「10代が選ぶ今年の重大ニュース」が発表された。セーラー万年筆が全国の10代500人に聞いた。キーワードは「希望」のようだ
▼チリ鉱山落盤事故で世界が沸いた生還劇が2位に選ばれた。直前の絶望的な予想を覆したサッカーW杯・日本代表チームのベスト16進出が4位に食い込んだ。小惑星探査機「はやぶさ」の奇跡的な帰還劇も7位に入った
▼1位は尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件だった。日中関係は残念ながら暗い。6位の菅内閣発足も、希望を担った始動が今は少しむなしい。明るくない報道に彩られがちな1年だったから、余計に希望を探したくなる
▼希望を探し求めるとき、ヒトは星にも祈る。小さな星の一つ、小惑星イトカワから微粒子も持ち帰るという、世界の科学者を驚かす成果も挙げていた「はやぶさ」の快挙は何度でもかみしめたい
▼そんな年を締めくくるにふさわしいニュースが、金星からもたらされるはずだった。はやぶさの帰還前に地球を出発した日本の探査機「あかつき」が、地球に一番近く「兄弟惑星」とも呼ばれる金星を探査し、新情報を送ってくれる予定だった
▼周回軌道に乗ることができなかった。むろん「はやぶさ」の価値が薄まるわけではない。「あかつき」も6年後に再挑戦の機会が巡ってくるという。今年は困難の先に待つ喜びの大きさをチリ鉱山事故やW杯や「はやぶさ」で教わった。絶望はいつか希望に変わる。
=2010/12/10付 西日本新聞朝刊=