日中首脳会談:温首相秘書役が国内情勢から猛反対 中止に

2010年11月4日 2時30分

 10月29日にベトナム・ハノイでセットされた日中首脳会談を中国が土壇場でキャンセルした背景に、中国の温家宝首相の秘書役(日本の首相首席秘書官に相当)による猛烈な反対があったことが3日、分かった。日中外交に詳しい関係者が明らかにした。国内で反日デモが相次ぐ中で、安易に日本の首相に会えば中国指導部内での立場が危うくなるだけでなく、世論が沸騰する--温首相サイドがこんな警戒感を抱きながら、日中関係修復に向けて苦慮していた中国側の様子が浮かび上がった。

 関係者によると、この秘書役は長年、温首相の側近を務め、中南海(中国共産党指導部)と連絡を取りながら「首相をいかに守るか」を考えてきたといわれる。温首相の近くで大きな実力を持ち、中国外交部(外務省)もこの人物を説得しなければ温首相の予定は立てられないという。

 ハノイでは29日午前の日中外相会談の終了後に楊潔※(ようけつち)中国外相が「いい雰囲気で良かった」との感想を述べ、同日午後6時半に首脳会談がセットされた。ところが、首脳会談に先立つ日中韓首脳会談の直前に、中国側から「会談はできない」と連絡を受けた。

 中国側は、仏AFP通信が誤って伝えた前原誠司外相の発言などを問題視した。AFPの記事は訂正され、発言は事実誤認と判明したが、中国国内のネットでは日本への批判が火を噴いていた。温首相の秘書役は首脳会談開催を強行すれば、温首相の立場が危うくなると判断した模様だ。楊外相でも「秘書役を説得できなかった」(同関係者)という。

※は、竹かんむりに褫のつくり

 ◇対外表明「慎重に」菅首相に温氏忠告

 翌30日午前、東アジアサミット(EAS)出席の16カ国首脳らが集まる控室で、ブルネイのボルキア国王と懇談していた菅直人首相に温首相から歩み寄り、手を差し出した。双方は「今回は残念でした」との認識を示して10分間の「懇談」を開始。温首相は「外交について対外的な表明をするときは慎重に行うべきだ。民意は非常にもろいものだ」と菅首相に忠告し、前日の会談をキャンセルした背景に国内世論を意識したことを示唆したという。

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