2011年1月1日5時0分
子どもや若者のあしたへ。希望の橋を懸けたい。まず、小さな白熱教室から。
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6年1組の国語の授業。
黒板に、暗号のような式が書かれた。〈図1〉
話し合いの図だ。子どもが、すぐに意味を解説する。
「話し合いは考えを増やします。三つずつ考えを持った人同士が話し合うと、考えは六つ以上に増えていきます」
北九州市立貴船小学校。担任の菊池省三先生(51)は、子ども同士の意見のキャッチボールで、どの子にも自信をつけさせる「カリスマ教師」だ。毎週のように参観者が訪れ、講演依頼も絶えない。
十数年前、崩壊した学級を受け持った。「こう言ったらどう思われるか」。子どもたちは周りの反応を怖がり、思いを口にできない。
まずスピーチを採り入れ、考えを持つ大切さと、伝える手法を教えた。次は、ディベート。賛否の立場を決め、意見をぶつけあう訓練だ。
だが、「社会で生き抜くためには何か足りない」と思い始めた。言いっぱなしのスピーチでも、言い合いのディベートでもない。相手の意見に耳を傾け、自分のなかで消化し、新たな意見を投げかける。その繰り返しが、みんなを高め、よい人間関係につながることを伝えたい――。行き着いたのが、この授業だ。