東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 千葉 > 1月1日の記事一覧 > 記事

ここから本文

【千葉】

胎動 中房総<1> 広めたい「中房総」

2011年1月1日

崖に囲まれたドン・ロドリゴ上陸の地=御宿町で

写真

 本県の観光地といえば、東京ディズニーリゾートや成田山新勝寺、幕張新都心、南房総の豊かな自然などを思い浮かべる人が多いはず。県内には外房、内房、南房総、北総、上総(かずさ)、下総(しもうさ)といったエリアの呼び名があるが、そのどれにも当てはまらず、観光地としてもあまり知られていない地域がある。「中房総」。二〇一二年度の圏央道(木更津東−東金、四十三キロ)開通を機に、この呼び名を広めようと、さまざまな取り組みが始まっている。では、どんな地域なのか。意外な発見や面白さを紹介したい。

 中房総には何があるのか。歴史と意外な発見を求めて歩いてみると…。

 御宿町岩和田の岩場には、真下に五メートルほど伸びるロープがある。このロープで降りると、ドン・ロドリゴ上陸の地と呼ばれる小さな砂浜に着く。海から強い波が押し寄せ、三方は絶壁に囲まれている。

 徳川家康が江戸幕府を開いた六年後の一六〇九年、スペイン領フィリピンの総督ロドリゴやメキシコ人ら三百七十三人を乗せた船が、嵐によって御宿沖で座礁した。凍えながら漂着する船員三百十七人を海女たちが体温で温めるなど、地元民は総出で助けた。

 当時は鎖国前。救助されたロドリゴらは大多喜城(大多喜町)に招かれ、歓待を受けた。その後、江戸城へ。駿府城(静岡市)では家康とも会った。家康が与えた船でロドリゴはメキシコに戻り、日本の見聞録を執筆。「村人たちはコメ、野菜、魚などを惜しみなく与えてくれた」と好印象を記した。

 一九七八年に来日したメキシコ大統領は両町を訪問して感謝の意を伝えた。大多喜城に向かう遊歩道はメキシコ通りと呼ばれ、古代メキシコの魚や鳥をかたどったタイルが埋め込まれた。

 二〇〇九年には、御宿町でメキシコとの交流四百周年の記念イベントが開かれた。歴史に詳しい同町の土屋武弥さん(67)は「自然(嵐)がなした偶然の交流」が四百年後も続いていることを喜ぶ。

野菜や果物、海産物などが並ぶ勝浦朝市=勝浦市で

写真

◆歴史や意外な発見

 JR勝浦駅近くで開かれる朝市も、四百年以上の歴史がある。輪島(石川県)、高山(岐阜県)とともに三大朝市と呼ばれ、二百メートルほどある通りの両側には、多い時で五十店ほどのテントが並ぶ。「観光で来た人がリピーターになってくれる」と酒井きみこさん(66)。本業は生花店だが、野菜や果物も売っている。得意客の名前が並ぶノートを誇らしげに見せてくれた。朝市は元日と水曜は休み。

 茂原市では、太平洋戦争の歴史に触れることができる。JR新茂原駅から東に歩くと、かまぼこ形の奇妙なコンクリート建物が見つかる。掩体(えんたい)壕と呼ばれ、数は計十一基。戦時中、海軍の基地が近くにあり、戦闘機を敵の攻撃から守るために造られた。

 今はすべて民間で所有され、民家の物置になっていたり、ごみ捨て場になっていたり。川口昭人さん(74)方では卓球場に使っている。「中学生の孫が卓球部。練習相手をしているんだよ」と笑う。

 長南町には県内で唯一、名水百選に指定されている熊野(ゆや)の清水がある。弘法大師(空海)が水不足に悩む農民を見かねて、水を湧き出させたと伝えられる。室町時代には、鶴岡八幡宮(神奈川県)直営の湯治場としても栄えたという。

 木筒から流れ落ちる水を飲むと軟らかい味。二リットルのペットボトルを何十個も持ってきた大網白里町の夫婦は「新鮮です」と、料理などに使っている。

 飲むといえば、大多喜町小田代の旅館「新川」には、飲むことができる温泉の源泉がある。消毒やろ過をしていないというから驚きだ。手ですくうと冷たい。「この辺りは火山がないので一八度前後」と、女将(おかみ)の新戸智絵さん(38)。硫黄のにおいがし、かすかな塩気が口に広がる。試飲は旅館の利用客が対象だ。

 市原市南部の国道297号は、通称「ゴルフ場銀座」と呼ばれる。市内に三十三カ所あり、市町村別では日本一。なぜ、こんなに増えたのか。

 市観光協会は「理由は三つ考えられる」と説明。なだらかな地形で、使っていない土地が多く、都心から近かったためだとか。市産業白書では、二〇〇九年の利用者数は百五十二万人にも。ゴルフ場ごとにオリジナルカレーをつくり、味を競ってゴルフ客以外にも来場してもらう計画が進んでいる。

 長柄町針ケ谷に〇二年オープンしたクマの森ミュージアムも面白い。木彫りのクマ約百二十頭が生活。オーナーの小野塚万人(かずんど)さん(68)が、チェーンソーで丸太を切って作った。東京から引っ越してきて十年。「自然を楽しめる場所」とこの地域を絶賛する。年中無休。 (那須政治)

 

この記事を印刷する





おすすめサイト

ads by adingo