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PJ: 田中 大也

東京都青少年健全育成条例「施行規則」分析(1) 厳しい自主規制をしてきたゲームも規制対象に
2010年12月26日 08:05 JST

【PJニュース 2010年12月26日】
■性的暴行や十八歳未満に対する性行為の大多数がアウトに
先日可決された、東京都青少年健全育成条例。「改正」された新条例の施行規則、具体的にどんな作品を規制していくかのガイドラインが発表され、注目を集めることになっている。では、具体的に、そのガイドラインは一体どのようなものなのだろうか。

施行規則では、第八条第一項第二号の「不健全図書」としての規制対象となる、刑罰法規に反する性描写の対象として、性交及び性交類似行為のうち、

「刑法百七十六条から百七十八条の二まで、及び百八十一条と二百四十一条に反する描写」、「児童買春・児童ポルノ禁止法第四条(児童買春)に反する描写」、「児童福祉法中の淫行される行為に抵触する描写」、「東京都青少年健全育成条例十八条の六の部分に反する行為」が対象となっている。つまり、

● 強姦、準強姦、集団強姦罪に抵触するような描写
● 強制わいせつ、強制わいせつ致死傷、準強制わいせつ罪に抵触する描写
● 児童買春、児童に淫行させる行為、「淫行条例」等々に違反する描写

などが、規制対象として明記されている。性的暴行のシーンや、十八歳未満のキャラクターの性描写は、金銭のやり取りの有無に関係なく規制されるとされているわけだ。

現実の法律では、十三歳未満の男女には性的な行為に対する同意権が設定されておらず、同意の上での行為も、全て強姦や強制わいせつ罪が適用されるし、十八歳未満の男女との性的行為も、児童福祉法や淫行条例に抵触することになる。

ただし、淫行条例では、十八歳未満の未成年者の側は罰を免責されることになっており、真剣な交際であれば「淫行」とは見なされないこともあるので、一応、十三歳以上十八歳未満のキャラクターの同意の上での性行為に関しては、「不健全」規制を免れる可能性も残ってはいる。

また、今回示された規制範囲は、あくまで、「18禁」規制対象の一部を「不健全」対象とした形になっており、この施行規則に記載されていないジャンルの作品でも、「18禁」規制の対象になっていることは忘れてはならないだろう(例えば、売春描写のある「ゴルゴ13」などの作品が「18禁」になってしまう危険性は未だに残っている)。

■肯定的に描写していなくてもアウト
さて、前述したような性的行為を、どう描写したら規制の対象になるかという点だが、施行規則では「当該行為が社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現し、又は当該行為の場面を、みだりに、著しく詳細に若しくは過度に反復して描写し若しくは表現し」たものが規制の対象となるとしている。

完全にどうとでも主観で解釈できる条文でしかないがつまり、肯定的に描写するか、否定的に描写するかを問わず、行為の場面をぼかしたとしてもダメというわけで、物語の筋にその手の行為があれば、丸ごと、最も厳しい規制対象である「不健全図書」扱いをされてしまいかねない。少なくとも、そうしたことを可能にするだけの威力を持った条文だと言えるのだ。

■ゲームも規制対象に
この施行規則では、いわゆる出版物だけではなく、他メディアについても言及している。「電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行する」ことにより、「該当する行為を疑似的に体験させる」メディアについて、出版物と同様の規制をしていくとしている。

分かりづらいが、電磁的記録媒体は、ゲーム等のデータが収録されているROMやカードリッジソフト、そのプログラムを再生できるパソコンやゲーム機が、電子計算機等ということになる。そして、見るだけではなく「擬似的に体験する」能動的なメディアが対象になった。

つまり、出版物だけではなく、ゲームも明確に規制対象になったと見ることができるのだ。

ゲームの世界は、出版に比べて、より厳しい自主規制を敷いていた。家庭用一般ゲームは「CERO」等の基準によって厳格に年齢区分がなされ、「18禁」のアダルトゲーム業界においては、「(性行為をする)登場人物は全て十八歳以上」だと明記してもいたが、今回、規制の脅威にさらされることになったというわけだ。

既に自主規制で区分けを固めていたとは言え、あくまで自主的なものだった規制が、条例による強制的なものとして固定化され、ゲームによっては「不健全図書」というペナルティの伴うレッテルを貼られてしまう状況になったことはもちろんだが、強力な自主規制を行っていたにも関わらず、出版界と同一の規制がなされたことは非常に重大な事実だろう。

どれだけ厳格に区分し、表示を明示化し、あるいは、登場人物の年齢を十八歳以上にしても、客観的事実として、規制する側は出版と同様の規制を設けてきた。

と、なれば、出版に対する「自主規制が不十分で野放しだ」とする規制の必要性の主張自体が、規制したいという意思を通すための言いがかりではなかったのかという疑問は当然出てくるところだ。

今回の施行規則によって、肯定的に描写していなくてもアウトになる、ゲームも規制対象になるといった問題点が新たに噴出することになった。

厳しい自主規制を行っていたゲーム業界にも、出版と同一の規制をうかがわせる内容だったこともあり、規制を進めてきた側への不信感も含めて、条例の問題性と脅威は、まだまだ拡大しつつあると言えそうだ。【つづく】

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