image 導入事例
JVC(日本ビクター) HDメモリーカメラ“PICSIO(ピクシオ)”シリーズ
ユーザーインターフェースを担当する高見初秋さんにインタビュー
 JVCが2010年夏から発売する “PICSIO”シリーズの開発者インタビューを掲載します。

 “PICSIO”はJVCが日常のコミュニケーションツールとして提案する新コンセプトのビデオカメラです。その“PICSIO”シリーズの第二世代となるのが、今回の、防水機能搭載「GC−WP10」とスリムデザイン採用「GC−FM2」の2機種です。
 本機は、スナップ感覚で日常の気になるシーンを、“1920フルハイビジョン動画”と“5メガ静止画”で高画質に撮影することができるとともに、コンパクトなボディに、3型液晶のタッチパネルを採用し、直感的でスマートなGUI(グラフィカル ユーザー インターフェース)で、簡単な操作を実現しています。

 お話を伺ったのは、ビクターテクノブレーン株式会社で、JVCと共同でビデオカメラの制御ソフトウェア開発を担当する高見初秋(たかみ はつあき)さん。氏は今回の開発にあたり、“PICSIO”のGUI設計を担当し、アクロアーツとの連携に重要な役割を担われました。

 アクロアーツの導入事例までに、参考にしていただければ幸いです。

インタビュアー:株式会社セガ 近藤 文仁
──今回の“PICSIO”開発では、どの部分を担当されたのですか?

 既存システムに新しいグラフィックシステムを導入するための基礎検討から、デザインチーム等の関連部署との情報交換、そして実際の“PICSIO”のユーザーインターフェース制御を担当しました。
 また、アクロアーツを活かすためのGUI構造の基礎設計も行いました。
──アクロアーツの採用にあたっては、他の仕組みと競合したでしょうか?

 競合しました。選定にあたっては、機能や性能はもちろん、目的に合致しているか、柔軟性はあるか、そしてコストは見合うものかといった多くの側面から検討を実施しました。
──アクロアーツを選んだ決め手は何でしたか?

 私たちが求める表現力や方向性に強くマッチしたことと、アクロアーツならではのひときわ高い柔軟性です。
 もちろん、システムとして見た場合のアクロアーツには、GUIの最先端を行く業界ならではのアプローチが数多くあり、そこにも決め手となるポイントはいくつもありました。
──それはどのような機能でしたか?

 オブジェクト指向が強く意識された構成と、仮想化がもたらす柔軟性です。もちろん、プラグインシステムによる機能の変更も魅力でした。
 また、いわゆるビデオゲーム屋さん独特の、「1クロックを無駄にしない思想」が反映された軽量化ノウハウや、見栄えのする演出が容易に行える設計にも注目していました。
──アクロアーツを“PICSIO”のどういった場所に利用されましたか?

 すべての画面表示です。グラフィックRAMに描かれるもの全てがアクロアーツによって作られています。特に、“PICSIO”の顔であるトップ画面はアプリの力を一切借りず、アクロアーツ100%で動作しています。
 そのほかの画面でも、SRPA(※1)という情報共有の仕組みによって、既存アプリが主となって動く状況でも、アクロアーツはその動きを妨げることなく自由に動作することができます。
※1:SRPA はセキュリティや守秘の都合で仕様を公開できないシステム間にあって、円滑な連動を実現するために準備されたデータ領域と、そのアクセスライブラリです。
──アクロアーツを使ってみて、優れていた点はどこでしょうか?

 やはり、様々な制御スタイルを受け止められる懐の深さだと思います。 フォレスタ(※2)上で完結できる制御から、より高度なことができるドレッサ(スクリプトシステム)があり、ニーズとレベルに合った選択肢が豊富にあること、これは他のツールではちょっと見かけない柔軟性だと思います。
 例えば、インデックス画面でスルスル動くサムネイルリストは、LCMという専用のプラグインを利用して実現されています。これにより、多彩なサムネイル送り操作を簡単に実現できました。
 また、仮想化技術は表現の多様性と、コンテンツ作成の省力化に大きなアドバンテージがありました。
※2:アクロアーツで画面の構成を設計するツールです。
──デザインチームの反応はいかがだったでしょうか?

 当初はデザインチームも新しいツールに戸惑い気味という感じでしたが、ある程度慣れてくると予想を超えた高度なテクニックを利用したりと、技術部としても驚いています。この結果からすれば、反応は上々といえるのではないでしょうか。
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 実は今回のアクロアーツの導入に伴い、ひとつの想いがありました。デザインチームの方に思う存分、好きなようにGUIのデザインをして欲しい。物体の色や配置、そして動きにいたるまで、技術者のセンスにゆだねることなくGUIを自由に作り上げて欲しい、という想いです。
 もちろん、デザインチームの方々の実務レベルは必然的に上がったと思いますが、今まで「ああしたい、こうしたい」とソフト技術者に言うだけしかできなかったことが、手元でやれるようになったことは大きな前進ではないかと思います。
──今回、仕事の仕組みが変わりましたか?

 大きく変わったと思います。技術部とデザイン部でそれぞれの専門性を発揮することができるようになり、しかもそれがお互いの領域を侵食しあうこともなくなりました。
 これはアクロアーツの設計思想に依る部分が大きく、開発のあらゆる面で技術とデザインの専門性が存分に発揮されることで、今後継続的にGUIの品質を上げていける基礎ができたのではないかと考えています。
──変化に対する不安や抵抗はありませんでしたか?

 不安も抵抗もそれなりにありましたが、どちらかというと周囲の理解を得るのに時間がかかった面が強いです。技術の内部だけでも、時間軸を持った画面制御(アニメーション)が特殊な扱いとして認識されていたり、豊かな表現のGUIを実現するには様々なハードルがありました。
 しかしアクロアーツの持つ独創的な柔軟性のおかげで、少なくとも技術的な課題は回避できる目処が早期に立てられたこと、また、この変化は絶対に間違った方向ではないという想いもありました。
 また、検討段階から親身になって相談に乗っていただいた事や、実製作に取りかかってからも専用ウェブによる迅速なサポート(※3)によって、不安は払拭されていきました。
※3:ウェブを用いたサポートは、お客様ごとの個別契約に基づくオプションメニューです。全てのお客様に提供できるサポートではありません。あらかじめご了承お願いいたします。(担当)
──アクロアーツでないと実現できなかったことはありますか?

 アクロアーツを採用したことで、“PICSIO”の企画当初からのコンセプトとしていた遊びのある元気なGUIを実現することができました。
 実は、私はアクロアーツの導入にあたり、“PICSIO”の企画段階から一部関わっていました。従来のGUI設計であれば「それは技術的に難しいです」の連発をせざるを得なかった内容もいくつかありましたが、アクロアーツの後ろ盾があったため「これも大丈夫、それも可能です」と企画の段階から技術的な制約を極力省いた話し合いをすることができました。

 また、デザインチームによるギリギリまでの作りこみもアクロアーツならではの芸当だと思います。デザインチームは、許された時間の中で少しでも品質を上げるための努力を惜しまないですし、アクロアーツがあればこその、限られた時間で多方面からの要望をより多く取り入れることも可能となりました。
 これまでであればGUIの締め切り間際の変更といえば、ちょっと位置を調整したり画像を差し替えるくらいが限度でしたが、アクロアーツであればかなり大規模な変更をしたとしても、技術的には些細な変更か、場合によっては無変更で対応できてしまいます。
 この「作りこみの循環」(ブラッシュアップ・ループ)を短縮できたのも、GUIの高品質化に欠かせない要素だったと思います。
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──逆にうまくいかなかったことはありますか?

 ギリギリまで作り込めてしまうため、後半でバタバタしてしまいました。アクロアーツがそれでも問題なく、GUIや動きの大幅な変更にも耐えられるあたり、さすが「ゲーム屋さん」で鍛えられたツールだと感じました。
 もちろんこれは初回利用で不慣れな点も多分にあると思いますので、おそらく次回からは数段スムーズに作業が進むと思います。
──“PICSIO”にとって、良い選択となりましたか?

 本当にそう思います。アクロアーツだから対応できた、または実現できた機能や仕様はいくつもあると思います。
 導入前まではどちらかというと「見せ掛けの言葉」だと思っていた「相乗(シナジー)効果」が、本当に有効であると実感させられました。
 GUIのプロであるゲームメーカー(しかも業界第一線で活躍するセガさん)のノウハウと、映像技術を誇るJVCが作るメモリーカメラとの、夢のコラボレーションといえると思います。
──最後に一言あればお願いします。

 アクロアーツの導入にあたって、様々な方のご協力・ご尽力があって今回の成功につながったものと確信しています。
 しかも今回のGUIは、純国産テクノロジーで成り立っています。ニッポンの技術は、まだまだ健在ですね。
──本日はありがとうございました。

  報道資料
日本ビクター報道資料 http://www.jvc-victor.co.jp/press/2010/gc-fm2_wp10.html
セガ報道資料 http://info.acroarts.com/news_main_20100824.html
CSKシステムズ報道資料 http://www.csk.com/systems/press/2010/20100823_1.html
  製品情報
「GC-WP10」 http://www.jvc-victor.co.jp/dvmain/gc-wp10/index.html
「GC-FM2」 http://www.jvc-victor.co.jp/dvmain/gc-fm2/index.html