2010年12月31日3時0分
政府は来年2月、モンゴルに官民合同の訪問団を派遣し、小型の観測衛星を売り込む計画を固めた。モンゴルと共同で進めるレアアース(希土類)の探査にも、この衛星を活用するよう提案する。モンゴルでのレアアースの早期開発を後押しし、日本の資源確保につなげる狙いだ。
モンゴルに売り込むのは、経済産業省とNECが共同開発している重量400キロ級の小型衛星「ASNARO(アスナロ)」で、受信・データ解析システムや打ち上げ費用を含め総額約100億円。地上の50センチ四方まで映し出すことができ、解像度は小型衛星で世界最高水準という。
モンゴルは銅やウランなどの鉱物資源が豊富で、鉱業は国内総生産(GDP)の3割を占める。日本が輸入の9割を中国に頼るレアアースの埋蔵量も多いとみられ、日本、モンゴル両政府は今秋、レアアースの共同開発で合意した。
ただ、その探査は始まったばかり。衛星画像で地表の状態を調べれば、鉱物のある可能性の高い場所を絞り込める。国土が広大なモンゴルでは「効率の良い現地踏査につながる衛星の利用価値が大きい」(日本政府関係者)というわけだ。
モンゴルは携帯電話やテレビ放送に使う通信衛星にも関心を示しており、観測衛星とともに売り込む。
また、モンゴルと同様、鉱物資源の豊富なカザフスタンでは来年2月、衛星に関する関係団体・企業向けのセミナーを同国政府と共催する計画だ。日本の衛星や画像データの解析技術を披露し、将来の受注につなげる狙いがある。
衛星は、原子力発電所や高速鉄道などと並ぶ政府のインフラ輸出の一つ。新興国などで災害監視や鉱脈探査、農産物の生産予測などの用途で衛星の需要が高まっている。経産省によると、08年までの10年間で101機だった観測衛星の世界市場は、09年からの10年間で倍増するという。(小暮哲夫)