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【フィギュアスケート】全日本選手権〜浅田真央、復活への手ごたえ

スポルティーバ 2010年12月27日(月)15時56分配信

 ソチ五輪に向けた最初のシーズンとして迎えた今年の全日本選手権。来年3月に東京で開催される世界選手権の代表選考を兼ねていたこともあり、選手や関係者のさまざまな思いが複雑に交錯した大会となった。特に女子は、波乱あり、どんでん返しあり、有望な若手の台頭ありと、例年以上に盛りだくさんの内容、結果となった。

 中でもその演技に注目が集まり、観客からひときわ大きな声援を集めていたのがエースの浅田真央だった。バンクーバー五輪後のオフ、ジャンプ修正に着手してから約半年。佐藤信夫コーチに指導を受けてから約4ヶ月。シーズン前半戦のGPシリーズ2大会では武器のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)や得意のフリップジャンプが跳べなくなる散々な結果(8位と5位)となった。世界女王ながら、上位6人が出場できるGPファイナル進出も2年連続で逃す羽目にも陥った。

 しかし、11月のフランス杯から全日本までの約1ヵ月間は、ジャンプを中心にした練習にじっくり取り組み、ジャンプの確率をじわりじわりと上げてきていた。「(ジャンプ練習に取り組むには)時間が必要で、その時間を費やしてきたことが、今回の結果につながっている」と、浅田自身も確かな手ごたえをつかんで臨んだ大会だったようだ。佐藤コーチもわずかにその変化を感じていたと言う。

 だからだろうか。今季は試合で一度もクリーンに決めていなかったトリプルアクセルを、佐藤コーチは最初、ショートプログラム(SP)では回避しようと考えていた。「定石では(3Aを跳ぶことは)控えないといけない」と佐藤コーチは明かした。

 それでも、これまでずっとトリプルアクセルにこだわって挑戦し、習得してきた浅田には、いくら佐藤コーチからの提案でも、すんなりと受け入れることはできなかった。練習で100パーセントできなくても、トリプルアクセルを自分の武器として組み込んでいる女子選手は自分しかいないという自負もあるだろう。

 彼女は最後の最後までトリプルアクセルを跳ぶかどうかの決断を延ばし、自分の出番の直前、リンクに向かうために控え室を出る時に、トリプルアクセルを跳ぶことを佐藤コーチに伝えたと言う。佐藤コーチは「これはえらいことになった」と思ったそうだが、「彼女の気持ちが盛り上がっていく方向でやっていかないといけないから」と、最後は浅田の気持ちを尊重した。

 小さい頃から見ている小塚崇彦と違い、佐藤コーチもまだ浅田との突っ込んだやり取りはまだ控えているようだ。それでも滑りにスピードが少しずつ出てきて、ジャンプにも復調の兆しが見えてきたことは確か。浅田と名伯楽の佐藤コーチとの“化学反応”はいい方向に向かっていると言えるだろう。トリプルアクセルを跳んでジャンプで大きな失敗がなかった浅田について「1ヵ月でここまで持ってきたことは正直、大変な驚きです。彼女のしぶとい面と根性を見て、舌を巻いている状態ですよ」と話した。

 本人が「いま自分の持っているものを出せ、やっといい演技ができた」と振り返るSPでは、「降りたときは回ったと思いますが、足をついてしまった」と話したトリプルアクセルが認められ、2位安藤美姫とは1.46点差で首位に立った。

 一方、フリープログラムでは、1度しか跳ばないと決めていた冒頭のトリプルアクセルが回転不足と認定され、「6種類の3回転を跳ぶ」目標は半分しか達成できず、技術点が伸び悩んで2位に。基礎点が1.1倍になるプログラム後半にジャンプの5連続を成功させた安藤にフリーで10.11点差をつけられ、総合で逆転を許した。

 5連覇は逃したが、全日本2位で世界代表切符をつかんで安堵感を漂わせた浅田は「全日本で大きな山をひとつ乗り越えたかな。こういう大きな山を越えられたので、また自分もすごく強くなったと思います。次の試合は、山を越えた自信と、今までやってきた自信。練習をやってきた自信を持てば大丈夫だと思っています。とりあえず、世界選手権に行けるようになってほっとしています。ここで気を抜かず、世界選手権に向けてもっといい演技ができるように頑張ります」と、心新たにしていた。

 来年の世界選手権には、今季GPシリーズを欠場したライバル、キム・ヨナが出場を予定している。先ごろ新プログラムの曲名を発表するなど、世界選手権に向けて練習に励んでいるというキム。だが浅田にはキムとの対決よりも前に、まだ「厳しい道」(佐藤コーチ)が残っている。ジャンプ修正には「もっともっと時間が必要であり、まだまだいい状態にはなっていない」(同)からだ。

 カギを握るのはやはりジャンプ。浅田真央の時間との戦いは続く。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha

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最終更新:2010年12月27日(月)15時56分

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