THE B-TEAM 実況野郎文芸部
THE B-TEAM 実況野郎文芸部
特集コーナー
KATOO! 知恵袋
B-TEAMの面々が漫画家やライターになりたいと言っているのを身近で見ていたが、は何をやりたいのかな、うんうん唸ることもなく簡単に答えは出た。「色んな所に取材に行って色んな人の話を聴きたい」一人の若者が塩を踏みながら立派な取材ライターになるまでを描く感動のストーリーが今、幕を開ける。
「プリキュア」シリーズとは
ひょんなことから伝説の戦士「プリキュア」に変身できるようになった中学生の女の子たちが悪と闘っていくストーリー。従来の女の子向けアニメとは一風変わった斬新な設定や男の子向けアニメ顔負けの戦闘シーンが話題を呼び、女児だけではなく幅広い層にも人気を集めている。女の子で知らない者はいないと言われるほどの大ヒットを飛ばした同作品は、現在シリーズ6作目「フレッシュプリキュア!」を放映中。(ABC・テレビ朝日系列にて日曜日AM8時30分〜)
映画「プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」
映画「プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」
 シリーズ1作目「ふたりはプリキュア」から6作目「フレッシュプリキュア!」までの歴代プリキュアが大集合。14人の力を合わせて強大な敵と戦っていく感動の超大作。これを見ないでプリキュアを語るなかれ。劇場では中学生以下の入場者に「レインボーミラクルライト」と「プリキュアオールスターズGoGoドリームライブ!データカードダス限定カード」がプレゼントされた。シリーズ過去最高の興行収入10億円を達成した。

各シリーズDVD好評発売中(発売元 マーベラスエンターテイメント)
©ABC・東映アニメーション
©2009映画プリキュアオールスターズ製作委員会


 俺は緊張していた。6月某日、午前11時ジャスト。携帯電話を取り出し震えながらひとつずつ丁寧にボタンを押していった。
「はい、東映アニメーションです」。

 B-TEAM部員それぞれが、やりたい事に向かって具体的にトライするこの特集企画「道」シリーズ。俺は真っ先にこう言った、「プリキュアシリーズのプロデューサー、鷲尾さんに会いたいです。取材させてください」「そう来ると思っていたよ」と編集さんは言ってくれた。生活費の大半をプリキュアに費やし、寝ても覚めてもプリキュアの事を想い、行動する時はまず「プリキュアの皆ならどうするかな」と本気で考え、イベントがあるから、と友達の誘いを断り、そのイベントのために日本中を飛びまわる俺ならそう言う。編集さんはそう思っていたのであろう。

神楽坂駅
取材場所の新宿オフィスに行くためには神楽坂駅を利用しなければならない。オシャレな土地だがその地名に負けじと存在する坂がつらい。

「全ての行動を俺がやる」という事を条件にこの企画は始まった。まずは取材依頼の電話からだ、東映アニメーションのホームページに行き、電話番号を調べる。ここまではよかったがいざ電話をかけるとなると緊張で手が震えてくる。好きな作品、それに関係する仕事のお話をして、「もし断られたら……」そう考えるだけで胃液が逆流してくる。これは「好きな人に告白してもし駄目だったら……」といった感情によく似ている。とにもかくにも賽は投げられた。取材依頼の話をするだけでも声が震えて噛みまくってしまったが、対応してくれた広報担当の方は優しく俺の話を聞いてくれた。なのに、今までゲーム実況で培われていたと思いこんでいた喋りのスキルなんか一つも出てこなかった。不器用ながら趣旨を説明して、思いを込めた依頼状をメールで送る。

〈私の大好きな作品「プリキュアシリーズ」の生みの親でもあり、こころから尊敬しつづけている人物、鷲尾天さんにお話をうかがえたら、これ以上のことはありません〉

本社近くの喫茶店にて質問の最終チェック中
本社近くの喫茶店にて質問の最終チェック中。キリリと引き締まる顔で確認をしているかに見えるが、実際は緊張のため全く頭に入っていない。

 ファックスでも送っておく、念には念を入れるのがこの業界で生き残るコツなのだ。しかし俺の家にはそんな魔法のような機械はないし、恥ずかしながら一度もこの機能を使ったことがない、編集さんに相談するとネットでデータをコンビニに転送してそこから送れるサービスがあるらしい。自転車を走らせ店のおばちゃんに操作方法を聴きながらファックスを送信する、帰りにコーヒー牛乳を買うのも忘れてはいけない、ノドはカラカラなのだ。

 ドキドキしながら待っていたら翌日電話がかかってきた。
「取材の件お受けいたします」。その時の自分を客観的に見たらさぞ可笑しかったことだろうと思う。目の前には誰もいないのに電話越しにお辞儀をし、今にも飛び跳ねそうなくらい目をキラキラさせている成人男性が一人。滑稽だ。だが、馬鹿にするな。

いざ東映!
「いざ東映!」上の見過ぎで首の痛さが大変なことになっているが、高い崖を飛び立つ小鳥の勇気を見習い気合いを入れる。早く写真撮ってください。

 決戦当日、東映アニメーションに向かう電車の中でも不安でいっぱいだ、「きっと大丈夫」と自分に言い聞かせる。受け付けを通り、会議室にて待つこと数分、「すみません、お待たせしました」目の前に現れたのは憧れの鷲尾さん。「写真を撮るなら上着を着た方がいいですね」とこちらを気遣ってくれる。「プリキュアシリーズの生みの親でもあるならば俺の義父でもある!」と訳の解らない持論で自分を鼓舞しながら挑んだインタビュー、見ていただきたい。
鷲尾天インタビュー

鷲尾天
鷲尾天
わしお・たかし 1965年9月16日生まれ、秋田県秋田市出身。出版社の営業担当や秋田朝日放送記者を経て、98年に東映アニメーションに入社。「キン肉マンII世」や「釣りバカ日誌」を手掛ける。2004年からは「ふたりはプリキュア」をプロデュース。2008年「Yes!プリキュア5GoGo!」までの5年間、「プリキュア」シリーズのプロデューサーをつとめ、日曜日朝を彩る国民的人気少女アニメの地位を築き上げる。
「フレッシュプリキュア!」からプロデューサー交代の理由とは
加藤 鷲尾さんは、最初は秋田朝日放送記者だったとお聞きしました。

鷲尾 あ、それは最初じゃないんです。今の会社(東映アニメーション)が四つ目で、秋田朝日放送の前にもう二つあるんですよ(笑)。大学を卒業するときにテレビ局や新聞社を受けたんですがことごとく落ちて、就職浪人までしたんですがやっぱり駄目で、最終的には商社に入ったんです。そこに半年くらい居て、それから辞書や教科書を出版している三省堂に中途入社しまして営業を二年やりました。それから新規開局した秋田朝日放送に転職したんです。そこで6年間、報道や番組制作に携わりました。

加藤 その後に東映アニメーションに入られたんですか?

鷲尾天プロデュース プリキュア年表
2004
「ふたりはプリキュア」
2005
「ふたりはプリキュア Max Heart」
映画「ふたりはプリキュア Max Heart」
映画「ふたりはプリキュア Max Heart 2 雪空のともだち」
●主要キャラクター
美墨なぎさ(キュアブラック)
雪城ほのか(キュアホワイト)
九条ひかり(シャイニールミナス)(Max Heart)
2006
「ふたりはプリキュアSplash☆Star」
映画「ふたりはプリキュア Splash☆Star チクタク危機一髪」
●主要キャラクター
日向 咲(キュアブルーム、キュアブライト)
美翔 舞(キュアイーグレット、キュアウィンディ)
2007
「Yes!プリキュア5」
2008
「Yes!プリキュア5GoGo!」
●主要キャラクター
夢原のぞみ(キュアドリーム)
夏木りん(キュアルージュ)
春日野うらら(キュアレモネード)
秋元こまち(キュアミント)
水無月かれん(キュアアクア)
美々野くるみ(ミルキィローズ )(5GoGo!)
2009
映画「プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」
鷲尾 新聞の求人欄に「東映動画・プロデューサー募集」という告知があって、「あぁ、昔アニメ見たことあるから受けてみようかな」みたいな、軽い気持ちだったんです。

加藤 アニメがお好きだったんですか?

鷲尾 いや、それほどでも(笑)。昔観ていたアニメと言うと、東映動画の「マジンガーZ」ですから、かなり古いですよね(苦笑)。中学生ぐらいからはほとんど見てなくて、自分がアニメーション会社に入るなんて想像もしてなかったです。

加藤 東映アニメーションでは「金田一少年の事件簿」や「キン肉マンII世」などを経て「ふたりはプリキュア」のプロデューサーになられたということですが、今のシリーズ「フレッシュプリキュア!」からプロデューサーを交代された理由は?

鷲尾 ちょっと話はさかのぼるんですが、三年目に放送した「ふたりはプリキュアSplash☆Star」が残念ながら一年で終わってしまって、周囲からは次の番組に「プリキュア」と言うタイトルを付けるべきかどうかという議論がされました。結論として「もう1年プリキュアをやろう」ということになりまして、そのときに会社からは「来年はそのまま君にやってもらうけれども、そこでうまくいかなければプロデューサー交代もあるから」と言われて。

「ふたりはプリキュア」
ベローネ学院女子中等部に通う美墨なぎさと雪城ほのかはある日、不思議な生き物メップルとミップルに出会う。プリキュアに変身する能力を与えられたふたりは地球を守るため戦う事に。伝説はここから始まった!?
DVD好評発売中(発売元 マーベラスエンターテイメント)
©ABC・東映アニメーション
加藤 それは厳しいですね。

鷲尾 でも私もそれはそうだろうなと思い、ハイと言って。ただ、もし次のプリキュアがビジネス的にいろんなことをクリアできてもう1年続くことになったら、そこまではやらせて下さいとお願いしたんです。

加藤 それが「Yes!プリキュア5」「Yes!プリキュア5GoGo!」で、二年続きましたね。

鷲尾 おかげさまで。で、結局5年間やって精も根も尽き果てました(笑)。「プリキュア」というタイトルが長く続くためには、一人の人間がずっとそこに居座り続けてはいけないと思うんです。独りで何でもやってるような尊大な気持ちにもなってしまうし、個人的にも「プリキュア」というタイトルの中で考えることが出尽くしたような気もしたので、いい潮時だったかなと思います。


キャラクターが世界を変えていく
キラキラと少年のように眼を輝かせながら語る鷲尾さん
キラキラと少年のように眼を輝かせながら語る鷲尾さん。心からプリキュアを愛していると解る瞬間だった。

加藤 アニメーションを作る時に気を付けている点などはありますか?

鷲尾 一番気をつけるのは「感情のリアリティ」ですね。例えばヒロインがさっきまで泣いてたのに次のシーンでいきなり大笑いしてるとか、気持ちのつながりがおかしいことはやらないということです。よくあることなんですが世界観やストーリーを先に作り上げてしまうとその都合でキャラクターに無理な行動をさせたりしてしまいがちですけど、それはできるだけ避けるようにしていますね。

加藤 キャラクターの感情の動きを優先させるべきなんですね。

鷲尾 キャラクターが世界観の枠からはみ出しそうになったら、枠を広げればいいんじゃないか、と思います。ずっとまっすぐに突き進んできた主人公が世界の果てまで行き着いたら「後退しよう」じゃなくて「もっとまっすぐ行って見ようよ!」というのが正しいんじゃないかな、と思います。

「ふたりはプリキュア Max Heart」
3年生に進級したなぎさとほのか。平和が訪れたはずの日常に撃退したはずのザケンナーが現れる。新たな仲間シャイニールミナスも加わり、プリキュアもますますパワーアップ! やっと普通の学校生活を送れると思ってたのに、こんなのってありえな〜い!
DVD好評発売中(発売元 マーベラスエンターテイメント)
©ABC・東映アニメーション
加藤 それが感情のリアリティなんですね。

鷲尾 そうですね。あと映像上の留意点としては、「嫌な絵を作らない」ということです。例えば食べ物を粗末にしたり好き嫌いをしているとか、そういう絵は絶対に作らない。それは5年間守りましたね。

加藤 確かに、みんな美味しそうによく食べますよね。なぎさがほのかの分までお弁当を食べるとか、りんちゃんがスパゲティをもりもり食べてるのとか好きですね。

鷲尾 きっとどんな親御さんでも子どもにはたくさん食べて健康に育ってほしいって思ってますよね。もし子どもたちがプリキュアを理想としているのなら、「プリキュアたちもたくさん食べてるから私も!」と言う風になれば嬉しいですね。あとは汚い言葉を使わない、それは敵役のキャラにも言わせないようにしました。子どもはそういうところを一番真似しますから。


スタッフ、役者全員が一つのチームに〜脈々つながる、テーマはひとつ
鷲尾さんの話を真剣に聴く俺
鷲尾さんの話を真剣に聴く俺。緊張のため質問メモを持つ手は震えているが、そのありがたいお話は骨の髄まで沁み込んでいる。

加藤 「プリキュア」の中で好きなキャラクターっていうのはいますか?

鷲尾 全員です。当たり前すぎますか?(笑)。もちろん初めて作ったキャラクターと言うことではブラックとホワイトに対しては絶大な敬意を払っています。これはもう愛情に近いものをやっぱり抱いています。
で、次の「ふたりはプリキュア MaxHeart」ではそこにクイーンというものをイメージさせたシャイニールミナスを参加させました。

加藤 アクションをしないで、変身してプリキュアと一緒にいるキャラクターですね。

鷲尾 キャラクターがストーリーを動かしていくんだ、ということを強く実感しました。シャイニールミナスは正面からアクションはしないキャラだったので、描き方はとても難しかったですが、そこに挑戦できたというのはとても良かったと思います。
(次の)「Splash☆Star」は残念ながら一年で終わってしまったけれども、ストーリー、キャラクターとも大好きな作品です。咲と舞というキャラクターだからこそできたこともたくさんあります。二人(樹元オリエ、榎本温子)が今でもライブをやったり、プライベートでも非常に仲が良いというのもとても嬉しいし。敵役についても非常に強烈な印象を持たせることが出来たと思うし、皆さんの力で素晴らしい作品になったと思ってます。

「ふたりはプリキュアSplash☆Star」
日向咲と美翔舞は夕凪中学校の2年生。泉の里からやってきたフラッピとチョッピの力でプリキュアに変身、ダークフォールから泉の里を守るためにふたりは戦う事に! 本日も絶好調なり!
DVD好評発売中(発売元 マーベラスエンターテイメント)
©ABC・東映アニメーション
加藤 プリキュアシリーズは声優さんや歌手の人たちもとても仲が良いことで有名ですよね。

鷲尾 チームと言う事をとても意識して番組を作っていました。大泉(東映アニメーション大泉スタジオ)で制作してるスタッフや録音してる役者さん達全員が一つのチームだった。一番象徴的だったエピソードが、オールスターズの映画のアフレコの時だったんですけど。

加藤 「映画プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」。34回見に行きました。

鷲尾 ありがとうございます(笑)。あの時は歴代の役者さんのスケジュールが合って全員同じ日に集まってアフレコすることができたんですよ。

加藤 それは凄い!

鷲尾 そこでアフレコが終わってから簡単な打ち上げをやった時に、結構な人数の方が挨拶をされながら感極まって泣きだしたんですね。それぞれ自分たちの代に思い入れがあり一番良い作品だと思ってる、それをみんなに言えることが嬉しいと言ってたんです。

質問内容を余すところなく書き込んである紙
質問内容を余すところなく書き込んであるこの紙には俺の愛のすべてが詰め込まれていると言っても過言ではないだろう。

加藤 お互いに意識して、世代にシャットアウトはしなかったって事ですね。

鷲尾 私も嬉しかったですね。歌い手さんのチームも実はそうなんです。

加藤 シリーズごとに歌い手さんが変わってますね。

鷲尾 それぞれがやっぱり仲がいい。同じタイトルでありながら番組が変わったときにはえてして人間関係がギクシャクすることがあるんですけど、今回それがどの世代でもなかったし、それを皆が喜んでくれているので良かったかなと思いますね。

加藤 今月もライブ(「みんなでSUPER☆TEUCHI☆LIVE 〜Friend×Friend〜」)がありますね(取材日は6月16日)。

鷲尾 よくご存じですね。

加藤 この間の「あにまーとないと2009 Special!」も行ったんですよ、鷲尾さんのおすがたを見かけたので声をかけようとしたんですが、かけられなくて。

鷲尾 そうだったんですか(笑)。

加藤 緊張して、何話していいかわからなかったんですよ(笑)。


敵キャラの組織、意外と好きなんです
どんどん追加質問をしてしまったが全て答えてくれるサービス精神抜群な鷲尾さん
事前に用意していた質問だけでは飽き足らず、どんどん追加質問をしてしまったが全て答えてくれるサービス精神抜群な鷲尾さん。もっといろいろ聞けばよかった?

鷲尾 「Yes!プリキュア5」は「プリキュアシリーズ」の大きな転機であり、5人になったという事には私たち製作スタッフもずいぶん戸惑いを覚えました。それまでの「ふたり」シリーズに対する愛着も強かったですし。でもそこでチームを成立させてくれた5人のメンバーに対してはとても感謝しています。中でものぞみというキャラクターはすごい難しかったんですね。いろんな個性のあるメンバーの中で真ん中にいる人って一体どんな人だろう、というのは相当悩みましたよね。

加藤 常に輪の中心にいるのはのぞみ。物凄い魅力の持ち主だと思っていますが。

鷲尾 本人にその自覚はないし周りも意識してないけど、何かあった時に皆が彼女の方を見る。そういう存在ってなんだろうと相当悩みました。いわゆる何の取り柄もない人間が真ん中にいる理由ってなんだろう、それはもうまっすぐさでしかないんだよってことに気づいて。悩んだ分だけあの5人に対しての愛着はすごく強いです。

加藤 「Yes!プリキュア5GoGo!」から、そこにミルキィローズが入ってくる。

鷲尾 圧倒的にアクションが強くて、「5」の5人と対等くらいの強さがあるキャラクターです。

加藤 そこは「MaxHeart」のルミナスとは対照的なキャラクターでしたね。

「Yes!プリキュア5」
夢原のぞみはサンクルミエール学園に通う中学2年生。ナイトメアによって滅ぼされてしまった故郷を蘇らせるためにドリームコレットとピンキーを探しているココと出会うのぞみ。そんなココを助けるためにのぞみはプリキュアになることを決意、4人の仲間とともに5人のプリキュアが大活躍! ココの夢を叶えること、けって〜い!
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©ABC・東映アニメーション

鷲尾 派手で艶やかな存在で、でもまっすぐさを失わずに一番自由奔放であるという、ある意味理想的なキャラクターですね。キャラクターデザインの川村敏江さんや監督の小村敏明さん、そして役者の仙台エリさんといっしょに作り上げました。大好きなキャラクターです。
前にも話しましたが、皆が自分のキャラクターが一番好きで、自分のシリーズに一番敬意を払っている。皆がそう思っていることをそれぞれが認めあっているのと同じ感情を私はやっぱり全作品に持ってますよね。

加藤 シリーズを語る上で欠かせないのが敵キャラですが、皆いい味を出してますよね。

鷲尾 私は主人公たちと同様に彼らも大好きなんですよ(笑)。彼らの組織にこそ我々大人が普段抱え込んでいる事情が全部含まれていますから。大人が思わず笑ってしまう台詞や芝居をいっぱい入れてあります。

加藤 特に「5」のナイトメアなんかはお父さんたちは複雑な心境で見ていたでしょうね。

鷲尾 デスパライアの理不尽さ、カワリーノのいやらしさ、ブンビーの立ち位置とか。理屈じゃない事を言う大ボスが居て、それをまるで理想であるかのように噛み砕いてそれを実現することが自分の地位の向上だと思っている上部の人間が居て、それをさらに下におろした時に、意味もわからず奪えと言う指示を出す中間管理職がいて、さらにそれを一番下の人間たちが忠実に実行しようとする。

加藤 組織ってそういうもんなんですね。

以前「クイック・ジャパン」に書いたプリキュアのコラムを見ていただく
終わった後、以前「クイック・ジャパン」(VOL.80)に書いたプリキュアのコラムを見ていただく。「りんちゃんやこまちさんは大人のファンが多いですね、特にりんちゃんファンは辛い思いをしているとか」。思わず涙が出てしまう。

鷲尾 もちろん現実はそれだけじゃないとは思いますが(笑)。で、そのほかの連中も、自分の欲望をむき出しにしながら、「よこせ」と立ちはだかってくる。理不尽な敵役たちが居て、理不尽な目にあってる妖精たちが居る、そこに「そんなことおかしいでしょ」って言うプリキュアたちがいるっていう図式がきちんと守られている。だからこそプリキュアたちが輝けたし敵キャラにも非常に愛着が湧く。どうでもいいキャラクターは一人もいないですね。

加藤 特に好きなシーンとかはありますか?

鷲尾 そうですね、敵キャラとプリキュアの関係と言う観点だと「5GoGo!」の47話は印象深いですね。5のシリーズは今まで決して敵役の名前を呼んだことはなかったのですが、ドリームがエターナルを去っていくときに「ブンビーさんありがとう」って初めて名前を言うんですよ。あれは全てを救うシーンですね。

加藤 ブンビーも「5」の最初の頃は退場する予定だったんですよね。「5GoGo!」で再登場することになった。

鷲尾 そうなんです。「5GoGo」からは全然違う敵キャラクターが出てくるはずだったんだけど、あまりにブンビーというキャラクターが生き生きと動き出しちゃって、なぜか居残ってしまう。登場人物が枠をはみ出した瞬間ですよね。
あの時は「5GoGo」のオープニングの中にブンビーが居るぞとネットで話題になったと聞きました。そういうことも、キャラクターが生きるんだったらありということです。


闘うシーンに賛否両論
この項、ディープなお宝話に発展しました
「夕凪町のモデルは?」
「『Splash☆Star』満と薫の設定の真相は?」

など、もったいないので袋とじにしました
闘うシーンに賛否両論


男の子ものになっても構わない
「Yes!プリキュア5GoGo!」
ナイトメアとの戦いも終わり、平和な日々を過ごしていた5人。そこに運び屋シロップから謎の手紙が届き、ローズパクトへと姿を変える。それを奪おうと襲い来る謎の組織エターナル。謎の戦士ミルキィローズも仲間に加わりのぞみ達の新たな戦いが始まった。
DVD好評発売中(発売元 マーベラスエンターテイメント)
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加藤 大人の男として聞くんですが、プリキュアシリーズって女の子向けじゃないですか、ターゲットには大人の男性女性って言うのは入れてないんですかね。

鷲尾 うーん、主に意識するのは女児が観て喜んでくれるように、ということですね。ただ、お母さんも含めて大人が見た時に楽しめるストーリーにはなるようにしています。いわゆる子どもだましの作品は作らない。ただ、そこ(大人)に媚びるようなことはしていないですね。

加藤 あくまでもメインは子どもなんですね。僕もそういうところが好きで見ているんですよ、変に媚びてほしくないというか。

鷲尾 子ども向けだからこの程度でいいよねって言う手の抜き方は絶対にしていません。

加藤 ありがとうございます、最後に一ついいですか? 今のシリーズに期待することなどは?

鷲尾 制作者が感じ、考えていることをやっていけばそれでいいと思ってます。男の子もののアニメになろうと、大河ドラマになろうと、魔法ものになろうと、「プリキュア」というタイトルが常に子どもたちの喜びを与えて世間に受け入れられるのであれば、どんな形になっても構わないと思っています。

オールスターズの立て看板前で
オールスターズの立て看板前で写真を撮るのは初めてだという鷲尾さんを激写する加藤。「人が来てしまうんで早くお願いします(笑)」この後二人で撮りました。

加藤 初代プロデューサーとして「ここはこうして欲しい」みたいなこともないということですか?

鷲尾 そういう意識はないですね。

加藤 本日はありがとうございました。

鷲尾 ありがとうございました。ごめんなさいね、いっぱい喋って(笑)。



付録企画/もっと「プリキュア」を知りたいひとのために、
「KATOO!知恵袋」特別編「Precure! motto知恵袋」
「KATOO!知恵袋」特別編「Precure! motto知恵袋」
いつもとは逆の立場で、加藤が鷲尾Pを質問攻め!



─プリキュア魂 満開だもの
石ノ森章太郎ふるさと記念館

 そして今俺は宮城県登米市にある石ノ森章太郎ふるさと記念館に来ている、「プリティワールドYes!プリキュア5GoGo!展」というイベントのためだ。ここで、この原稿で書いている。散々迷ったがやはり来てよかった、物凄く心地よい。かつてイベントで名古屋や大阪、和歌山など行った時はすべてバスで事足りたが今回は新幹線を使用している、つまりは今月、毎食冷麦だけの生活を強いられているも同然なのだ。しかし俺のプリキュアへの愛は新幹線なんかでは測れないほど加速し続けている。真ん中にいる人間に大切なのはまっすぐさということや、強大なものにもくじけず立ち向かっていくという姿の爽快さを教えてくれた鷲尾さん。俺はプリキュアのイベントがあれば例えそこが地の果てであろうと駆けつけそれを楽しむ。そう、俺にとっての「プリキュア」とは「鷲尾イズム」そのものだったのだ!
 今回の取材は個人的には成功したと思える。依頼の電話からインタビューまで何から何まで初めて尽くしだった。実際に作った人に聞くというのがここまで貴重なことだとは思わなかった。原稿を書いているふるさと記念館の庭で幸せを噛みしめる。「これが今回の最高です」と胸を張って言えるように精進したい。俺の取材道はまだ始まったばかりなのだから。



〜♪ 原稿を書き終え宮城にある喫茶店でのんびしていたら編集さんから一本の電話が。
「調子どうですか? 原稿進んでますか?」
「今宮城にいるんですよ、遊び呆けてます」
「じゃあついでに宮城県知事に取材してきてよ」
「なんで!?」


加藤の長い旅が、いまはじまった……
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