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素晴らしきスケーターの系譜

第2回 女子ジャンプ編 Part 2

2010年12月27日

荒川静香 全日本フィギュア選手権でも注目されていたジャンプ。演技構成の中で重要なカギを握る女子ジャンプの過去と現在を杉田秀男さんが解き明かすと・・・

 前回、女子ジャンプに革命を起こした伊藤みどりの話をしましたが、今回は少し時を進めます。トゥで飛ぶジャンプですばらしかったのは、荒川静香。彼女の技術の高さは、正確な踏み切りにあります。しっかりとキレイな踏み切りをすることで、ジャンプに高さが出ると同時に回転がスムーズになります。しかも、彼女の場合は内側と外側両方のエッジにキレがあります。大抵はインかアウトかどちらかが得意だったり不得意だったりしますが、荒川静香のジャンプは氷上で見ている限りフィリップでもルッツでも、美しく高さがありました。
 現在、トゥ系ジャンプで正確な踏切で高さが出ているのはキム・ヨナでしょう。また、ジャンプのバリエーションを持っているという点ではレイチェル・フラットにも注目です。彼女は試合経験を重ねるごとに、安定してくるでしょう。

トゥ系三回転ジャンプ女子



 当時は、フィギュアスケートにコンパルソルという規定競技があったため、アメリカやカナダの自由国に比べて何かと基準の厳しい旧東ドイツ(現在のドイツ)では、シングルの選手として試合に出られるまでに5〜6年かかる時代でした。カタリーナ・ビットはスポーツ選手の養成校にいて、アスリートとしてもスケーターとしても、ものすごい才能がありました。しかも、優れた美貌の持ち主。ソ連(現在のロシア)が圧倒的に強かった時代に旧東ドイツは彼女を3年後に世界チャンピオンにするという計画を立てました。
 そのため、最初はコンパルソルのないペアの選手として大会に出場。のちにシングルへと転向するという方法をとりました。プラン通りにきちんと育成された結果は、1984年サラエボと1988年カルガリー、2度のオリンピックで金。世界選手権4回優勝、欧州選手権6回連続優勝。きわめて輝かしい成績をおさめました。計画をきちんとこなすというのはドイツのお国柄らしい話ですが、それ以上にリンクの彼女は光り輝いていました。デビ・トーマスとのライバル対決や、彼女の衣装についてのエピソードなどは、今のスケート界にも多大な影響を残しています。



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第1回 女子ジャンプ編 Part 1

2010年12月20日

キムヨナ 日本スケート界の重鎮・杉田秀男さんによる女子ジャンプの過去と現在。
いまだに名前があがる伊藤みどりさんの凄さ。その流れを汲む現役選手は・・・!?


 女子のジャンプに革命を起こしたのは、何と言っても伊藤みどり。20年弱経過した今でもその名は話題にあがります。当時、ジャッジが同点になった場合、技術点の高い方が上位となっていましたが、伊藤みどりが登場したことで、芸術点の高い方が勝つようにルールが変更となりました。それだけ伊藤みどりの技術が高く、彼女のジャンプはフィギュアスケート界にとってセンセーショナルでした。
 彼女は、連続ジャンプでも圧倒的でした。ジャンプは連続で跳ぶと、後のジャンプになるほど回転が弱く高さも低くなってしまいがちですが、彼女のジャンプは連続でもひとつひとつが非常に高く力強かったです。2本目のジャンプの方が高かったのは、ジャッジはもちろんのこと世界中を驚かせました。今では連続ジャンプを必ずどのスケーターも入れてきますが、なかでも伊藤みどりの流れを汲んでいるのは、キム・ヨナと言えるでしょう。2連続では2本目のジャンプの方が高く、3連続してもその回転や軸にブレがなくパワーやスピードも保たれています。軽やかに連続して跳ぶ姿は、かつての伊藤みどりに匹敵してます。

コンビネーションジャンプ女子

 男子並みの跳躍力と回転を誇る伊藤みどりの代名詞といえば、やはりトリプルアクセル。未だに彼女を越える選手はいないと言われる程ですが、近年では唯一浅田真央が伊藤みどりのトリプルアクセル継承者と言われています。今シーズンはまだジャンプの調整中で見ることができていませんがあの美しいトリプルアクセルは、伊藤みどり以降の女子では彼女しか跳べていないジャンプだと言えるでしょう。
 今シーズンからシニアに参戦して今勢いのある村上佳菜子が自分のジャンプを振り返って「みどりさんに比べればまだまだと思います」と口にするほどの存在・伊藤みどり。どの選手が彼女のジャンプを越えてゆくのか。そんなことに注目しながらフィギュア観戦してみるのも面白いと思います。



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