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回顧’10:旧広島市民球場 スポーツ文化、考え直そう /広島

 旧広島市民球場(中区)の解体が20日、本格的に始まった。周りを囲む巨大な白い壁に毎夕、原爆ドームの影が映る。見やるたび、ドームと対になった戦後復興の象徴だったことを思い返す。解体に至った経緯を少しばかり追ってみたい。

 球場の建て替え・新設論議が具現化した04年末、県や広島市、財界による検討会議が始まった。集まった提案の一つに、現状の源と思われるものがある。環境デザイナーの仙田満・東工大名誉教授は▽JR広島駅近くのヤード跡地に90億円で新球場を建設▽旧球場解体と公園設置に55億円かけ、イベントで年150万人以上を集客--と提案していた。

 市民の熱意もあり、一度は現地建て替え方針が決まった。しかし、市は05年9月、「プロ野球シーズンと並行した建て替えは困難」と判断。ヤード跡地での新設に舵(かじ)を切った。

 球場跡地については、広島市は民間事業者の提案を基に、広島商工会議所の移転先や劇場機能も備えたビルを加えた案を08年に作成し、市民意見を募った。引き続きスポーツの場としての活用を希望する意見は相当数あったが、計画には盛り込まれなかった。

 平和記念公園を設計した故丹下健三氏は「平和を創り出す工場」と掲げ、公園とドームを結ぶ軸線の延長に、さまざまな競技場を置く構想を描いたという。広島の復興史に詳しい石丸紀興・広島国際大教授は「スポーツと平和の関係を丹下氏は好意的にとらえていたはず」と語る。

 旧球場は野球のみならず、広島のスポーツ文化の象徴でもあったと思う。広島市は五輪招致を検討しているが、今一度、スポーツと都市の文化、街づくりの在り方を考え直すべきではないだろうか。【矢追健介】

毎日新聞 2010年12月29日 地方版

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