研究会では、こんにゃくゼリー等の口腔内での滑りやすさ、噛み切りにくさ、崩れにくさ等の食感に結びつく力学特性や、吸い込んで食べるような構造等、重篤な窒息事故につながり得るリスク要因について分析し、リスク低減のための改善提案を行っている。
興味深い報告になっているので是非報告書を読んでいただきたいが、ポイントを抽出すると、まず喉頭モデル等を用いた窒息現象の再現試験が行われている。小児用喉頭モデルの喉頭部にサンプルを置き、気道内に35kPa(約260mmHg)の陰圧を加え気道内圧を測定し、閉塞が起こりやすいか否かを検討した結果、そのまま吸い込むことが想定されるひとくちサイズでは、かたさ及び弾力性が大きいほど窒息リスクが高まることが確認された。また、形状に関しては、直径が1cmを超える場合にリスクが高まることが観察されている。

さらにこんにゃくゼリーの販売方法に関しても約半数が菓子売り場であり、子供に認知されやすい状況にあること、こんにゃくゼリーの注意喚起に関しても、菓子売場で約1/3、冷凍品売場周辺で約1/2程度実施されているが、全体としては約7割の店舗で未実施であることが報告されている。
結果として、研究会はリスク低減のために次のような提案を行なっている。
仮に餅が最近発明され、メーカーから大々的に売り出され、その食感、味が大ヒットしたとしよう。その一方で、年間1000人が餅を喉で詰まらせ死亡する事態になると、消費者庁はそのリスクについて注意を喚起し、専門家に依頼してリスクの分析、改善案についての検討をすすめるだろう。その結果として、粘性の高い餅は喉に窒息リスクが飴類の4倍とかつて無いほどに高く、リスク低減のために粘性を下げる品種への改良、大きさの縮小(複数一緒に焼かない!)、高齢者が食べないように商品態様及び販売方法の見直し、消費者への注意喚起その他もろもろ上記報告書よりも立派な報告書が出来上がるに違いない。餅は規制によって縛られ、現状とはかなり異なったものに成り変わるだろう。
結局、餅が規制されず、こんにゃくゼリーだけが規制されるのは、それが昔から食されてきた伝統的な食べ物かそうでないかの違いだけだ。
消費者庁も、専門家も、きちんと彼らの仕事を行なっている。統計的、科学的に調査を行えば、そこにリスクがあるのは数字として出てくる。昨今の食の安全に対する意識の高まりを受けて、行政の判断はどうしても安全側に傾かざるを得ない。そのリスクを低減せよと言われれば、たとえ商品価値を毀損するような対応であっても、提言せざるを得ない。この構図は日本にやたら信号機が多い理由とも通じるところがある。危ないと言われれば、コストがかかり多少利便性が悪くなっても、危なくないように対応するのが日本の行政だ。彼らは国民の声を聞いて仕事をしているのだ(と少なくとも彼らは主張するだろう)。
責任の一端は彼らにそういう仕事をさせてきた我々社会の側にもある。無視できるほどのリスクに目くじらを立て、責任者は誰だ?と犯人探しをし、多額の損害賠償と再発防止策を求める。そのたびに新たな規制が追加され、少しずつ社会は住みにくくなる。もちろんそうした規制の中には必要なものも多い。しかし不要なものも多いのもまた事実だ。
この負の連鎖をなんとか断ち切り、より全体的な視点でバランスのとれた対応をすることは出来ないのか、それこそ政治主導の出番なのだろうけれど……ねえ?
興味深い報告になっているので是非報告書を読んでいただきたいが、ポイントを抽出すると、まず喉頭モデル等を用いた窒息現象の再現試験が行われている。小児用喉頭モデルの喉頭部にサンプルを置き、気道内に35kPa(約260mmHg)の陰圧を加え気道内圧を測定し、閉塞が起こりやすいか否かを検討した結果、そのまま吸い込むことが想定されるひとくちサイズでは、かたさ及び弾力性が大きいほど窒息リスクが高まることが確認された。また、形状に関しては、直径が1cmを超える場合にリスクが高まることが観察されている。
さらにこんにゃくゼリーの販売方法に関しても約半数が菓子売り場であり、子供に認知されやすい状況にあること、こんにゃくゼリーの注意喚起に関しても、菓子売場で約1/3、冷凍品売場周辺で約1/2程度実施されているが、全体としては約7割の店舗で未実施であることが報告されている。
結果として、研究会はリスク低減のために次のような提案を行なっている。
- 力学特性
- 子どもが吸引する可能性がある一口サイズの容器で販売する場合には、弾力性が小さく、破断されやすいものへの改善。
- あるいは、咀嚼が必要となるような、容器を吸引できない大きさや構造等へ改善。
- 一口サイズで販売するに際しては、個包装の警告表示や注意喚起の徹底を図るとともに、必要に応じ力学特性の改善を検討することが重要。
- 大きさ
- 子どもの気を引く型やイラスト等を避け、形状を大きくし口で吸引できなくする、またはそのまま飲み込めないようにする。
- あるいは気管の大きさ(内径約1cm)よりも小さくする。
- 構造
- 一口サイズで、吸い込んで食べるような構造となっている食品は、咀嚼することなく咽頭喉頭部へ送り込まれる可能性があり、窒息事故リスクが高くなるので注意が必要。
- 商品態様及び販売方法
- 商品態様では子ども向けの菓子と誤認されない変更、また販売方法では菓子売場以外での販売等、子どもの摂食機会低減につながる取組について必要に応じて更なる改善が必要。
- 消費者への注意喚起・啓発
- 関連事業者による自主改善・関係機関等による連携協力
仮に餅が最近発明され、メーカーから大々的に売り出され、その食感、味が大ヒットしたとしよう。その一方で、年間1000人が餅を喉で詰まらせ死亡する事態になると、消費者庁はそのリスクについて注意を喚起し、専門家に依頼してリスクの分析、改善案についての検討をすすめるだろう。その結果として、粘性の高い餅は喉に窒息リスクが飴類の4倍とかつて無いほどに高く、リスク低減のために粘性を下げる品種への改良、大きさの縮小(複数一緒に焼かない!)、高齢者が食べないように商品態様及び販売方法の見直し、消費者への注意喚起その他もろもろ上記報告書よりも立派な報告書が出来上がるに違いない。餅は規制によって縛られ、現状とはかなり異なったものに成り変わるだろう。
結局、餅が規制されず、こんにゃくゼリーだけが規制されるのは、それが昔から食されてきた伝統的な食べ物かそうでないかの違いだけだ。
消費者庁も、専門家も、きちんと彼らの仕事を行なっている。統計的、科学的に調査を行えば、そこにリスクがあるのは数字として出てくる。昨今の食の安全に対する意識の高まりを受けて、行政の判断はどうしても安全側に傾かざるを得ない。そのリスクを低減せよと言われれば、たとえ商品価値を毀損するような対応であっても、提言せざるを得ない。この構図は日本にやたら信号機が多い理由とも通じるところがある。危ないと言われれば、コストがかかり多少利便性が悪くなっても、危なくないように対応するのが日本の行政だ。彼らは国民の声を聞いて仕事をしているのだ(と少なくとも彼らは主張するだろう)。
責任の一端は彼らにそういう仕事をさせてきた我々社会の側にもある。無視できるほどのリスクに目くじらを立て、責任者は誰だ?と犯人探しをし、多額の損害賠償と再発防止策を求める。そのたびに新たな規制が追加され、少しずつ社会は住みにくくなる。もちろんそうした規制の中には必要なものも多い。しかし不要なものも多いのもまた事実だ。
この負の連鎖をなんとか断ち切り、より全体的な視点でバランスのとれた対応をすることは出来ないのか、それこそ政治主導の出番なのだろうけれど……ねえ?
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