2010年12月31日3時1分
日米両政府が技術協力を進めている弾道ミサイル防衛(BMD)システムの事業のうち、今年度に着手予定だった艦艇用のソフトウエアの開発計画が、交渉が折り合わずに頓挫していたことが防衛省への取材でわかった。日米以外の第三国への供与などについて、日本側の「事前同意」を前提とした手続きに米側が難色を示したのが主な理由とみられる。BMD関連で2例目の共同開発となる見通しだったが、武器輸出政策をめぐる見解の相違で技術提携が見送られる初ケースとなった。
この事業は「艦載型戦闘指揮システム」(BMDOAR)。弾道ミサイルを迎撃するイージス艦の作戦機能を向上させるため、艦艇のコンピューターの表示装置を改良したり、システムが故障した際の代替機能を確保したりするための軍用ソフトを、日米の官民が共同で開発するもの。
日米両政府が2006年から09年まで共同研究を重ねてきた。今年度から6年がかりで、共同研究の成果をもとに共同開発に移行し、試作品を完成させる計画だった。総経費は92億円で、今年度は16億円が計上された。
防衛省の複数のBMD担当者によると、米側との交渉は今春から始まったが、複数の要因が重なり双方が折り合えず、今秋、見送られた。
BMDをめぐる日米協力は、小泉政権の04年、包括的な了解覚書(MOU)を結び、個別の事業ごとにさらにMOUや付属書などを締結する形で進められている。
日本政府は、04年のMOU締結と同時に「厳格な管理を行う前提で武器輸出三原則によらない」とする官房長官談話を発表し、技術協力を武器輸出三原則の例外扱いとすることを決めている。
「厳格な管理」の具体例として、MOUには日本側の事前同意のない目的外利用や第三国移転を禁止する条項が書き込まれ、日米が共同開発した装備品を第三国に輸出する際に、日本の同意を得ることが条件となっている。