第5回

前編

「プリキュア」シリーズの大塚隆史監督インタビュー

できる、できないじゃなくて「やるしかない」。
自分の未来は自分の手で掴むんですよ

構成・文/加藤レイズナ 撮影/市村岬

題字/masi. 企画編集/アライユキコ

「プリキュア」シリーズの大塚隆史監督
大塚さんの仕事場で一枚。イメージと違って机が片付いているなと思ったら、
あらかじめ片付けておけと言われていたそうです(笑)。

子どものころにテレビアニメを見たことがないという人はいないだろう。大人になっても見ている人は多いが、やはり子どものころに見た作品には特別な思い出がある。小さい頃に見ていた「ドラゴンボールZ」でかめはめ波を撃ちあいセルが倒されるシーンが今でも頭に残っている。俺が大人になってもアニメを見続ける理由は何故だろうか。アクションがすごいから? 物語に感動するから? その謎はこれから明かされていくだろう、きっと! 今回は俺が愛してやまない、大人気少女向けアニメ「プリキュア」シリーズの演出、監督を務める大塚隆史さんに、映画「プリキュアオールスターズDX」を中心に、アニメーション、演出の魅力について聞いてきました。

[本文中の * をクリックすると註釈に飛びます]


本当に完成するんだろうかってずっと思っていました。


PROFILE


大塚隆史(おおつか・たかし)

1981生2月23日生まれ。大阪出身。東映アニメーションにて、演出助手として「ふたりはプリキュア」に関わる。「ふたりはプリキュアMaxHeart」から演出家として作品に参加するようになる。テレビシリーズの演出担当とは別に「映画プリキュアオールスターズDX」「映画プリキュアオールスターズDX2」の監督を務めている。苺関係の食べ物が大好き。



加藤レイズナ(かとう・れいずな)

1987年生まれ。フリーライター。「実況野郎B-TEAM」でインタビューの面白さに目覚め、日経ビズカレッジにて「ゆとり世代、業界の大先輩に教えを請う」を連載中。「SQUARE ENIX」「アルティメットゲーマーズ」ではゲーム実況プレイヤーとしても活動。「プリキュア」の熱狂的なファン。

レイズナブログ
http://blog.livedoor.jp/reireizuna/

http://twitter.com/kato_reizuna




プリキュアオールスターズDX

映画「プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合」 「ふたりはプリキュア」から「フレッシュプリキュア!」まで、14人のプリキュアが全員集合した記念すべき作品。「全てを一つにする」という目的を持ち、プリキュアの力を次々と吸収して行くフュージョンと戦っていくプリキュアたち。プリキュア初のオールスターズ映画。横浜開港150年を記念して行われる開国博Y150とのタイアップのため舞台は横浜。キュアブラック、キュアホワイトが本編のOPを再現して、遊園地コスモワールドの観覧車を蹴るなど、ファンならニヤリとするシーンが多数散りばめられている。DVD好評発売中。©2009 映画プリキュアオールスターズ製作委員会


映画プリキュアオールスターズDX2

「映画プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ!」 前作から3人増えた17人のプリキュアが大集合。舞台は妖精たちが作った遊園地「フェアリーパーク」プリキュアたちはこの遊園地で遊ぶために待ち合わせをしていた。歴代テレビシリーズのサブキャラクターや敵キャラクターも多く登場していて嬉しかったです。ファン待望のブルーレイも発売されることが決定し、プリキュアオールスターズの勢いはまだまだ衰えない!「映画 プリキュアオールスターズDX2希望の光☆レインボージュエルを守れ!」DVD/ブルーレイ 7月21日発売。©2010 映画プリキュアオールスターズ2製作委員会



──大塚さん、初めまして。

大塚 どうも初めまして。

──以前鷲尾天プロデューサーにインタビュー * したことがありまして、今回は大塚さんへのインタビューが叶い、本当に嬉しいです。

大塚 僕なんかでお役に立てるかどうか……。

──いえ、本日はよろしくお願いします!早速ですが、映画「プリキュアオールスターズDX」について色々伺わせていただきたいと思います。最初のプリキュア全員集合映画「プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合」(写真左/以下「DX1」)が発表されたときに、歴代すべてのプリキュアが総出演って聞いてすごく嬉しかったんです。

大塚 それまで過去のシリーズは、番組が終わったら基本的に表に出てこないですからね。

──はい! それが同じ画面で一堂に会するなんて、想像するだけでドキドキしていました。大塚さんは「DX1」のときはおいくつだったんでしょうか?

大塚 仕事を受けた時は08年ですから当時27歳でした。

──27歳! そんなに若くして映画の監督ってすごいです! 僕がイメージするアニメスタッフの年齢層って大抵30代からなのですが。

大塚 そうですね。僕も最初に話を受けた時は驚きました(笑)。

──「DX1」で初めて長編映画の監督に抜擢されてどんな心境でしたか?

大塚 まさか! と思いました。短編 * (5分)を受けたときでも驚いていたのに、まさか長編の監督をやらせてもらえるなんて。大きな不安と大きなわくわくがありました。

──何が不安だったんですか? 映画の監督っていつもテレビでやっていることとそこまで大きく違うものなんでしょうか?

大塚 違いは色々ありましたし、やっていく最中に予想していたより多くの壁にぶつかりました。そして何よりこの映画は本当に完成するんだろうかってずっと思っていました。

──え、完成するかどうかさえ?

大塚 変な話ですが、最悪の場合、間に合わせでなんとかはなるんです。仕事ですし、会社が作っているわけですので、公開日に公開が間に合わないという事はないんです。そこで重要なのは、「監督の本意な形で映画が完成するかどうか」なんです。これが一番緊張するんです。時間との戦いで、間に合うのか間に合わないのか。映画としてちゃんとしたものが完成させられるのか、完成するまでずっと緊張していました。支えてくれたすべてのスタッフに感謝しています。

──やっぱり初めてだったから、塩梅が解らないものなんですね。助かったなあっていうエピソードはあります?

大塚 色々あります。各セクションのみなさんには感謝してもしきれないくらいなんですが、作画監督の青山充 * さんには本当に助けられました。

──青山さんはテレビのときはいつも一人で原画を担当しているじゃないですか、すごいですよね。

大塚 はい。青山さんは本当に仕事がパワフルなんです。「DX1」は本当に時間がなかったので、まず作業の面で大いに助けられました。でもそれ以上に青山さんに助けられたのはやはり僕の精神面でした。さっきの「時間内に本意なものを完成させられるか」ですが、映画の製作の最中には必ず想定外の問題が発生したりするんですけど、青山さんがドッシリ構えてて下さいましたので「絶対に大丈夫だ」と思えることができました。経験の浅い若い監督だとピンチにテンパってしまって、わけがわからなくなるのが一番恐ろしいことなんですけど、そんな事もなくちゃんと映画の完成にこぎつけることが出来ました。

──テレビの放送時間は21分ですけど、映画でいきなり一時間以上になって、やりにくかったりはしませんでしたか?

大塚 非常に難しかったです。「70分」という感覚が身に染みていないからわからないんです。尺の中でちゃんと起承転結のバランスが取れていない映画は観ていて面白くないし、観客が疲れるんですよ。なのでバランスをとるのが大変でした。ネタ的には80分でも90分でも作れたんですが、映画の尺が70分だったのでその中でバランスよく、でもできるだけ詰め込むように心がけました。

──長峯達也 * さんが監督の映画「Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!」 * や映画「Yes!プリキュア5GoGo! お菓子の国のハッピーバースデイ♪」 * では映画が始まる前に、ココやナッツ * といった妖精が出てきてミラクルライト * の説明をするのがお約束だったじゃないですか。「DX」シリーズではライトの説明は劇中でしていますよね。

大塚 あの説明は子どもたちにウケがいいのはわかっていたんですけど、入れちゃうと映画本編の時間も短くなるじゃないですか。僕はなるべくシーンを削りたくなかったので、劇中でライトの説明をしたんです。でもそれはあの時点でミラクルライトの認知度があったからできたんですけどね。



ずっと悶えながら考えて、その結果バッサリ切る


2010.6.8取材直前までの加藤レイズナ(@kato_reizuna)及び加藤あてのツイートより

kato_reizuna そろそろ出ないとー、乗車券は……と
posted at 15:25:09

kato_reizuna キラキラkawaii、奇跡デラックス、17jewelsを聴きながら大泉に向かうよ〜
posted at 15:40:56

cureponkichi @kato_reizuna ツインテールの魔法も忘れちゃだめDAZE!
posted at 15:46

kato_reizuna @cureponkichi もちろん聴きますよー。ツインテールのまっほ〜……あれ?
posted at 15:47:39

kato_reizuna イマココ L:東京都練馬区東大泉2丁目7-25
posted at 17:12:56

kato_reizuna いつものように、入り口で名前カキカキ
posted at 17:33:08

kato_reizuna 緊張して吐きそう
posted at 17:34:51

kato_reizuna まずはトイレへ http://twitpic.com/1uz8yb
posted at 17:36:24

kato_reizuna 会議室なう。吐きたい……(笑)
posted at 17:54:18




──「DX1」の劇中で、「考えていたけど泣く泣く削ったシーン」というのもあったんですか?

大塚 シーンやシチュエーションは色々考えていました。それは細かいセリフのやりとりやカットつなぎや大きなシーンまであって、それはとても70分じゃ収まらない量だったんですが、整理して絵コンテにまとめる際に他のシーンに盛り込んだりしてなんとか70分に収めています。反対に色々膨らませて、その結果バッサリ切るという事もありました。まぁよくあることですけれど(笑)。全体を眺めつつ、無駄に長いかもしれないって思ったところは全体のバランスを取るために容赦なくカットします。「もっと見たい」って言うのが丁度良いと思いますので

──どういうことですか?

大塚 僕はそういうのをよく大好きな「焼肉」で例えるんですけど、

──焼肉……?

大塚 大好きな焼肉も食事の後半になってお腹いっぱいになってくると、残っている肉を食べるのがおっくうになりません?

──はい、焼くのも面倒ですね。でももったいないからなんとかして食べます。

大塚 そう、美味しいのにいやいや食べるのが嫌なんですよ。だからもうちょっと食べたい、もう一皿いけるかなってくらいが一番美味しく肉を食べられるポイントなんですよ。

──腹八分目くらいが丁度いいとはいいますね。

大塚 だから、「もうちょっと見たいな」くらいがちょうどいいのかなと個人的に思っています。

──焼肉理論ですか。でも僕はお腹いっぱい食べたいって気持ちも解るんですよね。

大塚 それら全体のバランスを取って、一番楽しんでもらえる作品にするのが演出の仕事なのです。



演出ってビックリ箱だと思っているんです


絵コンテ

会議室で大塚さんを待っているあいだ「絵コンテでもどうぞ」と渡され眼の色を変えて飛びつく俺。


このシーン本編になかったよ、ほらほら!

「ちょ、このシーン本編になかったよ、ほらほら!」カメラマンの岬君にこの感動を伝えるが何も理解していなかっただろう。


変身バンクのシーン

変身バンクのシーンは手書きじゃなくてコピーを使うらしい。またひとつ賢くなった。


フュージョンを倒すためにみんなで攻撃しているシーン

「DX1」で敵のボス、フュージョンを倒すためにみんなで攻撃しているシーン。「あああああ〜」とだけ書いてある。実際に声が付くとすごい迫力。


「ちょ〜短編」の絵コンテ

「ちょ〜短編」の絵コンテ。初めて「プリキュアオールスターズがアニメーション」になったので、感動して泣いてしまった作品



──大塚さんは学校の先生になりたかった時期があったとお聞きしたことがあるのですが。

大塚 なんで知っているんですか(笑)。はい、ありました。今はアニメを作っているんですが、変な話ですが僕はいつアニメの仕事を辞めてもいいかなって思ってるところがあるんです。

──え、そうなんですか!?

大塚 面白いと思えなくなったら辞めるのかな〜とぼんやり思っていますよ。

──本当ですか? それはどうして?

大塚 これは僕の考え方なんですけど、大体の人は、将来なりたい職業がころころ変わるじゃないですか? それを真剣に考えるその時期によって。それは色々職業の種類を知ったり、それ以外の知識が増えていくから当然のことなんですけど、大切なことは自分が一度魅かれたその職業の何に魅力を感じたのかを自分で分析することなんです。必ず共通点があるはずです。「お金が欲しい」でもいいし、「目立ちたい」「自己表現したい」「服を作りたい!」「遊びたい!」なんでもいいんです。僕の場合は「子どもが好き」と言うのと「人を面白がらせるのが好き」あと「絵を描くのが好き」だったんですよ。それらに共通する仕事ってアニメ制作以外にもあるので、面白くなくなったらそれらを求めてアニメ以外の何かを探すのかなって思うんです。とは言え、僕にも生活がありますのでそんな簡単にはいかないと思いますけど(笑)

──今アニメの演出のお仕事をやっているのはたまたまなんですか?

大塚 幸運な偶然が導いてくれていると、あらゆるものに感謝しています。今はアニメの演出が凄く面白いんです。ワクワクするアニメを作って昔自分たちが面白かったように今の子どもたちを面白がらせたいんです。僕は演出ってビックリ箱だと思っているんで。

──見るまで何が出てくるかわからないし、色々な驚きもある。ビックリ箱ですね。

大塚 そうなんです。この仕事は凄く奥が深くてなかなか頂点に到達もできないし、飽き性の僕が全然飽きなくて(笑)

──なるべくならずっと飽きないでいてもらえると助かるんですが……。

大塚 ありがとうございます(笑)。そういっていただけると嬉しいです。

──少し話を深く伺いたいのですが、「アニメの演出」とは主にどのようなお仕事なのでしょう?

大塚 それは「演出の作業の話」か「演出の本質の話」かで答えが2つあるんですよ。どっちですか?

──両方でお願いします!

大塚 わかりました(笑)。じゃあ「演出の作業の話」から。

──ありがとうございます。

大塚 これは一般的に友人などに「アニメの演出って何するの?」と聞かれた時に答えてる答え方なのですが、アニメはまず脚本を作るんですが、ウチの会社は演出もシナリオの打ち合わせに参加できるんですよ。

──演出さんが脚本を考えることもあるんですか?

大塚 演出が脚本を書くことはありません。ですが、打ち合わせで今回のお話はこういう方向性でやりたいとか、こういうのどうだろうって自分で意見を出していくんです。そんなこんなで打ち合わせを重ねて、脚本家から脚本の決定稿が上がってきて、そのあとに絵コンテに起こしていくんです。

──絵コンテというのは何を描くものなんですか?

大塚 脚本の中にある伝えたい事を、決められた尺の中で流れを整理して全体を構成していくのが絵コンテです。……と、あまり偉そうな事言える立場じゃないんですけど……僕はそう思います。

──ただ絵を描くだけではないんですね。先ほど「DX」シリーズの絵コンテを見せてもらったんですが、キャラクターの動きや感情表現などの細かい指示が書いてあって、驚きました。

大塚 はい。そして絵コンテのあとは、各スタッフに具体的な指示をだしていきます。アニメーターさんにここはこういう芝居にしたいとか、ここの背景は心情の表現で淡くとか撮影処理はこんなのできますか?とか何かいいアイディアありますか?とかの打ち合わせですね。声優さんの演技も必要な時は細かく打ち合わせます。そしてこれは東映アニメーションだけみたいですがが、アフレコのディレクションや音楽のかけ方などの音関係まで演出が考えて仕切ります。最初から最後まで、責任を持って一本作るというのが演出の仕事です。

──作品全体の中身を管理して指示を出していくんですね。

大塚 そういう事です。なので、絵コンテ以降はチェックが主だった仕事になります。

──なるほど。では次に「演出の本質の話」を聞かせてもらってもいいですか?

大塚 「演出の本質の話」をすると、つまり演出の仕事は何かと言うと、脚本の内容を自分なりに考えて、そこにある伝えたいことを自分なりにどう伝えるか、それを考える仕事、かなぁ。ややこしい言い回しになってすみません。

──ただ面白い話を作ればいいというわけではない?

大塚 「面白い」かどうかは見る人の主観が入るから難しいんですよ。それに「面白い」という事は奥が深く、また「面白い」と言う言葉は時に無責任な言葉だと思っています。

──と、言いますと?

大塚 すみません、なんか難しい感じになっちゃって。最近は小手先だけの「面白い」が評価されたりしますが、それはネタとしては面白くても最終的にその作品の言いたい事がそのフィルムを見て感じてもらえない場合はそれってあまり良いものじゃないんじゃないかと思うのです。

──伝えたいことがあって、それをちゃんと伝えられているかどうかに掛かっているわけですね。

大塚 そうです。そういった事全部含めて「面白い」なんだと思います。もちろんネタも楽しいし、飛び道具演出は爽快感がありますから僕もやりますけど。でもそういう難しい話をすると普通の人は、「ん?」って顔をするから、一般の人にはそんな話はしません(笑)。「絵コンテ描いて、みんなと打ち合わせをしてます」とだけ言うんですよ(笑)。

──ははは、その方が手っ取り早くてちゃんと伝えられるのかもしれないですね。話が少し戻りますが、大塚さんはどういった経緯でアニメのお仕事を選択したのでしょうか。

大塚 17歳の時に『「もののけ姫」はこうして生まれた』というビデオを見て、面白そうだったんでやってみたいなと思ったんです。

──東映アニメーションに演出助手として入って、「おジャ魔女どれみ」「明日のナージャ」やがて「プリキュア」で経験を積んで、「ふたりはプリキュアMaxHeart」で初めて演出としてデビューするわけですね。

大塚 そうなります。ていうか詳しいですね(笑)。演出助手時代は本当にダメ演助でした。偉そうにこんなインタビュー受けていて恥ずかしい限りです……。

──自分のことを「演出家」として自覚したのはいつごろからですか?

大塚 最初のころは話が面白ければそれでいいだろうってスタンスだったんですよ。若気の至り的な、若い演出の特権ですね(笑) でも、ちゃんとした表現で伝える必要があるなというのを「スプラッシュスター * 」や「Yes! プリキュア5 * 」から意識し始めたんです。

──責任感が生まれてきた?

大塚 はい。無責任なものを外に出してはいけないなとだんだんと思い始めてきたんです。監督の西尾さん * やプロデューサーの鷲尾さんの仕事の仕方に大きく影響を受けたんだと思います。長峯監督が言っていた事ですが、プリキュアは結構な確率で小さい女の子がその成長の過程で出会うテレビアニメなんです。なのでいい加減なものは作れない!そう言っていたのが印象的で。「ちゃんとしていて楽しいもの」自分なりのそれを考えて作っています。



チャンスが欲しかったんですよ


汗だく

会議室に入ったときは緊張してガチガチだったが、絵コンテを見ていたらいつの間にか汗だくになっていた。


一コマ一コマの描き込み量がすごい

一コマ一コマの描き込み量がすごい。単純に描くだけでも相当時間がかかりそうだ。


絵コンテって

横にスクロールしていくシーンだからこういう描き方になるのか。絵コンテって縦一列に描かなきゃいけない決まりはないんだね。


キュアレモネードのプリズムチェーン

キュアレモネードのプリズムチェーン。絵コンテにすると数コマだけど実際に動いているところを見ると数十コマはあるはず。




──今まで自分が演出してきて、一番よくできた回とダメな回を教えてもらってもいいでしょうか。

大塚 ダメな回なんて言える訳ないじゃないですか!(笑)。

──あ、やっぱりそうですか?

大塚 と言うか、みんな自分の子どもみたいなものですから、お前はよくできたなって子もいますし、どうしようもないなって子もいます。でもどの子もいいところが必ずひとつはあります。なのでダメな子はいないんです。

──ははは、良かった回に関しても語るのは難しいですか?

大塚 良かった回も語るのは難しいですよ。100点ではないですし。話が少し反れますが、僕は自分が演出する時は毎回一つ決め事をするんです。「今回は心情的に作ろう」とか、「アクションに力を入れよう」だったり、作業の話にもなりますけど、「今回は絵コンテを早く上げよう」とか、「枚数を使って作ろう」とか「枚数控えめでやってみよう」とか、「手を抜いてみよう」とか。

──サボるってことですか?

大塚 悪い意味の手を抜くじゃなくて、極力自分で直に手を入れないで、どこまで自分の考えが伝わるか、とかです。演出助手さんの力を引き出したり、アニメーターさんの力を引き出したり、いろいろ考えてやってみる。指示はできるだけ絵に起こさず、字だけ書いたり口頭で説明するだけ!とか。なんでもそうですが、意識してやることによって得るものが確実にあります。それが経験値です。それによって自分自身が気付く事がたくさんあるんです。それにスタッフの能力を引き出すのも演出の大切な仕事なんです。それによって自分の予想を超えた表現に辿り着く事もありますし。あ、何の話でしたっけ。

──良い回やダメな回の。

大塚 そうでした!(笑)。まぁそういった意味では全部お気に入りと言うか、適当に作ったのはないです。

──その中で特にお気に入りの回というのはありますか?

大塚 え、うーん、難しいなぁ・・・・・。

──自分が演出したのは全部ということですか(笑)

大塚 それまでずっと本気でやってきたんですが、脚本×演出×作画の相性がよくっていつも以上に頑張ったのは「Yes!プリキュア5GoGo!」 * の4話と18話 * です。

──どちらもうらら * が友だちと仕事の間で揺れ動く回ですね。アクションがすごい回で印象に残っています。戦闘シーンもびっくりするくらい動きますよね。うららが仕事のオーディションを蹴って、友だちを助けにいっちゃうんですけど、そのあと都合よくオーディションを合格になったりしなかったり、そういうところ好きでした。敵キャラクターの周りをプリキュアたちがグルグル回ったり、滑らかすぎて目で追うのが大変でしたよ(笑)。

大塚 よく動くから、なおさら目についちゃうんでしょう。4話と18話のアクションシーンはアニメーターの田中宏紀 * さんの功績です。彼は本当に上手な方なので、幾分かお任せにしています。

──戦闘シーンはほとんど田中さんが担当しているんですか?

大塚 はい。絵コンテにも「回り込みバトル」とだけ書いたりね(笑)。僕は普段そういう無責任なことは書かないんですけど、田中さんは信用してお任せにしたらすごいものを作ってくれるので、話の流れだけを作って、ここでこういったすごい絵が必要なんですよってことだけを伝えるんです。

──そうだったんですか、ずっと大塚さんがグルグル動かしているのかと思っていました。

大塚 TAP * のスタッフも戦闘シーンの原画をやってくれていて、そこでは張り切って動かしてくれってお願いしています。みなさん凄く張り切ってやってくれて、田中さん以外のところも遜色ないデキになっていたと思います。

──そんなに張り切ってやっていたのには何か理由があったんですか?

大塚 そうですね、ちょうどあの時の僕は何かチャンスが欲しかったんですよね。

──チャンス?

大塚 新人演出が生意気な話なんですけど、その時期はそろそろ演出の仕事の流れに慣れてきて、目新しさがなくなり始めた頃なんですよ。一シリーズの一演出以上の仕事が欲しかったんですが、そのためには実力を示して抜擢される必要があって、ちょうど「GoGo」の4話のシナリオを読んだら、面白くなりそうだったからこれはいつも以上に頑張ろうって思ったんです。

──そのチャンスをものにしたからこそ、「DX」シリーズの監督に抜擢されたんでしょうか。

大塚 まぁ……そうなのかな?(笑)。それは僕に仕事をくれた鷲尾さんにきかなきゃわからないけど、4話のあとで劇場短編を、18話の後で「DX1」を受けたのは覚えています。いずれにせよ4、18話のデキに関してはアニメーターさんの功績がでかいです。それを抜きにしては語れません。ただ、4話と18話はいつも以上に自分を投影した回ではあります。

──大塚さんがうららに入り込んでいたということですか?

大塚 うららに入り込んでいた、とかうららが好き、とかではなく、うららが僕自身だということになるんです(笑)。どういうことかというと、例えば「ふたりはプリキュアMaxHeart」のときは、キャラクターが全体的に西尾さんなんですよ。

──なぎさやほのか * の性格が、監督の西尾大介さんに似ているということですか?

大塚 はい。西尾さんをよく知っているから余計そう感じるんだと思うんですけど。

──そうなんですか。あ、じゃあ「ハートキャッチプリキュア!」 * の監督は長峯達也さんですけど、これも?

大塚 そうなんですよ。ですます調で謙虚な長峯さんが「つぼみ」で、おバカでがむしゃらで空回りしてる長峯さんが「えりか」なんです。もちろん馬越さん * の好みや性格、色彩設計さんやシリーズ構成さんの性格も入り込んできますが、あ、これは長峯さんだってすぐわかるんです(笑)。

──へえ! そこまでキャラクターに投影されるものなんですか。

大塚 つまり、作品を本気で作っているとそうなってくるんですよ。というかきっとそれしかない。だから「DX2」をやるときに「ハートキャッチ」の監督は長峯さんだったので、すごくやりやすかったんですよ。新しいキャラでも感じがわかるんです。

──人となりを知っているから。

大塚 はい。例えば、おバカなキャラって言われても色んなタイプがいますけど、長峯さんが言っているバカっていうのはこっちの方向だなっていうのがなんとなくわかるんです。

──それは長峯さんのおバカな部分を思い出しているからですか?

大塚 長峯さんの解説を受けて「あーなるほどー」とかいいながらそのさまを思い出しています(笑)。で、話を戻しますが、自己の投影を意識的にし始めたのが4話と18話ですね。シリーズディレクターの小村敏明 * さんと、プロデューサーの鷲尾さんの作った世界観とキャラクターのレールの上なのは間違いありませんけど、その中でいかにやるか。セリフの一つ一つが自分の言葉になるように考え抜くんです。うららの発するセリフは自分の言葉であり、その表情や行動は自分の投影なんですよ。ミルク役の声優の仙台エリ * さんとかによく「うらら好きだねぇ」とか茶化されるんですけど(笑)、好きっていうか自分だし、みたいな感じに消化しているのがあの話数たちです。それと似た意味で「プリキュア5」の34話 * では僕なりの母親像が投影されています。

──ミルクが病気になってかれん * が必死になって看病するという回でしたね。ハデーニャが襲ってきても守りぬいたりとかれんが勇ましい回でした。

大塚 そうなんです。あの回はかれんを母親、ミルクを子どもに見立てています。僕が思う「母親とはこうあるべきだ」もしくは「こうあって欲しい」という想いをかれんに全力で入れました。母親は全力で子どもを守るんです。あのかれんは僕の理想の母親像で、また自分の母親を投影していたりするんですよ。「母親」は大抵一人しかいませんから、「母親」の引き出しは一人一つしかないと思います。マザコンとか思われるかもしれませんが(笑)、演演出とは恥ずかしい仕事で、自分をさらけ出していく仕事なんですよ(笑)。またそんな自分を投影できる作品やシナリオに出会えたことは幸運なことなんです。

──そうだったんですね、納得です。話は変わりますが、長峯さんは大塚さんの演出助手時代からの師匠だと聞いたことがあります。

大塚 演出助手の師匠は別にいますが、長峯さんは僕の師匠でもあり、後輩の面倒見の良い素敵な先輩です。色々な事を教えてくれたり、話してくれたりで凄く可愛がってもらっています。

──影響を受けている部分などはありますか?

大塚 そりゃあたくさんありますよ。長峯さんに限らず関われた演出さんには影響を受けまくっています。いい部分も悪い部分も(笑)。あ、絵コンテは早くやらなきゃ!とか

──絵コンテって大体どのくらいの期間でできあがるんですか?

大塚 これは自己最短記録なんですけど、「GoGo」の18話が三週間だったんです。でも、18話はシナリオから参加していたし一概には言えないなぁ。大抵僕は四十日から五十日かかります。かかればかかるだけ内容が良くない傾向があります(笑)。

──長峯さんから影響を受けた部分はありますか?

大塚 長峯さんは極力面白いことに乗っかろうとするんですよ。「ハートキャッチ」でいったら必殺技を撃ったあとにフラワータクトを手で回すじゃないですか。

──そういえば「フレッシュプリキュア!」でも必殺技シーンで回しますよね。

大塚 それも長峯さんのアイディアです。能動的にアクションをさせたほうが見ている子どもがテレビの前で真似できるからあの形にしたらしいんです能動的にアクションをさせたほうが見ている子どもがテレビの前で真似できるからあの形にしたらしいんです。長峯さんは基本的に小さい子目線で考えているんですよ。ミラクルライトもプロデューサーの梅澤淳稔 * さんのアイディアに積極的に長峯さんが乗っていましたから。そういうところは凄い好きで影響を受けています。



視聴率を信用していないんですよ


目に焼き付けるべく片っ端から見ていく俺

目に焼き付けるべく片っ端から見ていく俺。取材を前にテンションマックス!


「DX2」の最終決戦

「DX2」の最終決戦。キュアブロッサムの迫力が伝わってくる。


レインボープリキュアに変身

ミラクルライトの力を浴びてレインボープリキュアに変身。僕も心の中でライトを振りまくりました。


サブキャラクターたちも大集合

「DX2」ではテレビシリーズや過去の映画に出ていたサブキャラクターたちも大集合している。一回で見つけきるのは難しいのでサブキャラクターのために何回も映画館に足を運ぶファンもいた。


プリキュア・フローラルパワー・フォルテッシモ

キュアブロッサムとキュアマリンの必殺技「プリキュア・フローラルパワー・フォルテッシモ」。製作時期を考えると、テレビ本編より映画のほうが早かったのか、手書きになっている。しかも色つき!



──いつか大塚さんと長峯さんふたりで作ったプリキュアというのも見てみたいですね。「プリキュア」は小さい女の子がメインターゲットなので、実際に子どもたちの反応や生の声を聴く機会は、イベントや映画館くらいしかないと思います。

大塚 そうなんですよね。

──大塚さんはどのようして、子どもたちの声を取り入れているのでしょうか?

大塚 テレビをやっている限りなかなかそういう反応を見るのは難しいですよね。だから 子どもがいる友だちに聞いたりしています。うちの子どもがいつも見ているよ、マリンが好きだって言っているよ、とか映画館に行って楽しそうにしている反応を見たりするくらいです。

──ダイレクトに子どもたちの反応を見るのは難しいですよね。視聴率は気にしていますか?

大塚 僕は視聴率を信用していないんですよ。だって雨が降っただけでも変わるじゃないですか。あえて信用するなら、どんどん上がっていくとか下がっていったりするとかの年間通してのグラフとしてはそこそこ信憑性があるとは思うんですけど。

──あまり当てにならないものなんですか?

大塚 一話ずつ上下していてもあまり関係ないんです。ただまぁ低かった時の、見た人が少なかったって結果はそこそこ事実だろうから、作った側としては残念な気持ちになります(笑)

──実際に子どもに聞いてみたりすることはありますか?

大塚 ありますけど、それにどの程度の意味があるのかと言えば、非常に難しい。例えば自分達が作ったアニメ映画を知り合いの子に見せて、面白かったと言っていたとして、どこが面白かったのかと聞いても明確な答えが得られないんですよ。

──具体的にどこがどうって答えられないですね。

大塚 子どもは、語彙力も当然ないですし、大人のような分析力や理解力もなくて、感覚として受け取るんですよね。だから、面白かった、怖かった、つまらなかったとか、それ以上は言葉にできないんだと思います。そして仮にもしそれができて、子どもの要望を聞けたとして、それで作った作品は子どもの予想の範疇の作品になってしまいますから「つまらない」ってことになると思うんですよ。だから僕らは子どもの予想を超えるおもしろを常に考え続けなきゃいけないんです。で、じゃあどうやって考えるかと言うと、僕は「自分が小さかった時に何が見たかったか、何に興奮したか」を考えるんです。小学校低学年の自分はこういう作品が好きだったなぁとか。

──自分との対話ですね。

大塚 ただ、残念ながら僕は女の子じゃない、男の子なんですよね。

──あー、小さい女の子が見たいものはわからない。キャラクターでもそうですよね、誰が子どもに人気があるかっていうのは、大人たちの予想よりも全然違うキャラだったりしますから。

大塚 はい「DX1」のポスターも最初は勇ましい感じに作ろうとしていたんですけど、これは違うなって考え直しまして。

──違うんですか?

大塚 「プリキュア」は確かにバトルがありますけど、戦いを全面に押し出しているポスターを見て小さい女の子は映画を見にいきたい! とはならないだろうと思って。だからポスターはみんな楽しそうな表情なんですよ。あとは職場の女性に聞いてみたりしています。そんなこんなでおじさんが一生懸命考えて「プリキュア」を作っているんですよ(笑)。

──言われてみれば、子ども向けのグッズで戦いをメインにしている商品ってあまりない気がします、変身はしていても大抵笑っている顔ですし。

大塚 男の子向け作品なら色々やりたいこともあるんですけどね(笑)

──大塚さんは「プリキュア」を見ている子どもたちに何を感じ取ってもらいたいと思っていますか?

大塚 難しいことを考えずに、楽しんでもらえればいいなとだけ思っています。4話や18話は作り手側の熱量がハンパなくって、一切の情報を見落とすことなく見ろ! とか傲慢な想いも合ったんですけど、テレビシリーズは毎週楽しみに見てくれていればいいなって思います。ので、楽しい回も静かな回もゆったり楽しんで欲しいです(笑)

──テレビシリーズと映画では違うんですか?

大塚 これは僕の考えなんですけど、映画は絶対面白くなきゃダメなんですよ。

──面白いというのはどういう方向の?

大塚 テレビでは1年通して「面白かった」が作品として成功だと思うんですけど、映画はその場限りの一発勝負なんで、「今日のはあまり面白くなかったね」というわけにはいかないんです。お金も払ってもらってわざわざご足労願っているわけですし。でも全ての人が「面白い」と思う作品は不可能なわけです。では誰に楽しんでもらえたらいいのかと考えたら、プリキュアの場合それは楽しみに見に来てくれた子どもたちなんですよね。そうすると自ずとどんな映画にしたらいいのかがわかってくる。この辺りの考え方は映画監督によってそれぞれの監督論をお持ちだと思いますけど、僕の考え方は作家性の強いタイプではないと思いますね(笑)。最初に言っていたビックリ箱の話に戻っちゃうんですけど、プリキュアみたいな子ども対象のアニメ映画の場合、その子達が楽しめるようなアトラクションを考えるんです。例えば動きが多くて大きいとか。子どもって動きのないシーンだとすぐ飽きるんですよ。

──僕もそうでした。会話だけでストーリーを進められても、早く戦ってーって思っていましたよ

大塚 でしょう。そういった事を考慮しつつ、色々とおもしろを考えてまとめてビックリ箱に放り込んでいく。テレビのプリキュアでは、何話かに一回は心情に特化した静かな回とか、たまには幼児以外に向けた大人びた回があってもいいと思うんですけど、映画はそれじゃ駄目なんです。未就学の女児向け作品であるプリキュア映画は、最初から最後まで面白かったと言ってもらえるような映画にしたいなと思ったんですよ。まぁご飯で例えるとカレーライスです。めちゃくちゃ美味しいカレーライスを用意したい。ここで高級なフランス料理とか持ってきたらダメなんですよ。大人は喜ぶんでしょうけど(笑)

──なるほど(笑)。そんな風に作られたアニメ映画だと常に動くだろうし、アクションも派手だろうから見ていて楽しいでしょうね。そう思ったのが「DX1」からなんですか?

大塚 はい。映画の監督を任されて初めて考えるようになりました。誰に向けてどんな映画を作ろうか、どんな映画が楽しんでもらえるのか。まぁそんなこんな考えがありまして、「DX1」も「DX2」も大人やファンをターゲットにした作りにはなってないんです。



一千万円あげるからやってって言われても


キュアブラック対キントレスキー

キュアブラック対キントレスキー。パワー対パワーの夢の対決!


キュアブラックとキュアホワイト

キュアブロッサムとキュアマリンを守るキュアブラックとキュアホワイト。新人を守る先輩という燃えるシチュエーション。絵コンテも二段ぶち抜きだ!


絵コンテの表紙に

絵コンテの表紙にとても可愛らしいプリキュアの絵が!




──テレビは一年通して一つのシリーズですけど、映画はそれ一本で独立していますからね。「DX1」で「プリキュア」で出来ることはすべてを出したと制作スタッフも声優さんも言っていたのを覚えています。

大塚 はい、出しきりました。

── 見る側も同じく、もう「オールスターズ」の映画はないんだろうなあ、と思っていました。「DX2」が決定したときにまず何を思いましたか?

大塚 吐き気がしました(笑)。「DX1」の時の大変さがまだ鮮明に記憶されていましたから……(笑)

──吐き気が! そこまで大変だったんですか?

大塚 またあれをやるのか……っ! と思うともうその夜は眠れなかったです。まぁすぐに寝ましたけど(笑)。今でも「DX1」の時の事を思い出すと、「一千万円あげるからやって」って言われても、「いや、お断りします」って言うくらいきつかったです。あ、二千万ならやりますけど(笑)。

──ははは、やっぱりやるんじゃないですか。そこまでつらかったのに、どうして「DX2」をやろうと思ったんですか?

大塚 そうですよね。まさか一千万円ももらえるはずないのに(笑)。おまけに僕自身「DX1」でやりきっちゃったからもうネタがないんですよ。「DX2」は断ることもできたんですけど、他の人にやられるくらいなら僕がやりたいって想いの方が強かったんです。でも正直やりたくない。でも他の人にはやって欲しくない……って考えていると締め付けられて吐きそうになるんですよ(笑)。

──「DX2」にそんな秘話があったとは……。制作が決まったと同時に大塚さんに話が言ったんですか?

大塚 決定する少し前からふわふわとイヤ〜な情報がでるんですよ(笑)、やるかもねって。おまけに「DX1」よりひと月もスケジュールがなくって。ありえないっす。で、実際に鷲尾プロデューサーからも、「できるか?」って聞かれて、僕も「やります」って応えて。若い監督に選択権なんかないですよ。できる、できないじゃなくて「やるしかない」んです。その瞬間その瞬間の積み重ねの先に未来があります。自分の未来は自分の手で掴むんです! そりゃあもう夢中でやりました。

──あぁ、そんな大変な事情が。楽しませていただきました……お疲れ様です。

大塚 いやーもうなんか、ありがとうございます(笑)。



次号予告


プリキュアオールスターズ大集合。17人というあまりの多さに、その場にいたキントレスキーも「おのれ、なんて数だ!」と漏らしていた。「映画 プリキュアオールスターズDX2希望の光☆レインボージュエルを守れ!」DVD/ブルーレイ 7月21日発売。©2010 映画プリキュアオールスターズ2製作委員会



大塚さんの直筆絵コンテを食い入るように見ることから始まったインタビュー。大好きな作品の憧れのクリエイターとの対面に緊張しながらも、「焼肉」や「カレーライス」などなぜか食べ物関係のたとえにうなづきつつ、その情熱とパワーのもとになっているものを確認。子どもたちへの愛情、やっぱりそこなんですね。7/15公開予定の後編は、いよいよマニアックトークに突入!?


連載の打ち合わせなどは、ツイッター上でも積極的に行なっていきます。ご意見のあるかたは、ハッシュタグ #omanma_kuitai を自由につかってください。@もどんどん飛ばしてくださいね。


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