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[25213] 【ネタで習作でオリジナル】(ミニスカ)サンタが街(というか自宅)にやってくる
Name: 干支瀬虎◆fd2f536b ID:a6f36a9f
Date: 2011/01/05 14:16


 題名を変更しました(旧題、遅刻してきたサンタさん)。

 題名通りのお話です。ラブコメです。嘘です。



[25213] 1話 1月1日(土)
Name: 干支瀬虎◆fd2f536b ID:a6f36a9f
Date: 2011/01/05 14:17
 今日は1月1日。2011年の頭を飾る記念すべき一日だ。

 といっても、友達も彼女も家族もいないごく平凡な二十歳の僕には全く関係ない話。ちなみに理由という名のつまらない言い訳をさせてもらえば、友達と彼女がいないのは僕にコミュニケーション能力が皆無であるからで、家族がいないのは単に一人暮らしだから。単に忙しくて実家に帰ってないだけ。

 別に僕に漫画みたいなドラマチックな暗い過去なんて一ミリグラムもない。そのかわりリアリティのあるひとりぼっちの大学生活が現在進行形で繰り広げられているわけだけど。

 でもよくよく考えてみると、新年早々一人で過ごしている大学生というのはごく平凡でもなんでもなくむしろ人生充実偏差値(なんだそれ)がもの凄く低い変な奴だった。

「……まあだからこそこうやって妄想を現実にしているわけだ」

 妄想を現実に。というのは別に僕はギガロでマニアックな能力者ってわけじゃなくて、ただの物書きでしたという話。つまり、自分の妄想を小説にすることで僕は日々何とか生きているわけで。

 ということはこの目の前にある箱はある意味僕の妄想によって形作られているわけか。

「……それにしても何で買っちゃったんだろうな、こんなもの」

 目の前の箱の中には21センチのホールケーキ。いわゆるクリスマスケーキの売れ残りってやつ。
 自分でもどうしてわざわざ購入したのか謎だ。出版社での話し合いに疲れて無意識に脳が糖分を欲していたのか。

 でもまあ買ってしまった物は仕方がない。僕は別に神様なんて特に信じているわけでも信じていないわけでもないけど、食べ物を粗末にすると良心が痛む程度の道徳心ぐらいは持ち合わせているので、流石に捨てるのはやめたい。

 というわけで――

「開けるか」

 21センチのホールケーキなんてどう考えても食べきれるわけもないけど、何日かに分ければどうにかなるだろう。と思い僕がケーキの箱を開けた瞬間――

「――メリークリスマスです」

 女の子が飛び出してきた。金色の髪。碧色の目。服装ミニスカサンタ。

「…………えぇー」

「メ、メリークリスマスっ!」

「なぜ言い直した」

「いやだって……何でそんなに反応が淡泊なんですか?」

「なんか大して売れてないラブコメのラノベみたいな始まり方だし。そうだったら面倒だなぁって」

 そういうの苦手なんだよなぁ。クドいっていうか。極論美少女のエロいとこみせときゃいい、みたいな。
 それに僕が中二病系ライトノベルが好きってのもあるけどさ。特に、漢字にカタカナで振り仮名がついてる禁書や戯言とか大好きだ。

「そんな理由で?! 普通こんな小さな箱から美少女が出てきたら主人公は腰を抜かして、『光をため込んだような黄金の短い髪と大きな宝石をはめ込んだような緑色の瞳から分かるようにその顔立ちは明らかに日本人、いや、人間離れしており、まるで神様が作り上げた精巧な美術品のような――』みたいな描写を始めるのがお約束ですよね!?」

 だよなぁ。でもラノベとかエロゲに関して言えば絵があるんだから、そんなの必要ないんじゃないかと思うんだけどな。まあそういう僕も担当さんはやっぱり入れた方がいいって言うから毎回入れてるけどさ。

「それよりも、少なくとも僕はそんな容姿よりも君がどうやってこんな小さな箱から出てきたのか、ということのほうが気になるんだけど」

「だからそんなに私の描写が素っ気なかったんですか?! 『女の子が飛び出してきた。金色の髪。碧色の目。服装ミニスカサンタ』って適当過ぎるでしょう!! 最後とか助詞さえ省略してるじゃないですか!! それ以前にラブコメに常識は通用しませんから!」

「え? これって本当にラブコメなの?」

「…………ええ勿論」

「おい顔を逸らすな」

「…………」

「おい」

 とりあえずこのミニスカサンタ(暫定呼称)の説明によると、このミニスカサンタはサンタの精という存在らしい。何でもサンタの精というのは、彼の有名なサンタクロースによって生み出された存在で、その意義は世界の子供たちにプレゼントを配るためにあるとか。

「いやでも今日は一月一日なんだけど」

 とっくの昔に過ぎてますよ? クリスマス。

「は? またまたご冗談を……」

 とりあえずミニスカサンタに携帯電話を見せてみる。ディスプレイには1月1日(土)の文字が表示されていることだろう。

「……ガッデム!!」

 両腕を頭に当てて叫ぶミニスカサンタ。可愛い女の子は何をしても可愛いと言うが、それは嘘だった。バカみたいだ。
 というかここ壁が薄いんだから大声出すのはやめて欲しい。
 そうして一通り汚い意味のイングリッシュを叫びまくったミニスカサンタはこちらを向いてしおらしい声で、

「……それでですね。今年のクリスマスまで居候させてください。さもないとサンタの呪いをかけますよ」

 と恐喝してきた。言ってることはともかく、外見は若干涙目で可愛らしい。

「てか……サンタの呪い?」

 そういえば黒いサンタクロースってあったよな。よく覚えてないけど、子供を連れ去るとか殺すとかそんな感じの内容だった気がする。

「いえそれはあくまでフォークロアで、これとは関係ありません」

「え? 無いんだ。つうかフォークロアって単語を使ったからってドヤ顔はやめろよ。むしろアホっぽいからね」

 よくいるよね最近知った単語を使いたがる奴。

「……あなたこそよくフォークロアの意味が」

「いやこれでも一応現役大学生の小説家なんだけど」

「ふんどうせ底辺大学のラノベ作家なんでしょう」

「うるさいなー。というかさっさとその呪いとやらを説明してよ」

「はいはい……サンタの呪いというのはただ、今後死ぬまで女性の顔が全てセント・ニコラスに見えるようになるだけです。もちろん二次元も含めて」

「それは嫌すぎる!!」

 二次元も網羅しているのかよ! どんだけひどいんだその呪い!

「プリキュアになるセント・ニコラス。魔法先生と31人のセント・ニコラス。魔砲少女のセント・ニコラス。ホッチキスで主人公を脅迫するセント・ニコラス。ウンディーネのセント・ニコラス。地球を砕こうとする魔王セント・ニコラス。猫又で足洗低の管理人であるセント・ニコラス。白のミルハであるセント・ニコラス……ふむ、エイフェックスツインのジャケットにそんな感じのがありましたよね。コラ画像みたいなやつ」

「分かりました今日からよろしくお願いしますつうか最後らへんとかとかマニアックな話題過ぎてほとんどの人がわかんねぇよ!!」

 こうして僕の家に一人の居候ができた。とりあえず今年のクリスマスまで騒がしい毎日が続きそうだ。正直さっさとどっかに行って欲しい。



あとがき
ストレス解消で何も考えずに書いた。何も考えずに文章を書くのはとても楽しいですねまる



[25213] 2話 1月2日(日)
Name: 干支瀬虎◆fd2f536b ID:a6f36a9f
Date: 2011/01/02 21:24
「そもそもどうしておまえはケーキの箱なんかに入ってたんだよ」

 僕の家にサンタの精がやってきた次の日。こたつに潜ってミカンを食べながら大学マラソンを見ているミニスカサンタにそんな疑問を投げかけてみた。つうかおまえは正月休みのお父さんかよ。

「なんでって……そりゃあサンタの精の不思議パワーで云々。まあこれはラブコメですから細かいことを考えたらだめですよ」

 ミニスカサンタはミカンの白い繊維を丁寧に剥きながら答える。外見は完全に異邦人なだけにその姿は違和感しかない。二日目にして馴染みすぎだろ少しは遠慮しろ。

「……お前ラブコメって言えば何しても許されると思ってないか?」

「え? そんなことないですよー、ここはXXX板じゃないので流石に本番は駄目ですし。あ、でも手コキぐらいならしてあげてもいいですよ」

「そういう意味じゃねえよ! つうか手コキとか生々しいわ!」

 というかこの業界においてはそういう描写もあるラブコメも無いわけじゃないので、一概に本番が駄目とはいえないのである。だがそういう描写が顕著になってきた今だからこそ、規制問題がこうして浮上してきたわけで。まあつまり出版業界はそういったもの今後はもっと真摯に向かい合っていく必要があると思う。
 ……って何の話だ。

「そこまで言うのなら説明してあげましょう。シュレディンガーの猫は知ってますか?」

「知ってるけど。僕あれ嫌いなんだよな、猫好きだし」

 思考実験だからといっても残酷すぎるだろ。あんなに可愛い生き物なのに。

「そうなんですか? でも日本人は好きな人多いですよね、小説やらマンガやらでの頻出度が異常に高いですし。あ、ちょっと待ってください」

 どこからか眼鏡を取り出して装着するミニスカサンタ。その誰も得しない上に文章で表現しにくい演出は何なんだ。

「はい、それでは説明コーナーです。買ってきたケーキの箱の中にケーキが入っている、というのは箱を開ける直前までのあなたの認識、もしくは常識でしかなく目の前の未開封の箱の中に本当にケーキが入っているというか、という確かな証拠にはならないのです」

「……んーそれってシュレディンガーの猫だっけ? 僕自身も昔本で読んだだけだからいまいちよく覚えてないけどさ」

「さあ? 作者もあんまり知らないので私も分かりません」

「適当にしゃべるんじゃねぇこの野郎! つい真面目に思考に浸っちゃったよ!」

「まあつまり、この作品に挿し絵が無い以上、たとえ『どこからか眼鏡を取り出して装着するミニスカサンタ』と描写されてても、皆さんには本当に私が眼鏡をかけているかどうか分からない。というわけです」

「誰に話しかけてんだお前は」

 どこからか電波でも受信してるのだろうか。それくらいならサンタの精を自称するだけにできそうだな。

「ともかくこれで納得できましたか?」

「納得でき……ん? 待てよ、それってどうしてミニスカサンタがケーキの箱の中に入っていたのかって説明にはなってないよね」

 煙に巻いているだけというか、誤魔化してるだけじゃない?

「…………そんなことないです」

「おい顔を逸らすな」

「…………」

「おい」

 最後は力技だった。というかまたかよこの展開。
 
「そ、そんなことよりもっ。私の名前ってミニスカサンタで確定してる感がありませんか?」

「無理矢理な話題転換だよな。……別にいいじゃんミニスカサンタでも。それとも本当はちゃんとした名前があるとか?」

「無いですけど……」

「じゃあこのままでいいんじゃない?」

「駄目ですよ! ミニスカサンタも固有名詞じゃないですか! それにミニスカサンタってタイピングするのは面倒なんですよ!」

 七文字ですよ七文字と主張するミニスカサンタ。
 タイピングするのが面倒って滅茶苦茶作者の都合じゃないか。作者に配慮するってどんなキャラクターだよお前。

「いいじゃないですか作者に配慮したり、主人公のモノローグ読んだりするキャラクターがいても。どうせこれは【ネタ・習作】なんですから」

「そういう話題はもういいからさ……それでミニスカサンタに変わる別の名称を考えろ、と?」

「はい。勿論考えるだけでなく、私に報告もしてくださいね。『はい今頭の中で考えたーこれでこの話題おしまい』ってのは無しですよ」

「小学生でもしねぇよそんな揚げ足のとり方」

 本当に面倒だなこいつ。
 つうか今のところ登場人物は僕とミニスカサンタだけなんだから固有名詞なんていらないだろ。現に僕も今のところ名前無いし。

「メタなモノローグってないで考えてくださいよ」

「お前だけに言われたくないわ……んーじゃあ……ニコラスで」

 そのまま彼女の親であるサンタクロース、つまりはセント・ニコラスから拝借することにする。

「どう考えても白髭達磨のおっさんのイメージしかありません」

「一応お前の生みの親だろうが!」

 セント・ニコラスは聖人でもあるんだぞ、それに対してそれに対して髭達磨のおっさんっていくらなんでもひどすぎるだろう。罰当たりもいいところだ。

「いいじゃないですかどうせ私は出来の悪い子ですし。それに今、反抗期なんですよー」

「それをお前が言っても、ただ悪口を避難されることに対しての保険に感じるんだけど」

 自分は反抗期だから親に何言ってもいいんだ悪いか、みたいな。そういう奴って、免罪符を振りかざしていることに自覚がある分余計面倒なんだよな。

「はいはいその通りですねー。じゃあさっさと次の案を出してください」

「お前、僕が揚げ足をとることを危惧したりとかどうでもいい話の風呂敷は広げるのに、自分の耳が痛い話題はスルーするのな……」

「いいからさっさと次の案っ」

 どうやらそれも耳が痛い話題だったようで。

「じゃあジュド。別にザンタクロスでもいいけど」

「元ネタは鉄人兵団ですか? どちらにしろゴツいので却下ですけど。もっと可愛いのにしてください」

 何で知ってんだよお前。昨日も色々漫画や同人ゲーム、果てには電子音楽の知識もあったし、もしかしてサンタの精ってサブカルチャーに詳しいのか?

「……ならサン子」

「テキトーすぎます。ついでに変換するのが面倒」

「単語登録しとけばいいだけだろうが! どんだけお前は作者を甘やかす気だよ!」

「いやいや作者は神様ですよ? むしろ私たちにとって干支瀬虎(さくしゃ)は神以上の存在ですよ? 哲学的に言うなれば一者(to hen)ですよ?」

 だから哲学用語使ったからってドヤ顔するのはやめろよ。昨日と芸風がほとんど同じじゃねぇか。

「……んーでもなー……名前なぁ」

 僕としては人の名前なんて大した意味が無いと思う。名前なんてのは要は多数の人を区別するためにラベルを貼っているってだけだし。
 つまり僕が言いたいことは、名前に何らかの意味付けを行うことも可能なんだけどそこに僕自身は大した価値を感じない。ってこと。
 だから僕は彼女の暫定呼称を省略する。

「ミニス」

「え?」

「『ミニス』カサンタだから、ミニスってのは?」

 うん、これは我ながら悪くないと思う。

「おおっ、いいですねそれ! 結構可愛いじゃないですか――ってそれだとサンタの要素がっ! まるで私がただのミニスカの美少女みたいじゃないですかね?!」

「美少女だとは言ってない。というか事実そうだろ、僕から見ればおまえはただのコスプレしてる外国人だぞ」

「くぅ……このままではサンタの精としてのプライドがっ!」

「本当に自分の仕事にプライドがある奴ならちゃんとクリスマスに仕事してるよな」

「それもそうですね。……あ、ミカンもう一個もらいます」

「……そこで納得するなよ」

 まあ指を黄色にしながらこんな会話をしている時点で、お前が駄目駄目なやつってことは分かってるけどさ。せめてもっと反省しろよ。

「だってこの不景気なご時世、プライドなんて犬の餌にもなりませんからね。それにミスすれば反省する間も無くそのままクビにつながりますし」

 急に厭世観にまみれ始めたミニスは、ままなりませんねぇと茶を啜る。

「じゃあサンタの精としての仕事を失敗したお前はクビなんじゃないの?」

「…………。というわけで理想郷の皆さん、こんにちはミニスです。もしよかったら感想掲示板に『ミニスかわいいよミニス』とでも書き込んでください。よろしくお願いします」

 僕の話をスルーして、虚空に向かい頭を下げるミニス。誰に対して頭を下げているのかよく分からないけど、やっぱりどっかから電波でも受信しているんじゃないだろうか。



[25213] 3話 1月4日(火)
Name: 干支瀬虎◆fd2f536b ID:a6f36a9f
Date: 2011/01/04 10:49
 気楽な気持ちで自分の妄想を適当に文章にするんだろ、楽しそうでいいよなー。なんて思われている節があるけど、僕の一ラノベ作家としての意見を言わせてもらうならばそんなことは決してない。むしろシリーズ化する事が多く、テンポ良く巻数を重ねることが求められるこの業界は他の小説と比べても遜色がないほどに心身を消耗する仕事だと思う。

 そんなラノベ作家と一般の小説作家の相違点は置いといて、文字を書いて生きている全ての者に小便ちびってガタガタと震え出す程の恐怖を与える「アレ」が僕にも迫ってきていた。

 つまり締め切り。

 そんなわけで年末から全く執筆活動をしていなかった僕は今、必死こいてテキストエディタに向かっている。

「そう言えば初詣行きました?」

「……勿論」

「じゃあ独楽回しはしましたか?」

「当然だろ」

「凧上げは? 福笑いは?」

「飽きるほどに」

「じゃあ……姫初めは?」

「それは勿論――今からさっ」

「きゃっ……で、でもまだ昼ですよ?」

「はっはっはっ君と二人で愛を語り合うのに夜からじゃ足りな――「今集中してるんだから邪魔すんな糞サンタ!」

 ちなみに僕がつっこむまで全部ミニスの独り言。鬱陶しいことこの上ない。

「だって絡んでくれないんですもん。ミニスは暇で暇でーっ!」

 煎餅を持って四肢をばたつかせるミニス。こたつの中で暴れるなよ、足が当たって痛い。

「だったら一人でゲームでもやってろ僕は今忙しいんだよ!」

 テレビの前に陳列された据え置きゲームを指さす。
 締め切りは明後日、だというのにノートPCに表示されたテキストファイルは最終章の途中までしか埋まっていない。エピローグなんて言うまでもなく一文字も書いてない。

「計画通り終わらせないのが悪いんじゃないですか……おっ最新機種全部揃ってますねぇ」

 耳が痛い。
 ミニスが僕の家に来てから、完全に忘却の彼方にあったデッドラインの存在を思い出したのは担当からの電話がかかってきた昨日の夜の話。それから僕は徹夜で脳をフル稼働されていた。

「……ってソフトはノベルゲーしかないじゃないですかぁ。ミッシングブルーにシュタゲにフェイト、街にかまいたち……もっと血湧き肉踊るようなアクションとかRPGとかないんですか?」

「……それなら押入に星をみるひとが入ってるぞ」

「マジですかっ! あの伝説のクソゲーをこんなところでお目にかかれるとは!」

 予想通り目を輝かせて食いついてきたな。昔中古屋でたまたま見つけてネタで買ってみたやつだが、まさかこんなところで役に立つとは想像だにしなかった。
 喜々として押入へ向かうミニスを傍目に僕は、せめて一時間ぐらいは時間を稼げればいいなぁと思う。

「……あのーちょっといいですか?」

「何だよ?」

 背中にかけられた声に答えてはいるが、意識はあくまでパソコンに。集中集中。

「私ってこれでも女性の中では、割とそういうのに寛容なほうだと思うんです。現に私もたまにプレイしますし」

「……ん?」

「それに私が女性であるのに配慮してエロゲーを押入に隠す気持ちもわかるんですけど……流石に女体狂乱とか淫妖蟲とかは……」

「そんなハードコアなエロゲは持ってねえよでっちあげんじゃねぇ読者が信じるだろうが!」

 いやでもエロゲー自体はやりますよ? 泣きゲー限定ですけど。


 ☆それから!☆


「……なんか今イラつく系四文字がモノローグに挟まった気がします。私的に鬼頭先生以外の四文字ひらがな作品に漂う、商業主義のにおいが気に入らないんですよねぇ」

「…………」

「え? 無視ですか?」

「やっと終わったんだから休ませてください……」

 死ぬ気で原稿を書き上げてそれをメールで送信した後、携帯電話の電源を切り、家の電話回線を引き抜いて、そして最後にノートPCからLANケーブルを引き抜いてやっとのこと全ての作業が終了したのが、10分ほど前の話。まさか一日で完成するとは思わずに、自分でも驚いてしまった。

 ちなみにメールで送った後の行程は、担当のダメだし対策のためだ。担当に対する『書き直しを要求されても僕はやりませんよーやりたくないですよー』という無言の抵抗である。

「みたいな感じのことが杉井光先生の『ばけらの!』に書いてありました。本当のところは作者も知りません、まあ流石にそんな作家は現実にいないとは思いますけど。というわけで皆さん買ってください『ばけらの!』。ついでに『神様のメモ帳』と『さよならピアノソナタ』も」

「……なんの宣伝だよ。大体おまえさっき4文字が気に入らないとか言ってただろ」

 本当に杉井先生ごめんなさい。こんな駄文に名前を出してはいけないぐらい素晴らしい作品なのに。

「いいじゃないですか。作者がファンなんですよついでに結婚してくださいついでにユーリと四代目も夫にください」

「絶対最後の二人が目的だろ。……つうか今回はヤバすぎる気がする」

 感想掲示板で顰蹙を買いまくっているのがありありと目に浮かぶ。そんなにこの掲示板の方々は寛容じゃないぞ。いい意味で、だけどさ。

「大丈夫ですよ。ヤバいときは修正すりゃあいいんですから」

「…………」

 にたぁと粘着質の笑みを浮かべるミニスを見て、麻薬やシンナーを始めるときの気持ちってこんな感じなんだろうなと思った。
 軽い気持ちで始めて痛い目を見る、みたいな。

「で。冗談は置いといて、そろそろやろうと思うんですよアレ」

「アレ?」

「感想の返信ですよ。私たちでやっちゃいましょう」

「流石作者に優しい自称美少女……」

 どこまでも作者を甘やかす気だった。単にネタがないだけとも言えるけど。

「えっとではとりあえず今回は感想4まででいきますねー。はい、るんださんからの感想です。舞城王太郎の小説にそんな感じの登場人物がでてきますよね」

「それはルンバ。誰得だよそのネタ」

「……では読み上げます。

『貴女が私のマスターかと尋ねるセント・ニコラス

灼眼のセント・ニコラス

涼宮ニコラスの憂鬱

ニコラスの使い魔』

 ――って感想でさえないじゃないですか!?」

「でも一番上はありじゃない? サーヴァントの能力って知名度補正がかかるらしいからかなり強いと思うし」

「約束された幸福の進物(メリークリスマス)!!」

「超かっけぇ!!」

「ですね! いつか使いましょうその技、じゃあ次です。勇者ゾンビさんから

『二次元はっ・・・二次元だけはやめてくれ・・・。』

 これはまあ男の娘に走ればいいと思います。そんなあなたにおすすめするエロゲーは『ツイ☆てる』です。内容はタイトルから察してください」

「お前なんでそんなにエロゲーに詳しいんだよ……」

「子供のためのサンタですから。いつまでたっても大人になれないチェリボーイにもちゃんとプレゼントを配らないと、真のサンタの精とは言えません」

「そういう子供も対象にしてんの?!」

「サンタは子供でさえあればどんな子供も分け隔てなくカバーしますからね。ではババさんからです。

『副題から見て…凄い長編になりそうだぜ…(ごくり(クリスマスまでの毎日を一日ずつ描写s(ry

ミニスかわいいよミニス……というとおもったかっ』

 ――死ねよ。ちゃんとミニスかわいいよミニスって言え糞野郎!!」

「はいババさん本当にすみませんでした! ちなみにこの話の副題を見てわかる通り、この小説は現実と同じ時間軸ですからね!」

 わざわざ感想を書いてもらったのに重ね重ねすみませんでした!

「……次。蓬莱NEET。

『ミニスかわいいよミニス、ミニスは主人公の嫁。

これで満足か!?』

 はい流石ですね! ジャイアントなんかとは違って蓬莱NEETさんはできる子です! 幻想郷からありがとうございます!」

「すげぇいい笑顔……」

「あ、でも一点だけ。この人は別に私の夫じゃないですよ、私たち手コキの関係ですから」

「そんなことされた覚えはねぇよ! つうか手コキの関係って何だよ?!」

「えっと後は……あ、作者からお知らせです。

『皆さんこんにちは作者です。この作品はここまで読んで分かる通り、ほとんどをメタパロネタで構成されています。しかも全て伏せ字なしという暴挙。
 またもしかしたら、読んでいて色々と不快感をもたらす表現があるかもしれませんのでそういった点があればすぐに感想板で指摘してください、すぐに修正しますので』

 ……だそうです。無茶苦茶予防線張ってますね。流石、オリジナル板でアンタッチャブルな単語を人名に使ってしまい、読者から感想版で指摘されただけのことはあります」

「流石にぶっちゃけすぎていると思うぞそれは!」

 というかそういうのは最初に書いておくべきじゃないか?

「まあそういうノリ一辺倒の駄文ですから。というわけで今回はここでおしまい、続きが読みたいなら『ミニスかわいいよミニス』と書き込んでください」



[25213] 4話 1月5日(水)
Name: 干支瀬虎◆fd2f536b ID:a6f36a9f
Date: 2011/01/05 14:10
 午後十時。僕は休み明けにある試験に向けて授業のノートを見返していた。ミニスはゲームをしている。
 が。

「ゲームに飽きました。つうかミッシングブルーのコンプリートなんて無理ですー」

 と言ってテレビの前を占領していた不思議生物はそのまま両手を広げて後ろに倒れる。
 別にゲームするのはいいんだけどコントローラーを投げ捨てるのはやめて欲しい。

「……あーやることがなくて暇ー」

「そっか、じゃあばいばい」

 と玄関を指さしてみた。

「ええじゃあ短い間でしたがお世話になりました――ってな感じで、つまらない冗談にもノリつっこみをするぐらい暇です」

「そっか……つまらない冗談かぁ……」

 残念、割と本気だったんだけどな。さっさと出ていってくれないかなぁ。

「……そこでへこまれると私としては非常に反応に困るんですけど」

「なら僕の精神衛生のために出ていってくれ」

「そんなに私のわがままボディが気になって仕方ないんですか? まあ私みたいな美少女と同棲してたら、一匹の雄としての熱く煮えたぎるリピドーが爆発しそうになるのは仕方がないと思います

けど」

「違ぇよ! おまえが寝てるときとゲームしてるとき以外は絶えず喋り続けてるから、僕の精神がすり減ってるんだよ!」

 まさか僕が風呂に入ってるときもドア越しに話しかけてくるとは思わなかった。つうかむしろそれだけでなくスクール水着で乱入してきた。

「一応ラブコメですからね、サービスシーンです」

「それなら実際に描写されてるところでしろよ! モノローグにただスクール水着になった事実だけ書かれても意味ねぇだろうが!!」

 奇を衒(てら)い過ぎだ。99パーセント脳内保管なんて誰も得しねぇよそんなもん。

「まあまあそれは今度ってことで……それでですね。今気づいたんですけど」

「何だよ?」

「この作品ってワンパターン過ぎるんですよね。ただ主人公と美少女がどこにも行かずに自宅でダベるだけってのは芸が無さ過ぎです。ついでにあなたのつっこみもワンパターンですし」

「それは言うな。てか別にいいだろ、むしろシンプルだからこそ作者の技量が出ていいんじゃないのか?」

 料理と同じだ。料理が上手い人じゃないと本当においしい卵焼きを作れない。大事なのは創る側の技量だ。

「まあそうなんですけどね。だからこそ技量のない作者みたいな人は大体イロモノに走るんです」

 あれ?
 なんか今回は作者に優しい自称美少女も若干毒舌だな。
 どうしたんだ?

「いや何というか……このチラ裏って記事検索すれば一応PV数や感想数とかも見れるんですよ。それで調べたんですこの作品のPV。すると何とPV約1800(1月5日12時12分付け)」

「おお!! ……って比較対象がないからよくわからないけど」

「はい。ですからついでにたまたま目に付いた、はびこさんの俺妹二次創作作品のPVも見たんですよ…………や、約10700(1月ry)でした」

「滅茶苦茶多っ!」

 ボロ負けもいいところだよ! 確実にこんな頭の悪い会話しかしてない僕らにも原因があるんだけどさ!

「……いやでもほら、二次創作だし何というか、原作が好きな人が見るんじゃない?」

「……いえ……そっその……実はもの凄く面白くて……文章力もあって……俺妹読んだこと無い作者でも……お、面白いと……思って……」

 瞼を赤く染めた涙目のミニスを見て、僕も泣きたくなってきた。

「…………」

「……ぐす」

 一気にお通夜ムード。部屋を支配するのはミニスが鼻をすする音だけ。
 
「……ぐす……で、でしゅからねぇ……」

「……落ち着いてからでいいから。先に鼻をかめ」

「ふぁい……ぐすっ」

 マジ泣きしてるミニスに追い打ちをかけるほど僕はひどい人間じゃないので、とりあえずティッシュを箱ごと押しつけるように渡す。
 結局ミニスが泣きやんだのはその10分ほど後の話。

「……お恥ずかしいところを」

 瞼だけでなく頬も染めるミニスを見て、僕はこいつにも羞恥心というものが存在していることに今更ながら気づいた。驚愕した。ということはおくびにもださない。
 これ以上話を逸らすのもあれだし。

「いや……大丈夫」

「そ、それでこの作品がワンパターンだ、ってとこまで話は戻りますけど」

「うん」

「だから――増やそうと思います。登場人物」

「……ん? どういうこと?」

 登場人物を増やす?

「登場人物が増えれば自ずとワンパターン化は防げるという寸法です」

 人差し指をぴんと立てるミニス。
 それしても、小説のワンパターン化を無くすために登場人物を増やそうとする登場人物って。今更だけどメタメタすぎる。

「えっと……でも僕の知り合いって言えば出版社関係だけだし……」

「友達とかいなんいんですか?」

「…………」

「……すみませんでした」

 いやそんなマジで謝られると、むしろこっちの方が居たたまれなくなってくるんですけど。

「そうでした。大学行っても遊ぶ友達がいないから、仕方なく毎日引きこもって小説を書いてるんでしたよね」

「おまえ僕に喧嘩売ってんのかよ! 単に僕は小説を書くのが好きなだけだ!」

 今度は僕の方が泣きたくなってきた。いや本当はミニスが言ってることもあながち間違いじゃないんだけどさ。

「……僕の方は置いといておまえの方はどうなんだよ、友達とかいるのか?」

「私もいませんよー、私皆さんとはあまり話が合わないんで」

「そうなのか? 意外だな」

 こいつのフランクな性格なら誰とでも仲良くなれそうな気がするんだけどな。逆にそれがウザいところでもあるけど、よく口が動くところとか女受けは良さそうだし。

「いえ……前はそれなりに他のサンタの精や白髭親父とも仲良くしてたんですが『keyの中でどれが最高傑作か?』という議題で決定的な亀裂が生まれてしまい、それ以降は……」

 やっぱりカノンが最高だと思うんですけどねぇ。皆さんは違うみたいで……、と呟くミニス。頭が痛くなってきた。

「……僕はサンタの精だけでなく、サンタクロースという存在の認識を改めなければいけない気がする」

「ですよね! やっぱりカノンが最高ですよね!」

 つっこむのが面倒になってきたのでスルーさせてもらう。

「……それでどうやって登場人物を増やす気だよ」

「え? ……ああそういう話でしたね。召還すればいいんですよ召喚。忌避すべき禁断の暗黒魔法ですよー」

 召喚。あれか、最近ではドラゴンよりも美少女が喚び出されることが多くなったあれか。

「そんなファンタジーなスキルがこの世界にあるはずが……あったわ」

 そう言えば目の前のミニスカはファンタジーの塊だった。

「しかもそこで版権キャラを出せばPVも跳ね上がるってわけです。もし萌え萌えなフェイトそんとか出せばPV二倍は堅いですね」

「おまえ召喚対象を客寄せパンダとしか見てねぇだろ」

「……それでは早速ご都合主義パワーによって、新しい居候を召喚しましょう」

「スルーするなよ。つうかそれは却下だ、ちゃんと召喚した後は召還しろ」

 これ以上面倒な奴が増えるのはごめんだ。ただでさえ食費が増えてんのに。

「はいはいわかりましたよ……では早速――

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「ちょっと待てぇ! なんだそのどこかで見たことがある文章は! お前はどこの回し者だ!」

 確かにそう言う意味では忌避すべき禁断の暗黒魔法だった。

「え? そんなの気のせいでしょう。ちゃんとした詠唱ですよこれ。エスペラント語です」

「嘘をつくな!」

 エスペラント語を話せない僕でもそれが絶対に違うことは分かるわ!

「むー嘘じゃないですよー」

 とりあえずそんなこんなでミニスの詠唱が終わる。すると急に水色の光が部屋を包み始めた。

「……うわぁ本当に発動してるし」

 なんかあんだけ突っ込んどいてなんだが、ちょっとわくわくしてきたぞ。

「ですがここでお知らせです。文章量の関係により、この後召喚キャラの顔見せは次話に持ち越させてもらいます」

「ちょっと待て! せめて召喚された奴の顔ぐらい見せろよ! なんだその寸止めは!」

「そんなこと言われても誰が召喚されるか何て作者が考えてないので無理ですねー。じゃあお約束、ということで一緒に気絶しましょうか」

「いやいやいや何言って――」

 僕が言葉を紡ぎ終わる前に。
 部屋を満たしていた水色の光が急激に強くなり、それは僕の視界だけでなく意識をも奪い取っていった――



[25213] 5話 1月6日(木)
Name: 干支瀬虎◆fd2f536b ID:a6f36a9f
Date: 2011/01/06 18:16


 
 赤。
 赤い色というのは本来、人間の脳と視神経の仕組みから見て認識できるものではないらしい。
 見えない色。見るべきでない色。
 それが赤。
 そう考えると僕らの身体を流れる血が赤いのも、何となくだけど納得できるような気がする。
 血が赤いのは普段見えないからで、見るべきでないから。
 だからこうして手を真っ赤に染める赤は――

「ミニス、ティッシュ」

 ――と、そんな格好いい前ふりをしといて何だけど、ただの鼻血だった。風呂上がりで血流がよくなっているためか、鼻を押さえた手はすでに真っ赤だ。

「ミニスはティッシュじゃ無いです」

「お前は小学校の先生か」

「……はい……ティッシュ……だいじょうぶ?」

 寝転がってテレビを見ているミニスの代わりにティッシュの箱をくれたのはコメット。
 心配そうに垂れ下がった眉毛がどこか子犬のように見える。本当はトナカイだけど。

「……ん、ありがとう」

 箱から数枚取り鼻に詰めて、上を向く。

「……鼻血は本当は……上向いちゃダメ……」

「え? そうなの?」

「うん……」

 知らなかった。今まで鼻血が出たら当然のように上を向いていたけど、よくよく考えれば口の中にも血が入ってきたりするし、確かにいいとは思えない。

「そっか、ありがとう」

「……ん」

 返事とは言えないような返事をして、コメットははにかんだ。もの凄くクサくてありふれた表現だけど、まるでそれは荒野に咲く可憐な一輪の花みたいだった。

「――って何で突っ込まないんですか?! え? つうか誰ですかこの娘?! 私は知らねぇよこんな奴!!」

 と急にミニスが叫びだした。何言ってんだこいつ。

「……どうしたのお前? 自分で召喚した奴のことも忘れたのか?」

「私が召喚した?! こいつを!? そんなの忘れたというか記憶にありませんよ! というか昨日の召喚直前からの記憶がさっぱりです!」

「はあ? こいつはお前の知り合いだろ、本当に覚えてないのか?」

「知り合い……このロリ系黒髪ロング綾波風味が?」

 綾波風味、というのは包帯で全身を覆われている状態のことらしい。言われてみればそんな感じにも見えなくはない。

「……え……こめっとのこと……おぼえてない……の?」

 じわぁ…とコメットの目が湿り気を帯びてくる。

「えーっと……ってコメット?」

「うん……こめっと」

 自らのことを指さすコメット。

「え? ちょっと待ってください……もしかして、コメットってトナカイの?」

「……うん」

「はぁ!? コメットってトナカイですよ?! ト・ナ・カ・イ!! そんな大きなお兄さんに媚び媚びの萌えキャラじゃないはずです!!」

「……それは最初に僕が突っ込んだぞ。だけどお前は『ご都合主義パワーですよ。三国志に出てくるむくつけき男達が美少女になるこのご時世です、美少女になれないトナカイなんているでしょうか、いえいません!』とか言ってただろ」

 むしろあれは言い切っていたと言っても過言じゃない。

「……全く記憶に無いんですけど。もしかして一話分記憶が無くなってたりしてませんか、私」

「大丈夫かお前? いやウチに来たときから大丈夫じゃなかったけどさ……」

「何気に酷いですね……。まあコメットがロリ化したのはまだいいでしょう、ではなぜここに召喚されてんですか? 今頃トナカイ達はサンタの家での打ち上げの残飯処理とかやってる筈ですよ」

 後で聞いた話だが、サンタクロースとその精はクリスマスが終わると、忘年会を兼ねたパーティーを催すらしい。で、友達のいないミニスは大体その打ち上げには参加しないで、トナカイ達に餌をやっていたとか。

「……うち……おとされた……」

「打ち落とされた? 何にですか?」

「……のーらっど。いたかった……よ?」

「ノーラッド……って北アメリカ航空宇宙宇防衛総司令部(NORAD)?! あれってガチでやってたんですか?!」

 ミニスが言っているあれとは毎年クリスマスにNORADが行っている、衛生レーダーを使ってのサンタクロースの追跡調査のことだろう。
 リアルタイムでその様子がインターネットを通して公開されていて、僕も話を聞くまでただのジョークだと思っていたけどまさか本当に追跡していたとは。

「……うん……ゆだん……した」

「で。怪我をして動けなくなったところをミニスが召喚したって感じらしいよ」

「……そうなんですか。ぜんぜん記憶にありませんでした。えっと……じゃあコメットはこれから――」

「少なくとも傷が癒えるまではここに居させる。……ってお前が言ってきたんだろ」

 全くこいつは。発言に責任ぐらい持てよ。

「……えーっと……んー……まあいいか。分かりました、じゃあコメット改めてよろしくですね」

「……ん。よろしく……」

 何故か再び握手をする二人。今朝もやっただろ。

「――ってちょっと待ってください。じゃあサンタクロースやサンタの精、そして他のトナカイたちは? 打ち落とされたんですよね?」

「お前がご都合主義パワーとやらでクリスマスイブにタイムスリップして助けてきたんだろうが」

「えええええええ!! 嘘でしょうそれ!!」

 嘘じゃねえよ。確かにその時のお前やけに張り切っててキャラが違うとか思ったけど。

「……ほんと……だよ?」

「いやいや私がそんなことする善人に見えますか?!」

「見えない」

「そう断言されるのも……でも本っ当に記憶が無いんです!」

「そうなのか? 話数にして10話ぐらいあった大活躍だったのにな」

「……みにす……かっこよかった」

 まるで長編に入った銀魂みたいだったぞ。まさか本当に『約束された幸福の進物(メリークリスマス)』を使うとは思わなかったけどな。

「それって確実に作者が面倒だから削ってるだけですよ!」

「もったいないなぁ……国家権力との大立ち回りとか凄かったのに」

「国家権力!? 嘘ですよね!? それ絶対嘘でしょう!?」

「いや本当だって。本当に今日一日の出来事だったのか、って疑問に思うぐらいの奇跡みたいな手際の良さだったよ」

 というか未だに夢の中にいるみたいだ。実際今日の出来事を風呂の中で思い出して、ついつい興奮しちゃって鼻血がでたんだから。

「ほんとー……だよね?」

「うん。格好良かったなぁ……アメリカ大統領とカナダの首相に向かって、
『あなた達は本当に世界の子供達を幸せにすることができるんですか?! 大人は子供に夢を与えるものでしょう?! もしあなた方がそんな大人でないのなら――私が今ここで断罪します! そして、あなた達のようなつまらない大人の代わりに、私が! サンタの精が! 世界の子供達に夢と幸せを与えます!!』って啖呵切ってさー。最後には大統領と首相と涙を流しつつハグしたりして、本当に凄かったのに……あ、やべまた興奮して鼻血が……」

「ありえねええええええ!! 何ですかその下らない三文芝居は! そんなの私じゃないですよ!!」

 だからキャラが違うって思ったんだよ。まさかこんなに格好いい奴なんて思わなかった。
 この後もミニスは叫びまくって今日の活躍を否定してきたけど、僕の心の中にミニスの活躍は深く焼き付いていた。多分今後一生それが消え去ることは無いと思う。



[25213] 6話 1月8日(土)
Name: 干支瀬虎◆fd2f536b ID:a6f36a9f
Date: 2011/01/08 16:29
 Dasher(ダッシャー)
Dancer(ダンサー)
Prancer(プランサー)
Vixen(ヴィクセン)
Comet(コメット)
Cupid(キューピッド)
Donder(ドンダー)
Blitzen(ブリッツェン)
 サンタクロースのソリを引く八匹のトナカイたち。
 そしてその中の一匹がとある理由により僕の家にいる。
 吸い込まれそうな程に黒い髪。何故か顔立ちはアジアン。というか日本人。
 会話は苦手なわけではないけど、喋るのが苦手。舌っ足らずと表現しても不十分な程に。ミニスと足して2で割ると丁度良い感じになるかもしれない。
 服装はミニスがどこからか取り出した黒いアンブロのジャージで、そこから僅かに覗かせる包帯が痛々しい。
 彼女の名前はコメット。
 どう見ても人間だがトナカイらしい。
 美少女にしか見えなくてもトナカイらしい。
 元々は雄のトナカイだったような気がするけど、そこは気にせず美少女らしい。三国志時代や戦国時代の英雄が美少女になるこのご時世なら尚更らしい。ミニス曰く。
 ともかく。
 彼女が僕の家の二人目の居候だった。



「……えっと……うん……かんそー?」

「はい、そろそろ感想の返信をしようかなと。最近執筆頑張ってきた作者もネタが無くてそろそろガス欠なので」

「勝手にやってろ。僕は勉強してるからな」

 いくら小説家として収入を得ていたとしても、所詮僕は一介の学生にすぎない。来週から授業が始まるし月末には試験が始まるため、その対策を始めないといけない。

「……おべんきょ……たいへん?」

「試験が近いんだよ。最近原稿とか色々が忙しくて勉強できなかったしな」

「……ん。がんばー」

「参加しないんですか、ノリが悪いですねー。じゃあ私たちだけでやっときます。会話文だけで行きますよー」

「みにす……さびしい……?」

「いえ大丈夫です。多分そのうち我慢できなくなってツッコんでくるに決まってますから」

「……ん」

「それでは今回は一気に5から14までやっちゃいます。つうかこのお話はそれで終了です。感想返信だけで一話丸々使っちゃいますよ」

「くつしたしゅー……?」

「靴下臭さん。どんな人生を歩めばこんな自虐的なハンドルネームを使うようになるんでしょうね。非常に興味があります。

『悪いな、俺はサンタのコスプレしている外人よりニコラスの方が好感をもてるんだ。
それはもう、子供の頃から変わらずにな。
だから間違っても彼がいる限り‘ミニスかわいいよミニス’、なんて言えない。
残念だったな!






ん?』

 はい、もの凄くツッコミにくい感想ありがとうございます。でもあれですからね、あの白髭ジジイはエロゲオタですからね。しかも触手ものと寝取られものが大好きというなかなか倒錯した奴ですから。あとロリコン」

「ろりこんって……?」

「犯罪者のことです。次は蓬莱NEETさんですね、二週目です。

『ミニス可愛いよミニス。

作者さんは「ばけらの!」好きなのか……同志よ!
自分は個人的には「さくらファミリア!」なんかも好きです。作者さんはどうですか?

パロネタ……商業で、ライダーネタ六割にクトゥルーネタ四割なラノベがあるから概ね大丈夫なんじゃないでしょうか?』

 作者は『さくらファミリア!』も勿論好きです。つうか杉井先生は聖書ネタ好きすぎだと思います『すべての愛がゆるされる島』とか『シオンの血族』とか。あと色々なレーベルから出しすぎです、来月はガガガからも新シリーズがでますし。以上作者からの電波受信終了」

「……? すぎい……?」

「ああすみません。分からない方もいますよね、まあこの作品自体がそれこそニャル子さんみたいにパロネタばかりなんですけど。じゃあ二週目のババさんから。

『ばけらの良いよねばけらの、面白かった記憶がある…?(随分と読んでない人)
ミニスかわいいよミニス…続きが読みたいだけなんだからな、ほんとだぞ。』」

「みにす……もてもて?」

「当然でしょう。それにしてもツンデレはいいですねー、つよきすとか大好きです。ただあれをツンデレと呼ぶのかはまた別の話ですけどね、つうか絶対よっぴーはツンデレじゃないですよね」

「つぎ……くら…さん」

「『召喚失敗、部屋が荒れただけ

なんて流石にないよねぇ…』

 ……むしろそれ以上の大冒険だったらしいですよ」

「かっこよかった……」

「知りません、それは私であって私ではないので。いうなればもう一人の私、みたいな。三津屋さんからです。

『ミニス可愛いよミニス

まぁ主人公の方が好きなんだがな!
主人公になら俺・・・後ろの処女、あげてもいいぜ?』

 はいガチホモさんのお通りです。というかあなたは攻めだったんですか? 私的には受けかと思ってたんですけど」

「勝手に同性愛者扱いすんじゃねぇ! 僕はノーマルだ!」

 ミニスが言う通りになるのは癪だけど、ついつい我慢できずツッコんでしまった。

「ですよねぇエロゲーやってますし。まあでもこの家にあるのもクロチャンとかリトバスみたいな泣きゲーばっかです。もっと最終痴漢電車3みたいなスタイリッシュ痴漢ADVとか無いんですか?」

「ねえよ。確かに最終痴漢列車3は中二病的にそそられるものがあるけどさ」

「しょじょ……? がち……? ちか…ん……?」

 話についていけないコメットは頭を傾ける。恐らく頭上には無数のクエスチョンマークが飛び交っているのだろう。

「……コメットの教育に悪いからこの話題やめないか?」

「まあ確かにあまりよろしくありませんね。では次にききたいさんから

『キャラを出すなら担当者を出したらいいんじゃない?



(ミニス可愛いよミニス)ボソ』

 だそうですよ。担当さんってどんな方なんですか? タイトスカートの色気むんむんお姉様ですか?」

「ただのおっさんだよ。たまにご飯奢ってくれるいい人だぞ」

 何を期待しているか知らないけど現実はそんなに甘くないぞ。実際はただの人のいいメタボラーメンマニアだ。

「……面白味のない人生ですね」

 何故人生までも面白味がないと言われなければならないのか。というかお前がいる時点でウザったいぐらいに人生面白いわ。というかただウザいだけか。

「でも……みにす……むんむん」

「あ。そうですね、お色気担当なら私とキャラかぶるのでそれはそれで」

「え? お前ってお色気担当なの?」

 今のところモノローグぐらいしかそんな描写ないぞ。
 そもそもこれにお色気なんて求められてないと思うけど。

「…………ええ勿論」

「おい顔を逸らすな」

「…………」

「おい」

 久しぶりだなこれ。

「……次、アモーさんからです」

『ミニスうざ可愛いよミニス
別に何が召喚されるか楽しみにしてるわけじゃないんだからね!』」

「しょーかん……されたの、こめっとで……よかった?」

「キモオタに受けはいいんじゃないでしょうか? 作者的には使いにくいキャラ出しちゃったなーと思ってますけど」

「え……」

「ぶっちゃけすぎだよお前! コメットが半泣きになってるだろうが!」

「そうでもしないと私の人気が取られちゃうじゃないですか!」

「新人いびり!? 意外と世知辛いなこの世界!?」

 でも確かにメインヒロインよりもサブヒロインの方が人気があるというのはよくある話。長門とか。

「じゃあ次はキャラハンさんです。
『ミニスかわいいよリニス

意表をついて石村とか来るのかなー』

 ――リニスって誰ですか?」

「さあ?」

「じゃあ次行きましょう」

「それで終わり?!」

「はい。では茸飯さんからですね。
『とりあえず巫女服と狐の耳と尻尾を装備してくれたら
ミニス可愛いよミニスといってやらんでもない。

作者さんガンバレ超ガンバレ』

 もし私がそんな装備をすればエクストラ版キャスターとキャラが被るので却下です」

 ニャル子さんとキャラ被ってる奴が何言ってんだ。

「あと頑張れと言われても作者ももうすぐ試験なので、一月の後半は更新速度が低下するのは目に見えています」

「それって後書きに書くもんだよな?! つうか読者の応援を無碍に返すなよ!」

 ごめんなさい茸飯さん。

「後書きなんて一話以降ありませんよ。次、ガトーさん。

『コメット可愛いよコメット
…あれ?トナカイには名前あったのにサンタの精には無い…?

……コメット可愛いよコメット』

 フィンランドではサンタクロースとともにトントという妖精が子供たちのためにハッスルしてくれてる、という言い伝えがあります。これが私たちのことですね。ですがあくまで『トント』というのは種族名で、個体名はついていないんです。何も考えてなかった作者が慌ててググったらそう出てきました。危なかったです、またご都合主義パワーに頼るところでした」

「……後半は聞かなかったことにしよう」

「でもよかったですねコメット。早速ファンが一人出来たみたいで」

「……ぐすっ……がとー……ありがと」

 今まで、部屋の隅で体操座りをして泣いていたコメットがようやく復活。腕でごしごしと瞼を擦りながら笑みを浮かべた。
 と思ったら、悪魔が一匹いた。

「ダジャレかそれは! つまんねーんだよ! そして読者に媚びんじゃねぇこの雌豚が!」

「牡丹と薔薇!? つうか駄洒落は偶然だろそれ!? ……ああああ泣きやんでコメット!」

 全力で潰しにかかっていた。新人いびりぱねぇ。

「……もうぐだぐだですねー。例えるなら不完全燃焼による一酸化炭素中毒とでも言いましょうか、ネタという燃料がないので感想の返信を使って無理矢理書いたらこんな過去最悪な感じになりました。みたいな」

「そこまでは言ってないし例え話もよくわかんねぇよ! そして何よりお前が言うな!」

「あー……グダグダですけどこれで今回は終了。投げやり感が酷いですが次回から本気出します」

 世界で一番説得力の感じられない台詞だった。


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