浦添市が進める西海岸開発事業に伴う米軍提供水域返還の条件として、米軍が牧港補給地区(キャンプ・キンザー)内の老朽化した退役軍人用会員制クラブハウスの移設・建て替えを求めた上、既存施設にない「太陽光発電」などの最新機器付設を要求していたことが、31日までに分かった。市側は米軍の法外な要求は退けたが、新たな施設の建設費6700万円の負担を余儀なくされる。思いやり予算など日米関係に詳しい前田哲男元東京国際大教授は「地位協定の保護下にもない退役軍人の施設の建設まで米側は権利を主張できない。全くの焼け太りだ。日本政府の姿勢こそが問われる」と指摘している。
提供水域返還は市が2005年、防衛庁(現防衛省)を通じて米側へ要請。08年米側は退役軍人の「第442ベテランズクラブ」が、埋め立て地に隣接することから、「事業者が米国に費用の負担をかけることなく移設すること」を条件とし返還に応じていた。
同クラブはキンザーを管理していた陸軍が1950年代に、第2次世界大戦の日系人部隊の活躍を記念し建設。関係者によると会員の退役軍人は数人。建物が使われるのは月2回程度で遊休化していたという。
新たな施設について米軍と市側の交渉は、一昨年3月から昨年10月まで続いた。米軍から施設拡充の要求が相次いだためだ。要求は太陽光発電だけではなくトイレの水道センサー、駐車場整備など多岐にわたった。
「米軍の要求を全部聞いたら、1億円以上かかっていただろう」(関係者)という。
浦添市の上原正規西海岸開発課長(同市土地開発公社事務局長)は「日米合同委員会で決まった条件と言われれば、市の発展に必要な計画なので移設をのまざるを得なかった。米軍の要求は最小限に抑えた。企業への商業用地や国への道路用地売却時にコストとして上乗せされるが、影響は最小限に抑えたい」としている。
12月27日、新施設の建設工事入札が行われ、6700万円(落札価格)の市側の経費負担が決まった。
[ことば]
西海岸開発事業 キャンプ・キンザーの沖合18.3ヘクタールを埋め立て、商業用地などの都市機能用地(9.6ヘクタール)、道路用地(4.5ヘクタール)を整備する。市街化が進み、国道58号が慢性的な渋滞となることから産業・経済活動振興とともに基地返還後の跡利用を先導する役割が期待されている。事業費約50億円。事業主の浦添市土地開発公社の費用負担約40億円を同市が担保し、金融機関から融資を受けて事業は進められている。