ECUのセッティング法を書いてみます。
私が240SXでボルトオンターボにしたときのECUチューニングで実践した方法です。
これからロムチューンするぞ！って人の役に立てれば幸いです。
�―猗�
ロムライターや追加基盤、アドレスなどの内容はたくさんのサイトで出回っているので、割愛させていただきます(日産系の場合ですが)。
まず、エンジンの状態を知るメーターはあるならあるだけ役に立ちます。
ワイドバンド空燃比計と排気温度計は必須項目です。マップトレーサーはあると便利なのですが、もし手に入らない場合、日産系の場合、岡ちゃんウォーターテンプの裏コマンドの点火時期を回転数と一緒に見ることで、ECUがどこを読んでいるか予測することが出来ます。最近では、Nissan DataScanという便利なソフトがあるようです。コンサルトカプラーに挿すことで、マップトレーサーの機能にもなるスグれもの。
ちなみに、簡易空燃比計は役に立たないので、使ってはいけません。14.7を境に濃い・薄いというだけしか分からないのでは、セッティングは絶対に成功しません。
ノックメーターもあれば便利ですが、僕の場合は持っていなかったので、耳を良く澄ましてノッキングの音を常に聞いていました。ノッキングが発生した場合は、いかなる場合にもすぐにアクセルを抜いて、何が原因でノッキングが起きたかトラブルシュートをします。なるべくならECUセッティング時は、エンジン音が聞こえるように、マフラーは静かな物に交換するのが望ましいです。あと、ノッキングが発生すると、パワーが出なくなり、排気温度が瞬時に異常に上がるので、常に体のセンサーを敏感にしてください。
それと、全開時のセッティングでは、排気温度や空燃比、ノッキング以外にも、水温や油温なども常にチェックしてください。水温や油温の異常な上昇もノッキングの発生の原因になるので、要注意です。
ECUチューニングは出来れば、春か秋ごろの気温が25℃前後の時に行うのが理想ですが、冬や夏にセッティングする場合は、その気温に合わせてしまうと、季節が逆になったときにECUの再セッティングが必要になるので、エンジンベンチを持っていない私たちは1年通じてセッティングの平均が取れるまではECUを書き換える癖を身につけましょう。
特にECUチューニングで大切なのは、単に空燃比や排気温度計の数値を見て、ECUのデータを書き換えるよりも、エンジンがアクセルを踏んでからどのような過程を経て出力に繋がるのかを頭でよくイメージすることが、ECUチューニングの近道となります。
たとえば、過給圧がかかるまでには、
アクセルを踏む→スロットルが開く→インマニの負圧が大気圧になる→エンジンが空気を吸う→エアクリから空気が入る→エアフロの電圧が上がる→ECUが燃料を噴射する→パワーが出る→排気ガスでタービンが回り始める→コンプレッサーが回り空気を送り出す→エアフロの電圧がさらに上がる→燃料を噴射してさらにパワーが出始める→エンジンに一度に入る空気の量に限度があるので、空気がインテーク内に詰まる→インマニの過給圧が上がる。
という具合に、常にエンジンの状態を頭でイメージすることです。点火タイミングも同じように頭でイメージすると、セッティング方法というのが自然と見えてきます。
�▲札奪謄�ング
ECUのマップを書き換える前に、インジェクターとエアフロの交換をした場合、基本アイドリングの空燃比(14.7)を合わせるためにK定数の変更をします。たとえば、インジェクター容量を増やしたとき、265cc→370ccの場合、K定数はその比率分である、0.716を10進法に換算したK定数と掛け合わせて減らしてやります。エアフロの場合も馬力換算の比率分を掛け合わせてやります。また、燃料ポンプを換えた場合も、燃圧が増すので、可変燃料レギュレーターに交換していない場合は、実際のインジェクター容量よりもいくらか上がるので、計算上のK定数はあくまで参考値で、ワイドバンドAF計による微調整は必須です。アイドリング時の空燃比はアイドリングの回転数だけでなく、空吹かしで2000RPMを保った時に14.7が出るようにセットするときもあります。
K定数の設定は大切で、これが出来ていないと燃料マップの書き換えが難しくなります。燃料マップはすべてゼロでもエンジンはとりあえず回ります(結構知らない人が多いみたい)。燃料マップがゼロの場合、エアフロから算出される燃料をそのままリニアに噴射しているだけで、この場合K定数で設定された空燃比を維持したまま燃料が吹かれることになります。しかし、エンジンの負荷によってK定数から出る燃料のままでは空燃比が合わないので、燃料マップで増量補正したり、14.7を維持するためにO2フィードバックをかけますよ、ということです。燃料マップでは燃料は増やすことはできても絞ることはできないので、K定数の設定が大切になってきます。
ECU書き換えで、よくエアフロのVQマップを書き換えちゃう人の話を聞きますが、ECUに書かれたVQマップは交換するエアフロ用に書かれたVQマップとまるごと入れ替える以外は、直接VQマップの数値をいじるのは個人的な意見としてはやらないほうがいいと思います。VQマップは、エアフロの空気の吸入量とセンサーの電圧特性をデータ化したものなので、それを書き換えてしまうと、正確な空気量が測れなくなると思うからです。本当に書き換えるなら、正確な空気の量が測れる別の装置を用意したキャリブレーションが必要になるレベルだと思うので、ちゃんとした設備を持ったショップ以外の趣味レベルのECUチューンでは触らないほうが無難だと思います。
ターボの場合、一般的な空燃比は10.5、排気温度は回転リミッター全開時に最大850℃になるように合わせていきます。
→もともとエンジンがターボエンジンで、タービン交換などでロムチューンをする場合、前もって排気温度計を付けてノーマル状態の排気温度を観察すると、その温度の範囲なら壊れないということでセッティングの目安になっていいと思います。
K定数の変更が出来たら、マップの書き換えに入ります。純正ECUの書き換えの場合、TP補正が燃料と点火とそれぞれありますが、もともとターボエンジンである場合は、大幅に書き換える必要は無いと思いますが、NAエンジンの場合、大気圧内で収まるように書かれてあり、ECUへ過給圧もモニターされていないので、過給が始まったときにマップ右側に張り付かないように、TPマップの書き換えが必要になります。TPマップは私も詳しくは分かっていませんが経験上、エンジンの負荷(エアフロ電圧)によってマップのX軸を読む場所を決めるものと理解しています。
TPマップ書き換えは上の図のようなイメージになります。燃料と点火TPは同じにしたほうが、セッティング中のトラブルシュートは楽です。過給される時に読まれるTPの傾きですが、これはセッティングする最大ブースト圧によって変わってくるので、最大ブーストになる前にマップ右側に張り付かないようにセッティングしてやります。
次にマップの書き換えですが、
e-manageのマップの変更も基本的に同じ方法です。e-manageの場合は、データロガー機能があるので、パーシャル・スロットル時のセッティングは純正ECUのチューニングよりも遙かに楽ですが、e-manageは通常のECUチューニングよりもセッティングに制限があるので、それについては過去の日記を参照してください。
セッティングの順序は、空燃比→点火時期の順序で、必ずどちらか1つだけ変更して変化を見ること。同時に2つ変更してしまうと、次のセッティングの方向が見えなくなり、泥沼に陥ります。
マップを変更したときのエンジンの変化ですが、簡単に言い表すと、
燃料を
増やす→空燃比が下がる、排気温度も下がる。
減らす→空燃比が上がる、排気温度も上がる。
点火時期を
進める →排気温度は下がる傾向になるが、ノッキングの発生率が高くなる。
遅くする→排気温度は上がる傾向になるが、ノッキングは収まる。
ここでポイントなのが、燃料を増やせば排気温度は下がる傾向になりますが、同じ回転数と負荷において、ノッキングが発生する点火時期は空燃比によって変わってくるので、必ず燃料を先に合わせてから点火時期をノッキングの発生する手前まで合わせる必要があります。燃料の合わせ方は、まず燃料マップを空燃比10以下などの濃いめに設定しておいて、それから徐々に10.5に合わせていくと、安全にセッティングができます。この方法だと、ノッキングの発生もそこまで神経質になることもありません。
そして、回転数が上がるにつれて、基本的に点火時期というのは遅くなります。これはノーマルの点火マップを見れば、回転数との関係がだいたい想像出来ると思います。点火時期の合わせ方は、基本的には遅めに設定しておいて、まずノッキングを発生させないようにしてから、徐々にタイミングを進めて排気温度を下げていって、ノッキングとの境目を探りながらセッティングしていきます。
まずはいきなり全開にするのではなく、2速の低回転からノロノロ走りながら、空燃比と排気温度、ノッキングを確認します。2速で2〜3000回転域の範囲で、アクセルを全開に出来るまで、パーシャル・スロットル時の空燃比を合わせます。この回転域の場合、まだ排気温度はそこまで上がらないので、ノッキングさえ聞こえなければ点火時期はあまり気にしなくても大丈夫です。
2速、2〜3000回転域で全開でもノッキングが出ない、排気温度も上がり過ぎないようになったら、そこからアクセルをベタ踏みして、3000回転以上の全開時の空燃比と点火時期を合わせます。だいたい1000回転ずつ少しずつセッティングをしていきます。3000回転が全開出来るようになったら、次に4000回転まで全開にしてまたセッティング、という具合に。
2速での全開加速が出来るようになったら、今度は3速に入れて、同じように低回転から合わせていきます。3速全開が出来るようになったら、今度は4速で・・・、という具合になります。
下にそのセッティングのフローチャートを作ってみました。
（AFR＝Air-to-Fuel Ratio：空燃比、EGT＝Exhaust Gas Temperature：排気温度）
図にも書いたのですが、もし空燃比は10.5に合わせたのに、排気温度が850℃以下になるように点火時期をすすめようとしても、ノッキングが発生して進められない場合、
1．エンジンの仕様に対して過給圧が高すぎる（インジェクターが足りない、エアフロが足りない、スキッシュエリアの要加工など）
2．インタークーラーの容量が過給圧に対して少ない
この2つが考えられるので、エンジンに手を入れないのならば、過給圧を落とすか、インタークーラーを大型化してから、再セッティングする必要があります。
もしくは、燃料に犠牲になってもらって、10.5以下の空燃比に合わせることで、燃焼効率を敢えて落とすことで排気温度を下げて安全に走らせる、という妥協案が必要になります。
ここまでのセッティングは、単にアクセルを全開にしたときのセッティング方法です。アクセル全開だと、回転数が上がる以外に、過給圧一定、アクセル開度も一定で、変化するパラメータが少なく、トラブルシュートの項目が少ないので、比較的楽にセッティング出来ます。（フローチャート図参照）
アクセル全開時のマップ（マップの右軸周辺）が出来上がったら、じっくり毎日走りながらパーシャル時のセッティングをします。パーシャル時は、ECUの何処を読んでいるのか分かりにくいので、マップトレーサーの無い人は岡ちゃんウォーターテンプなどで点火時期を回転数と一緒に見て、マップに書かれている点火時期と照らし合わせることで、おおよその読んでいる場所を推測することが出来ます。エンジンによって過給圧の立ち上がり回転数や、上がり方などが違うので、それぞれエンジンの特性を見ながら合わせていきます。過給圧立ち上がり時の燃料や点火時期もパワー重視にするか、燃料濃いめで排気温度を抑えめにするとか、排ガス対策で敢えて排気温度を高めに点火時期を遅らせるなど、ここは目指すエンジンの仕様によって違うので、それぞれ試行錯誤してみてください。
最後に、おまけなのですが、
スロットルの電圧は、直接燃料を制御していません。
ECUはスロットルの電圧そのものではなく、電圧の変化を見ています。つまり、スロットルが開いたかどうかを見ていて、アクセルを踏んだ瞬間にインマニの負圧から大気圧に変化するときに、スロットルを開いてから、インジェクター噴射までにタイムラグが生じます。それがエンジンのレスポンス悪化の原因になるので、それを解消するべく、エアフロの電圧に関係無く、スロットルが開いたときに、燃料を瞬間的に多めに吹くことで、エンジンのレスポンスを確保しよう、というのがスロットル電圧の主な役目です。AT車だとトランスミッションのシフトスケジュールに影響しますが、MT車なら特にスロットルの初期電圧は2V以下で、ちゃんとスロットルの動きに対して電圧が変化するのであれば、そこまで神経質になることはありません。
スロットルの開度に対する補正は、日産系のECUでは｢加速増量TP補正」と呼ばれています。インジェクターを大きなものに変更した場合は、元のインジェクターのサイズの比率分だけ、ここの加速増量TP補正の数値を下げることで、アクセルレスポンスを損なわないようすることができます(踏み込んだときに燃料がカブるときがある)。
私が240SXでボルトオンターボにしたときのECUチューニングで実践した方法です。
これからロムチューンするぞ！って人の役に立てれば幸いです。
�―猗�
ロムライターや追加基盤、アドレスなどの内容はたくさんのサイトで出回っているので、割愛させていただきます(日産系の場合ですが)。
まず、エンジンの状態を知るメーターはあるならあるだけ役に立ちます。
ワイドバンド空燃比計と排気温度計は必須項目です。マップトレーサーはあると便利なのですが、もし手に入らない場合、日産系の場合、岡ちゃんウォーターテンプの裏コマンドの点火時期を回転数と一緒に見ることで、ECUがどこを読んでいるか予測することが出来ます。最近では、Nissan DataScanという便利なソフトがあるようです。コンサルトカプラーに挿すことで、マップトレーサーの機能にもなるスグれもの。
ちなみに、簡易空燃比計は役に立たないので、使ってはいけません。14.7を境に濃い・薄いというだけしか分からないのでは、セッティングは絶対に成功しません。
ノックメーターもあれば便利ですが、僕の場合は持っていなかったので、耳を良く澄ましてノッキングの音を常に聞いていました。ノッキングが発生した場合は、いかなる場合にもすぐにアクセルを抜いて、何が原因でノッキングが起きたかトラブルシュートをします。なるべくならECUセッティング時は、エンジン音が聞こえるように、マフラーは静かな物に交換するのが望ましいです。あと、ノッキングが発生すると、パワーが出なくなり、排気温度が瞬時に異常に上がるので、常に体のセンサーを敏感にしてください。
それと、全開時のセッティングでは、排気温度や空燃比、ノッキング以外にも、水温や油温なども常にチェックしてください。水温や油温の異常な上昇もノッキングの発生の原因になるので、要注意です。
ECUチューニングは出来れば、春か秋ごろの気温が25℃前後の時に行うのが理想ですが、冬や夏にセッティングする場合は、その気温に合わせてしまうと、季節が逆になったときにECUの再セッティングが必要になるので、エンジンベンチを持っていない私たちは1年通じてセッティングの平均が取れるまではECUを書き換える癖を身につけましょう。
特にECUチューニングで大切なのは、単に空燃比や排気温度計の数値を見て、ECUのデータを書き換えるよりも、エンジンがアクセルを踏んでからどのような過程を経て出力に繋がるのかを頭でよくイメージすることが、ECUチューニングの近道となります。
たとえば、過給圧がかかるまでには、
アクセルを踏む→スロットルが開く→インマニの負圧が大気圧になる→エンジンが空気を吸う→エアクリから空気が入る→エアフロの電圧が上がる→ECUが燃料を噴射する→パワーが出る→排気ガスでタービンが回り始める→コンプレッサーが回り空気を送り出す→エアフロの電圧がさらに上がる→燃料を噴射してさらにパワーが出始める→エンジンに一度に入る空気の量に限度があるので、空気がインテーク内に詰まる→インマニの過給圧が上がる。
という具合に、常にエンジンの状態を頭でイメージすることです。点火タイミングも同じように頭でイメージすると、セッティング方法というのが自然と見えてきます。
�▲札奪謄�ング
ECUのマップを書き換える前に、インジェクターとエアフロの交換をした場合、基本アイドリングの空燃比(14.7)を合わせるためにK定数の変更をします。たとえば、インジェクター容量を増やしたとき、265cc→370ccの場合、K定数はその比率分である、0.716を10進法に換算したK定数と掛け合わせて減らしてやります。エアフロの場合も馬力換算の比率分を掛け合わせてやります。また、燃料ポンプを換えた場合も、燃圧が増すので、可変燃料レギュレーターに交換していない場合は、実際のインジェクター容量よりもいくらか上がるので、計算上のK定数はあくまで参考値で、ワイドバンドAF計による微調整は必須です。アイドリング時の空燃比はアイドリングの回転数だけでなく、空吹かしで2000RPMを保った時に14.7が出るようにセットするときもあります。
K定数の設定は大切で、これが出来ていないと燃料マップの書き換えが難しくなります。燃料マップはすべてゼロでもエンジンはとりあえず回ります(結構知らない人が多いみたい)。燃料マップがゼロの場合、エアフロから算出される燃料をそのままリニアに噴射しているだけで、この場合K定数で設定された空燃比を維持したまま燃料が吹かれることになります。しかし、エンジンの負荷によってK定数から出る燃料のままでは空燃比が合わないので、燃料マップで増量補正したり、14.7を維持するためにO2フィードバックをかけますよ、ということです。燃料マップでは燃料は増やすことはできても絞ることはできないので、K定数の設定が大切になってきます。
ECU書き換えで、よくエアフロのVQマップを書き換えちゃう人の話を聞きますが、ECUに書かれたVQマップは交換するエアフロ用に書かれたVQマップとまるごと入れ替える以外は、直接VQマップの数値をいじるのは個人的な意見としてはやらないほうがいいと思います。VQマップは、エアフロの空気の吸入量とセンサーの電圧特性をデータ化したものなので、それを書き換えてしまうと、正確な空気量が測れなくなると思うからです。本当に書き換えるなら、正確な空気の量が測れる別の装置を用意したキャリブレーションが必要になるレベルだと思うので、ちゃんとした設備を持ったショップ以外の趣味レベルのECUチューンでは触らないほうが無難だと思います。
ターボの場合、一般的な空燃比は10.5、排気温度は回転リミッター全開時に最大850℃になるように合わせていきます。
→もともとエンジンがターボエンジンで、タービン交換などでロムチューンをする場合、前もって排気温度計を付けてノーマル状態の排気温度を観察すると、その温度の範囲なら壊れないということでセッティングの目安になっていいと思います。
K定数の変更が出来たら、マップの書き換えに入ります。純正ECUの書き換えの場合、TP補正が燃料と点火とそれぞれありますが、もともとターボエンジンである場合は、大幅に書き換える必要は無いと思いますが、NAエンジンの場合、大気圧内で収まるように書かれてあり、ECUへ過給圧もモニターされていないので、過給が始まったときにマップ右側に張り付かないように、TPマップの書き換えが必要になります。TPマップは私も詳しくは分かっていませんが経験上、エンジンの負荷(エアフロ電圧)によってマップのX軸を読む場所を決めるものと理解しています。
TPマップ書き換えは上の図のようなイメージになります。燃料と点火TPは同じにしたほうが、セッティング中のトラブルシュートは楽です。過給される時に読まれるTPの傾きですが、これはセッティングする最大ブースト圧によって変わってくるので、最大ブーストになる前にマップ右側に張り付かないようにセッティングしてやります。
次にマップの書き換えですが、
e-manageのマップの変更も基本的に同じ方法です。e-manageの場合は、データロガー機能があるので、パーシャル・スロットル時のセッティングは純正ECUのチューニングよりも遙かに楽ですが、e-manageは通常のECUチューニングよりもセッティングに制限があるので、それについては過去の日記を参照してください。
セッティングの順序は、空燃比→点火時期の順序で、必ずどちらか1つだけ変更して変化を見ること。同時に2つ変更してしまうと、次のセッティングの方向が見えなくなり、泥沼に陥ります。
マップを変更したときのエンジンの変化ですが、簡単に言い表すと、
燃料を
増やす→空燃比が下がる、排気温度も下がる。
減らす→空燃比が上がる、排気温度も上がる。
点火時期を
進める →排気温度は下がる傾向になるが、ノッキングの発生率が高くなる。
遅くする→排気温度は上がる傾向になるが、ノッキングは収まる。
ここでポイントなのが、燃料を増やせば排気温度は下がる傾向になりますが、同じ回転数と負荷において、ノッキングが発生する点火時期は空燃比によって変わってくるので、必ず燃料を先に合わせてから点火時期をノッキングの発生する手前まで合わせる必要があります。燃料の合わせ方は、まず燃料マップを空燃比10以下などの濃いめに設定しておいて、それから徐々に10.5に合わせていくと、安全にセッティングができます。この方法だと、ノッキングの発生もそこまで神経質になることもありません。
そして、回転数が上がるにつれて、基本的に点火時期というのは遅くなります。これはノーマルの点火マップを見れば、回転数との関係がだいたい想像出来ると思います。点火時期の合わせ方は、基本的には遅めに設定しておいて、まずノッキングを発生させないようにしてから、徐々にタイミングを進めて排気温度を下げていって、ノッキングとの境目を探りながらセッティングしていきます。
まずはいきなり全開にするのではなく、2速の低回転からノロノロ走りながら、空燃比と排気温度、ノッキングを確認します。2速で2〜3000回転域の範囲で、アクセルを全開に出来るまで、パーシャル・スロットル時の空燃比を合わせます。この回転域の場合、まだ排気温度はそこまで上がらないので、ノッキングさえ聞こえなければ点火時期はあまり気にしなくても大丈夫です。
2速、2〜3000回転域で全開でもノッキングが出ない、排気温度も上がり過ぎないようになったら、そこからアクセルをベタ踏みして、3000回転以上の全開時の空燃比と点火時期を合わせます。だいたい1000回転ずつ少しずつセッティングをしていきます。3000回転が全開出来るようになったら、次に4000回転まで全開にしてまたセッティング、という具合に。
2速での全開加速が出来るようになったら、今度は3速に入れて、同じように低回転から合わせていきます。3速全開が出来るようになったら、今度は4速で・・・、という具合になります。
下にそのセッティングのフローチャートを作ってみました。
（AFR＝Air-to-Fuel Ratio：空燃比、EGT＝Exhaust Gas Temperature：排気温度）
図にも書いたのですが、もし空燃比は10.5に合わせたのに、排気温度が850℃以下になるように点火時期をすすめようとしても、ノッキングが発生して進められない場合、
1．エンジンの仕様に対して過給圧が高すぎる（インジェクターが足りない、エアフロが足りない、スキッシュエリアの要加工など）
2．インタークーラーの容量が過給圧に対して少ない
この2つが考えられるので、エンジンに手を入れないのならば、過給圧を落とすか、インタークーラーを大型化してから、再セッティングする必要があります。
もしくは、燃料に犠牲になってもらって、10.5以下の空燃比に合わせることで、燃焼効率を敢えて落とすことで排気温度を下げて安全に走らせる、という妥協案が必要になります。
ここまでのセッティングは、単にアクセルを全開にしたときのセッティング方法です。アクセル全開だと、回転数が上がる以外に、過給圧一定、アクセル開度も一定で、変化するパラメータが少なく、トラブルシュートの項目が少ないので、比較的楽にセッティング出来ます。（フローチャート図参照）
アクセル全開時のマップ（マップの右軸周辺）が出来上がったら、じっくり毎日走りながらパーシャル時のセッティングをします。パーシャル時は、ECUの何処を読んでいるのか分かりにくいので、マップトレーサーの無い人は岡ちゃんウォーターテンプなどで点火時期を回転数と一緒に見て、マップに書かれている点火時期と照らし合わせることで、おおよその読んでいる場所を推測することが出来ます。エンジンによって過給圧の立ち上がり回転数や、上がり方などが違うので、それぞれエンジンの特性を見ながら合わせていきます。過給圧立ち上がり時の燃料や点火時期もパワー重視にするか、燃料濃いめで排気温度を抑えめにするとか、排ガス対策で敢えて排気温度を高めに点火時期を遅らせるなど、ここは目指すエンジンの仕様によって違うので、それぞれ試行錯誤してみてください。
最後に、おまけなのですが、
スロットルの電圧は、直接燃料を制御していません。
ECUはスロットルの電圧そのものではなく、電圧の変化を見ています。つまり、スロットルが開いたかどうかを見ていて、アクセルを踏んだ瞬間にインマニの負圧から大気圧に変化するときに、スロットルを開いてから、インジェクター噴射までにタイムラグが生じます。それがエンジンのレスポンス悪化の原因になるので、それを解消するべく、エアフロの電圧に関係無く、スロットルが開いたときに、燃料を瞬間的に多めに吹くことで、エンジンのレスポンスを確保しよう、というのがスロットル電圧の主な役目です。AT車だとトランスミッションのシフトスケジュールに影響しますが、MT車なら特にスロットルの初期電圧は2V以下で、ちゃんとスロットルの動きに対して電圧が変化するのであれば、そこまで神経質になることはありません。
スロットルの開度に対する補正は、日産系のECUでは｢加速増量TP補正」と呼ばれています。インジェクターを大きなものに変更した場合は、元のインジェクターのサイズの比率分だけ、ここの加速増量TP補正の数値を下げることで、アクセルレスポンスを損なわないようすることができます(踏み込んだときに燃料がカブるときがある)。
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