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[12721] <習作>虚無(ゼロ)と孤高の浮雲(ゼロの使い魔×REBORN) お知らせ追加
Name: 雷雲◆c51a39a7 ID:19d45be4
Date: 2011/01/01 00:14
初めまして、雷雲と申します。

皆様の小説を読み自分も書いてみたくなり、好きな作品の二次作を書いてみました。

設定としては十年後の雲雀恭弥がルイズに召喚されたお話です。

どのようにするかはここでは控えさせていただきます。

このキャラはこう動くほうが自然、ここはこうしたほうがストーリー上いいなどの意見がありましたら遠慮なく書いていただければ幸いです。




[12721] プロローグ 浮雲と使い魔
Name: 雷雲◆c51a39a7 ID:19d45be4
Date: 2009/10/17 19:29
「……羨ましいな。」

ボンゴレ雲の守護者である雲雀恭弥。
彼は今ミルフィオーレファミリーのアジトに潜入し幻騎士との戦闘中だった。

(なんだ、あの目は!)

幻騎士はリングを無くした恭弥のトンファーを切り裂き、すでに打つ手は無いと思われるのに笑っていられることがわからなかった。
一気に決着をつけようと炎を全開にし恭弥に突撃していく。

(あとは、任せたよ。)

炎を纏った剣が恭弥を貫き、大きな火柱となって燃え上がる。
その瞬間裏球針体は崩れ、幻騎士は勝利を確信した。
だが、煙が晴れてそこに現れたのは

「君、誰?僕の眠りを妨げると、どうなるか知ってるかい?」

ボンゴレリングの所持者である十年前の雲雀恭弥だった。









(羨ましいな。)

その頃十年後の恭弥は何も無い空間を漂っていた。

(強力なリングに強力な敵。戦える十年前の僕が羨ましいよ。)

戦闘凶と自他共に認める恭弥が白い装置に入っていく間に思っていたことは、強者と戦える過去の自分への想いだった。

(まぁ、僕はしばらく眠らせてもらうとしようかな。)

そう思うと恭弥は目を閉じ、徐々に意識を失っていく。
そして白い装置に入っていく直前、緑色の鏡のような物に飲み込まれた。




プロローグ 浮雲と使い魔




「ミ、ミスターコルベール!!」

トリステイン魔法学院。
その日そこでは、使い魔召喚の儀式が行われていた。
魔法の成功確立ゼロの落ちこぼれ、ルイズの番となり召喚の呪文を唱えると、そこに現れたのは傷だらけで倒れた一人の青年、ボンゴレ雲の守護者たる雲雀恭弥だった。

「ミス・ヴァリエール!すぐに契約の儀式を!その後水のメイジは治癒を施してください!!」

「は、はい!」

本当なら召喚のやり直しをしたかったルイズだが、コルベールの対応につい頷いてしまいそれも出来なくなった。

(うぅ、なんでこんな平民が私の使い魔なのよ……)

そう思いながらも契約の呪文を唱え、恭弥に口づけをする。
契約が完了しルーンが刻まれたことを確認すると、すぐさま水のメイジを呼び応急処置を開始する。

(いったいこの傷はなんだ……からだのいたるところに切り傷。もしかすると盗賊にでも襲われたか?)

だとしたら命を救ったルイズに簡単に従い、いい使い魔になってくれるかもしれないと思っていた。
だが、

「うっ、ん……」

応急処置が終わったところで恭弥は目を覚ます。

「気がつきましたかね?」

コルベールは青年に話しかけ青年の安否を確認する。

「ここは?」

「ここはトリステイン魔法学院。君は彼女にここへ召喚されたんだよ。」

「召喚?」

何を言ってるか青年にはわからない。
だが、ただ一つわかったことがある。

「ずいぶん余計なことをしてくれたね。」

それは。

「スケジュールに狂いが出たらどうしてくれるの?」

そういうと恭弥は拳を構える。

「な!?」

あれだけ傷だらけで、なおかつ応急処置したばかりで体力も回復しきってないはずの恭弥が立ち上がり、それだけでなく戦いを挑むような体勢を取ることに驚くコルベール。

「ちょ、ちょっとあんた!」

あきらかに敵意を出す恭弥に向かって、ルイズは声を荒げ叫ぶ。

「ミス・ヴァリエール!君は「あんた一体何してるのよ!助けてやったっていうのにそんな態度取るなんて無礼じゃない!!」

コルベールの制止も聞かずルイズは恭弥に文句をつけ始める。

「助けてくれなんて言った覚えは無いよ。それに、僕はこうなることも予測して戦っていたんだからね。」

「な、何よ!余計なお世話だって言いたいの!?」

「そう言ってるのがわからないの?君、馬鹿じゃないの?」

「ムキーーーーー!!」

そう言った口論をしていると徐々に周囲が笑い始めた。

「やっぱりゼロのルイズだな。」

「平民を呼び出したにも関わらずそれを制御も出来ないなんて。」

周囲は笑い始めるが恭弥だけはなにやら目つきを変えた。
先ほどまでの馬鹿にしたような笑顔から一転、獲物を見つけた嬉しさを含めた笑みに。

「君たち、僕の前で群れるなんていい度胸だね。よっぽど咬み殺されたいらしいね。」

周囲には笑い声で恭弥の声は聞こえてないようだがルイズにだけは聞こえており、腕を掴み静止しようとする。

「あ、あんた、今何しようとしたのよ!」

「何って、群れてる小動物を咬み殺そうとしたんだけど。」

恭弥が異常な目をしていることから危険を感じ取ったのか、ルイズはそのまま恭弥を引っ張っていく。
だが、恭弥はその手を振り払いルイズの首を掴み笑いかける。

「ワォ、僕を引っ張って連れて行こう何ていい度胸だね。決めたよ、君から咬み殺す。」

「あ、あんた聞きたいこととかいろいろあるんじゃないの!?それに答えてあげるんだから来なさいよ!それに私もあんたに聞きたいこととかあるんだから、ここじゃ答えられないこともあるんじゃないの?訳ありみたいだし」

恭弥はこのままじゃどう転んでもこのままじゃ答えないと思ったのか首から手を離す。

「まぁ、それならいいかな?ただし、気に食わないことがあったら噛み殺すから。」

ルイズはとりあえず安心し、恭弥はそのまま歩き出す。
だが、恭弥は数歩歩いた後に足を止める。

「何してるの?君が先に行かないなら部屋という部屋を壊して場所を突き止めるけど?」

「ま、待ちなさいよ!!」

ルイズは恭弥の前を歩き部屋の前へと案内する。
そのまま自分の部屋へと入れると恭弥をその場に立たせ、自分はベッドに腰掛ける。

「まずはあんたの名前は?」

「ここは何処なの?こんなところ見たこと無いんだけど。」

青年はルイズの質問に答えるどころか逆に質問してくる。

「…あんた一体何者なの?」

「僕は並森にあるミルフィオーレファミリーの基地にいたはずなんだけど、何でこんな所にいるの?」

「……大体さっき自分が何をしようとしたのかわかってるの?」

「そもそも召喚って何?僕はそんなのに応じた覚えは無いよ。」

「だーーーーー!!」

一向に質問に答えず逆に質問してくる青年に苛立ったルイズはついに叫んだ。

「あんた一体何様なのよ!貴族に対してそんな無礼な平民初めて見たわよ!!」

「君の質問に答える義理は無いよ。けど、このままじゃ一向に僕も情報を得られないから打開策を用意してあげる。」

「……何よ。」

「僕の質問に一つ答えたら君の質問に一つ答えてあげる。どう?これで公平だと思うけど?」

恭弥は椅子に座り頬杖をつくと足を組み笑みを浮かべる。

「いいわ。それで手を打ってあげる。」

ルイズは恭弥の策略に見事引っかかった。

「じゃあまず僕から一つ目の質問をするよ。ここは何処で召喚されたって言ってたけど、何で僕が呼ばれたの?」

「ここはトリステイン魔法学院。何でって言われても知らないわよ!私だってあんたみたいな平民の使い魔じゃなくてグリフォンとかドラゴンみたいなカッコいい使い魔のほうが良かったわよ!」

何気に二つ質問されていたがルイズは気付かずに答える。

「答えになってないね。これは君からの質問は却下だ。」

「名前くらい教えなさいよ!!」

「言ったはずだよ、答えになってない答え方をされたのに答える義理は無い。使い魔って言ってたけど、それは何なの?」

「……使い魔って言うのは主人に忠誠を尽くし、主人の目となり足となる、秘薬の材料なんかを取ってくる、主人を守るっていうのが仕事よ。」

これ以上言っても無駄だと思ったのか、ルイズは質問に答える。

「ワォ、この僕を下僕として使おうなんていい度胸だね。まぁ、答えを貰ったから一つ目の質問には答えようかな。僕は雲雀恭弥。」

「ヒバリキョーヤ?変な名前の平民ね。何者なの?」

「まずはこっちの質問に答えてもらわないとね。っていうか、使い魔って御伽噺でよくある魔法使いの僕だったはずだけど、そんなの信じる君は本当に馬鹿だね。」

「な!馬鹿とは何よ!!私はこれでも由緒正しいヴァリエール家の三女で、あんたみたいな平民は足元にも及ばないほどのメイジなんだからね!!」

「………」

「何よ!その可哀想な者を見る目は!!」

恭弥はこの時、ルイズの頭がいかれてると思い同情の眼差しで見ていた。

「じゃあそのメイジの力を見せてみなよ。そうしたら信じてあげるから。」

恭弥の妥協案でルイズは気まずそうな表情になる。

「どうしたの?やっぱりメイジなんて名ばかりのただの新興宗教なわけ?」

「そ、そんなわけないじゃない!!いいわよ、見せてあげるわよ!!」

そう言うとルイズは杖を構え恭弥の横にあるランプを指した。

(お願い、成功して!)

ルイズは息を整え呪文を唱えた。

「レビテーション!」

そして魔法を発動すると大爆発を起こし、恭弥はその反動で吹き飛ばされた。

「……また失敗。どうしていつもこうなのよ~……」

ルイズが嘆いていると壁にめり込まされた恭弥は立ち上がる。

「……いい度胸だね。」

そしてその目は、完全に怒りを含めた目だった。

「え?……え?」

「僕を吹き飛ばしておいて謝りもしないなんて、本当にいい度胸だよ。これは、咬み殺してほしいって事だよね?」

「ちょっ!どうしてそうなるのよ!!」

「君の意見は聞いてないよ。」

恭弥はそう言うとルイズに殴りかかろうと構えを取るが、

(何、これ。攻撃をする気が無くなっていく?)

ルーンが主人を攻撃はさせないと影響力を発し、徐々に恭弥は大人しくなっていく。

「あ、あんた!今私に攻撃しようとしたでしょ!まぁ本来なら貴族に手を上げようとした平民は死罪になるんだけど、寛大な私は謝れば許して「気に食わないね」あげ……え?」

ルイズの言葉を遮るように言葉を発した恭弥からは、何処と無く黒いオーラのようなものが発せられてるように見える。

「ねぇ、ヒバリさん?」

あまりの怖さに敬語になりながら恭弥に話しかけるルイズ。

「この僕を縛り付けようなんて気に食わないね。ますます君を、噛み殺したくなってきたよ。」

「な、何でそうなるのよ!!」

その後、恭弥の猛攻を受けたルイズは一撃で昏倒しそのまま床に眠らされ、ある程度気の晴れた恭弥はルイズのベッドで眠りに突いた。



[12721] 第一話 浮雲と貴族
Name: 雷雲◆c51a39a7 ID:19d45be4
Date: 2009/10/17 19:30
「う、うぅ~ん……」

眩しい日差しが照りつけ、ルイズは床から起き上がる。

(あ、あれ?私なんで床に?そういえば昨日は使い魔を召喚して、それから……)

じょじょに昨夜の記憶が甦り、どんどんと怒りが増していく。

(あいつは!?あいつは何処に行ったの!?)

ルイズは慌てて周囲を見回すと、ルイズのベッドで横になり安らかに眠る恭弥を見つけた。

「……お、起きなさい!!」

そして学院の寮に大きな叫び声と大きな打撃音が聞こえてきた。




第一話 浮雲と恩返し




「で?僕を起こして何か用なの?」

「あんたがいつまでも起きないからでしょ!?使い魔の分…際…で……」

ルイズがそこまで口にしたとき、恭弥から不機嫌なオーラがあふれ出てルイズはあまりの迫力に恐怖し続きを言えなくなった。

「僕がいつ君の使い魔になるって言ったの?僕はそんなこと言った覚えが無いんだけど。」

「つ、使い魔は貴族との契約でキスしてそれを契約の証にするのよ!」

「そんなことされた覚えは無いんだけど。まさか僕が気を失っている間にしたの?」

「わ、私だって嫌だったわよ!けどコルベール先生がやれって言うんだから仕方なかったのよ!!」

恭弥はそれを聞いてさらに不機嫌になる。

「……ねぇ、そのコルベールって何処にいるの?」

「え?さぁ、少なくとも学院内にはいるはずってどこ行くのよ!!」

ルイズの言葉を聞いた瞬間、恭弥は部屋から出て行こうと扉に手をかけていた。

「何処へ行こうと僕の勝手でしょ?」

恭弥はそう言うと扉を開け部屋から出て行く。
ルイズは部屋に取り残され肩を震わせていた。

「……主人の世話もせずに出て行くなんて……あんたなんかご飯抜きだからね!!」

ルイズの叫び声がこだました寮からは、すでに恭弥はいなくなっていた。










(さて、食料の調達は後でもいいとして、まずはコルベールって男を捜さなきゃね。)

恭弥はそう思いながら歩いていると、一つの小屋を見つけた。
窓から小屋の中を覗くと、中で何かの作業をしているコルベールを発見し笑みを浮かべる。

「ワォ、意外と簡単に見つけられたね。」

恭弥はそう言うとコルベールの研究室に入っていく。

「ん?おや、君はミス・ヴァリエールの使い魔じゃないですか。どうしたんですか?」

「君に一言お礼をしなきゃと思ってね。」

恭弥は笑顔だった。
ただ、いろいろ含んだ笑みだったが。

「(お礼?あぁ、治癒を施したことかな?)気にしなくてもいいよ、あれが最善の選択でしたからね。」

「へぇ……最善……」

恭弥から怒りのオーラがあふれ出し、これにはコルベールも息を呑む。

「え、えぇっと、何か不都合でも?」

コルベールは恐怖によりあとずさるが後ろは壁、すぐに逃げられなくなる。

「君のおかげで不愉快な小動物の使い魔って事になってるんだけど、それの何処が最善?」

「え?あ!そのことですか!?で、ですが結局は君は使い魔にならなければならなかったわけですし、遅いか早いかの問題では!?」

「僕はどう転んでもあんな小動物の使い魔とやらにはならなかったよ。それを君は無理矢理契約させたんでしょ?罰として君を、咬み殺す。」

「ちょ、ちょっと待ちたま!アーーーー!!」

数分後、恭弥にボコボコにされたコルベールが床に横たわっていた。

「ねぇ、起きてるんでしょ?君もメイジってやつなら何で魔法ってものを使わなかったの?僕としては本気で戦って欲しかったんだけど。」

「わ、私は……」

コルベールはそのまま黙り込み、恭弥もこれ以上は聞かずに紙に絵を書き始める。

「ねぇ、君たちの魔法に鉄を作る技術ってある?」

「え?あるが……」

「形を変えることは?」

「で、できるが……」

恭弥の目つきが変わり、笑みを浮かべるとコルベールに絵を見せる。

「これは?」

見せた紙にはトンファーが書かれており、これを見たコルベールは首をかしげた。

「これを鉄で作るか、今度は君の頭を咬み殺すか、二つに一つだよ。」

「頭を咬み殺すってどういう意味ですか!?」

「君の冬が来ている頭に今度は氷河期が来るってことだよ。」

「やります!やらせてください!!」

コルベールはそう言うとダッシュで外に出て錬金の魔法で恭弥に言われたとおりトンファーを作り始めた。

「狩りに出るなら武器がないといけないし、好都合だったね。」

テーブルに腰掛け待っていると、コルベールが二本のトンファーをもって現れた。

「こ、これでいいかい?」

「ふ~ん。仕込みは何も無いみたいだし、駄作だけど受け取っておくよ。固定化が何かは知らないけど、まぁこれでさっきの事は無しにしてあげるよ。」

恭弥は腰にトンファーを挿すと、そのまま部屋から出て行く。

「た、助かった……」

こうして、コルベールの頭の平和は守られた。
その後、恭弥は果物や小動物を森から取ってくると校門の前で調理しようとする。
だが。

「……どうやって火を起こそう。」

火を灯すなら今まではリングがあったし、煙草なども吸わないためライターやマッチも無い。
恭弥は原始的な火の起こし方にチャレンジすることも考えたが、

「あの、どうかなさいましたか?」

その時、一人の少女に声をかけられた。









「礼は言わないよ。」

「い、いえ。私がお願いしたことですから。」

メイドの少女、シエスタが笑みを浮かべて恭弥の前を歩く。
最初は事情を聞き賄を一緒にどうかと誘ったのだが、

「群れるつもりは無いよ。」

と言い、シエスタの意見を突っぱねた。
そこでシエスタが

「それではここに賄を持ってきますので、どうか食べていただけませんか?このままでは大量に捨てることになってしまいますから、人助けだと思ってください。」

と言ったのだ。
そこで恭弥の頭の中では、食べ物を捨てる→野良の動物が繁殖する→糞などで周囲が汚れる→風紀が乱れる、と言う具合に発展し、仕方なく余り物を貰うことにしたのだった。

「ところで、君はいつまでいるの?」

恭弥に賄を持ってきたシエスタは恭弥の横に座り一緒に食べようとしていた。

「えっと、ご一緒しちゃダメですか?わざわざ取りに戻ることも無いと思うので。」

「群れるつもりは無いんだけど。それに食器はちゃんと持っていくから安心しなよ。ここに置いておいたら風紀が乱れるし。」

恭弥はシエスタと一緒に食べることを拒み、シエスタはとぼとぼと帰っていこうとする。

「君。」

シエスタが肩を落としていると、恭弥は彼女を呼び止める。

「……やっぱり、礼は言っておくことにするよ。」

お礼を言いなれてないのか、恭弥は顔を背けながらシエスタに礼を言った。

「は、はい!それでは失礼しますね。」

シエスタは上機嫌になり笑顔のまま厨房へと戻っていった。
恭弥はシエスタを見送ると、持ってきたシチューを一口すする。

「ワォ、これは美味しいね。」

恭弥の機嫌はじょじょに良くなり、シチューを食べ終えると先ほどシエスタが戻っていった方角へ歩き始めた。
中に入るとまだ大勢働いており、食器を置きに来たと一言言うとそのまま厨房から出て行く。

「ちょっとあんた!今まで何処にいたのよ!!」

厨房から出るとルイズが仁王立ちし、恭弥を睨みつけていた。

「今まで何処に行ってたかと思えば、こんなところで油売ってたのね!?これじゃあ食事抜きの罰を与えた意味無いじゃない!」

「いちいち五月蝿いね、君は。叫ぶことしか出来ない小動物に用は無いよ。」

恭弥はそう言うとルイズの横を素通りしどこかへ行こうとする。

「あ、あんた、貴族をコケにするなんていい度胸じゃない!!」

ルイズは恭弥に杖を向けるが、恭弥はいち早くそれを察知し振り向くと同時にトンファーを一本抜き、ルイズの杖を吹き飛ばす。

「で?この後唯一の牙を失った草食動物はどうするの?」

「あ……あ……」

ルイズは恭弥の笑みに恐怖し、腰を抜かして地べたに座り込んだ。
すると恭弥は興味を無くしたかのようにトンファーをしまうとそのまま歩いていってしまう。

「い、いつか見てなさいよ!!」

その場からいなくなった恭弥に向かってルイズは遠吠えを浴びせた。










「…………」

この学院がしばらくの間拠点になりそうだから少し詮索するかと思い歩いていった先。
そこには学院の生徒達が楽しく会話するためのテラスがあり、多くの生徒がいるのだ。
つまりここでは

「僕の前で群れるなんて、いい度胸だね。」

基本的に群れる事を嫌う恭弥からすれば、ここは一種の狩場となってしまうのだ。
恭弥は早速群れた生徒達を咬み殺そうとしたその時、

「申し訳ありませんでした!」

先ほど賄を持ってきたシエスタの謝る声が聞こえてきた。
何があったか気になりそちらに目を向けると、一人の金髪の貴族へ向かって頭を下げるシエスタの姿があった。

「ダメだ。君の軽率な行動のせいで、二人のレディが傷ついたのだぞ。」

「まぁまぁ、落ち着けよギーシュ。」

「そうそう、二股してたお前が悪いんだから。」

シエスタを罵倒するギーシュと、それをなだめようとする二人の貴族。

「うるさい!彼女が軽率な行動をしなければ、二人もレディが泣くことは無かったんだ!君はこの責任をどう取るのかね?」

ギーシュはシエスタを見下し、明らかに許す気は無いのに責任を取れという。
恭弥は話を聞きある程度の事情を察するとシエスタとギーシュの間に立つ。

「なんだね?君は。」

「二股かけてそれがばれた腹いせに草食動物を脅す、哀れな微生物を咬み殺しに来ただけだよ。」

恭弥はそう言うとギーシュを思い切り殴り飛ばす。

「がっ!」

ギーシュはそのまま数メートルほど吹き飛ばされ殴られた頬を押さえる。

「キョ、キョーヤさん?何てことをするんですか!相手は貴族なんですよ!?平民が貴族に楯突くなんて!!」

シエスタは恭弥を心配してか、物凄い剣幕で恭弥に詰め寄る。

「貴族?僕は薄汚い微生物を咬み殺しただけだよ?あんなのが貴族なら、僕たちマフィアは王族か神様だよ。」

「マフィア?と、とにかく謝ってください!今ならまだ許してくれるかも「許すつもりは無いよ。」」

シエスタの言葉を遮りギーシュは立ち上がり、恭弥を睨みつける。

「どうやら君は、貴族を本気で怒らせたようだね。僕は君に決闘を申し込む!!」

ギーシュがそう言った瞬間、周囲がざわざわと騒ぎ始める。

「ワォ、微生物が僕に牙を立てようとするなんて、いい度胸だね。それじゃあ君を、咬み殺すとしようか?」

恭弥はトンファーを二本とも腰から抜くと、目の前で構える。

「まぁ待ちたまえ。」

ギーシュは手を出し恭弥を止める。

「ここは食事をする場所で、そんなところを薄汚い平民の血で汚すわけにはいかないだろ?」

「ワォ、本気で僕に勝とうとしてるの?面白い寝言だね。さっさと死んで僕に勝てるような肉食動物に生まれ変わったら?そしたらまた咬み殺してあげるから。」

「本当に貴族を怒らせるのが上手いやつだよ。ヴェストリの広場で待つ!逃げるなら今のうちだよ。」

ギーシュはそう言うと先に一人でスタスタと歩いていく。
恭弥もそれについて行こうとしたところを、シエスタが服の裾をつかみ止めた。

「お願いですから行かないでください。助けてくれたことは感謝してますが、このままではキョーヤさんが!」

「僕が死ぬとか思ってるならお門違いだよ。僕はあんな微生物に負ける気はしないからね。」

「ですが……」

シエスタがうつむくと、恭弥はシエスタの手を振り払う。

「ねぇ、ヴェストリの広場って何処?」

「あぁ、あっちだよ。」

近くにいた貴族に広場の場所を聞くと、指差された場所へ向かって歩いていった。



[12721] 第二話 浮雲と決闘
Name: 雷雲◆c51a39a7 ID:19d45be4
Date: 2009/10/18 18:20
「ふぅ、やっと立てるようになったわ。」

恭弥に脅されてしばらく。
ルイズはようやく自力で立ち上がる事が出来た。

「それもこれもあいつのせいだわ!まったく、あいつが来てからろくな目にあってないわね。」

ルイズは恭弥を追いかけようと恭弥が通っただろう道を歩いていくと、大勢の人だかりが見えた。

「まったく、ここにあいつがいなくて良かったわ。ここにあいつがいたら確実に咬み殺すとか言って喧嘩してだでしょうし。でもこの人だかりは何かしら。」

ルイズが好奇心を出して近づいていくと、

「諸君、決闘だ!!」

聞きなれた声が聞こえてきた。

「ギーシュ?まったく、決闘は禁止されてるって言うのに、何をしてるのかしら。でも、誰が相手なのか気になるわね。」

ルイズは興味本位で対戦相手が見たくなり人だかりを掻き分けて前へと進んでいく。

「ギーシュと決闘ってことはおそらく女がらみなんでしょうけど、決闘相手は誰かしら。まぁ平民とかだったら命知らずと笑ってあげ…る……わ?」

ルイズが先頭にたどり着くとギーシュと対峙している人物を見て言葉が出なくなった。

「あのバカ!メイジの実力を知らないわけじゃないのに何してるのよ!!」

その人物とは、自分が召喚した雲雀恭弥その人だったのだから。




第二話 浮雲と決闘




「ねぇ、タバサ。この決闘どっちが勝つか賭けない?」

「……ギーシュ。」

決闘をしようとしている広場の近くにある塔に寄りかかったルイズのクラスメート、キュルケとタバサ。
二人、と言うかキュルケ一人が面白半分で見学に行こうとタバサを引っ張ってきたのだ。

「なんだ、それじゃあ賭けにならないじゃない。」

キュルケはあの平民がどう戦うか、どの位もつかに興味があった。

「まぁ、平民が貴族に勝てるわけ無いわね。ってあら?ルイズ?」

キュルケが見た先ではルイズが平民に突っかかっていた。

「あぁ、そういえば彼ってルイズが召喚した使い魔だっけ?」

キュルケがそう言った瞬間、ルイズは首根っこをつかまれ投げ捨てられた。
一瞬静寂が辺りを包み、次の瞬間周囲はルイズを爆笑する笑い声で包まれた。

「ぷっ!あははは!!自分の使い魔にポイ捨てされるなんて、さすがゼロのルイズね!!」

ひとしきり笑うと、ついに決闘が始まった。

「さて、使い魔さんのお手並みは意見といきましょうか。」









その頃学院長室では、コルベールが恭弥に刻まれたルーンを調べたところ、伝説の使い魔、ガンダールヴにたどり着いたため学院長に報告をしに来ていた。

「いかがいたしましょうか。」

「ふむ……」

これに対する対処を考えていたとき、一人の教師がノックもせずに入ってきた。

「学院長!生徒達が決闘をしているようで、眠りの鐘の使用許可が取りたいと!」

「なんじゃ、たかだか子供の喧嘩に秘宝を使わせるわけにいかんじゃろ。決闘をしとるのはだれじゃ?」

「一人はギーシュ・ド・グラモン。」

学院長であるオスマンは少し考えると、すぐに誰かを思い出した。

「なんじゃ、グラモン家のバカ息子か。もう一人は誰じゃ?」

あのクラスなら大した被害は無いだろうともう一人を聞いてくる。

「ミス・ヴァリエールの召喚した使い魔です。」

「「っ!?」」

伝説の使い魔、ガンダールヴの可能性がある使い魔と知り、オスマンとコルベールは驚いた。

「いかがいたしましょう。」

「放っておけ。たかが子供の喧嘩でそこまでの被害は出んじゃろ。」

オスマンはそう言うと教師が出て行ったのを見計らい遠見の鏡で決闘の観察を始めた。










「ちょっとあんた!何してるのよ!貴族と決闘なんて、あんた死ぬわよ!?」

恭弥とギーシュが対峙していると、恭弥の前にルイズが立ち塞がり怒鳴り散らす。

「ギーシュ!あんたも、決闘は禁止されてるじゃない!」

「あぁ、ルイズの使い魔の平民だったか。でも、彼は僕を怒らせたんだ。その償いとして痛い目を見てもらうよ。」

ギーシュはそう言うとバラの造花を恭弥に向ける。

「何で僕が痛い目を見るのさ。咬み殺されるのは君でしょ?」

「ちょっ!あんたも何言ってるのよ!今すぐに謝りなさい!これは主人としての命令きゃっ!」

恭弥に命令しようとしたルイズは首根っこをつかまれそのまま投げ捨てられる。

「僕に命令するなんていい度胸だね。僕は君の使い魔になった覚えはないよ。」

その瞬間、周囲を大爆笑が包み込む。

「さすがゼロのルイズだ!」

「自分の使い魔に投げ捨てられるなんて!!」

これにルイズは真っ赤になり、ギーシュも笑いを堪えている。

「ず、ずいぶんと笑わせてくれたねルイズ。けど安心しなよ、すぐに新しい使い魔を呼び出せるようにしてあげるよ!」

ギーシュがそう言うと造花の杖を振るい、花びらが落ちたところから銅像が現れる。

「僕はメイジだからね。魔法を使って戦うが文句は無いね。」

「構わないよ。せいぜい足掻いて楽しませてくれなきゃ困るからね。」

恭弥もそう言うと上着を脱ぎ捨て、トンファーを構え戦闘体勢に入る。

「すぐに減らず口を叩けなくしてやるさ。僕の名はギーシュ、二つ名は青銅。君の相手はこの青銅のゴーレムが相手をする。行け、ワルキューレ!!」

ギーシュの命令でワルキューレが突撃し殴りかかる。










(どうしよう、キョーヤさん!)

我に返ったシエスタは急いでヴェストリの広場へと向かっていた。

(貴族と戦うなんて、正気の沙汰じゃありません。もしも……もしも……)

シエスタは嫌な想像しか出来なかった。
彼女の脳裏に浮かぶのは惨殺される恭弥の姿。
その想像をかき消すかのように頭を振りシエスタは走り続ける。

(キョーヤさん、お願いですから、無事でいてください!)

シエスタが広場に到着すると、目の前で恭弥にワルキューレが殴りかかっていた。

「っ!!」

シエスタは条件反射で目を閉じる。
鈍い打撃音が聞こえた後、周囲からどよめきが聞こえた。
何事だろうと目を開けると、そこには胸部から上が砕けたワルキューレが倒れていた。










「ねぇ、こんなものなの?」

ワルキューレを一撃で破壊した恭弥は一歩、また一歩と不敵な笑みを浮かべてギーシュに近づいていく。

「う、うわあああああ!!」

あまりの恐怖に錯乱したギーシュは自分の出せる限りのワルキューレを出した。

「ワォ、その位の数は出せるんだね。」

恭弥は魔法に対し素直に感心した。
しかし、ギーシュはこれに恭弥が恐怖したと思い笑みを浮かべる。

「は、はは!さっきはまぐれで倒したみたいだけど、これだけの数を相手に勝てるかな!?行け、ワルキューレたち!」

勝利を確信したギーシュはワルキューレたちを突撃させる。
だが、ギーシュには誤算があった。

「いい度胸だね。」

雲雀恭弥という男は、

「僕の前で群れるなんて。」

相手が群れるか強敵なほど、

「咬み殺す。」

力が増す男だと言うことを、知らなかったということだ。
勝負は一瞬だった。
先頭にいたワルキューレの頭を砕き、二体目は斜めに砕き、三体目以降は見るも無残なほどに粉々に砕け、残るは一体だけとなった。

「あ……あ……」

恐怖がギーシュの頭を支配し、足が震えて動かなくなる。

「さて、残る一体を砕いて君を咬み殺すとしよう。」

恭弥は笑みを浮かべ一歩ずつギーシュに近づく。

(くそ!この僕が平民如きに負けるなんて!あいつの武器が異常すぎるんだ!あいつに武器さえなければ!!ん?武器?そうだ!!)

ギーシュは再び笑い始めると、杖を恭弥に向け、

「錬金!!」

魔法を唱えた。

「ははは!これで君の武器は使い物にならなくなった!君の敗北は決定したんだ!」

恭弥はそう言われトンファーを見ると、確かにボロボロの状態になり一撃でもまともに受ければ粉々になりそうな状態だった。

「この一撃で武器を砕いてやる!ワルキューレ!!」

ギーシュは再びワルキューレを突撃させ恭弥の武器破壊を狙う。
だが、ボンゴレ最強の守護者の前には、そんな単純な攻撃は無意味だった。
アッサリと攻撃を回避すると、トンファーの一本を犠牲にしワルキューレの胸部を砕き最後の一体も戦闘不能にした。

「君、バカ?一撃でも受けたら壊れるのに受けるわけ無いでしょ?」

「ぅ……ぁ……」

恭弥は残った一本のトンファーを構え近づいていくと、ギーシュはしゃがみ込み戦意は完全に消失している。

「君、今から僕の言うことを聞いたら見逃してあげてもいいよ。」

「ほ、本当かい!?聞く!何でも聞く!!」

ギーシュは希望が出来たとばかりに喜び、恭弥の条件を聞こうとする。

「一つ、あのメイドに謝ること。二つ、二度と僕の前で群れないこと。もし群れてるのを見つけたら、咬み殺すから。」

恭弥はトンファーを構えて威嚇するとギーシュは近くにいたシエスタに土下座して謝り、すぐに逃げていった。
そして次の瞬間、周囲から大歓声が沸きあがる。

「すげぇ!あの平民が勝ったぞ!?」

「なんだよ!あいつ何者だ!?」

恭弥は周囲の事など知らん顔し、そのまま立ち去ろうとする。
すると、シエスタが走って近づいてきた。

「キョーヤさん、お怪我はありませんか?」

シエスタは恭弥を心配しペタペタと体を触り始める。
しかし、恭弥は鬱陶しいといわんばかりに振りほどく。

「怪我があるように見えるなら、医者に目の検査を依頼したほうがいいよ。」

そう言うと脱ぎ捨てた上着を肩にかけ、そのまま歩いていく。

「あの!」

シエスタはお礼を言おうと恭弥を呼び止めようとしたが、

「借りは返したよ。」

そう一言だけ言うとそのままどこかへと歩いていった。










「うわぁ、凄いわねぇ。勝っちゃったわよあの平民。」

「……予想外。」

観戦していたキュルケとタバサも、恭弥の勝利に驚いていた。

「これがあのゼロのルイズが召喚した使い魔なんて信じられないわね。でも、なかなかかっこいいじゃない、彼。」

キュルケは妖艶な笑みを浮かべると、タバサはまたかとため息をつきそのまま立ち去っていく。










「……勝っちゃいましたね。」

「………」

遠見の鏡で一部始終を見ていたオスマンは魔法を解除すると自分の椅子に座る。

「これは一大事ですぞ!すぐに王室に報告しなければ!!」

「まぁ待つんじゃ。一つ聞くが彼のルーンが一度たりとも反応したかの?」

言われてみれば恭弥の左手にあったルーンは反応したようには見えなかった。
それに、コルベールにあれを作らせたということは、元々使っていた武器の可能性があり使いこなせるのは当たり前のように思えた。

「可能性の段階で話すべきではない。もし彼がそうじゃとしても、王室に報告すれば戦争の火種になりかねん。このことは一切を他言無用とする。」

「……わかりました。」

コルベールはそう言うと部屋を出て行く。

「ふぅ、厄介な事にならねばよいがのぅ。」

オスマンは髭を撫でながら今後について不安が隠しきれなかった。










一方その頃恭弥は

「………」

トンファーの修理のため、コルベールの研究室の屋根で横になり帰りを待っていた。



[12721] 第三話 浮雲と微熱
Name: 雷雲◆c51a39a7 ID:19d45be4
Date: 2009/10/18 18:21
決闘の後、恭弥はコルベールにトンファーを修復させると寝床を探してうろついていた。

(今日は何処で寝ようかな……ん?)

その時、キュルケの使い魔であるフレイムが恭弥の前に現れた。
恭弥は頭を撫でると、フレイムは喉をグルグル鳴らせて気持ち良さそうな顔をした。

「君、誰のペット?」

フレイムに尋ねるとフレイムは恭弥の裾を銜え引っ張る。

「ついて来いって事?」

フレイムは軽く頷くと恭弥の前を歩いていく。
だが、それに恭弥はついていかない。
再びフレイムが恭弥の足を引っ張るが恭弥は行こうとせずかたくなに動かなかった。

「僕は群れるのが嫌いなんだ。誰かと行動を共にする気は無いよ。」

恭弥はそう言うとそのままどこかに去ろうとしたとき、体が急に浮かび上がった。

「っ!?」

何があってもいいようにとトンファーを構えると、窓から寮の一室に入っていった。




第三話 浮雲と微熱




「……ここは?」

恭弥が入れられた部屋は真っ暗で月明かり以外の光源はなく、先ほどまで月明かりで明るかった場所にいた恭弥の目はまだ慣れず何も見えない。

「そんなに警戒なさらないで。」

突然聞こえてきた声に恭弥は振り返ると同時にトンファーを振りかぶり、声の聞こえた方向へと振り下ろす。

「きゃぁ!」

だが、目で見えない状態の為が寸前で避けられたらしくベッドが破壊されたくらいの感触しかなかった。

「ちょっと、何するのよ!危なかったじゃない!!」

部屋に明かりが点くとそこにいたのは褐色の肌に赤い髪の少女、キュルケ・フォン・ツェルプストーだったのだが、恭弥はかかわりの無かった少女の事を知る由も無かった。

「まぁ、突然ですし警戒されるのは当然ですわね。」

「君かい?僕をここに引っ張ってきたのは。」

恭弥はトンファーを一時的に降ろすとキュルケは警戒を解いたと思い安堵した。

「えぇ、あなたをフレイムに連れてくるように言ったんだけど、どう見ても連れて来れない状態だから私の魔法で連れ込んだ「いい度胸だね。」のよって、え?」

キュルケがペラペラと説明すると、恭弥は再びトンファーを構える。

「この僕を一瞬でも束縛するなんてね。気に入ったよ。」

「そ、そう、お気に召していただいて光栄ですわ……」

キュルケは嫌な予感がして後ずさる。
しかし、すぐに壁に当たり逃げ場を失ってしまった。

「君を、咬み殺したくなったよ。」

「ちょ、ちょっと!?」

恭弥はトンファーを振りかぶりキュルケに攻撃を始める。

「ま、待って!話を聞いて!!」

「戦いながらでも話せるでしょ?言い訳なら咬み殺しながら聞いてあげるよ。」

「どんな戦闘凶よあなたは!!」

「それに、寮の中とは言え学院内でその格好は風紀違反だ。」

「単なるパジャマなのに!?」

恭弥が再び殴りかかろうとしたとき、目の前を突風が吹き荒れる。
恭弥は戦闘により培われた直感で回避するも、前髪を少しだけ切られてしまった。

「キュルケ!大丈夫か!?」

「スティックス!?」

そこにいたのは窓に立ち上がったキュルケの彼氏?のスティックスだった。

「待ち合わせの時間に来ないと思ってたら、野蛮な平民に襲われていたんだね。待っていたまえ、この僕が制裁を!」

そこまで言うと杖を構えるが、

「がっ!?」

恭弥の一撃で窓から落ちていった。

「本来ならここは彼女の自室で、君は不法侵入をしたんだから咬み殺すんだけど、今日はこの女を咬み殺すからこれで勘弁してあげる。」

「で、できれば彼のほうに行ってほしかったわ。って違う!キョーヤ、話を聞いて!!」

ここでキュルケは本来の目的を思い出し、恭弥に語りかけた。

「名を呼ぶことを許した覚えは無いよ。よほど咬み殺されたいらしいね。」

「だから違うってば!!私、あなたに惚れたのよ!!」

キュルケがそう言うと、恭弥は驚いた表情になる。
だが、すぐに含み笑いをし始め、

「相手の動揺を誘おう何て、いい度胸だね。ますます咬み殺したくなったよ。」

そう言うと再び攻撃を仕掛ける。

「だから違うの!私の二つ名は微熱、松明みたいに燃え上がりやすいのよ。あなたがギーシュと戦ってるのを見て、あなたに恋をしてしまったのよ!」

キュルケも軍人の家系なだけの事はあり、恭弥の加減した攻撃を避けながらも自分の話をし始めた。

「余裕だね。それじゃあもう少し速度を上げようか?」

「だから話を聞いてってば!!」

恭弥が攻撃の速度を上げようとしたとき、

「キュルケ!大丈夫か!?今僕が助けはぶっ!!」

またも不法侵入してきた男を恭弥は一瞬で殴り飛ばした。

「今のは?」

「た、単なるお友達。」

苦笑いしながらも恭弥からの攻撃が止んだことに安堵するキュルケ。
この隙に口説き落とそうと近づくと、

「「「キュルケ!!」」」

再び三人の不法侵入者が現れ恭弥によって撃退。
三階から地面へと叩き落された。

「ずいぶんのこの学院の風紀は乱れてるね。気が変わった。彼らからか咬み殺さないとね。」

恭弥はそう言うと扉の前に立ちドアノブに手をかける。
だが、いくら開けようとしても扉は開かず、段々とイライラしてきた。

「無駄よ。その扉はロックの魔法で開かないようになってるから、私じゃないと開けられないわ。さぁ、私と一緒に情熱の夜を過ごし」

キュルケがそこまで言うと、恭弥は思い切りトンファーを振り上げた。










「何よ何よ!!あいつったら、主人である私を放ってどこかに行くなんて!!」

恭弥とギーシュの決闘の後、投げ捨てられたまま放置されたルイズは恭弥を探し学院中を歩き回っていた。

「何処行ったのかしら。あいつには一度説教してやらないと気がすまないわ。でもまぁ、そこそこ強いみたいだし、あいつが頭を下げるなら使い魔として使ってやらない事もないわね。」

何気にまだ自分が優位だと思っているのか、恭弥を見下した態度を取り自分に恭弥が頭を下げる姿を想像して笑っていた。

「それにしてもあいつ本当に何処に行ったのよ。手がかりも無いんじゃ探しようが無いじゃない。」

もしかしたら部屋に戻ってるかも。
そう思ったルイズは部屋を探すため寮の中に入ると、どこからか恭弥の声が聞こえてきた。
それも、ルイズの宿敵であるキュルケの部屋から。

「あ、あの犬!よりによってキュルケの部屋にいるなんて!!」

ルイズは頭に血を上らせ、キュルケの部屋に入ろうとドアノブに手を伸ばした瞬間。

「きゃあ!!」

突然ドアが破壊されルイズは瓦礫の下敷きになった。

「僕に係わるのは止めたほうが身のためだよ。それと、次に富貴に違反する格好をしていたら咬み殺すから。」

恭弥はそう言うと扉の残骸を踏みつけ寮から出て行く。
扉の下敷きになっていたルイズも一緒に踏みつけて。









「あれ?キョーヤさん。」

恭弥が外を歩いていると、洗濯をしていたシエスタが恭弥に気付き呼び止めた。

「あぁ、君か。何?」

「あ、いえ、用ってほどじゃないですけど、まだちゃんとお礼を言ってなかったなって。」

「お礼?」

「はい。私を助けてくれたことに対してのお礼です。危うく貴族の方に殺されそうなところを助けていただいたんですから。」

シエスタは満面の笑みで頭を下げると、恭弥はそのまま歩き始めた。

「あ、あの……」

「僕は食事の借りを返しただけだよ。」

何か失礼なことをしたかと心配したシエスタだったが、それが杞憂に終わったと安心する。

「あの、ですが食事を与えたのと命を助けていただいたのは釣り合いが取れませんから、その……今度、私の故郷の料理をお持ちしますね。」

「別に、興味が無いよ。」

恭弥はそのまま歩いていこうとしたが、

「そうですか、美味しいんですけど、ハンバーグ。」

シエスタの一言でピタリと足を止めた。
イントネーションは違えど恭弥に聞こえてきたのはハンバーグという恭弥の好物の名前。

「……そのうち招待されてもいいよ。」

その誘惑に勝てなかった恭弥はコロリと先ほど言った言葉を撤回した。

「じゃあ今から作りますので、厨房までついてきてください。」

シエスタはそれに嬉しくなったのか、洗濯物を入れた籠を持ち上げ笑みを浮かべて恭弥を見ると恭弥の前を歩き厨房へと向かい、恭弥もそれについて歩いていく。
少し歩くと籠を床に置き、早速調理を開始するシエスタ。

「すみません、本当は料理長のマルトーさんがいれば早いんですけど、私一人なのでしばらくお待ちいただく形になってしまいますが。」

「構わないよ。それに、僕は群れてる奴は嫌いだから。」

「あ、あはは、そうでしたね。」

シエスタは皆がいなくて良かったと思いながら、テキパキと手際よく調理し、三十分ほどでハンバーグが出来上がった。

「すみません、時間が無くてこれくらいしか。」

シエスタは申し訳なさそうに頭を下げると、恭弥はハンバーグを一口サイズに切って口に運ぶ。

「い、いかがですか?」

シエスタはドキドキしながら恭弥に感想を尋ねる。

「美味しいよ。」

恭弥の表情は変わらないが、何処となく嬉しそうな雰囲気を出しているのでシエスタも嬉しくなり微笑んだ。

「お?シエスタじゃねぇか。何してるんだ?」

そこに、この厨房に勤める料理長のマルトーが現れた。

「今キョーヤさんに私の故郷の料理を食べさせていたんですよ。マルトーさんはどうしてここに?」

「俺は明日の仕込みで忘れてたことがあってな。ところで、お前さんがキョーヤかい?」

マルトーは厨房に来た理由を説明すると、恭弥に向かって笑いかけた。

「そうだけど、君は誰?」

「俺はマルトー、この厨房の料理長をしてるんだ。まぁ、一つ宜しく頼む。」

マルトーは笑顔で恭弥と握手しようと手を差し出すが、恭弥はその手を握ることは無かった。

「僕は群れるのが嫌いでね。その手を握る気は無いよ。」

「ガハハ!シエスタに聞いてた通りだな。一人を好み束縛を嫌う一匹狼。さすがだな、我らが雲よ。」

「………」

恭弥の背中をバシバシ叩くも恭弥はそれを無視し、ハンバーグを食べ終えると洗い場に食器を置いて出て行く。

「あ、キョーヤさん。」

恭弥はシエスタが呼び止めたので振り返ると、

「また作ってよ。食べてあげるから。」

そう言うと恭弥は今度こそ厨房から出て行きどこかへと歩いていった。

「一人でどこかに行って誰とも一緒にいない孤高の浮雲か。誰が言い始めたかしらねぇが、キッチリ的を射てるじゃねぇか。」

マルトーは恭弥を見送ると笑って恭弥の二つ名を称えた。

「でも、本当に何処へ行くんでしょう。あの先には広場しかないはずなんですが。」

「そりゃぁ………どこだろうな。」

恭弥はその日広場にある木の下で寝ている所を、次の日シエスタに発見された。










その日の朝、恭弥はシエスタに起こされポカポカと暖かい日向で休んでいると、目の前にルイズが現れた。

「あんたね~、いい加減にしなさいよ!!昨日私を踏みつけておいて謝りもしないの!?」

「昨日?」

投げ捨てたのは覚えているのだが踏みつけた記憶は無く、何のことかはわからず首をかしげる。

「ふぅ、まぁいいわ。あんた、今日は街に出るわよ。」

「何で?」

「何でって、あんたの武器を買わなきゃいけないでしょ?ギーシュとの決闘で壊れちゃったんだから。」

恭弥からすれば何で草食動物と群れなきゃいけないの?という意味だったのだが、ルイズはどうして街に行くのかと聞かれたように感じたのだろう。
そこで恭弥は昨日コルベールに修理させたトンファーをルイズに見せる。

「な、何で!?」

ルイズとしてはここで恭弥に武器を買い、恩を着せることで自分に忠実な使い魔になってもらおうと考えたのだが、その作戦は失敗に終わったのだった。

「おぅ、我らが雲よ。」

そこにマルトーが食事を持って現れた。
恭弥にそれを差し出すと、いらないと突っ撥ねるがマルトーに無理矢理持たされ、ポイ捨てなんか出来ない恭弥はそのまま食べることになった。

「よし、食べたな。ちょっと頼みを聞いて欲しいんだが。」

「勝手に借りを作らせたって訳?よっぽど咬み殺されたいみたいだね。」

恭弥は腰のトンファーに手を当ていつでも構えることが出来る体勢になったが、マルトーはそのまま話を続けた。

「実は今からシエスタが街に材料を買いに行くんだが、なにぶん量が多くて一人じゃ無理なんだ。んで、最近スリとかも多いし、お前さんに護衛のついでに荷物持ちを頼みたかったんだが。」

「僕は誰かと群れるつもりは無い。そう言ったよね?」

恭弥はトンファーを構えて威嚇するも、マルトーは笑うのを止めない。

「そうか、残念だ。ついでだからシエスタの故郷の料理の材料も買ってきてほしかったんだが。」

マルトーは振り向くとそのまま立ち去ろうとする。

「……待ちなよ。誰も行かないなんて言ってないよ。」

僕はスリを討伐するために行くんだ。
ハンバーグに釣られたわけじゃない。
そう自分に言い聞かせて恭弥は町へ行くことにする。

「……なんで上手くいかないのよ。」

ルイズはルイズで別な意味でうなだれていた。



[12721] 第四話 浮雲と買い物
Name: 雷雲◆c51a39a7 ID:19d45be4
Date: 2009/10/19 18:53
「何で君まで来るの?」

恭弥は不機嫌そうに馬車に乗り込むルイズに問いただす。

「主人と使い魔は一緒にいなきゃならないのよ!それくらい当然でしょ!?」

「僕は君の使い魔になったつもりはないよ。いい加減にしないと咬み殺すよ。」

一触即発の状態になったルイズと恭弥の間にシエスタが割って入る。

「まぁまぁ、お二人とも。キョーヤさんもせっかくミス・ヴァリエールが武器を買ってくださると仰ってるんですから、お言葉に甘えたらいかがですか?」

(ナイスメイド!!)

ルイズはシエスタと仲よさげに離す恭弥を見てから、シエスタがいれば恭弥を手なずけられるのではと思っていたようで、これなら恭弥に恩を売れると思った。
だが、

「武器なんか要らないよ。これで十分だから。」

一瞬で拒否した恭弥はトンファーを二人に見せるように持つと馬に跨った。

「まったく、馬しか移動手段が無いなんてね。」

本来なら跳ね馬を思い出すので出来れば馬には乗りたくなかった恭弥なのだが、これしかないというので仕方なく乗ることにし、ルイズとシエスタは馬車に乗り町まで行くことにする。
それを見ていた一人の女性に気付かずに。




第四話 浮雲と買い物




四時間ほど馬を走らせ街に着いた恭弥たちは、街一番の大通りを歩いていたのだが、

「……何これ。」

あまりの狭さに恭弥も唖然としてしまった。
それもそのはず、道幅は五メートル程しかなく、人が三人ほど並んで歩いただけですれ違うのも困難になるほどだ。
これが街一番の大通りというのだから恭弥の反応も当然のように思える。

「気をつけなさいよ。スリとかもいるんだからって……あんた、何してるの?」

後ろを振り向いてシエスタと恭弥に忠告しようとしたルイズが見たものは、一人の男性を咬み殺そうとしている恭弥だった。

「見てわからないの?こいつを咬み殺そうとしてるんだよ。」

見たまんまの事を答える恭弥に頭を抑えたルイズは慌てて事情を聞こうと近づくと、周りから大勢の男が現れ恭弥たちを取り囲んだ。

「てめぇ、俺達の仲間に何してんだ?」

ガラの悪い男達は恭弥を睨みながら脅すが、

「群れてるんだ。なら、咬み殺す。」

恭弥に脅しは効かなかった。
結果、男達はボコボコにされ、問いただすとこの辺に集まるスリの集団だということがわかった。

「通報して欲しくなかったら、今まで盗んだ金品を渡しなよ。」

恭弥の一言でスリたちは金品を恭弥に明け渡し、結果さらにボコボコにされてその場は終わった。

「な、何でそこまでやるのよ!あれは少しやりすぎよ!」

恭弥の行動にルイズは怒り、恭弥に問いただす。

「僕は通報はしないと言ったけど、咬み殺さないとは言ってないよ。」

まるで詐欺師のような言い方をする恭弥に、シエスタとルイズは恐怖を覚えたという。

「そ、それよりも早く用事を済ませませんか?ほら、あんまり遅くなると心配されますし。」

苦笑いをしながら何とか雰囲気を変えようとするシエスタに、ルイズも頷き最初は武器屋へと向かった。










武器屋に到着したルイズは恭弥の持つトンファーを探すが一向に見当たらない。
それもそのはず、恭弥の持つような武器はこの世界には無く、武器屋なんかに置いてるはずも無い。

「仕方ないわね。ねぇ主人、彼に見合うような適当な剣を見繕ってくれないかしら。」

「少々お待ちを。(けけけ、こりゃカモだな。せいぜい高く売りつけるとしよう)」

そう言うと主人は奥から豪華な剣を一振り持ってくるが、恭弥は全く興味がなさそうに壁に寄りかかっているだけだった。

「これはゲルマニアで有名なシュペー興が作った剣でしてね、そりゃもう凄い剣ですよ。」

「いい剣ね。お幾ら?」

「新金貨なら三千でさ。」

この金額に驚いたルイズが文句をつけていると、恭弥が急に剣に向かってトンファーを振り下ろした。

「「「あっ!!」」」

三人が見たものはカウンターと一緒に粉々になった名剣だった。

「へぇ、その有名な剣がたったの一撃で破壊されるなんて、ずいぶんと安物だったのか、そのシュペーとやらがインチキなのか。どちらにしろ、風紀を乱すなら咬み殺した方がいいね。」

恭弥の目に脅えを感じた店主は、いち早く土下座をして許しを乞うた。

『ぶはは!ざまぁねぇなおい。自慢の名剣も鉄の棒に砕かれちゃお終いだな。』

その時、何処からとも無く聞こえてきた声の方を見ると、ジャンク品の樽の中で喋っている剣を一振り見つけた。

「うるせぇデル公!黙ってねぇと貴族様に頼んで溶かしてもらうぞ!」

『上等だ!こっちもいい加減この世に飽き飽きしてんだ。さっさとやって貰おうじゃねぇか!』

デル公と呼ばれた剣と店主が言い合いをしているうちに、恭弥が喋る剣を持ち上げ、いろいろと観察を始める。

『あ?なんだ?お前さん使い手だったのか?こりゃいいや、久しぶりに俺の主人が見つかったな。』

「使い手?何それ。」

『あ~、なんだっけな。忘れた。』

後ろで聞いてたルイズたちはその一言にガクッと力が抜けた。

『まぁいいじゃねぇか。俺の名はデルフリンガー、そんなことよりお前さん俺を買え。俺は役にってあれ?相棒?何で俺を樽に戻すんだ?相棒?相棒!?』

恭弥はデルフを樽に戻すとそのまま出て行こうとする。

『ちょ、相棒!?お前さんガンダールヴだろ!?何で俺を買わねぇんだ!?』

「僕は剣士じゃないからね。そういうのは、山本武にでも頼みなよ。」

『いやヤマモトタケシって誰だよ!!ちょ、頼むから買って!相棒!相棒!!』

恭弥はデルフの声を無視してそのまま店を出る。

『うぅ、そりゃねぇぜ相棒……』

デルフはそのまま瞳も無いのに泣き始めた。
その時、新たに二人の客が店に入ってきて、デルフを購入し出て行くのだった。










「これで私の買い物は終わりです。キョーヤさん、ミス・ヴァリエール。ありがとうございます。」

シエスタが買い物を終えると恭弥とルイズに向かって頭を下げ、馬車に荷物を積み込んだ。

「はぁ、結局私の計画はズタボロだったわね。」

「最初から無理な計画を立ててるからでしょ?いい加減に僕に付きまとうの止めないと咬み殺すよ。」

「何ですって!?」

ここで再びルイズと恭弥が喧嘩を始めそうになったところをシエスタが慌てて止める。

「ところで、私はもう帰りますけど、お二人は?」

「私も帰るわよ。今日は無駄に歩き回った気がするし。」

ルイズはそう言うと馬車に乗り込み寝息を立て始めた。

「よっぽど疲れてたんですね。キョーヤさんはどうしますか?」

「僕はもう少し見て回るよ。何かいいものが手に入るかもしれないしね。」

恭弥はそう言うと街に向かって歩いていく。
しばらくぶらぶらと歩き回り、服屋で着物を発見し見繕ったりなどいろいろ歩き回り日も暮れてきた。
しばらく歩いていると、宝石屋にある一つの指輪が目に止まった。

「ねぇ、これ何?」

恭弥はすぐさま店員に話しかけ、指輪について聞いてみる。

「あぁ、それかい?なんかよくわからねぇ石で出来てるらしいんだが、宝石的な価値も無いから単なるガラクタさ。よかったらどうだい?お安くしとくよ。」

「これって在庫は他にもあるの?」

「へ?あ、あぁ、十個ほどあるが、それがどうしたんだい?」

恭弥はそう言うと指輪を持ちそのまま店員に持っていった。

「これっていくらなの?」

「に、二十ドエニですが……」

「試しても?」

「ど、どうぞ。」

恭弥は指輪を装着すると、なにやら力を込める。
すると、指輪から紫色の炎が舞い上がる。

「ワォ、この世界で見られるなんて思わなかったよ。ランク的にはC位なんだろうけど、無いよりはマシかな?残りの十個も持ってきて。試してみたいんだ。」

「へ、へいただいま!」

店員は炎を出したことから貴族かと思ったらしく、途端に慌てて在庫を持ってくる。
すると、恭弥は全てのリングを指にはめ使用できるかを確認する。
十個のうち四個が紫、二個が藍色で残りは炎を灯せない赤、青、黄色、緑が一つずつとほぼ全てが揃っていて全てをポケットに入れて硬貨を店員に渡した。
恭弥の渡した硬貨を数えて、釣りとしての金を渡すと、恭弥は釣りを受け取り店員に再び話しかけた。

「もしこのリングをまた入荷したら真っ先に魔法学院の雲雀恭弥まで持ってきて。でないと」

恭弥は店員にトンファーを押し付け、脅すように命令する。
あまりの恐怖に震え上がった店員はガタガタと震えながら頷くと、恭弥は満足したようにその場を後にする。










夜、キュルケの自室に恭弥は招待された。
二人でワインを空け、じょじょに火照っていく二人の体。

「ねぇダーリン。今日は、ダーリンに素敵なプレゼントがあるの。」

潤んだ目で恭弥を見つめるキュルケ。
その手には一本の剣があった。

「ゼロのルイズと武器屋に行ったんでしょ?あの子は何も買ってあげなかったみたいだけど、私はこの剣をダーリンのために買ってきたわ。受け取ってくださる?」

キュルケがそう言った直後、恭弥は剣をキュルケから取りテーブルの上におく。

「ダーリン?」

恭弥はそのままキュルケの両手を自分の手で包むと、キュルケの顔に恭弥が近づいた。

「ありがとう。けどね、僕にとっての最高のプレゼントは、愛しい君がそばにいてくれることなんだ。あんな草食動物は関係無いよ、キュルケ。」

「ダーリン……」

キュルケはそのまま抱き上げられ、ベッドに寝かされると恭弥が上に覆いかぶさってきた。

「ダーリン、ダメよ。こんな、恥ずかしいわ。」

「大丈夫、見ているのは二つの月だけだよ。愛してる、キュルケ。」

二人の顔がどんどん近づき、そのままお互いの唇が触れ合った。

「な~んて、もうやだダーリンったら!」

という妄想をキュルケはしていた。
朝から恭弥たちの後をつけ、三人が武器屋に入って何も買わなかったところを見て

「ダーリンったら、ゼロのルイズにお金があまり無いのを知って遠慮して何も買わないなんて、優しいところあるのね。」

などという妄想に走り恭弥のために伝説の剣とやらを買いプレゼントする魂胆だ。

「……彼はきっと受け取らない」

「もう、タバサったら。意地悪言わないでよ。」

キュルケと一緒に街に来た少女、タバサは朝早くにキュルケが部屋に乗り込んできて、タバサの使い魔で三人を追いかけたのだった。
しかもキュルケが買ったという剣。
それは恭弥たちを騙そうとした店主を脅してただ同然で手に入れた剣だった。
何故それを知っているかというと、

『おい、娘っこ。本当に俺を相棒の所に連れて行くんだろうな。』

この剣、デルフリンガーが全て喋ったからだ。

「約束は守るわ。ちゃんとダーリンの所に持っていってあげるわよ。」

『よっしゃ、約束だぜ。』

魔剣デルフリンガーは着々と恭弥に近づいていた。










所変わって恭弥は今、

「へぇ、ずいぶんと群れてるね。」

スリの集団に再び囲まれていた。
どうやら恭弥を逆恨みし仲間を集め、再び狙ってきたようだ。

「うるせぇ!あの時はやられたが、今回は俺達のボスがいるんだ!ボス、出番ですぜ!!」

リーダー格の男がそう言うと、後ろから大柄の男が現れて恭弥と対峙した。

「おいおい、お前ら全員を倒すって聞いたからどんな奴かと思ったら、単なるひ弱そうなチビじゃねぇか。」

「君がこの群れのリーダーかい?ちょうどいい、さっき買ったリング、試させて貰うよ。」

次の瞬間、巨大な紫色の火柱がたち、リーダーの男もろとも周囲のスリたちは全滅した。



[12721] 第五話 浮雲と盗賊
Name: 雷雲◆c51a39a7 ID:19d45be4
Date: 2009/10/21 16:53
「いらないよ。」

学院に戻ってきた恭弥は馬を小屋に戻した所でキュルケに捕まり、いきなり剣を押し付けられていた。
キュルケに剣を返すとそのまま歩いてどこかへ行こうとする。

『ちょっ!待ってくれって相棒!俺絶対役に立つから!本気で使ってくれないと困るって!!』

「だそうよダーリン。何も武器を買ってくれないルイズと違って、私はこれをあなたの為に買ってきたんだから。」

『まぁ、買ったって言うよりは奪ってきたが正しいけどな。』

デルフの一言で恭弥の足が止まる。

「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでよ。あの店員がくれるって言ったんじゃない。」

『憲兵に通報されたくなかったら、なんて誰がどう見ても脅しじゃねぇか。まぁそのおかげで俺はこうして相棒の所に来れたけどな。』

恭弥はそういう事かと納得するとそのままどこかへ歩いていこうとする。

「ちょっとキュルケ!何してるのよ!!」

そこに現れたルイズがキュルケに詰め寄り言い争いを始めた。

「なに人の使い魔に物をあげようとしてるのよ!!」

「あなたが使いきれてないから私が貰ってあげようとしただけじゃない。使い魔に投げ飛ばされるんじゃ、主人としても終わってるんじゃないの?」

「うるさいわね!あんたなんかゲルマニアで男をあさりすぎてこっちに来たくせに、生徒がもうダメになったからって使い魔に手を出さないでよ!!」

「言ってくれるじゃない。」

キュルケの言葉で二人はいっせいに杖を取り出しお互いに向ける。

「「決闘「君たち。」え?」」

そこに、戻ってきた恭弥がトンファーを構えて殺気を出していた。

「この僕を物だとか使い魔だとか、ずいぶん好き放題言ってくれてるね。」

「「あ……」」

「咬み殺す。」

夜の学院に、二人の女生徒の悲鳴が木霊した。




第五話 浮雲と盗賊




「まいったね。まさかこんなに頑丈とは。」

その時、宝物庫のある塔の中に最近噂され始めた盗賊、フーケがいた。
フーケはこの中にある王宮から預かったお宝をいただこうと考えていたのだが、固定化の魔法が強力すぎて手も足も出ない状態であった。

「まったく、外部からの直接攻撃でも、こんな分厚い壁どうやって……」

どうしたものかと悩んでいると、外から爆発音らしき音が聞こえたので裏に回ることにする。










「ねぇ、いつまで逃げてるの?かかってこないなら咬み殺すだけだよ。」

恭弥の猛攻を紙一重で避けながらルイズとキュルケは逃げ回っていた。

「くっ!ファイア!!」

時折隙を見てはキュルケの炎が恭弥めがけて発射されるが、恭弥はあっさり回避。
急接近してトンファーを振るう。

「お願いダーリン!止めて!!」

「キュルケ!人の使い魔をダーリン呼ばわりしないでよ!!」

ルイズがそういった瞬間、足元の地面が陥没し、恭弥の目つきが怒りを含めるものへと変わった。

「いい加減君のその口ぶりにはうんざりだね。どうやらこのルーンとやらは契約した相手に対する攻撃を止めようとする性質があるみたいで、どんどん攻撃する気が失せてくるよ。」

恭弥が左手に書かれたルーンを見ると淡く光っており、恭弥の感情をどんどん穏やかにしていく。

「や、やっと主人に対する心構えは出来たみたいね。さぁ、今すぐにご主人様ごめんなさいと謝れば「おかげでどんどんイライラしてくる。」許し……え?」

恭弥の手を見るとじょじょに光は増していくのだが、恭弥の顔は怒ってるときのままだった。

「どうやらこれはじょじょにその気をなくするものだね。けど、それを上回る速さで怒ってきたらどうなるかは、今君たちが見てる通りだよ。」

「あ……あ……」

ルイズは震えながら杖を恭弥に向ける。

「へぇ、やっとやる気になったんだね。けど、僕には勝てないよ。」

「ふぁ、ファイア!!」

ルイズが魔法を唱えると、恭弥の遥か後ろにある塔の壁が爆発し、恭弥には傷一つ付いていない。

「何処を狙ってるの?そんなのじゃ僕を楽しませることは出来ないよ。」

恭弥は再びトンファーでルイズに殴りかかる。
だが、トンファーがルイズに当たると思われた直前、大きな地響きと共に恭弥の手が止まる。

「なに?」

「ね、ねぇ!あれ!!」

キュルケが指差した方向を全員が見ると、そこには巨大なゴーレムが出来上がり塔の壁を殴りつけようとしていた。

「あれって、宝物庫のある塔なんじゃなかった!?」

「じゃあ、あれが最近噂の盗賊!?」

キュルケとルイズの言葉を聞いた恭弥はゴーレムに特攻。
トンファーで攻撃するが一向に効果は無い。

「キョーヤ!ゴーレムは術者が倒れない限り壊れても再生するの!術者から先に!!」

「僕に命令しないでくれる?やっぱり君は後で咬み殺す。」

恭弥はルイズの言葉に耳を貸さず、ゴーレムに攻撃を続ける。

『娘っこ!俺を相棒に!!』

そう言われたキュルケは恭弥に向けてデルフを投げる。

『相棒!俺を使え!!』

恭弥は投げつけられたデルフを弾くとゴーレムに突き刺し、それを足場にしてゴーレムの開けた穴に入る。

『え?俺の使用用途それ!?』










「何処にあるんだい、獣の箱と浮遊の箱。小さいものだっては聞いたが探すのも一苦労だよ。」

フーケはそこら一帯をかき回し秘宝を探すがなかなか見つからない。
そこで、机の中にしまってあるのではと思い開けてみると、見慣れない箱が二つ入っていた。

「これだね、浮遊の箱と獣の箱。これさえ手に入れればあとは「ねぇ、君。」っ!?」

二つの秘宝を手に入れて喜んだのも束の間、突然後ろから聞こえた声に杖を構えて振り返る。

「盗賊なの?」

「だったら何だって言うんだい?あぁ、そういえばあんた使い魔だっけ?主人に危害加えたから私を倒そうとでも?」

恭弥が魔法を使えない平民だと思い出すと途端に余裕になるフーケだったが、ここで彼女は二つの失敗をしていた。

「盗賊なら、風紀を乱した者として倒すだけ。それと」

恭弥はフーケの目の前に移動すると、

「僕は使い魔じゃないよ。あんな草食動物がどうなろうと知ったことじゃないしね。」

トンファーを振り下ろした。
だが、フーケは間一髪で回避し、恭弥から距離を取る。
それを見た恭弥は再び距離を詰めてトンファーでの連続攻撃。
フーケに当たることは無かったが疲れさせるには十分だった。

「これだけで疲れたの?魔法で応戦すればいいのに。」

「黙りな!!」

フーケはすでにゴーレムを出していることにより他の魔法を使うことは出来ない。
それにより防戦一方になってしまっているのだ。

(くそ、どうすれば……)

打開策を何とか考えようとしているうちに、トンファーによる攻撃が直撃し奪った箱の一つが落ちてしまう。

「ん?」

恭弥がそれを拾い上げると驚きを隠せずに動揺してしまった。

「ゴーレム!!」

その一瞬の隙にフーケは恭弥にゴーレムによる攻撃を繰り出した。
恭弥は回避して大きく距離を取るが、その隙にゴーレムに乗り込み脱出する。

「………」

フーケを逃がしたことに悔しさを覚えた恭弥だったが、それ以上にフーケから取り返した箱が気になっていた。
なぜこの世界に匣兵器があるのか。










翌日、フーケを見た重要参考人として恭弥、ルイズ、キュルケ、タバサの四人が学院長室に呼び出された。
恭弥ももしかしたらフーケの居場所がわかるかも、ということで話を聞きに来ていた。

「それで、獣の箱と浮遊の箱を奪われたということじゃな?」

「……はい。」

ことの経緯を説明したルイズは教師達の心無い言葉に責められていたが、それを助けたのは、

「君たちが攻めることは出来ないんじゃないの?」

意外なことに恭弥だった。

「こんなに大きな学校なんだから、見回りとかがいるのは当然でしょ?それに、僕が少しは足止めしたのに誰も来る気配が無かったってことは、寝てたりして当直を怠ってたって事でしょ?」

恭弥の正論に何もいえなくなった教師陣。
以外にも自分を守ってくれたことに少し感謝したルイズだった。
だが、

「風紀を乱したのは君たちでもあるんだよね?なら、連帯責任で全員咬み殺す。」

結局これがしたかっただけなのだ。

「まぁまぁ、君の言うことも最もじゃが、できれば勘弁してもらえんか?これからフーケを討伐するために必要な人材じゃしの。」

しかし、それをオスマンがなだめようとするが教師の一人がそれに反発する。

「オスマン学院長、それよりも王室に報告して兵を向けてもらうほうが良いのでは?」

「バカもん!そうしている間にもフーケに逃げられてしまうわ!学院の失態はワシらが何とかせねばいかん!!」

オスマンの言葉に教師達は黙ってしまう。
自分達が当直をサボったりしなければこうなることは無かったとでも思っているようで、責任を感じていた。

「これより、フーケの捜索隊を出そうと思っとるんじゃが、その前にミス・ロングビルはどこじゃ?」

オスマンは自分の秘書が見当たらないことに疑問を感じていると、ロングビルが慌てて部屋に入ってくる。

「オールド・オスマン。フーケの居場所を突き止めました。」

「仕事が速いの。さすが、ミス・ロングビルじゃ。」

オスマンが秘書の優秀さを褒めていると、恭弥がロングビルの前に立つ。

「何処にいるの?」

「え?え?」

突然の事に困惑したロングビルは、目でオスマンに助けを求めた。

「まぁ、答えてくれんか?ミス・ロングビルよ。」

「は、はい。フーケは森の中にある小屋を拠点としているようで、そこに入るのを目撃した付近の住民がいて情報を得ました。」

「その小屋のある方向は?」

「えっと、この先をまっすぐです。」

ロングビルの指差した方向をチラリと見ると、恭弥はそのまま学院長室を出て行く。

「待ちなさい!何処に行くつもりなのよ!!」

ルイズが慌てて恭弥の腕を押さえるが、すぐに振りほどいてそのまま出て行く。

「な、なんなのよあいつは!!」

「まぁその辺にしておいてくれんかの?それでミス・ロングビル。何故その場所が?」

オスマンは真剣な眼差しでロングビルに問いかける。

「はい、盗賊騒ぎの後すぐに情報収集に出かけたのですが、その時土くれの塊を見つけたためその辺一帯を調査し、付近の住民からアジトの所在を突き止めました。」

「さすがはミス・ロングビルじゃ。良くぞそこまで調べてくれた。」

「それと、土くれの中から声が聞こえたので掘り返したら、この剣が。」

ロングビルが取り出した剣は、恭弥が足場として使用したデルフリンガーだった。

『……あれはねぇよ、おかげで俺も離れたところに連れてかれちまうし。』

さめざめと泣き始めるデルフ、それをさすがに哀れに思ったルイズたちだった。

「で、では早速フーケの討伐隊を編成する。我こそと思うものは杖を掲げよ!」

気を取り直した学院長は教師達に討伐隊への志願を要求するが、誰一人として杖を上げようとしない。

「何じゃ、先ほどはあの青年にあそこまで言われたのに、誰一人として行こうとせんとは。」

オスマンがそう言ったところで、三人が杖を上げる。

「私が行きます!!」

「ルイズだけにいいカッコさせるわけにはいきませんし。」

「……心配。」

ルイズを先頭にキュルケ、タバサの三人が杖を掲げる。
教師達は危険だというが、その者に代わりにといったら断ったため、三人が行くことに決定された。

「私も、道中の道案内として同行します。」

ついでにロングビルも同行し、総勢四人の討伐隊が完成した。

「では、諸君らの健闘を祈る。」

「「「杖に懸けて。」」」

学院長からの激励を貰うと、四人はすぐさま準備しロングビルの言った小屋へと向かう。










一方その頃恭弥は、学院長室から出てすぐに馬を借り、一人でフーケのアジトと思われる小屋へと向かう。

「今度こそ咬み殺す。」

どうやら前の戦闘で逃げられたことを根に持っているようで、決着をつけるためにフーケの下へ向かっている。
決戦のときは近い。



[12721] 第六話 浮雲と匣兵器
Name: 雷雲◆c51a39a7 ID:19d45be4
Date: 2009/10/23 02:45
「ここだね。」

一足先に出発していた恭弥はすでにフーケの入っていったと思われる小屋に到着し、扉を開けて中へと入っていく。
誰もいないことを確認すると部屋中を捜索するも誰もいないどころか、いた形跡も無い。
誰かが入ったような形跡はあるもののすでに出て行ったようだ。

「無駄足。あの女、僕を騙すなんていい度胸だね。」

怒りに任せてトンファーを振るい、机を一つ破壊する。
すると、残骸の中から一つの箱を発見する。

「匣?何でここに。」

匣を見つけたことでフーケが入った確証が得られた恭弥は、ポケットに匣をしまうと付近の探索に出かけた。




第六話 浮雲と匣兵器




恭弥が付近の詮索に向かった時、ルイズたちは馬車に揺られてフーケのアジトへと向かっていた。

「あ~あ、ダーリンが来ないなんて、来るんじゃなかったわ。」

揺られる馬車の上でキュルケが恭弥がいないことに落胆していた。

『相棒がいないんじゃ俺を使える奴はいねぇな。んじゃぁ、一眠りするか。』

恭弥も来ると思いついてきたデルフリンガーも、恭弥がいないとわかるとすぐに鞘に戻って大人しくしていた。

「あんたの場合、キョーヤに使われること自体が一生なさそうよね。」

『なんだと娘っこ。いいか?俺は相棒のためだけに作られた剣で、他の奴には一生使われねぇ。相棒だっていつかきっと……たぶん……おそらく使ってくれるはずだよなぁ?』

最後にはすでに自信喪失し涙ながらに聞いてきた。

「な、泣かないでよ、剣の癖に。私からもキョーヤに言ってみるから、少し黙ってなさいよ。」

『お?さすが相棒の主人。けど、相棒が大人しく言うこと聞くか?』

すでにデルフも恭弥の性格をわかってきたらしく、いくら召喚した主人相手でも言うことを聞くとは思えなかった。
もっとも、恭弥はルイズを主人とは思っていなかったが。

「そういえば、あの人はどんな方なんですか?」

前で馬の手綱をつかんでいたロングビルが前を見たまま質問してきた。

「ダーリンはとっても強くてかっこいい人よ。」

「……一匹狼。」

「馬鹿で使いづらい妙な使い魔よ。」

「見事に意見が分かれましたね。」

三人の答えた恭弥はバラバラの答えではあったが、彼女の中で恭弥は一匹狼の強者で、誰の言うことも聞かない厄介な人間と位置づけられた。

「でも、たまにいい奴、なのかな?」

ルイズは自分が教師達に攻められた所を助けた恭弥の姿を思い出し、少し見直したような気になっていた。

(って、私は何を考えてるのよ!使い魔がご主人様をかばうなんて当然じゃない!それに、使い魔の癖に私を殴ったり踏みつけたり投げ飛ばしたり、一つ見直したからって許せることじゃないわ!!)

思ってみれば今まで以上にいい目に遭ってないルイズ。
だが知っているだろうか。
悪いことばかりしている不良がいい事をすると、途端にいい人に見えることがあるということを。

(あの真剣な目、結構かっこよかったかも。)

ルイズがそんなことを考えているといつの間にか馬車は止まっており、すでに三人は降りて歩いていた。

「ちょと!おいて行かないでよ!!」

慌ててルイズは三人の後を追いかけて小屋の見える位置に隠れた。

「ここね。」

「とりあえず、中の様子を探らないとね。誰が行く?」

「……私が行く。」

「では私は周辺の探索に。」

そう言うとタバサは中の様子を見に、ロングビルは周囲の探索に出かける。
タバサが小屋の近くで魔法を使い中の様子を探るが、人どころか罠すらないことがわかり三人は小屋へと歩いていく。

「私は外で見張りをしてるわ。」

ルイズがそう言うとキュルケとタバサの二人は小屋の中に入り中の探索を始める。

「ここ、本当にフーケのアジトかしら。フーケどころか人のいた形跡すらないんだけど。」

「……わからない」

中は机が壊れていること以外変わったものは無く、二人は諦めて外に出ようとした。

その時、

「きゃああああ!!」

外に巨大なゴーレムが現れ、小屋の屋根を破壊した。










その頃恭弥は周囲の探索を終え、もう一度先ほどの小屋に戻ることにしていた。

「まさか、この僕を利用するなんてね。」

周囲の探索をしている最中、何故盗まれたはずの匣が小屋に放置されていたのがずっと考えていた。
見られていることを考慮し、普通はあんな簡単なところに放置したりはしない。
なのに何故さらに盗まれることになる可能性がある場所に放置したのか。
そう考えていると止まらなくなり、結果として一つの結論にたどり着いた。

「今頃匣がなくなって慌てるころだね。だとしたら、そろそろ探し回ってるはずだ。」

恭弥がそう言った瞬間、地響きが起き小屋のあった方向にゴーレムが出現した。

「ワォ、予想通りだね。あのゴーレムってやつを倒せば、必ずあの盗賊が現れるね。」

恭弥は再び走り出し、急いでフーケの討伐に向かう。










ゴーレムに小屋を破壊され、潰される直前に脱出したキュルケとタバサは急いでシルフィードを呼び空中へと脱出していた。

「ルイズ!あなたも早く乗りなさい!!」

「嫌よ!私は逃げないわ!!」

しかしルイズだけは断固として逃げようとせず、ゴーレムに攻撃を続ける。

「私は貴族なの!魔法を使える者を貴族と呼ぶんじゃない!敵に背を見せない者を貴族というのよ!」

しかし大したダメージは与えられず、表面を少し削る程度の微弱なダメージでどんどんルイズに近づいていく。

「私は、もうゼロと呼ばれたくない!!」

ゴーレムが腕を振り上げ、ルイズに攻撃しようとする。
ルイズは恐怖に目をつぶるが、一向に攻撃は来ない。
目を開けるとゴーレムの足が破壊され攻撃できずにいる。

「君、何でここにいるの?」

隣から聞こえてきた声。
身につけた黒いスーツ。
さらさらの黒い髪に細く鋭い目。
孤高の浮雲、雲雀恭弥が現れた。

「あんた、何で……」

「先に質問したのは僕だよ。何でいるの?」

「わ、私は、盗賊から秘宝の奪還に来たのよ!あんたは何しに来たのよ!!」

「あの盗賊は僕の敵だよ。君、邪魔だよ。」

恭弥はそう言うとルイズを蹴り飛ばし、馬車のあるところまで飛ばすとリングから炎を出す。

「痛~、って何あれ!!」

「ダーリン、メイジだったの!?」

「………」

炎をトンファーに纏わせると前方に突き出しゴーレムを指す。

「君はただの前哨戦に過ぎないんだよ。すぐに、咬み殺す。」

恭弥はすぐに攻撃を始め、二三発の攻撃でゴーレムのもう片方の足を砕く。
すぐに跳躍し今度は右腕、左腕と猛スピードで砕くと一度距離を取る。
だが、すぐに全ての箇所を再生すると恭弥に向けて拳を振り下ろす。

「遅いよ。」

恭弥は余裕で回避すると再び腕に攻撃、粉々に砕くがすぐにまた再生してしまう。

『相棒!ちまちま攻撃しても埒があかねぇ!一気に中央にある核を破壊するのがゴーレムを倒す基本だ!!』

馬車のほうからデルフの声が聞こえてきて、ルイズに鞘から抜いてもらい恭弥の元へ投げてもらったようだ。

『相棒、その炎を俺に纏わせれば、あんなゴーレムくらい一刀両断してやるぜ!!』

「いらないよ。それに、あんなの倒すのに、武器すらも必要ないからね。」

そういうと恭弥はトンファーを腰に戻す。

「あ、あんた何してるのよ!ゴーレムが目の前にいるのに武器をしまうなんて!!」

「少し黙ってなよ。」

恭弥は懐から一個の匣を取り出すと、リングを穴へと入れて炎を灯す。

「開匣。」

すると紫の炎に包まれた何かが飛び出し、ゴーレムの中央を貫いて完全に破壊した。

「へぇ、運良く核とやらを貫いたみたいだね。二三回は攻撃しなきゃならないと思ってたけど、ずいぶんと脆いんだ。」

『結局使ってもらえなかった。』

ゴーレムを倒した直後、キュルケとタバサが空から降りてくる。

「さすがダーリン!まさか炎を使うメイジだったなんて!!」

キュルケは下りた瞬間恭弥に抱きつこうとするが、あっけなく避けられ地面に激突する。

「鬱陶しいよ。咬み殺されたいの?」

「そんな素っ気無いダーリンも素敵よ。」

『そんなことより相棒、俺を抜いてくれねぇ?』

和気藹々とした雰囲気で話してると、森の中からロングビルが戻ってきた。
すると恭弥は何を考えたのか、ロングビルに向かってトンファーを使って攻撃を始めた。

「ちょっと!何してるのよ!!」

ルイズが慌てて止めに入ろうとするが、恭弥は攻撃の手を休めることは無い。
むしろどんどん鋭さを増していきロングビルは距離を開けて離れるしかなかった。

「い、いきなり何をするんですか!!」

「君が盗賊なんでしょ?だから咬み殺すだけだよ。」

恭弥はそう言うと再び攻撃を開始、ロングビルは再び距離を取る。

「な、何を言ってるんですか!私は!」

「君の言ってた調査には矛盾があったからね。あの匣兵器の使い方がわからなかったから、学院から誰か連れてくれば使い方がわかると思ったんじゃないの?」

「っ!!」

ロングビルは事件が起こってすぐに調査したと言っていたが、恭弥たちが事件に巻き込まれたのは夜も更けてかなり遅い時間だ。
そんな時間になれば馬を借りることも出来ず、自分の足で行くしかない。
恭弥がここへ来たとき、馬を飛ばして三時間はかかったということは足で来ようとすればいくら走ったとしても確実に六時間以上かかる計算になる。
それでは行って戻ってくるだけで半日掛かり、調査なんかろくに出来るわけが無いのだ。
さらに言えば夜中にこんな森の中をうろつく人などいるはずも無く、目撃情報なんてあるわけが無い。

「なんだい、バレてたらしょうがないね。ゴーレム!!」

正体がだとばれた瞬間、恭弥から距離を取りゴーレムを召喚し威嚇する。

「まさか、本当に?」

ルイズはまだ信じられないのか、いまだに困惑し動けずにいる。
フーケはその隙にルイズをゴーレムで掴み人質に取った。

「さぁ、獣の箱と浮遊の箱を渡しな!さもないと、あんたの主人の命は無いよ!」

形勢逆転。
これで勝利を確信した

「誰が主人なの?僕に主人なんていないよ。」

「へ?」

だが、恭弥の反応はフーケにとって予想外のものだった。
恭弥が扱いづらいとは言っても最低限使い魔をしているものだと思っていたフーケは主人を人質に取れば簡単に秘宝を渡すだろうと思っていたのだが、

(こいつ、アッサリ主人を捨てやがった!?)

恭弥がここまで使い魔をしていないとは予想外だった。

「もう策は尽きたの?じゃあ、咬み殺すから。」

恭弥はそう言うと上を指差す。
すると、フーケの頭上が急に暗くなる。

「な、なんだい?え!?」

いきなり頭上から降ってきたとげ付きの球体に驚いたフーケは、そのままゴーレムと共に押しつぶされてしまう。
それと同時に恭弥のつけているリングが壊れてしまったが、さして気にしていない様子だ。

「きゃああああ!!」

ルイズは間一髪脱出に成功したが、着地に失敗し顔面から地面に激突してしまう。

「キョーヤ!もうちょっとマシな助け方無かったの!?」

ルイズはすぐに立ち上がり、恭弥に向けて文句を言う。

「助かっただけ感謝しなよ。本当なら一緒に潰すつもりだったんだから。」

恭弥は悪びれもせずにしゃがむと手を差し出す。
すると棘球体は小さなハリネズミへと変貌し恭弥の手を伝って肩に上る。

「何それ、あんたペットなんて飼ってたの?」

「ただの匣兵器だよ。」

恭弥はそう言うとフーケの下へ行き縛り上げると、フーケは目を覚ます。

「な!?ちょ、なんだい今のは!!」

「うるさいね、黙ってないと咬み殺すよ。」

恭弥はそう言うと馬にロープをくくり、そのまま馬に乗り込む。

「ちょ、ちょっと待ちなって!あんたいったい!ぎゃあああああああああ!!」

過去の拷問方法に市中引き回しというのがあるのをご存知だろうか。
馬と罪人の足をロープで繋ぎ馬を走らせることで、摩擦により強烈な苦痛を与え情報を白状させる拷問方法なのだが。

「誰か止めとくれーーーーーー!!」

フーケは今まさにそれをやられているのだ。
恭弥からすれば馬に乗せて連れて行くと群れているような感じなので、乗せずに連れて行くだけでこうなるためそんなつもりは無いのだが、周囲から見たら酷い拷問を与えているようなものだ。
つい、残されたルイズ、キュルケ、タバサの三人は手を合わせフーケに向けて合掌してしまうほど可哀想なことなのだった。



[12721] 第七話 浮雲と元の世界
Name: 雷雲◆c51a39a7 ID:19d45be4
Date: 2009/10/26 12:02
「いや、よくやってくれた。こうもあっさりフーケを捕らえるとは。」

学院に戻ると学院長室にて事の全てを報告。
意外なことに恭弥も一緒に来ていた。

「しかし……」

オスマンは冷や汗を流しながらチラリと捕らえられたフーケを見る。

「ちとやりすぎではないかの?」

視線の先にいたフーケはボロボロで、とてもじゃないが直視できない状況だった。

「君たちは何も出来なかったくせに文句をいうなんていい度胸だね。この場で咬み殺してもいいんだよ?」

「あ、いや……ゴホン。よくぞフーケを倒し秘宝を取り戻してくれた。君たちの尽力に感謝する。」

恭弥の迫力に恐怖したオスマンは話を戻し、四人を褒め称える。
もっとも、恭弥以外は全くと言っていいほど役に立っていないが。

「今回の一件は宮廷も高く評価しており、君たち三人に何らかの褒章が得られるじゃろう。」

「三人?ってことは、キョーヤには……」

「残念ながら、彼は貴族ではないからな。」

ルイズの質問にオスマンも申し訳なさそうに言うが、恭弥は褒章などには興味が無くほぼ無表情で立っているだけだった。

「何はともあれ、今日の祝賀会の主役は君たちじゃ。存分に楽しむと良い。」

オスマンがそう言うとルイズたち三人は学院長室から出て行く。
だが、恭弥だけは微動だにせず出て行く気配は一切無い。

「キョーヤ?何してるのよ。」

「君には関係無いよ。」

ルイズはムッとするもが文句も言わずに出て行き、舞踏会の準備のため部屋に戻る。




第七話 浮雲と元の世界




「さて、何か聞きたいことがあるんじゃろ?褒章をやれない代わりに、聞くがよい。」

オスマンは恭弥の事はお見通しと言わんばかりに、恭弥の目的をズバリ当ててみせる。

「じゃあ単刀直入に聞くけど、これを何処で手に入れたの?」

恭弥はそう言うと懐から獣の箱と浮遊の箱と呼ばれていた匣兵器を取り出し、オスマンの机の上に置いた。

「君はこれを知っているのかね?」

「僕の質問に答えなよ。今すぐに咬み殺されたいの?」

「ま、まて!話すからそれをしまってくれ!!」

恭弥がトンファーを構えるとオスマンはおびえながらも語り始める。

「もう三十年ばかり前になるかの。わしは、ある依頼でワイバーンの討伐に出かけたのじゃが、まるっきり歯が立たずに追い詰められてしまったんじゃ。そこに、妙な炎を纏った犬と、同じく炎を足と武器に纏った男が現れたんじゃ。男はわしを助けてくれたが酷い怪我を負ってしまってな、すぐに学院へ連れて帰ったが、あっけなく死んでしまった。」

昔を懐かしむようにオスマンが話すと、後ろにいたコルベールも冷や汗を流す。

「獣の箱と浮遊の箱に、そんな逸話があったなんて。」

「本来、箱は三つありその男の使っていた武器が入った箱は男と共に埋葬したんじゃが、残った二つは持ち帰り宮廷に謙譲した、というわけじゃ。」

「なるほどね。じゃあ僕も君からの質問に答えようかな?」

恭弥はそう言うと自分の匣兵器、雲ハリネズミに炎を注入する。
すると、中から可愛らしいハリネズミが現れ恭弥の手のひらに乗った。

「これは匣兵器と言ってね。リングから発せられる死ぬ気の炎を注入することで発動できる武器だよ。僕たちのいたところでの生物学者、ジェペット・ロレンツィニが残した三百四十三編の設計書を元に開発された兵器でね。故に、同じように生物を模したオリジナル匣が三百四十三種類と、保存用、道具、武器が入った匣があり、それらを全てまとめて匣兵器と呼ばれているんだ。」

「なんと。それほどにまで広まった兵器だというのか。それほどのものをいったいどうやって……」

「それは、偶然だよ。」

「ぐ、偶然?」

コルベールが反応したと同時に恭弥は雲ハリネズミを匣へとしまう。

「世界的な大発見や大発明の裏には、発明家の身近に起きた出来事が閃きを誘発することがあるからね。」

「身近に起こった出来事、じゃと?」

「ニュートンが万有引力を発見した林檎、ノーベルがダイナマイトを発明したときの珪藻土にしみこんだニトログリセリン。これらは全て偶然それを見たことで起きた、閃きから出来ているんだよ。それらがいくつも偶発して出来たのが、匣兵器といわれている。」

「ま、まってくれ。バンユウインリョクにニトログリセリン?なんじゃそれは。」

コルベールの質問に恭弥はやはりかと思いながら、その二つについての説明は諦め、一つの確証に思い当たった。

「僕のいたところじゃ、一般人でも万有引力やニトログリセリンの事は知っている。やっぱり、ここは別の世界ということだね。」

「別世界?どういうことかね?」

恭弥の発言に疑問を持ったコルベールが聞いてみる。

「ここは、僕のいたところとは別の世界だって事の確証を得ただけだよ。僕がいたところでは匣兵器は当たり前だったし、月は二つも無い。最初は計画と違って十年以上前の時代に来たのかとも思ったけど、万有引力すら知らないんじゃ西暦千五百年より前の時代になる。それより後に月が一つ消滅したって話も聞いたことないし、これは別世界と考えるのが有力でしょ?」

「月が一つ。バンユウインリョクにニトログリセリン。そして極めつけはボックスヘイキ。全て私は聞いたことありません。」

「別にいいよ。ここがどこかわかっただけでも収穫だしね。それに、ここに匣兵器を持ち込んだ誰かが来れたって事は、帰ることも出来るだろうし。」

恭弥はそう言うと指を一本立ててオスマンとコルベールに向ける。

「それと、頼みごとを聞いてもらうよ。」

「何かな?」

オスマンが何も疑問を持たずに聞くと、恭弥はこの学院に風紀委員という組織を作りたいと言ってきた。
恭弥が言うには風紀委員とは学院での校則や一般常識的な決まりごとを守らない人間を取り締まる組織だという話だ。

「うむ、それならむしろ喜んでやってもらいたい。キョーヤ君とやら、君に風紀委員会の長を務めてもらいたい。」

「それともう一つ。」

恭弥はトンファーをオスマンとコルベールに向ける。

「いくら教師であれど、風紀を乱すなら咬み殺すから。それと、部屋は適当な所を使わせてもらうよ。あぁ、それと。」

恭弥は匣兵器の二つを持ち、それを懐にしまいこむ。

「これは僕も使えるみたいだから貰っていくよ。それじゃあ。」

恭弥はそういうと学院長室から出て行く。

「……あれ?もしかしてわし、いろいろ間違えた?」

後悔後先たたず。
結果、オスマンを悩ませる種がここに誕生したのだ。










時がたちその日の夜。
アルヴィーズの食堂の上階にて、フリッグの舞踏会が行われようとしていた。
華やかに着飾った教師や生徒達が食事をしながら喋っており、年に一度の舞踏会を満喫している様子だ。
そんな中一際注目を浴びているのはフーケ討伐に赴いたキュルケだった。
タバサはそんな連中を無視し食事に夢中なので周囲に人はいないが、キュルケの周りは大勢の男が群がっていた。
そんな中恭弥は一人広場の木に寄りかかり、星空を眺めていた。

「あんた、そんなところで何してるのよ。」

そこに現れたのは恭弥のご主人と言い張るルイズ。
ただ、いつもと違うのは妙に着飾っており、恭弥からすれば違和感が物凄くあるということだ。

「君こそ何してるの?早くどこかへ行って欲しいんだけど。」

「ホントムカつく使い魔ね。まぁいいわ今回は特別に許してあげる。」

そう言うと恭弥が座ってる場所とは反対側に座り、木に寄りかかって星を眺める。

「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど。」

「普段なら答えない所だけど、今日は新しい匣兵器を手に入れられて機嫌がいいからね。答えてあげてもいいよ。」

「あんた、いったい何者?あんなに強いなんて、どこかの軍にでも所属してたの?」

「僕はボンゴレ雲の守護者。認めたくないけど、沢田綱吉の下にいて、彼を守るための人間だった。」

恭弥はマフィアの事、ボンゴレの事を包み隠さず説明。
ルイズは何も言わずに説明を聞く。

「突拍子過ぎてよくわからなかったけど、一つ疑問。何で誰にも従わないあんたが、そのサワダツナヨシって人の下にいたの?」

「彼は戦うたびに強くなっていったからね。戦う相手としては申し分なかったから彼と一緒にいたんだよ。」

「あぁ、あんたらしい理論ね。」

この戦闘狂が、と思いながらルイズは頭を抱えた。

「それに……」

「ん?」

「彼と僕の正義は重なることがよくあったからね。よき協力者って言っても間違いじゃなかったんだよ。」

恭弥の脳裏には幾つもの共闘が浮かんだ。
己の正義と綱吉の正義が重なったとき、誰よりも多くの敵を倒し誰よりも味方に優しかった自分。
もっとも、一般的には強烈過ぎる優しさではあったが、恭弥にとっては味方を守ること自体が珍しい行為だった。
己との正義を何度も同じくした同志であり、最も強かった好敵手。

「会いたいな。」

彼を思い出すと同時に、恭弥は知らず知らずのうちにつぶやいてしまっていた。
それを聞いたルイズは呼び出して悪いことをしてしまったと、初めて思った。

「その人は、まだそのボンゴレファミリーのボスをしてるの?」

「いや。今は……眠ってるよ。いつ目が覚めるかもわからない。」

「そう……なんだ……」

未来の世界で暗殺されたとされる綱吉。
しかしこれは、過去の自分達をここに呼び込むため、入江正一と恭弥の三人で手を組みミルフィオーレファミリーを倒すために仕組まれた作戦。
本当は特殊弾を用いて仮死状態になっているだけと知っている恭弥は、あえて眠っているということにしておいた。
その時、上から音楽が聞こえ始め、他の生徒達は踊っている様子だった。

「キョーヤ、あの「断るよ。」……まだ何も言ってないんだけど……」

ルイズの言いたいことが読めた恭弥は言い切る前に拒否。

「どうせ踊ろうとか言うんでしょ?僕は群れるのが嫌いだからね、必要最低限しか人とは一緒にいないよ。」

恭弥は立ち上がるとそのまま執務室へと改良した元応接室へ向かって歩き出す。

「……バカ。少しは一緒にいてくれてもいいじゃない。」

ルイズはむくれながら部屋に戻り、着替えて睡眠をとることにした。










恭弥が執務室に戻ると、予想だにしていなかった珍客が恭弥の目の前にいた。

『よう、相棒。遅かったな。』

「……なんで君がここにいるの?」

フーケとの戦闘の際、地面に突き刺さったまま置いてきたはずのデルフが、なぜか恭弥の執務室にいたのだ。

『いやぁ、森に狩りしに来てたおっさんがいなきゃ、俺もあのまま地面と一体化だった。俺が話せるとわかったら相棒の所まで連れてきてくれて……相棒?そっち窓じゃね?何で開けるの?何で俺を持って振りかぶるの?相棒おおおおおおおおお!?』

恭弥はそのままデルフをぶん投げ、執務室には静寂が戻った。
風紀委員を設立したはいいものの、これから人員の確保や活動計画、そのほかにも決めることがたくさんある。
しばらくの間これからの事を考えながら紙にいろいろメモしていると、誰かが扉をノックしてきた。

「誰?」

「あの、私です、キョーヤさん。」

声に聞き覚えがあり扉を開けると、そこにはシエスタと、

『相棒、投げるなんてヒデェじゃねえか。』

先ほど投げ飛ばしたはずのデルフがシエスタに持たれていた。

『このメイドが相棒と知り合いだって言うし、ついでだからここを教えて連れてきてもらったんだ。いやぁ、助かった。』

恭弥は黙って扉を閉めて仕事に戻る。

『お~い、相棒~。さすがに無視は寂しいぞ~。』

「うるさいよ。僕は今忙しいんだから、黙ってないと咬み殺すよ。」

「す、すみません……」

「あ……」

さすがに何の罪も無い人を怖がらせてしまったと反省したのか、シエスタとついで扱いでデルフも中に入れる。

「……さっきの、君に言ったんじゃないから。」

「あ、はい。」

一応弁解をした後備品として備わっていたお茶をシエスタに入れて渡すと、自分も反対側に座って同じようにお茶を飲む。

「あの、キョーヤさん。」

「何?」

少しの間沈黙が続くと、シエスタが恭弥に話しかけてきた。

「ここ、応接室ですよね?ここで何をしてるんですか?」

「風紀委員の今後を考えていてね。思ったよりやることがたくさんあって大変だよ。」

「ふうきいいん?なんですかそれ。」

「簡単に言うと学院と生徒達の平穏を守ることを目的とした組織だよ。」

掻い摘んだ説明を始めるとシエスタの目がどんどん輝いてきてる。

「すごいですね、今まで平民がそんな組織を作るなんて聞いたことありませんでしたよ。」

「僕をその辺の連中と一緒にしないでくれるかい?草食動物と一緒にされるなんて、ムカつくよ。」

「ご、ごめんなさい……」

恭弥の迫力につい謝ってしまったシエスタだったが、恭弥はそれを見てつい笑ってしまう。

「別にいいけど、僕は他の平民とは違うよ。今度は間違えないようにしなよ。」

「は、はい。」

恭弥の笑顔というレアなものを見れたシエスタは嬉しくなりついつい笑ってしまう。

『おうおう相棒、なかなかいい雰囲気じゃねぇか。主人に黙って女とお茶なんて、あの娘っこが聞いたら激怒……相棒?何で窓を開けるんだ?俺を持ってさらに振りかぶって投げたーーーーーーーーー!?』

恭弥はデルフを再び窓から放り投げると窓を閉め、再び今後の計画について考える。

「僕は仕事に戻るけど、君はどうするの?」

「えっと、お手伝いとか「いらないよ。」……そ、そうですか。」

シエスタはがっかりしながら部屋から出て行こうとする。

「待ちなよ。」

そこを恭弥が呼び止め、シエスタも扉から半分出た状態で振り返る。

「少しお腹がすいたから、何か持ってきて。」

「は、はい!」

そう言われるとシエスタは喜んで厨房へ戻り、恭弥のためにハンバーグを作り始めた。



[12721] 間幕1 浮雲と風紀委員
Name: 雷雲◆c51a39a7 ID:19d45be4
Date: 2009/10/28 18:33
「……どうしたもんかのぉ。」

学院長室で頭を抱える学院の長、オールド・オスマン。
この学院で最も強く、最も学院を愛する皆に尊敬されるメイジだ。
そんな彼が頭を抱える理由。
それは……

「咬み殺す。」

「ぎゃああああああああ!!」

ルイズの使い魔として召喚された彼についてだ。




間幕1 浮雲と風紀委員




風紀委員を設立した恭弥は人員確保もそこそこに毎日の見回り、風紀違反をしてる生徒の制裁、群れてる生徒の制裁を毎日のように行っていた。
ちなみに投げ飛ばされたデルフは再び誰かが執務室へと持ってきており、うるさいので金具の部分を縛った状態で放置されていて何も喋れない。

「キョーヤ君、ちょっとやりすぎではないかの?」

そんな恭弥が執務室で書類の整理をしていると、オスマンが恭弥の元へ現れ今までの行動を振り返り警告してきた。

「貴族だかなんだか知らないけど風紀を乱すのは違反だよ。それを取り締まって何が悪いの?」

恭弥はオスマンに目もくれず書類にサインをしていく。
この学院は風紀に関して緩過ぎる部分があり、この辺から改善していくことが決定し新たな校則やその他にもいろいろ決めなければならないため恭弥も多忙を極めている。

「いや、それにもやり方があるじゃろ。一応認めてはしまったがこのままじゃ取り潰しが決定しちゃうよ?」

「その場合噛み殺して今までのあなたの違反を王室に報告するだけだから。今までセクハラとかいろいろしてたんだって?咬み殺されないだけありがたいと思いなよ。」

恭弥は結局一度もオスマンを見ることは無く書類へのサインを終え、そのまま書類をオスマンに渡す。

「また新しい校則かの?なになに、むやみやたらな魔法の使用の厳禁。決闘のさいの教師の立会い。制服の改正案。……また増えるのかの。毎回朝会のときに言うのもめんどくさくなるんじゃが。」

文字の読み書きはすでに習得しているようで、恭弥がオスマンに渡した書類にはハルケギニアの文字でいろいろ書かれていた。

「やらないなら咬み殺して副委員長に言わせるだけだよ。」

「わかったから、そう睨まんでくれ。ところで、毎度の事ながら説明を求めてもいいかの?」

新たな校則が出来るたびに何故この校則が必要なのかという説明を求めるオスマンに恭弥はなぜそんなこともわからないのかと思いながらも毎回説明している。

「魔法に関してはあまり依存しすぎると危険だからね。簡単なものならともかくそれで人を脅して風紀が乱れることがある。だから基本以外の使用は授業以外で禁止するだけだよ。」

「それじゃと練習にならんのではないかの?」

「練習したいときはその練習時間に教師に就いてもらって練習すればいいでしょ。失敗とかして危険な目に遭っても教師が助ければ問題ないし。」

恭弥は一息つくためにお茶を自分の分だけ入れオスマンの向かい側に座る。

「まぁそれでいいけどね。あとワシには無いの?」

「なんで僕があなたの分まで入れなきゃならないの?欲しかったら自分で買ってきて入れなよ。」

「ここのすら飲ませてくれんのか。」

オスマンはがっかりしながらパイプを銜える。
その瞬間、恭弥のトンファーがオスマンのパイプを粉々に砕いた。

「ここは生徒も来るんだから、吸いたかったら喫煙所で吸いなよ。次ここで吸ったら咬み殺すよ。」

「……どんどん厳しくなってない?」

「当然でしょ?僕がいる限り風紀は乱させないよ。」

一応それなりに高価なパイプだったのだが、恭弥は壊したことに何の罪悪感も感じてない。
その後、他の校則についても説明するとさっさとオスマンを追い出した。

「ふあぁぁ……」

あくびをしてソファーに横になると、恭弥はそのまま寝息をたてた。

「失礼します、委員長!早急に目を通していただきたい書類…が……」

そんな中恭弥の元へ現れたのは恭弥から副委員長に任命されたリーゼントの男、ベント・リーフウォール。
彼は元々落ちこぼれでドットクラスのメイジだったが、恭弥に制裁を受けて恭弥のように魔法を使えなくても強くなりたいと思う気持ちから風紀委員に入会。
その後、自称恭弥の右腕ということで副委員長を務めているのだが、

「僕の眠りを妨げるなんて、いい度胸だね。」

「も、申し訳ありまぎゃあああああああああ!!」

このように咬み殺されるのは日常茶飯事となっている。

「で?何の用なの?」

「は、はい。様々な貴族から苦情の手紙が。なんでも、厳しすぎると……」

「捨てなよ。この程度も耐えられないんじゃこの先社会に出てからも苦労するよ。もしそれでもいやならさっさと帰ればいいんだし。」

「わかりました。」

恭弥はそう言いつけると再び横になり睡眠をとる。
風紀委員を設立して以降、恭弥はあまり眠ることなく仕事に勤しんでいるため、寝るのは書類が途切れたりちょっとの合間でしかないのだ。

(委員長、お疲れのご様子だ。なんとかせねば……)

ベントは執務室から出ると何か良い案はないかと考え始めた。










「ちょっといいかの?」

その頃オスマンは厨房を訪れ、誰かを探しているようにキョロキョロしていた。

「あ~、スマンがキョーヤ君と仲が良いものがいると聞いてやってきたんじゃが。」

「あぁ、シエスタですかい?今洗濯に行ってますが、少しすれば戻ってきますわ。」

オスマンはそれを聞くと自分から会いに行くと言いそのまま厨房から出て行った。
そしてしばらく歩いていると洗濯を終えたシエスタが渡り廊下を歩き厨房へと戻るところを発見した。

「君がシエスタ君かな?」

「え?学院長先生?どうなさったんですか、こんなところで。」

「いや何、君がキョーヤ君と仲がいいと聞いてな。少し頼みごとがあるのじゃが。」

オスマンは少しシエスタと話をするとシエスタは小走りで学院内へ向かい、オスマンは学院長室に戻っていった。










恭弥は書類の整理や見回りが終わり、再び眠っていたのだがそこへ再び珍客がやってきた。

「キョーヤ!あんたいつまでここにいるのよ!さっさと戻ってこないと使い魔としての仕事が溜まってるんきゃっ!!」

ノックも何もせずに入ってきたルイズに対して恭弥は情け容赦なくトンファーを振るう。

「ちょっと、何するのよ!!」

いきなり攻撃されたことに対してルイズも怒り心頭の様子だ。
だが、恭弥はそんなルイズには構いもせずに一心不乱にトンファーを振るう。

「説明くらいしてよ!いきなり攻撃するなんて理不尽じゃない!!」

「……僕の眠りを妨げる者は咬み殺す。」

「どっちにしても理不尽!?」

結局ルイズはボコボコにされ、階段から蹴落とされ一階まで転がり落ちる羽目となった。

「え?ミス・ヴァリエール?」

そこに居合わせたシエスタが階段から転げ落ちてくるルイズにも驚いたが、何より驚いたのは、

「ひどい、こんなにボロボロで……階段から落ちてこんなになるなんて。」

恭弥にやられてボコボコにされたルイズの格好、および顔だった。
階段から落ちてこうなったと思っているシエスタに違うと言いたかったのだが、ダメージが大きくまともに話せるような状態ではない。
急いでルイズを医務室へと運び医療班に預けると、学院長に言われたとおり恭弥のいる執務室へと向かって行った。

「キョーヤさん?失礼します。」

シエスタがノックをして執務室に入ると、先ほどのルイズのせいで目が覚めてしまった恭弥が新たに来た書類の整理を行っていた。

「あぁ、シエスタか。何か用なの?」

「あ、はい。キョーヤさん、このごろ書類の整理や見回りでお疲れだろうと思いまして。それで、飲み物でもいかがかなって思いまして。」

そう言いながらシエスタはポットからお茶を入れて恭弥の机に置く。
すると恭弥は何も言わずに飲み始め、再び書類と向き合った。

「お忙しいですか?」

「見てわからない?他の奴に任せるとろくな判断しそうに無いし、客観的に見れる奴がやらなきゃいけないんだよ。」

恭弥は生徒達からの要望を全て目を通し、無言でほとんどを捨てていく。

「あの……キョーヤさん?そんなほんの少し読んだだけで捨てちゃうなんて……」

そう言うシエスタを横目で見てため息を吐くと、恭弥は何枚かの書類をシエスタに渡した。

「教室の改正。広場にもっといいテーブルと椅子を。…男女の寮を自由に行き来する校則。……男女の更衣室の共同化。」

「見ててどれも案として成り立ってないでしょ?だから捨てただけだよ。大半は書いた奴を見つけ出して咬み殺してるけど。」

恭弥の仕事の中にはそれも入っている。
風紀委員は学院の生徒が中心に作られており恭弥以外の風紀委員もメイジなのだが、ほとんどがドットやラインといった下位クラスのメイジなので大きな仕事には携われないのが現状。
故に恭弥が仕事のほとんどをこなすしかないのだ。

「そうなんですか。あれ?これは?」

シエスタは床に落ちていた一枚の絵を見つけて恭弥に渡した。

「あぁ、新しい制服の考案だよ。一応並中の制服が元だから、これで進めていくつもりだよ。」

「ナミチュウ?」

「僕が昔通ってた学校。そこの制服だよ。もう注文はしてるけど量が多いから、できるのは早くて一月後だね。それまでは不服だけどあの制服で我慢するけど。」

シエスタは我慢って恭弥がするのかと突っ込みたかったが、言っても無駄なような気がして口から出ることは無かった。
シエスタは恭弥から書類を半分奪うと別の机に書類を置き、一枚一枚丁寧にチェックし始めた。

「何してるの?」

「見ての通りお手伝いです。キョーヤさん、見るのは早いですけどそれでもこの量じゃ日が暮れちゃいます。それに、学院長先生に言われて私も風紀委員の秘書となることになりましたから。」

シエスタが言った一言に、恭弥は驚きお茶を落としてしまった。

「何で君が風紀委員の秘書なの?君にもあの爺さんにも頼んだ覚えは無いんだけど。」

「何でも、キョーヤさんとある程度仲が良くて、暴走を抑えられそうな人ってことらしいです。」

「……やっぱり群れるとろくな事がないね。」

恭弥はどうやってオスマンに制裁を加えようかと考えたところに、シエスタが何枚かの書類を持って渡した。

「これは次の新しい校則に活かせそうなので、一応目を通していただけますか?それと、この書類はお風呂の湯がたまに水になるって事らしいので、これは学院長に渡しておきます。それとこっちは……」

恭弥が渡された書類に目を通すと、他にもここはこうすれば校則として成り立つなど様々なことが書かれており、見やすい形であとは恭弥が判を押すだけの状態になっていた。

「あの、何か間違えましたか?」

書類を見て黙っていた恭弥に対し、何かミスをしたかと不安になったシエスタは恭弥の顔を覗いて尋ねてみた。

「まぁ、秘書としての資質はあるみたいだね。」

恭弥はそう言うと引き出しから四つのリングを取り出しシエスタに渡した。

「これからは風紀委員会の仮会員としてここへの出入りを許してもいいよ。これはその証。」

「ありがとうございます。ところで、どうして仮なんですか?」

「弱い草食動物は必要ないけど、君の秘書としての実力は優秀みたいだし。正会員になりたかったら……」

恭弥はシエスタに持たせた指輪をトントンと叩き、自分のはめてる指輪から紫の炎を軽く灯した。

「このように指輪に炎を灯してごらん。そしたら戦い方と使い方を教えてあげる。あぁ、安心していいよ。波動があればメイジじゃなくても灯せるから。」

「……わかりました。どうやって炎を灯すんですか?」

「簡単だよ。死ぬ気になれるだけの覚悟があれば、リングは応えてくれるから。それじゃあ僕は見回りに行くから、書類と入会届け書いておいて。使えると思ったものと入会届けは僕の机に置いておいて。」

恭弥はそう言うと見回りのために執務室から出て、シエスタは書類の山が残った執務室に残される。

「死ぬ気になれるほどの覚悟。か……」

シエスタは自分が死ぬ気になれることはなんだろうと考え始めた。
料理をすること?人のお世話をすること?いろいろ考えてはみたがどれもが死ぬ気でやるほどの事じゃない。

(よくわからないなぁ。)

書類の山を整理、および確認しながら死ぬ気に関して考え始める。
しかし、どれもこれもがいいものとして浮かばない。

(それが出来なきゃ、正式な風紀委員にはなれないし。)

シエスタはため息を吐きながら、目の前の書類をテキパキと片付けていく。
そして恭弥が帰ってくる頃には書類の山は全て片付きいており、あとは恭弥が承認の判子を押すだけとなっていた。
















間幕は3まで続けようと思ってます。
番外編も考えていますが、今のところ案は二つですね。
1、Ifの過程でリボーンキャラが呼ばれた短編集(ギャグ)
2、浮雲と惚れ薬(アニメ一期第九話)
こちらも完成し次第投稿します。



[12721] 間幕2 浮雲と死ぬ気の炎
Name: 雷雲◆c51a39a7 ID:19d45be4
Date: 2009/10/30 23:04
シエスタの仮入会から三日。
最近彼女の様子がおかしいことに気付き始めた風紀委員達だった。
最初こそは恭弥の言いなりで秘書としての仕事しかしていなかったが、最近は他の委員達の怪我を治療しようとしたり、執務室に戻るとお茶を入れてくれたりと風紀委員会のアイドルと化していた。
もっとも、委員達がシエスタに群がっているのを恭弥が目撃すると咬み殺されるが、そうなるとシエスタが治療しようとするのでどちらにしても役得だ。
そんなシエスタの様子がおかしいとなれば委員達の士気が落ちるのは当然。
そこで恭弥がシエスタにそれとなく、では無く直球で聞くが、シエスタはなんでもないと言い張る。
だが次の日、時間になっても執務室へ来ないシエスタ。
仕方なく恭弥は自ら迎えに行くことにする。




間幕2 浮雲と死ぬ気の炎





「いない?どういうこと?」

恭弥はシエスタの部屋へ行くがすでに人がいないどころか荷物すらなく、どういうことかと食堂へ行きマルトーに聞いてみる。

「聞いてないのかい?なんでも、急にモット伯って貴族に使えることになって、朝早くに学院を出て行ったぜ。」

「ふぅん。」

恭弥は興味がなさそうに相槌を打つと、そのまま執務室へ戻っていく。

「委員長!シエスタさんは?」

執務室に戻るとシエスタを心配した委員達が恭弥が戻ってくるや否や集まって問い詰める。
結果、群れてると判断されて咬み殺されボロボロになってしまった。

「シエスタならいなくなったよ。モットって貴族に仕えることになったって話だけどね。」

「モット!?モット伯爵ですか!?」

ざわざわと騒ぎ始める委員達をよそに、恭弥は完全に無視して机の上や中をいろいろ探し始める。

『相棒、それって結構やばいんじゃねぇのか?』

すると、話を聞いていたデルフが鞘から金具を出して話しかけてきた
なぜか話せるようになって。

「……いつの間に解いたの?」

『あぁ、この間そこの奴に解いてもらったんだ。』

恭弥がその方向を見ると委員の一人がビクついたため、すぐさまトンファーでボコボコにしておいた。

『相棒、えげつねぇ。』

恭弥はデルフの言葉を無視して再び机の中をさぐり始める。

『んで、さっきの続きだがよ。貴族が若い女を名指しってことは、普通自分の妾になれってことだ。』

「妾?結婚しろって事?」

『まぁ、結婚って言ったって大抵は夜の相手をさせられるだけだな。妻としてきちんと扱われるのはほとんどねぇに等しいぜ。』

「………」

恭弥はそこまで聞くと引き出しを捜すのを止めて一枚の紙を取り出した。

「委員長!デルフさんの言ってることは本当です!すぐに助けに行かないと大変なことに!」

副委員長であるベントが言い切る前に恭弥は懐に取り出した紙を入れて立ち上がり、すぐさま執務室から出て行く。

「委員長?」

急に立ち上がって出て行った恭弥に驚き、動揺を隠せない委員達。

「もしかして、シエスタさんを助けに?」

「じゃあ俺達も!」

「待て!シエスタさんを取り戻しに行ったとなれば戦うことになる!もし俺達が行ったら……」

恭弥が戦っているところへ乱入する風紀委員達。
それを想像した結果、

「咬み殺される……」

嫌な想像にしかならなかった。

「委員長を信じて待つしかねぇな……」

恭弥がシエスタを助けに行ったと疑わない委員達は、二人がいない間に学院の風紀を守ろうと奮闘することになった。










「いた~……まったく、あいつはご主人様をなんだと思ってるのよ。」

先日恭弥にボコボコにされて階段から突き落とされたルイズは、今日になってようやく医務室から出られることになった。

「まぁ、ゼロのルイズじゃ仕方ないわね。やっぱりダーリンの手綱を握るのは私かしら?」

「……彼は誰にも従わない。」

ルイズと一緒に出てきたキュルケとタバサの二人。
なんだかんだ言いつつ三人は仲がいいようだ。

「勝手なこと言ってんじゃないわよ!あいつ、今度こそ絶対に言うこと聞かせてやるんだから!!」

そういいながらルイズは再び恭弥のいるだろう執務室へと歩いていこうとすると、目の前を馬が猛スピードで駆け抜けた。

「きゃっ!な、何?」

「今の、ダーリン?あんなに急いで何処に行くのかしら。」

「……事件?」

タバサの一言に何かを感じたルイズたちは、ちょうど塔から出てきた風紀委員を捕まえて聞いてみることにした。

「あぁ、委員長はシエスタさんの救出に向かいました。」

「救出?どういうことよ。」

風紀委員の説明でシエスタがモット伯に連れて行かれ、それが完全に脅迫まがいの事と知った恭弥が彼女を助けに行こうとしているということだった。

「何考えてんの!?この学院内ならまだしも、伯爵クラスの貴族に喧嘩売って勝てるわけ無いじゃない!!」

ルイズはそう言うと馬小屋まで走り馬を借りようとする。
だが、すでに馬は全て貸し出されており出かけることも出来ない状態だった。

「……乗って。」

どうしようかと困っていたとき、タバサとキュルケがシルフィードに乗って現れた。
どうやらこの二人も恭弥を追うつもりらしく、ルイズの事を乗せてモット伯の家まで飛ばしていった。

「ありがとう、タバサ。」

「礼はいらない。」

三人と一匹は恭弥を追いかけ空を駆けた。










一方恭弥はすでにモット伯の屋敷に到着し、馬から下りて門の前まで来ていた。

「何者だ!」

すると、すぐに門番に捕まり槍を向けられた。
だが恭弥はそれをものともせずに弾き飛ばすと一瞬で門番も撃破。
その音を聞きつけた他の衛兵達も駆けつけ、恭弥を取り囲んで槍を向ける。

「シエスタは何処?」

しかし、恭弥はそんなことお構い無しに自分の目的であるシエスタの場所を聞き出そうとする。

「賊などに答えるものか!!」

一人の衛兵の言葉を始めに、多くの衛兵が恭弥目掛けて突撃する。
恭弥は自力で探すしかないと決意し、突撃してきた衛兵を一人、また一人と気絶させていく。
その騒ぎはじょじょに大きくなり、モット伯の耳に入ってきた。

「モット伯!侵入者です!!」

衛兵の一人がモットの部屋へと向かって行くと、モットはちょうどシエスタに構っていたところだった。

「侵入者?そんなもの、衛兵達がやっつけるであろう。」

「それが、多くの衛兵達が戦っているにも関わらず、倒すことは出来ず。すでに十人以上倒されています!!」

衛兵の報告にモットは驚きを隠せずに声を荒くした。

「馬鹿な!たかが賊相手にてこずるなど、相手は何人だ!!」

「相手はたった一人の平民です!ですが、物凄く強く!」

「この役立たずども!全員縛り首だ!!」

モットはそう言い衛兵を追い出すと再びシエスタに向かった。

「すまないね、シエスタ。私は賊の退治に行ってくるから、君は湯浴みを済ませなさい。」

そう言いつけるとモットは自らが前線に赴き、賊を退治しようとする。
シエスタは悲しそうな表情で窓から外を見つめた。

(キョーヤさん、黙って出てきたこと怒ってるかな?でも、私なんか所詮仮入会しただけだし、そんなに怒ってるはずないよね。)

自分以外にも優秀な秘書が現れるだろうとシエスタは思っていると、騒ぎが窓の下まで広がってきた。

(でも、今屋敷を騒がせているのっていったい……貴族の、それも伯爵の屋敷に単独で攻め込むなんて、命知らずもいいとこ……)

シエスタがそう思っていると、賊の姿が彼女にも見えた。
黒いスーツに黒い髪。
両手にトンファーを持ち衛兵達を倒していく男の姿を。

「ってキョーヤさん!?」

姿を見るや否や窓にへばり付き、恭弥の姿を確認していく。

(確かにキョーヤさんだけど、何で!?もしかして、私を連れ戻しに?)

恭弥が貴族の屋敷に攻め込むなど何か理由が無ければやらない。
どう考えても思い当たる節は自分しかなかったシエスタは、すぐさま部屋から飛び出し恭弥の元へと走る。










一方ルイズたちはモットの屋敷に到着すると、すでに当たりは倒された衛兵で埋め尽くされていて手遅れだったことが判明した。

「……」

「まさかここまで……」

「……彼らしい。」

三人はそれぞれこの惨劇の感想を述べると、聞こえてくる悲鳴や打撃音を頼りにその場所へと向かっていく。
すると、そこでは恭弥が最後の衛兵を倒したところだった。

「あんた!何してんのよ!こんなことしたらモット伯どころか軍が動いちゃうじゃない!あんた死刑になるわよ!!」

恭弥が振り返ると、すでに返り血で服が赤く染まりトンファーも真っ赤になった状態であり、すでに手遅れの状態だった。

「何しに来たの?邪魔だから帰りなよ。」

「帰れって、そんなことできるわけないでしょ!?あんた、あのメイドに何処まで入れ込んでるのよ!」

「彼女はまだ僕の秘書だよ。だから渡すものがあっただけなのに、こいつらが答えないのが悪いんだ。」

恭弥はそのまま屋敷の中に入ろうとしたとき、杖を持ったモットが目の前に現れた。

「貴様が侵入してきた平民だな?」

「だったら何?邪魔するなら咬み殺すよ。」

恭弥もトンファーを構えて応戦する体制になる。

「貴族に楯突くとは、身の程知らずな平民だ。私の二つ名は波濤、波濤のモット!水のトライアングルメイジだ!」

モットがそういうと池から水が蛇のように昇り恭弥に襲い掛かる。

「ワォ、それは好都合だね。シエスタの居場所、吐いてもらうよ。」

恭弥はその水を簡単に回避するとモットへ向かって特攻する。

「馬鹿め!!」

モットは杖を振ると水が進路を変えて恭弥に追い討ちをかける。
それに気付いた恭弥はトンファーで水をバラバラに砕くと、再びモットへと向かって走り出した。

「なかなかやりおるな。なら、これならどうだ!!」

すると今度は水を氷の刃に変えて恭弥に向かって放つ。
恭弥は足を止めることなく全てをかわして走り抜けるとモットへ向けてトンファーを振り上げた。

「キョーヤさん!止めてください!!」

振り下ろそうとした瞬間、誰かに呼び止められ恭弥はトンファーを止めた状態で声が聞こえたほうを見ると、そこに立っていたのは探していたシエスタだった。

「何してるんですかキョーヤさん!貴族のお屋敷に入り込んで暴れるなんて、大犯罪ですよ!殺されても文句は言えないんですよ。」

「君こそ何してるの?僕の許可なしに勝手にいなくなるなんて、そんなことは許さないよ。」

シエスタは恭弥の一言に自分を迎えに来てくれた嬉しさと、恭弥を危険にさらすわけにはいかないという考えの中で葛藤していると、やがて決心がついたのかモットの前まで歩き跪いた。

「モット伯爵、この者の無礼をお許しください。」

「ならん!斯様な平民の無礼を捨て置いては、ジュール・ド・モットの名が廃る!そこをどけシエスタ!!」

「出来ません!お願いします、私はどのような罰でもお受けいたしますから!!」

二人が会話をしている中、恭弥だけは我が物顔で歩き出しシエスタに一枚の紙を渡した。

「これは?」

「風紀委員の退会届だよ。机の上とか引き出しの中見たけど、出してなかったみたいだからね。」

ようは風紀委員の決まりごとである<脱会するのは委員長の命令か書類を提出しなければならない>に違反しているとして、シエスタに脱会の書類を書かせるために恭弥は来たのだ。

「そ、そんな事のために?」

「そんなこと?風紀委員が決まりごとを守らなくてどうするの?君はこの書類を提出するまでは、まだ仮とはいえ風紀委員の一員なんだからね。」

風紀を絶対の規律として守ることが当たり前となっている恭弥には、些細な違反でも片付けるまでは突き進むという嫌な性分があり、その結果が貴族の屋敷で大暴れという最悪の結果となった。

「……わかりました。モット伯爵、彼は私の規約違反のためにここまで来たのです。罰は私にありますのでどうか彼をお許しください。」

モットはまだ納得がいかないようだが、規約に違反したのが自分が強制的に連れてきたせいと思ったのかその場で恭弥に退会届を出せば許すということにする。
それを聞いたシエスタは急いで書くために恭弥と共に部屋へと向かい、ペンにインクをつけて書き始めようとする。
だが、これを書いたら風紀委員とも、恭弥ともお別れとなることを思うとどうにも手が進まない。

「シエスタ。早く書かないか!」

モットにせかされシエスタは書類にサインして恭弥に渡す。

「これで君は風紀委員をだっ……」

恭弥はシエスタの顔を見るとそれ以上言えなかった。
シエスタの顔にはあふれ出る涙が顔を汚しており、よく見ると書類にも水滴がついていて所々滲んで読めなくなっている。

「キョーヤさん……お世話になりました。……短い間でしたけど、キョーヤさんと一緒にいられて嬉しかったです……この指輪もおかえしいたし…っ!?」

シエスタがポケットに入れたままだった四つのリングを恭弥に渡すと、恭弥はそれをシエスタの指につけた。

「ここまで濡れて滲んじゃったら、退会届として認められないよ。帰るよ。」

恭弥は退会届を破り捨てシエスタの手をつかむと、一緒に部屋へ来ていたルイズたちを無視して部屋から出て行こうとする。

「平民が……ふざけるな!!」

せっかく自分が大幅に譲って許したというのにそれを無にした恭弥が気に食わないのか、モットは水の刃を作り出し恭弥に向けて放つ。

「キョーヤさん!!」

恭弥は気付くのが遅れトンファーを取れる状況ではなく、体勢も振り向いた状態のため悪く回避も出来ない。
このままじゃまともに受けると思った恭弥の前に、シエスタが入ってきて恭弥の盾になろうとした。

(私は、キョーヤさんと一緒にいたい!だからそのために……死ぬ気でキョーヤさんと並んで立ちたい!!)

シエスタに刃が当たる瞬間、赤と緑の炎が水の刃を防いだ。

「な!?」

「何あれ!!」

「ダーリンと一緒!?」

「……っ!」

これにはモットだけではなく、ルイズやキュルケ、タバサまでが驚いた。

「こ、これって……」

「それが死ぬ気の炎だよ。」

驚いたシエスタとは裏腹に、やはりと思っている恭弥はシエスタに笑いかける。

「これで君も晴れて風紀委員の正会員だね。ここからは僕の許可なしじゃ退会は出来ないから。」

そういうと恭弥もリングに炎を灯して匣兵器を開匣。
雲ハリネズミを増殖させて巨大化した。

「ウチの会員がお世話になったね。お礼にあなたを、咬み殺す。」

恭弥がそういうと雲ハリネズミは回転をはじめ、モット目掛けて突撃し遠くへと吹き飛ばす。
屋敷に開いた大穴から風が入ってくると同時に、恭弥のリングが音を立てて砕け散った。










「あの……キョーヤさん?」

その日の夜、恭弥は馬にシエスタと二人で乗り学院を目指していた。

「何?」

「これ、バレたら打ち首どころじゃすまないんですが……」

シエスタがチラッと後ろを見ると、そこには宝石や金貨の詰まった袋が大量に乗せられた荷台が引かれていた。

「どうせあんなの私腹を肥やしているだけの無能な奴でしょ?むしろあれを排除したんだから感謝して欲しいけど。」

ルイズたちは呆れてモットをどこかへ飛ばした後帰っており、その後金品を頂戴し雲ハリネズミを巨大化させて屋敷ごと潰してきた。

「それに、皆には感謝されてたよ。」

その際、メイドや使用人を全員外へ出してから行ったのだが、屋敷が潰れた瞬間全員が歓声を上げていた。
事情を聞くと借金のかたに売られたり、シエスタのように強引に連れてこられたものがほとんどで、これを明るみにされたくなければ大人しくしてろという手紙までおいてきた。

「それに、余計なことを考えてる暇は無いよ。君にはこれから戦闘訓練もしてもらうんだから。」

「え?」

シエスタは恭弥の戦闘訓練(という名の部下虐め)をいつも窓から見ており、じょじょに恐怖で顔が引きつってくる。

「当然でしょ?死ぬ気の炎が使える時点であいつらよりは使えるようになったんだから、使いこなせるようにならなきゃね。」

恭弥は満面の笑顔を浮かべるが、シエスタにはこれが死神の笑顔に見えた。

「というわけで、明日から早朝訓練をするから。遅れたら……咬み殺す。」

満月が輝く夜の森に、シエスタの悲鳴が木霊した。



[12721] お知らせ
Name: 雷雲◆eb8a1b71 ID:1759322e
Date: 2011/01/01 00:14
どうも、かれこれ一年以上更新してなかった作者の雷雲です

ここ一年出張でパソコンの前に出れず、携帯では投稿できない事からほったらかしにしてしまい申し訳ございません

久方ぶりにこちらを見てみると確かにこれではいけないと思い、もう一度一から執筆しなおすことにしました

楽しみにしていた方もいましたがこれからもよりよく皆様に楽しんでいただける作品を作るため、厳しい意見や感想も取り入れていきたいと思うので今後ともどうかよろしくお願いします

ところでこれって残したほうがいいでしょうか
それとも削除したほうがいいでしょうか


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