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デュビレはこれまでに「ナショナル ジオグラフィック」誌の記事を50本以上手がけている。力強い美しさが、その写真の特徴だ。印象的な構図、鮮やかな色、光と影、躍動感が見る人をひきつける。
視覚に訴える写真を撮り続けるのは地上でも容易ではないが、水深60mに及ぶ海中での撮影にはさらに多くの困難を伴う。だが、水中で撮っても地上で撮っても写真の価値に差はないというのが、デュビレの長年の考えだ。「写真家の想像力と技術が必要なのは、地上でも水中でも同じことだ」
水中での撮影は、暗さや寒さ、危険とも隣り合わせだ。写真家も撮影機材も水に流されて揺れ動き、三脚もライトスタンドも使えない。それに、写真に撮られたがる魚などいない。「水中写真家はハンターのように、見つけた被写体にそっと忍び寄り、正面に回り込んで魚の視線をとらえるんだ」とデュビレは言う。
それでも、デュビレはこれからも見る人の心に残る水中写真を撮っていきたいという。「被写体の面では、生物の驚異的な姿や行動をとらえていること。技術的には、光の表現が美しく、その場の雰囲気を伝えていること、カラーなら水中でゆらめく色の世界を、またモノクロなら光と影を効果的に表現していることなどが、いい水中写真の条件」とデュビレは語る。
水中撮影は時間との闘いだ。「地上と違って、水中では2時間撮れればいい方。水深45mになると撮影できるのは1日約20分で、暗くて視界も限られる」。それでも許された時間の中で、あらゆるものを執拗に撮るのがデュビレの流儀だ。「週にフィルムを50本使うこともあるが、うまく撮れるのはそのうち1本分程度だね」


ダイバーを取り巻くように、ゆっくりと円を描いて泳ぐバラクーダの群れ。南太平洋でこの光景に出会ったときの記憶を、デュビレは「海で経験した最高に素晴らしい瞬間の一つだった」と振り返る。被写体の下から太陽に向かってカメラを構え、カメラと別の位置から2台のストロボで光をあて、16mm対角線魚眼レンズで撮ったのがこの写真だ。 |
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