【コラム】日本の反撃
「大統領のトップセールスによる交渉力発揮」
「軍事面での支援」
「科学技術面での人材育成支援」
「政府主導の破格の価格設定」
これは、アラブ首長国連邦(UAE)の原発受注合戦で韓国に押された日本が立ち上げた「パッケージ型インフラ海外展開推進実務担当者会議」が、今年6月にまとめた韓国の受注成功要因だ。韓国は、政府と民間が一つになって受注戦に臨む「官民一体型」なのに対し、日本は官が手を出さずに傍観し、優れた技術力を持っていても敗れたという反省が盛り込まれた。
「議論ばかりが多く、何一つきちんとやっていることがない」という声が聞かれる日本政府だが、原発・高速鉄道などインフラ受注戦に限っては違う。日本は、韓国を徹底してベンチマークし、素早く行動した。内閣官房に「パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合」を設置し、外務省など各省庁にもインフラ輸出支援チームを置いた。政府の官僚が乗り出して民間企業を後押しし、「国際原子力開発(JINED)」という会社を設立した。資金が足りないと企業が泣きつくや、インフラ輸出ファンドを立ち上げるなど、破格の金融支援策も相次いで打ち出している。官と民が一つになり、インフラ輸出を行うという「オールジャパン戦略」が電光石火で進められた。
1年もたたないうちに、成果が現れ始めた。今年11月にベトナムで原発受注に成功したのに続き、韓国が有力視されていたトルコの原発受注でも、一歩先んじた。ベトナムでの原発受注のため菅直人首相は、李明博(イ・ミョンバク)大統領のように直接ベトナムを訪問し、物量攻勢をかけた。菅首相は、ベトナムに790億円の借款を提供し、空港・鉄道建設なども支援することにしたという。韓国の受注がほぼ確定していたトルコの原発が日本に傾いたのも、日本が破格の条件を提示したからだと分析されている。
実際、日本はインフラ輸出の面で韓国よりはるかに有利だ。開発途上国に支援する公的開発援助(ODA)をインフラ輸出とリンクさせる場合、韓国が日本と競争するのは容易ではない。日本はODAのために年間94億ドル(現在のレートで約7662億円)=2009年基準=を投じるのに対し、韓国は8億ドル(約652億円)に過ぎない。
韓国とリチウムなどの資源開発協力を行ってきたボリビアの状況も、簡単ではない。日本が08年までにボリビアに支援した資金は、円借款470億円、無償資金協力850億円、技術支援630億円など。韓国ウォンに換算すると2兆ウォン近くにもなる。最近東京を訪れたボリビアの大統領が、共同声明書に「無償援助に感謝する」という文言を入れたほどだ。原発発注をめぐり韓国と日本の間で綱渡りをしているようなトルコも、円借款だけで5501億円、ウォンにすると7兆6330億ウォンを受け取っているほどで、日本からかなり世話になっている国だ。
韓国が、日本には是非勝ちたいという一念で死力を尽くして走ってきたように、最近は日本も、韓国にだけは負けられないと考えているようだ。インフラ受注戦だけではない。「韓国がやっているのに、どうして日本ではできないのか」という嘆きを「鞭」にして、政府のみならず企業も競争力を強化するため走っている。
車学峯(チャ・ハクポン)東京特派員