなくて、首を死神にはねられたんだ。

・・・そして今、最後の巨人が倒れる・・・

まじかよ、一人でやっちまいやがった。
死神は正しく死神だったのだ。俺たちではなく巨人にとっての・・・

って待て待て。
「おい!お前らなにボーっとしてやがる!巨人のほかにもジャッカルもいるんだぞ!」

そう、脅威は巨人だけじゃなく獣もいるのだ。
隊の連中にそう叫ぶが・・・

「隊長・・・ジャッカルがいなくなってます。」

巨人の漁夫の利を狙ってた卑しい獣どもがいつのまにか消えていた。

と、すると残ったのは・・・

「た、隊長・・・あいつどうします?」

声が震えている隊員。
わかってる。俺だって正直びびってる。

巨人の前でぼーっと佇む死神。
とりあえず・・・なんて話しかければ・・・





~アヴァタ~

邪魔なおっきいおっさんは消した。

肉も消えた。

残ったのは圧倒的な空腹感。

すまねぇ、皆、おら、都さ、いけねぇだ。

「あの・・・よぅ・・・助かったぜあんた。」

なんかちっさいおっさんに話しかけられた。

じゃなくて、人だ!久々!超久々!
あわゎゎ、えっと、そうクールに。ぐらっちんみたいにクールに!

「・・・あぁ」

COOL!実にクールだよおら!

「ほんと助かったぜ!巨人に囲まれたときはもう死んだと思ったな!」

なんかテンション高いちっさいおっさん。
じゃなくて普通のおっさん。
肉ばっかみてて気づかなかったけど、なんか荷車とかいろいろ倒れてる。
これは・・・

「交易か?」

「あぁ!あんたのおかげでなんとか生き延びた!何人か逝っちまったが・・・
 それでもここまで生き残れたのはあんたのおかげだよ!」

わらわらとこっちにくる人だかり。
うわぁ、怪我してる人ばっかりさね。

・・・と人の心配する前に空腹感がやばいことに。
飯、わけてくんねぇかな。

「荷、を、そのままで、いいのか?」

クールに喋るのは難しいが彼らに注意する。
そう、おらの飯になるかもしれない荷のために。

「あぁ!おぅお前ら!隊を組みなおすぞ!まずは怪我人の治療からだ!」

荷、なんか匂う。

酒の匂い?酒はどうでもいい。食い物を・・・!

嗅覚を最大限に集中し食い物の匂いを探り出す・・・!




~商隊 隊長~

話しかけてみると、死神は普通の男だった。

話し方がそっけないのは傭兵に多い特徴だ。
そしてこいつは間違いなく凄腕の傭兵だった。

今も鋭い眼光であたりを見回している。
きっとジャッカル共が消えたのはこいつに威圧されたからだ。

佇まいも隙が無い。
俺はそんなに褒められた腕じゃねぇがそれでもわかる。
こいつの格の違いってやつが。

・・・できれば雇いたい。
巨人共のせいで隊はずたずた、雇った傭兵どもも死屍累々のうえ
俺たちを置いて逃げたやつもいる。

しかし、こいつほどの凄腕となると雇うには懐が心もとないが・・・
隊を、うちの連中を守るためだ!

「なぁ、あんたちょっと話があるんだが・・・」










~アヴァタ~


うめぇ!うめぇよ!うーまーいーぞー!

久々の飯、それもたらふく。
今まさに生きていることを実感してるだよ。
こうして飯にありつけているのはおっさんのおかげだべ。

あのあと、普通のおっさん改め隊長に雇ってもらった。

「アルバナまでの護衛」

話を聞いてみると、バランドールまであと3週間はかかるそうだ。

で、アルバナっていうのはこの山を降りて、バランドールに行くまでの途中にある砂漠の町らしい。

バランドールにいくなら、アルバナへよらないとしばらく町はないらしい。
あぶなかったべ、さすがに空腹で砂漠超えは無理だっぺ。

そしたら、なんと、アルバナまで案内してくれる上に、飯まで分けてくれるってよ!
さらにさらに!金子までいただいちまったさ!

うん、幸先いい。幸先いいぞ!
隊長さんたち交易する人たちのことを商隊って言うらしい。
つまり商人だね!
村の特産、「バンヘイブンカボチャ」をさっそく売り込んでみるべ!

村の皆!おらがんばっているだよ!





~あとがき~
お読みいただきありがとうございます。
いまだゲームの開始にとどいていませんね。
最初は完全オリジナルでアバターがバランドールの某ワイン商に雇われるまでを書こうと思います。
アヴァタ君が強すぎるかもしれませんね。
彼の出身はバンヘイブンというところなんですが、
白騎士1のラスダンの一歩前なんです。
そんなところに住んでいたら・・・あとはわかるな?
ちなみに赤黒い大剣は特殊なものじゃなくて、単純に錆びてそう見えるだけです。
ゲーム本編に入ったら装備もゲームのものに変えます。
次の更新は多分来週かその次週・・・



[25318] 3.まだまだ始まらない
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/01/09 13:15

~とある村の少女~


空を見上げる。

雲ひとつない青い空が広がっている。
でも昨日まではあんなに輝いていた空も、
今の私には何の感慨も与えてくれない。

・・・にいちゃ・・・

いつもなら「おう!」と返してくれる声も無く
つぶやきだけが消えていく。

・・・すごく寂しいよ。

そう、本当なら今日も兄と二人で村のために狩を行っているはずだったのに。
今は、幼馴染達と狩を行っている。

頼もしい兄がいないだけでこんなにも不安になるのだろうか?
見慣れたバンヘイブンの荒野が、まるで見たことの無い迷宮のように見えた。

「大丈夫?」

幼馴染が私を心配してくれる。

「・・・うん。大丈夫。」

今は狩を行っているのだ。
意識を離していては、いつ襲われるかわかったものではない。

「そっか。・・・それにしても今頃、アヴァタ兄さんはどこにいるのかな?」

無理をしていることがばれているのか、露骨に話題を変えられた。
けど、その心遣いが今はうれしい。

「そうだね~。にいちゃならもうバランドールだよ!」

そう、あの頼もしかった兄を、バンヘイブンの獣たちでさえ避けて通るような兄を自分程度が心配するだけ無駄なのだと、きっと元気でやっていると心に言い聞かせる。

「うんうん、アヴァタ兄さんならカボチャを広めてすぐに帰ってきてくれるよ!」

そうやって私に微笑みかけてくれる幼馴染。

「うん!よーし、今日の分の狩を終わらせて早く帰ろう!」

気合をいれて両手斧を構える。
つい先日まで兄が使っていた斧を持つだけで勇気が溢れてくる。

「その意気、その意気!あ、あそこにいるよ!」

幼馴染が見つけた獲物、風竜のその頭蓋めがけて崖から飛び降り斧を振り下ろす・・・!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

動かなくなった竜を解体する。
ん~、ここは食べられる、ここは食べられない。
あっ、頭から石がでた。これキレーなんだけど、重いから邪魔だね。

あと3匹くらい狩っておこうかな?

・・・にいちゃ、今日も私は元気です。





~アヴァタ~



親愛なる妹よ、兄はもうだめかもしれません。


フランダール山脈を抜け、険しい山々から抜けた先に見えたのは・・・
砂、砂、砂。

話に聞いていたラグニッシュ砂漠だ。

熱い!すごく熱いっぺ!
それに口とか鼻とか目とかに砂が!砂が!

商隊のみんなはマントとかつけてて、完全防備だけんども、
おら、布の服しか持ってないから風とか吹いたら砂だらけだ!

バンヘイブンは乾燥してたけども、すごしやすい気温だったから
こんなに熱いの初めてだぁ。

もう、体中の水分なんかとっくの昔に乾いちゃってて
汗も涙もでないだ!

隊長さん曰く、アルバナまであと半日らしいけんども、もたないっぺ!

誰か、おらに水とマントをくださいー!





~商隊 隊長~

アヴァタを雇ってから2日、あんなに平穏だった旅路があるだろうか?

普段ならそこかしこから襲ってくるジャッカル共も、やつらの行動時間である夜でさえついに襲ってくることはなかった。

わかっている。全てはアヴァタのおかげなのだと。
あいつが獣達を威圧しているおかげで俺たちの旅路が平穏だったのだと。

・・・アヴァタ、不思議なやつだ。
そっけない、まさに傭兵の喋り方から人との関りを必要以上に望んでいないのかと思ったが、あいつは不思議と話かけやすかった。

物静かな男ではあったが聞けば答えてくれるし、聞き上手なもんだからついつい話がはずむ。

あの日、初めて会ったときは死神にみえたんだが、今じゃ隊の一員だ。
他の隊員だってあいつのことを仲間だと思っている。

そして、話のなかであいつの強さにも納得がいった。
アヴァタの故郷、バンヘイブン。

この国、バランドール王国の国境に位置する人外魔境の荒野だ。
バンヘイブンに行くためには、フランダール山脈を西へ越え、山脈よりも危険な虫の谷を越えなければならない。

・・・俺なら虫の谷で死んでいるな。
そうして谷を越えた先に広がる荒野がバンヘイブンだ。

その荒野には大地の裂け目と呼ばれるドグマホールがあり、その先はフォーリア公国・・・バランドールの戦争の相手だ。

ドグマホールは人の入れる地形じゃないから、実質バンヘイブンが敵国との境界といえる。

だが戦争の最中にあってもフォーリアがバンヘイブンを通って戦いを仕掛けてきたことはない。
やつらはいつだって、海路を通り攻めて来る。
・・・なぜならばバンヘイブンはバランドール王国でも指折りの危険地帯だからだ。

あの荒野一体は風竜の住処だ。
竜の住居という意味ならフランダールも負けちゃいないが、それだけじゃない。
バンヘイブンには竜に並ぶ化け物が数多くいる。
石化の蜥蜴バジリスク、地獄の番犬ケルベロス、そして真性の化け物グレアデイモス。
グレアデイモスは町一つ滅ぼしたことがある、なんて聞いたことのある化け物だ。

かつて、王国の騎士団が討伐にでて多くの被害をだしたって聞いた。

そんな化け物の巣窟でアヴァタは狩人をやっていたらしい。

そりゃ強ぇわな。
あの荒野で生きていられるなら、フランダールの巨人なんぞ目じゃないだろうよ。

最初はちーっと恐かったが、理由がわかれば恐怖もなくなる。
・・・アルバナについたら酒場にでも誘ってみるかな?




<商隊 隊員>

私は、砂漠のなかマントも付けずに商隊を護衛するアヴァタさんを眺める。
燃えるような暑さの中でも彼は眉を少し顰めるだけ。
この砂漠を乗り越えるためのマントでさえも、動きを阻害する要因であるのならば彼にとっては邪魔になるのだろう。
それはまさしく、戦うためだけの存在のようだった。

だが・・・本当は違うことを私は知っている。
彼は戦士だが、とても優しい人であることを。

初めての出会いは巨人の血しぶきの中だった。
巨人の豪腕に殴られ、意識も消えかけていた私の前に彼は現れた。

絶対の死である巨人を彼は屠ってくれたのだ。
・・・薄れ行く意識の中、私は彼に強烈に憧れた。


・・・私は商隊の戦闘要員だ。
親もなく孤児だった私を、盗賊崩れになりかけていた私を、隊長が拾ってくれた。
商隊に入っても、私にできることなんてほとんどなかった。
商売のことなんてわからないし、商品の管理だってできない。
できたのは、剣を持って商隊を守ることだけだ。

だけど、巨人の前で私はその役目を果たせなかったのだ。
そして、役立たずな自分に腹をたて、商隊を守ってくれた彼に憧れた。

最初はちょっと恐かったけど、話しかけてみると彼は存外に優しかった。
だから、私は戦い方や守り方を彼から学ぼうと何度も話しかけた。
その中のフランダール山脈での彼との会話を思い出す。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「アヴァタさん、聞いてもいいですか?」

「ん・・・なんだ?」

「アヴァタさんの剣って、よくみたら錆びてますよね?
 その・・・折れたりとか心配じゃないですか?」

そう、彼の赤黒い大剣は錆びていた。
錆びてる剣であれほどの戦いを行えた彼はすごいのだろうが、
それ以上に心配なのは剣の耐久度だ。

見たところ彼の装備は、簡素な服と大剣だけだ。
その武器が壊れてしまったらどうするのだろうと思い聞いてみた。

「・・・この剣は、オレの、村の人達の思いが、こもっている。
 だから、折れない。」

・・・驚いた。
彼のような戦士が「思い」を語ったことに。
戦場はいつだって非常だ。
だから戦士たちは現実だけを見て時には非常な決断を下す。
夢をみていた少年だって、戦場を経験すれば夢を口にしなくなる。

だから、おそらく数多くの戦いを経験しているであろう彼が「思い」なんて口にしたことに驚いた。

・・・でも同時に納得した。
「思い」を持ち続けることが彼の強さなのだと。
そうだ、私の戦う理由だって、隊長への恩がえしと商隊を守りたいって思いじゃないか!戦場の非常さを理由に「思い」を否定したら、私の戦う理由だって否定されてしまう。

「・・・アヴァタさん。」

「ん・・・」

「私も、あなたみたいになれますか?」
そう、命をかけてまで「思い」を大切にするあなたのように。
そしてそれを決して裏切らない強さを持つあなたのように。

「ん・・・なれるさ。」

根拠なんて無い。
保証だって無い。
だけど、彼の言葉に、私はもっと強くなれるような気がした。








<アヴァタ>


砂漠のど真ん中、アルバナまであと少しというところ。

やっぱり、フランダールでマントを受け取っていればよかっただ。
まだ山にいたころ、マントを渡されたんだども、正直山道ではヒラヒラしたマントが邪魔だったから断っただ。

・・・それがこんなことになろうとは。
今から貸してって言うかなぁ。
でも、それでお姉さんに笑われた日には・・・!
山で剣の話で盛り上がった、あの人に。
そう、お姉さんに嫌われるわけにはいかない!

正直、この剣、貰ったときは困っただ。錆びてたし。

でも、長老からの贈り物だったから、きっとなにかすごい意味があるとおもってただども、こういうことなのか長老!
さすが50年前は村一番の美人(本人談)を奥さんにした男!
すさまじい先見の明だ。

そして剣の話してから商隊のお姉さんからすごい視線感じるんだども、
これはあれしてこれしてそういうことなのかな!?

正直、村の女性は年上は結婚済み、年下は妹と同い年以下しかいなかったから
お姉さんのような人と話すだけでも胸がドキドキするべ!

お姉さんと話すときは、特に口調に気をつけてる。
隣村のかっちゃんにその口調じゃ女性にもてないっていわれたからなぁ。

だども、お姉さんも変なこと聞くだなぁ。
おらみたいになりたいって。
まるで村の小僧どもみたいだ。

あの子供らもよくおらみたいになりたいって言ってただ。
んで、なれるべ!って言ったらよく嬉しそうに笑ってたからお姉さんにもそう答えただよ!

そしたら、また笑った顔がキレェでよ。

親愛なる妹よ、兄が村へ帰るときには姉ができるかもな!
村の皆!おら、いろんな意味でがんばってるだよ!




~とある村の長老・大剣の真実~


「おかーさんや飯はまだかのぉ。」

「おとーさん、ご飯ならさっき食べたでしょ?」

暖かな日差しのなか、老人と老婆がその暖かさを享受していた。
老人はこの村の長老と呼ばれている。
村長よりもさらに年を召しているからだ。

そして彼は、かつてこの村の鍛冶を一手に引き受けていた。

「そーっじゃたかのぉ。
 ・・・おかーさんや、アヴァタはいつ出発するのかのぉ」

「おとーさん、アヴァタちゃんならこの前出発したでしょ?」

彼は若干ぼけていた。

「そーっじゃったかのぉ。
 おかーさんや、アヴァタにはワシの”最後”の剣を渡したかの?」

「えぇえぇ、ちゃんとおとーさんの”最古”の剣を渡しましたとも。」

そう、老婆はたしかに老人の剣を渡した。
老人が50年前に作った最古の剣を。
・・・彼女は若干耳が悪かった。

老人の最後の作品、アヴァタに渡すはずの剣は今も老人たちの家の暖炉の上に飾られている。




~あとがき~
感想が嬉しかったので調子にのって第3話を書いたでござる。
今回はゲームを持ってない方を対象に
アヴァタの故郷がどんな場所かを説明しましたー。人外度200%増しですが。
どうしてこうなった・・・村人のLvの高さ。
まぁ、でも実際あんな所に住んでたらこうなるよ!きっと。

アヴァタの「ん・・・」とか「、」が多いのはクールな喋り方にコンバートするために考えているからです。決して物静かではありません。

今回もお読みいただきありがとうございました!
いただいた感想に、感激です!




[25318] 4.鼓動の胎動
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/01/09 12:49
~バランドール王国~


バランドール王国 首都バランドール。

ここは王国の首都であり象徴だ。

石畳で綺麗に舗装された道。
石造りの堅牢な塀。
そして、最も目に付くのがバランドール王宮。

まさに荘厳という言葉を表すかのように、都の中央で白い城壁が輝きを放っている。

長く続く戦争に人々は疲れていたが、それでもなお笑顔ですごせる、そんな温かさを持つ都だ。


そんな都の街道を急ぎ早に歩く大男がいた。
彼はワーグ族と呼ばれる種族だ。
広い肩幅に厳つい面、人とは違う肌の色、なによりも額の角が異彩を放っている。
彼の名はラパッチ、この都のワイン商の頭目を勤める男だ。




~ラパッチ~


くそっ。この忙しいのにレナードはなにしてやがる!

お姫様の成人式までもう日がないってのに。
ラパッチワイン商を王城へ売り込むチャンスなんだぞ!

そりゃ、ガキの頃からあいつに仕事を仕込んでて、ろくに遊べなかったとは思うが・・・

べ、別にあいつ・・・レナードの遊び盛りに悪いことをしたとか思ってないからな!
孤児のあいつとどう接していいかわからなかっただけなんだから!

そう!俺はあいつの親代わりで、だから手伝ってもらうのはあたりまえというか!


・・・何考えてんだ俺は。
ああ忙しい忙しい。



足早へ自分のワイン商へと足を運ぶ。

大街道のわき道へ位置する自分の店は、多くの苦労の末手に入れた自分だけの城だった。その城の近くの階段で座り込んでいる男。

べつに、変な光景じゃない。
だが、座っている男の雰囲気が平穏な町並みにまるであってなかった。

全てに絶望したかのような、重い空気。
普通の人間ならまず近づかないであろう。

しかしこのラパッチをなめるな。
俺の城の前でそんな空気だされたら邪魔なんだよ!

「おい、兄ちゃん。そんなグッタリしてどうしたよ。」
べ、べつに心配しているわけじゃないぞ!

「・・・あぁ、否、大丈夫だ。」

と、男が答えるが、まるで大丈夫そうじゃない。
男を眺める。

黒髪に少し隠れた鋭い瞳は青い。
体はかなり鍛えられている。 
なによりも、多くの血を吸って錆びたのであろう大剣がこの男の全てを表している。

・・・傭兵か。
街の人間じゃねぇな。

「・・・んで?なんでこんないい天気に大の男がぼーっとしてんだよ?」

暗にお前のような輩がここにいるのはおかしいと言ってみる。

「ん・・・仕事を探しに来たんだが・・・」

なるほど。この男はこの街へ傭兵家業へきたのか。

だが、長く続いた戦争も、近々和平が結ばれる。
で、仕事にありつけなくて困っていると・・・

「・・・っは、残念だったな。もう戦いはこの街じゃ必要ないんだよ。
 戦いたいなら、別の街で討伐の依頼なり受けるんだな。」

傭兵という職種に思うところがあり、つい辛らつになってしまう口調。
そのとき男が顔をあげこちらを睨む。

「オレは・・・!オレは戦いに来たんじゃない!
 始めにきたんだ!」

・・・!

この男、俺と同じ!?
男の言葉にかつての自分を思い出す・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここは自由都市グリードの裏路地にある酒場。

その酒場で浴びるように酒を飲む。

「・・・おぃおぃ、そんなに、飲んで、大丈夫かい・・・?」

酒場の店主が俺に話しかける。

「うるせぇ!おっさん!金ならいくらでもあるから、もっと酒をよこせ!」

そう、金ならいくらでもある。
闇闘技場で稼いだ金だ。

自由都市グリードはバランドール王国のなかでも突出した技術を持っている。
が、その分闇も多い。

高い技術力は人々の生活を潤すだけでなく、その欲望を肥大化させるのだ。

その闇のひとつ、闘技場のチャンプが俺こと、ラパッチだ。

「・・・くそっ!」

別に酒場の店主に言われたからでないが、悪態をつく。
闘技場のチャンプ、その肩書きに対してだ。
”覇拳”の傭兵ラパッチ。

危険な闘技場に素手で挑み、覇王となった男の二つ名だ。

最初は気持ちよかった。
俺が最強なのだと。この闘技場で一番なのだと。

だが、ある日、今の自分に疑問を抱いた。

戦い続けた先に何があるのだろうか?
闘技場の観客は俺を賞賛する。・・・やつらの娯楽だからだ。
傭兵仲間は俺を羨む・・・その実恐怖しているくせに。

自分の周りが殺伐としていることに気づいてから、闘技場がわずらわしくなったのだ。
そして、一度抱いた疑問を払拭させることができずに酒に逃げているのだ。

「・・・なんだよおっさん。酒に逃げちゃ悪いってか!」

別に店主が何か言ったわけじゃない。
ただの八つ当たりだ。

「ん・・・別に逃げていいさ。」

あきらかに喧嘩を売っている俺に対し店主が静かに答える。
逃げていいだと・・・?人の気もしらないで!

「・・・後ろを見てみな坊や。」

おっさんに言われて後ろを見る。
坊やなんて言われたら、普通は切れるがおっさんの静かな声はなぜか心を落ち着かせる。
「・・・ここには色んな人間がくる。
 傭兵、商人、衛兵、町人。
 ・・・皆、笑ってるだろう?」

たしかに皆笑ってる。

「・・・皆、明日への不安を、酒に逃げているのさ。
 フォーリアとの開戦が近いって不安をな。」

そう、今隣国との緊張が高まってきている。
すぐに戦争とは行かないが、数年後はおそらく大戦争だろう。

「酒に逃げることは悪いことじゃない。
 今の不安を忘れ、笑い楽しむことはいいことさ。
 酒のうまさに笑い、仲間との馬鹿話に笑い、
 また明日の夜、飲みに来ようと思う。
 その気持ちは、決して悪いもんじゃない。」

店主の言葉が静かに俺に浸み込む。

「・・・俺はな、坊や、皆が笑っていられる、ここが好きだよ。」

そうやって微笑む店主に、俺は憧れた。

「なぁ・・・おっさん・・・」

「ん・・・」

「俺も・・・さ、あんたみたいになれるかな?」

不安を抱えた人達に笑顔を与えられるように。

「ん・・・なれるさ」

おっさんにとっては、よっぱらいを相手にした軽い言葉だったのかもしれない。
だけど、その言葉に、俺は、自分のやりたいことが決まった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最初はおっさんみたいに、酒場を始めようかと思った。

が、それじゃおっさんのパクリみたいで嫌だった。
そこで思いついたのが、酒の問屋だ。

俺が売った酒を、酒場の人間が飲む。
酒場の店主じゃその酒場だけだが、
この方法なら間接的だがいろんな酒場の客が俺の酒で笑顔になるってもんだ!

そして俺はおっさんを超える!なんて、また筋違いなことだが目標ができた。

・・・いろんな苦労があったさ。
だけど、あの日、おっさんにかけられた言葉を信じて、おっさんの姿に憧れて、俺は決してあきらめなかった。

そして!ついに手に入れたのさ!ラパッチワイン商を!
俺はこのバランドールの街で傭兵をやめる・・・
いや、やめるじゃ幸先悪いな。


そう、俺は始めるのさ!新しい自分を!


最初の仕事は、そうだな、グリードのあの寂れた酒場に安値で卸してやるか!
そしておっさんに見せ付けるのさ、今の俺がどんなに満ちているのかを。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ワイン商を立ち上げた後、結局おっさんには酒を渡すことができなかった。
戦争が始まって、国境に位置する故郷の村が心配になって帰ったらしい。
だが、きっとあのおっさんは、どこであっても酒で笑顔を作っているのだと思う。
そして、おっさんがそうである限り、どこかで俺とつながっているのだ。


と、ちょっと感慨にふけっていたんじゃ進まねぇな。
バランドールで、俺に叫んだ男を見る。
・・・思い出させるじゃねぇか、こいつ。
こいつも、きっと戦いに嫌気がさしたんだろう。
錆びた大剣が男の戦いの歴史を物語っている。

だが、バランドールにこいつのような傭兵を普通の仕事で雇うような人間はいないだろう。
長く続く戦争にこの街は疲れきっている。
傭兵なんて戦争を思い出させるやつを雇いたいなんて物好きはいないだろうよ。

・・・俺のような物好きはな。






「おぅ、ちょっとこっちきな。仕事の話を聞かせてやる。」





~アヴァタ~

やっとついたよ花の都バランドール。

商隊の皆と別れていろんなことがあったべ。

たった一人で砂漠越え。
寂れた地下坑道の突破。
坑道では騎士団の仕事に巻き込まれたりしたっぺ。
なんでも巨人族が坑道に立てこもったとかで。
その討伐にきたんだと。
傭兵ならば手伝え!って無理やり地下に連れてこられただ。
次々に現れる巨人たちにそりゃもう必死だったさ。
んで、やりきった報酬が”ふろむれ?”とかいう金属だったから働き損だべ。

鉱山を抜けた先では、またまた騎士団に巻き込まれた。
なんでも巨大虫たちが平原に現れて、討伐にでた騎士団が虫の毒にやられたとかで、騎士団の人達の救出を請け負った。
救出はいいんだども、そのあと巨大虫がおらのところへわらわらと集まってきたから、結局戦ったさ。


他にもアルバナでの商隊との別れとか、お姉さんに振られるとかいろいろとあっただども、全部語っちゃうと3話くらいになっちゃうから、割愛するさ。3話?


そんな苦労のはてにたどり着いたよバランドール!

ほあぁ~綺麗なところだべ。

と、見惚れてるところじゃないっぺ。

早速、村のかぼちゃを売りこむだよ!






・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・バランドールさ、他所もんに厳しいところだ。
かぼちゃの話をするならばと、八百屋に行ったら傭兵に用はないって話を聞いてくれないし、商人の人達に近づこうとすると既に馴染みの傭兵がいるから必要ないって門前払い。おら、傭兵じゃないんだども・・・


で、たぶん皆、新顔だから話を聞いてくれないんだと思っただ!

だから、まずはこの街に生活基盤を築いて、この街の住人になればみんな話を聞いてくれるだ!

働いて金を稼げば村への仕送りも潤うしな!

と、仕事を探しても、全部断られただ・・・
・・・これが世に聞く就職氷河期だべか・・・



「おい、兄ちゃん。そんなグッタリしてどうしたよ。」

ビックリした!
初めてこの街で人から話しかけられただ!
あわゎゎ、クールに!そう、馬鹿にされないようにクールに話すさ!

「・・・あぁ、だ、否、大丈夫だ。」
危ない!一瞬「大丈夫だべ!」ってでそうになった!

「・・・んで?なんでこんないい天気に大の男がぼーっとしてんだよ?」

心配してくれるのけ!?おっさん見た目と違っていい人だべ!

「ん・・・仕事を探しに来たんだが・・・」

そう、おらは仕事を探して一日中歩いただ。


「・・・っは、残念だったな。もう戦いはこの街じゃ必要ないんだよ。
 戦いたいなら、別の街で討伐の依頼なり受けるんだな。」

「オレは・・・!オレは戦いに来たんじゃない!」

言われた言葉に思わず反論する。
無限に沸いて出る巨人や、切るとぶちゅっとする虫はもういやだっぺ!

そう、おらがこの街に来たのは村のかぼちゃの普及を・・・

「始めにきたんだ!」

だけども、もうおらには、何にも手がない・・・
すまねぇ、村の皆、おら、ちょっと、疲れちまっただ・・・





「おぅ、ちょっとこっちきな。仕事の話を聞かせてやる。」

!?
お、おっさん、あんたが神か!?

バランドールさ、冷たいところばっかりじゃなか!
こんな、あきらめかけた奴を拾ってくれる優しい人もいるなんて・・・

おら、おら、嬉しくて涙が・・・


「おら、さっさとこねぇか!」

あいあい、すぐに行きます!
どんな仕事かな、おら、狩ぐらいしかできないだども、なんだってがんばるべ!


「俺はラパッチ、ワイン商の頭目だ。お前にもラパッチワインの普及をやってもらうぜ。」


なんと!拾ってくれたおっさん、もといラパッチさんは偉い人だったのだ!
しかもワイン商ということは、食事に関する仕事だっぺ!
ここでしっかりと働けば、他の食品関係にも伝手ができてかぼちゃの売り込みができるべ!


村の皆!おら、がんばるだよ!







~あとがき~
なんか3話書いたら、、手が止まらなかったので書いた。
ちょっと疲れたので後悔している。

というわけで、ラパッチさんに雇われました。
これがゲーム開始の直前ですね。
次からはゲーム本編へ入ります。
本当はまだ道中を書こうかと思ったのですが、あんまりオリジナルばっかりだとなかなか進まなくなったのでキングクリムゾンしました。

アヴァタがお姉さんに振られたと思っているのは、告白しようとおもったら、お姉さんが商隊で一生(懸命)がんばる的なことを宣言しちゃったからです。
そのほかにも商隊関係のお話は外伝という形でだせたらと思います。

しかし、ラパッチさんのキャラが変になった・・・なぜだ。
この人ゲームの最初に声つきででてきたから、そこそこ重要なのかと思ったら、オープニング終了後まったくでてこない空気っぷり。
で、白騎士2のサブクエストで覇拳なんて設定がでてきてもやっぱり空気だったおっさんです。
とりあえず、ツンデレにしてみたが、おっさんのツンデレなんか考えてもまったく面白くないことに書き終わって気づきました。


お読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いいたします!


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