ドイツの児童ポルノ禁止強化の中身が実際のところよく分からないなぁ

2009/02/12

永続的リンク 01:04:11, 著者: Nobuo Sakiyama メール , 3129 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 児童ポルノ問題

ドイツの児童ポルノ禁止強化の中身が実際のところよく分からないなぁ

昨年末、MIAUで出した「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終とりまとめへのパブコメのさいに、ドイツの児童ポルノ禁止強化の内容を調べてパブコメにも書いた。その部分は、単純に根拠条文の問題でとりまとめ案に不適切な部分があったので修正を入れてもらった感じで、たいした話でもないのだけれども、それは法律レベルの話で実際のところ、よく分からないことがある。

まず、昨年あったドイツでの法改正は、従来の児童ポルノ(kinderpornographischer Schriften)が14歳未満を被写体とするものであったところをいじらず、あらたに jugendpornographischer Schriften (少年少女ポルノ、とでも訳す?)という14歳以上18歳未満を被写体とするものを作って、そこで禁止している。18歳未満が被写体同意のもとで単純所持することが単純所持禁止の例外になるとか、罰則が従来の児童ポルノより軽い、といったことで別条文になっているだけなので、一般的な状況で何が禁止されるか、ということには違いはない。

よく分からないのが、結局何がここでいうポルノなのだろうかということ。以前もふれたのだけれども、ドイツのBRAVO(リンク先はWikipediaの説明)という発行部数40万部以上の代表的なティーン誌では、長らく、男女のヌードと彼らへの性生活についてのインタビューを一緒に掲載するという連載が続いている。年齢は、以前は14歳以上からだったが、数年前から16歳から20歳ということになっている。まず、この連載のモデル募集が、今年になっても変わっていない。

Willst Du auch mitmachen?

Bist Du zwichen 16 und 20? Dann schick
Deine Bewerbung mit Foto [Ganzkörper] an:
Redaktion BRAVO -- Kennwort „That's me“,
(住所略)

Bei Veröffentlichung gibt es ein Honorar
von circa 400 Euro!

BRAVO Magazine

という内容で、現在も18歳未満をヌードモデルとして募集していることに気づいた。ただ、この連載は単体ヌードで、写真自体にも猥褻さはないので、変わらない、ということはよく考えれば不思議ではなかった。とはいえ、これは気になったきっかけ。この連載はDr. Sommer(バーチャル人格)による性教育コーナーの一部で、コーナーの中では、過去に10代のカップルのペッティング写真を使った連載もあった。ということで、BRAVOの50周年記念のデジタルアーカイブサイト(全記事があるわけではない)を確認してみたところ、Dr. Sommer のコーナーは1960年代からあり、ヌードは1970年代から現れはじめ、少なくとも1980年代には10代に見えるカップルのペッティング写真があり、1990年代では、カップルの少なくとも片方について18歳未満の年齢が明記されている同様の写真があった。細かい話をすると、単体ヌードや、立って軽く抱き合っているぐらいのポーズでは性器が露になっていても、ペッティング写真においては裸ではあっても性器が見えないポーズになっている、ということで、ハードコアポルノグラフィとは明らかに一線を画していて、さらに「性教育」の文脈で制作されていることから、そもそもペッティング写真ですら、猥褻さ、卑猥さを感じさせるものではない。そういう意味では、おそらくドイツでの文化的な意味では「ポルノグラフィ」ではないのだけれども、しかし、前述のような法改正をへて、なお堂々と公式のアーカイブサイトに置かれ続けている、というのは少々驚いた。

日本における現行の児童買春・児童ポルノ禁止法の定義では、上記で述べているBRAVOの写真のうち18歳未満が被写体となっているものはほとんどが児童ポルノとされるだろう(だから、ここにはBRAVOの公式サイトやアーカイブサイトへのリンクは置いていない)し、民主党案が定義を狭めているといっても、さすがにペッティング写真は救済されなさそうな気がする。BRAVOはドイツのメインストリーム文化の中に居座り続けている雑誌だから、日本の10代の少年少女が親の転勤などでドイツに在住して手にとることが十分ありうるので、法改正で「単純所持禁止」や「有償・反復取得禁止」などに国外犯規定がついたらどうなることやらと考えてしまうし、ブロッキングといってアンダーグラウンドのサイトではなくてドイツのメインストリーム文化に属するサイトをブロックするのがいったい誰のためになるのかしらとも思ったりする。というか、児童ポルノ規制強化推進に勤しんでいる方々は、ドイツの状況について率直なところいったいどう思っているのだろう?

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