TOP>コラム 算数・数学 19. 徒然 書店探訪草 (3) 5月、6月と4回大阪に行く用事があり、その空いた時間に、書店に立ち寄りました。いい本との出会いがありました。 それについて書くのですが、まわった書店は、ジュンク堂書店の梅田店、ジュンク堂書店の大阪本店、旭屋書店、ブック1stです。 大阪駅周辺は、これらの大きな書店が歩いてまわれる距離にあるので、実に便利がいいです。 もちろん、これらを1日でまわったのではありません。また、昔のように、丸々一日を本屋で過ごせるような贅沢な時間のとり方はできません。 ひとつの本屋に立ち寄って、私に許された時間の中で、ダーーッと見ていくのです。それで、時間はいっぱいです。 さて、時系列で書くよりは、内容別にまとめて書いたほうがよいと思いますので、必要なところは時系列も取り入れながら、内容別に分けて書きます。 T. 分数の割り算 探訪 ジュンク堂書店の梅田店でした。帰りの高速バスの出発時刻までの2時間ほどをここで過ごしたときのことです。ここでは、まっすぐ数学の専門書コーナーに行きました。たくさんありますから、次々に手にとっては見ていきます。 このセクションの表題を上記のように『分数の割り算 探訪』としましたが、もともと分数の割り算に関する本を探していたのではなく、手当たり次第に面白そうな本を手にとって見ていたのです。 パラパラとページをめくってみて、感じるところがない本はすぐに書棚に戻していきます。 そうしているときに、1冊の本に出会いました。
それが、この本です。 『中高一貫数学コース 数学1』 (志賀浩二著、岩波書店) パラパラとページをめくっていて、なんと! 目が釘付けになりました。そして私の顔は思わずほころびました。 「同じだ!」 これについて、説明するのは、少し後に回しましょう。 志賀浩二さんは、私が大学生時代に、 『現代数学への招待 多様体とは何か』(1890年) という本を岩波書店から出しており、その頃の数学書としては珍しく「親切で分かりやすい本だなあ」と思って購入して読んだものです。
実は、私はその後この本を買っていないのです。このときは、「よし!買おう!」と思い、この本を持ってレジへ行こうとしたその瞬間、別の本が目に入ったからでした。
お金は3000円しかなかったので、別の本の方を買いました。この本は右の写真の中にあります。次のコラムでそれについて書きます。 志賀さんの本の話にもどりましょう。 私の顔は思わずほころび、「同じだ!」と思ったんだったですね。 何が同じだったのかというと、分数の割り算の説明の仕方が、なのです。 「今の小学校の教科書が採用しているやり方は、初めて分数の勉強をする児童にとっては、適当でない」ということをこれまで何度も述べてきました。 数学教育アカデミーの採用している分数の割り算の説明は、それとは違うのでした。 そして、これまで、本屋に寄るたびに、数学教育アカデミーの採用している分数の割り算の説明と同じ説明をしている本はないのか?と興味を持って見ていましたが、なかったのです。 当然、数学教育アカデミーの説明のしかたが一番いい、と自負しています。なのに、それがどの本を見ても見当たらないのはどうしてか? 私はずっと不思議だったのです。 それと同じものに、ここで初めて出会ったわけです。 私の顔がほころぶはずでしょう。 ただし、志賀さんのこの本は、中学生向けですから、そのまま小学生には当然使えません。 この本の特徴を一言で言えば、中学生向けだけど、大変厳密である。 ですから、普通の公立の中学校でも当然使えません。本当の意味での高い基礎学力が要求されます。 けれども、分数の割り算に限っては、他のどの参考書よりも 「分かりやすい!」 のです。《情知意サイクル》の《情》から入って《知》に進むようになっていますから、その点でも分かりやすい。 さて、それでは、肝心の分数を分数で割ることの理由の説明はどうなっているのでしょう? ちょっと待ってくださいね。
志賀さんは、別に、 『数について』(岩波書店) という本も出しています。これも、分かりやすい。こっちは、「ふたりで」というコラムで《情》の部分に触れるようになっています。
実は、その数週間後、私は旭屋書店で 『算数から見えてくる数学』(岩波書店) という志賀さんの本を見つけたのでした。 分数の割り算の理由の説明は、これが最も分かりやすいでしょう。
2ページにまたがっていますが、たったこれだけ。そう。たったこれだけなのです。そして、この論理は、割り算を学んだ小学生がそのすぐ後に分数の勉強を始めても分かるのです。 (もちろん、この本では、文字を使った一般的な証明になっていますが、小学生には、具体的な数で体験させてあげればよろしい。それが、小学生という発達段階における、純粋に数学的な証明なのです。) 《スーパーらくらくプリント》は、このたった数行の証明を、何十枚ものプリントを使いさらに、小学3年生がこなしていくことのできるユーザーインターフェースを使って構成します。 実は、一番、わが数学教育アカデミーの書庫に持って帰りたかった本でしたが、私は十分「満足」してしまったのでした。そして、書庫にそろえるのは「いつでもいい」という気持ちになったのです。 でも、上に写真で紹介した本は、いずれすべて購入する予定です。 念のため、もう一度申し上げますと、内容は妥協なく厳密に論理が展開されていきますので、基礎学力のある中学生以上でないと、読み進めるのはしんどいかもしれません。 大学の数学科を出て教師になった方は、必携の書です。とても、面白く読め、さらにとても参考になるでしょう。 一般の(小中学校の)教師の方も、是非一度は目を通して欲しい本だと思います。 さらに、教育学部の教授の方や文部科学省の方や教科書作成委員の方にも、是非研究していただきたい、その材料となる本だと思います。 |
|
|||||||||||||||
|
|