【失業率】、12月9.4％に改善！美声で復活したホームレスのように喜んでもいられない

■労働省が７日発表した11月の雇用統計では、失業率が9.4％と前月の9.8％から0.4ポイント改善した。市場予想の9.7％を下回り、2009年５月以来、１年７ヶ月ぶりの低水準となった。また、景気動向を反映する非農業部門の就業者数（季節調整済み）は、前月比で10.3万人増となり、予想の15万人増を下回った。

　就業者数の増減を業種別にみると、製造業は前月比１万人増となり、前月のマイナスからプラスに転じた。このほか、娯楽などが4.7万人増となったほか、教育・医療が4.4万人増となった。一方で、建設は1.6万人減だった。

＊トップ画像：2000年（１月）からの失業率と就業者数増減の推移グラフ。失業率は前月の9.8％から9.4％へ大きく改善！しかし、とても喜んではいられない。

⇒こんにちは！アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。失業率は９％以上となって昨年12月で20ヵ月目となりました。つまり９％以上で戦後最長だった1982年３月〜1983年９月の19ヶ月間の記録を抜いてしまったのです。それから、2010年の失業率は9.6％になり、1983年の9.3％を超えています。12月の失業率が9.4％と前月の9.8％から大幅に改善したから、雇用情勢が良くなっているじゃないかと思いますが、労働省の集計データをよく見ると安心できません。まず、トップにある世帯データ（Household Data）表の就労人口（Civilian labor force）が12月、前月から26万人の減少となっています。その下にある就労率（Paticipation rate）は64.3％です。就労率とは、働く意欲のある就労人口（Civilian labor force）を、病院や刑務所に入っていない16歳以上の一般市民（Civilian noninstitutional population）で割ったものです。12月の64.3％は1984年４月以来となる低さです。


⇒つまり、職探しをあきらめた人が多いので分母が減り、表向き失業率が改善しているという、これまでにもあったパターンです。雇用は悪化している、とはいえませんが、少なくとも期待する回復ペースではありません。したがって「落胆」という表現がしっくりきます。それから、失業者の中で、半年以上も失業している人の割合は40％以上となっています。この割合も歴史的にみて相当高いです。失業期間が長ければ長くなるほど仕事を見つけることが難しくなりますし、経済的な負担が大きくなります。それで、個人破産も増加しています。全米破産研究センターによると、2010年の個人破産の申請件数は、前年比９％増の153万件となりました。2005年の法改正で破産が難しくなり、2006年には申請件数は激減したのですが、昨年は法改正前の状態にまで破産者数が戻っています。失業率の長期的な高止まりと住宅価格の落ち込みで、借金が返せない状態の人が増えているのです。

⇒で、生活保護のフードスタンプですが、７日に発表された10月の受給者数は前月から29万人増加して4,320万人となっています。相変わらず受給者数の記録は毎月、塗り替えられています。で、フードスタンプも受け取られなくなるとホームレスです。ところで10年以上のホームレス生活から一躍有名になった人がいます。オハイオ州コロンバスでホームレスとなっていたテッド・ウィリアムズさんは、ＤＪばりの声が受け、YouTubeで紹介され、仕事のオファーが殺到する騒ぎとなっています。１月３日に動画（オリジナル動画は削除）が投稿されてから、数日で再生回数は600万回を突破しました。５日にはニューヨークに招待され、全米ネットワーク局に出ずっぱりの状態でした。ウィリアムズさんの場合は、酒と麻薬におぼれ離婚し、７人いる子どもとも音信不通でホームレスでした。で。ここ数年は薬物とは決別し、まじめに仕事を探していたそうです。

　こういった復活劇が受けるのも、雇用回復がなかなか進まない背景があるからでしょう。