石井、寝技徹底でバンナに勝った！…Ｄｙｎａｍｉｔｅ！！

３回、バンナ（下）にパンチを浴びせる石井

　◆Ｄｙｎａｍｉｔｅ！！　○石井慧（判定　３―０）ジェロム・レ・バンナ●（３１日・さいたまスーパーアリーナ）　０８年北京五輪柔道男子１００キロ超級金メダルの石井慧（２４）＝アイダッシュ＝は“Ｋ―１番長”ジェロム・レ・バンナ（３８）＝フランス＝に３―０の判定勝ち。０９年の大会で吉田秀彦（４１）に敗れた屈辱を晴らした。長島☆自演乙☆雄一郎（２６）＝魁塾＝が青木真也（２７）＝パラエストラ東京＝をＫＯすれば、０４年アテネ五輪柔道９０キロ級銀メダルの泉浩（２８）＝プレシオス＝はミノワマン（３４）＝フリー＝にＴＫＯ勝ち。デビュー戦となった元プロ野球選手の古木克明（３０）＝ＳＭＡＳＨ＝は黒星を喫した。

　勝つことのみが善だった。試合終了と同時にスタンドの一部から起きたブーイング。壮烈な打撃戦を期待したファンの不満にも、石井は平然としていた。「応援の裏返し。それだけ期待してくれるということ。次はＫＯ、一本で勝ちますよ」と、言ってのけた。

　「負けたら何も残らない」と痛感したのは０９年大みそか。デビュー戦で同じ柔道金メダルの吉田秀彦に０―３の判定負け。パンチで主導権を奪われ、何もできずに終わった。数日間は抜け殻のようになり「３日間、ジャムパンだけ食べていた」。悔しさを払拭するには勝つしかなかった。Ｋ―１で７８戦４０勝のバンナと打ち合いを避けて、徹底したグラウンド勝負に。１回にはテークダウンを奪ってマウントから攻めると、３回には相手の左腕を取ってアームロックを狙った。「予想以上にバンナは粘ってうまかった。ヘビー級で戦うには肩に力が入らないようにしないと」と反省も忘れない。

　強くなるために今年から単身で海外武者修行。この秋からは米・ロサンゼルスに拠点を置いた。現地ジムでファブリシオ・ヴェウドゥム、マーク・ムニョスといった世界的な強豪と練習。精神面の強化のために、メンタルトレーニングの本を読み、太極拳にも取り組んだ。「充実した１年だったし、自分自身も成長したと思う」と自らも大きくなったことを実感した。

　デビュー１周年を白星で締めて、先をにらむ。「オーフレイムとかヘビー級には強い選手がいる。もっと練習しないと。試合のオファーがあればどんどん出たい」と国内外を問わず戦うつもり。大みそかの悪夢を振り払い、石井はまた大きくなった。

　◆バンナ、悪びれず石井をたたえる　悔しい判定負けにも石井の戦略をほめたたえた。寝技が多かった展開に「石井の作戦がよかった。俺のパンチをかわしてきた。俺ももう少し寝技で攻防を見せられれば…」と悔しそう。「俺は６歳から柔道をやってきた。石井のような『柔道マスター』と戦えて光栄だ」と話す“Ｋ―１番長”の顔は晴れやかだった。