コラム

2011年01月05日号

【鷲見一雄の視点】
陸山会事件=指定弁護士「4億円不記載も起訴内容に」という方針


●毎日新聞配信記事
 毎日新聞は3日、「<陸山会事件>4億円不記載も起訴内容に 指定弁護士が方針」という見出しで次の記事を配信した。
 小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る政治資金規正法違反事件で、検察官役の指定弁護士は告発事実になかった小沢氏からの借入金4億円の不記載を小沢氏の起訴内容に盛り込む方針を固めた模様だ。衆院政治倫理審査会開催後とみられる起訴に向け、指定弁護士による補充捜査は詰めの段階に入る。

 昨年10月4日に公表された東京第5検察審査会の起訴議決は、陸山会による土地購入の原資となった小沢氏からの借入金4億円の不記載についても「犯罪事実」と認定した。

 小沢氏側は「告発事実を超えた議決は違法」と主張しているが、指定弁護士の大室俊三弁護士は「議決内容に沿って起訴するのが職責」と強調。告発事実を超えた起訴の有効性を巡る過去の判例についても検討してきた。

 小沢氏が議決の効力停止を申し立てた際、最高裁は「有効性は刑事裁判の手続きの中で判断されるべきだ」と指摘。こうした経緯も踏まえ、大室弁護士は「手続きの土俵に乗せないまま私たちが無効と判断することは考えにくい」とも述べており、第5審査会の判断を尊重して4億円を起訴内容に盛り込むことは確実とみられる。

 指定弁護士は、第5審査会が小沢氏との共謀を認定した衆院議員、石川知裕被告(37)ら元秘書3人=同法違反で起訴=にも聴取を要請したが全員に拒否された。小沢氏の弁護人も要請に応じない意向を示しているが、指定弁護士は「話を聞く努力もせずに補充捜査を終えられない」としており、政倫審開催後に聴取要請するかを判断する見通しだ。

聴取要請や起訴のタイミングが政局に影響を与える可能性もあるが、大室弁護士は「淡々と進めるよりほかない」としている。【和田武士】

●鷲見一雄の視点
 そもそも陸山会の土地購入は小沢氏からの4億円の貸し付けから始まっている。土地購入の原資となった小沢氏からの借入金4億円という入りが不記載なら3億5000万円という出も不記載となる。入金と出金は不可分の関係にある。大室弁護士の「手続きの土俵に乗せないまま私たちが無効と判断することは考えにくい」とも述べており、」は正論である。第5審査会の判断にも最高裁の「有効性は刑事裁判の手続きの中で判断されるべきだ」との指摘にも適うと評価する。

 私も50年以上前、日通事件の公判で4開廷(午前10時から昼食を挟んで夕方まで)に亘って検察側証人として出廷した。石黒検事(後に名古屋地検検事正)から30分以上に亘って金銭出納帳の出と入り、政治資金規正法の収支報告書の出と入りについて尋問されたが、検事も裁判長も石川秘書の説明を聞いた検察官のような小沢氏側に有利な解釈の尋問ではなかった。検察側はそれだけでは満足せず、次の公判の冒頭、吉永検事(後の検事総長)が「前回の公判の鷲見証人に関する検察官の意見書」なる書面を読み上げ、私の経歴を詳しく説明した後、「法廷証言より検察官に対する供述(参考人調書)の方が『特信性がある』と主張、弾劾証人に則定検事(後の東京高検検事長、今は小沢氏の弁護団の顧問格)を申請した」。検察は「国会議員を何が何でも起訴しようとしていた場合と小沢氏のように起訴しない流れとなっていた場合とでは、検察官調書の取り方が違うように私は感じる。指定弁護士の「小沢氏からの借入金4億円の不記載を小沢氏の起訴内容に盛り込む方針」は私の古い体験だが、裁判所は理解すると私は見立てる。私も裁判官に石川氏より若かったが、「プロ」とみられた。小沢氏も石川氏も「プロ」とみられると感じる。裁判所は「プロ」と思う人物の証言、供述はあまり重きをおかない傾向がある。


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