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【放送芸能】

心くすぐるゲーム音楽 30年前ピコピコ…今はオーケストラも

2010年12月25日 朝刊

 一九八〇年代から二〇〇〇年代にかけてのゲーム音楽を、ゲーム音楽の作り手らが演奏するライブイベント「EXTEND」が新年一月九日、東京・新木場で開かれる。ピコピコ音からオーケストラなどの生音へと進化し続けながら、その時々のテレビゲームファンたちの脳と心に突き刺さってきたゲーム音楽。約三十年の歴史を振り返ってみた。 (早川由紀美)

 ゲーム音楽が、テレビゲームの枠を超えて、音楽作品として注目を集めるようになったのは一九八四年。ナムコが出したゼビウスやパックマンなどのゲーム音楽を、細野晴臣が監修したアルバム「VIDEO GAME MUSIC」が発売されたのがきっかけだ。

 他のゲーム会社も、ゲーム音楽のアルバムを発売するように。それらの音楽を作っている社員を中心としたバンドも各社に誕生した。タイトーのZUNTATA、コナミの矩形波(くけいは)倶楽部(くらぶ)などだ。八〇年代後半には、ひんぱんにライブイベントが開かれるブームを迎える。

 「当時、ゲームが好きという人は、野球やサッカーが趣味という人とは違い、マイノリティー(少数派)で息を潜めて生きていた。でも、ライブに行けば同じ趣味の人たちがいて、好きなゲーム音楽をじかに体感することができた」。当時のゲーム少年で、「EXTEND」を主催するレコード会社ウェーブマスター(目黒区)の辻坂健次プロデューサー(40)は振り返る。今回のライブを企画したのも当時のワクワク感が根底にあるという。

 技術が進み、使える音源の幅も急速に広がっていった。ライブに出演するバンドの一つ[H ・]のボーカルでセガのチーフサウンドデザイナー・光吉猛修さん(43)は九〇年入社。おもにゲームセンターに設置するアーケードゲームの音楽の作曲などを手掛けてきた。「最初のころは、パソコンにプログラムの数字を入れて作っていたのが、数年後には普通に鍵盤を弾いて作ることが可能になり、表現能力が上がっていった」と言う。九三年に出たレーシングゲーム「デイトナUSA」で光吉さんは、自分の歌声を入れる異色の試みもしている。

 現在はオーケストラやバンド、自然界の音など何でも録音してきて使用することが可能になった。パソコン内に限られていた音の世界は「チェコにオーケストラの演奏の録音に行くこともある」というところまで広がっている。

 ゲーム音楽独特の魅力とは何か。光吉さんは「例えるならアーケードゲームの音楽は十五秒のCM、家庭用ゲームの音楽は映画」と言う。ゲームセンターでは、思わずお金を投入したくなるよう、刺激的に作られている。逆に、長時間向き合う家庭用は「聴いてて疲れないけど、なければ物足りない」絶妙な加減となっているという。そこにゲームをやっているときの興奮や達成感が加わってファンの胸には刻まれる。三十年の歴史を通して聴けば、思わぬ記憶の扉も開くかもしれない。

     ◇

 「EXTEND」は新木場STUDIO COAST(江東区)で一月九日午後四時スタート。ZUNTATAや、ゲーム音楽作曲家の細江慎治さん、佐藤豪さんらが出演する。チケット(6000円)は、ぴあなどで販売している。

 

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