|
北陸の経済ニュース 【12月12日03時07分更新】
短い休み、でも海外へ 年末年始、北陸の旅行動向
企業や官公庁で冬のボーナスが支給され、年末年始の休みを楽しみにしている人も多い
だろう。北陸の旅行動向を調べていると、取材先で「少し奮発して海外旅行に行きたい」
との声が聞こえてきた。今回は日並びが悪く休みが短いが、前年の手控えムードから一転
、円高を追い風に「海外組」が増えているようだ。(中山裕介)小松市の機械メーカーに勤める女性(28)は25日から28日まで、同僚の女性とグ アム旅行に出掛ける。「年末年始は割高だけど、せっかくの休みだし、暖かいところに行 こうと思って。スカイダイビングを楽しみたい」。 もちろん、ショッピングも目当ての一つ。冬のボーナスは少しだけ上がった。「円高の 影響で思っている以上に安く買い物ができそう。本当にラッキーです」と声を弾ませる。 ■ ■ 旅行代理店に予約状況を聞くと、担当者は「海外が好調」と口をそろえる。 JTB中部金沢支店によると、海外旅行は全体で前年比10〜15%増。ハワイや欧州 (フランス、イギリス、イタリア)は約2割増と伸びた。ほっこく観光(金沢市)はアジ アを中心に予約が増え、10月発売のベトナム、台湾、タイのツアーは約1カ月で完売し た。 近畿日本ツーリスト富山営業所も海外の予約はほぼ埋まったとし、担当者は「不況やイ ンフルエンザの影響で散々だった前年の反動増も大きく、持ち直してくれた」とにんまり する。 ■ ■ 海外旅行の復調要因としてまず考えられるのは、企業の業績回復に伴う所得環境の改善 だ。 石川県経営者協会がまとめた県内企業の年末一時金交渉状況(2日現在)は、妥結平均 額が前年比11・84%増の約42万円と3年ぶりにプラスに転じた。リーマン不況から 持ち直しの動きが強い製造業の伸びが目立った。 「ボーナスが増えたからか、低迷していたファミリー層の海外旅行に動きが出ている」 とはJTB中部金沢支店の担当者。懐具合が少しよくなった家庭が海外旅行に出掛けるケ ースが多いようだ。 もう一つはやはり円高。最近こそ円安に振れているが、それでも割安感はあり、「買い 物ざんまいのツアー」(関係者)で海外を選ぶ女性もいるらしい。 羽田空港の国際化が海外旅行の増加に寄与していると見る向きもある。23日から1月 5日までの小松−羽田便の予約状況は日本航空、全日空ともに前年比7〜8%増と好調に 推移している。 日航金沢支店は「羽田の国際線は『深夜早朝便』が特徴。小松発の羽田便は最終便が伸 びており、羽田経由で海外に行く人がいるのではないか」とする。ほっこく観光は小松発 着羽田経由のハワイ、パリが人気という。 好調さが際立つ海外旅行だが、落ち込んでいるのが中国。JTB中部金沢支店によると 、中国旅行は「上海万博が終わり、前年割れの状況」。担当者は否定したが、「尖閣諸島 周辺での漁船衝突事件などが影響し、中国を避けているのではないか」という気がした。 ■ ■ 国内旅行はどうか。関係者からは「まずまず」「イマイチ」とさまざまな声が聞かれる が、日並びが予約状況に影響を与えているのは間違いないようだ。 加賀市山代温泉で「瑠璃光」などを運営する「よろづや観光」(同市)によると、28 日〜1月2日が満室状態で、3日以降の予約は例年より少ない。七尾市和倉温泉の加賀屋 は29日〜1月2日までは満室だという。金沢市の旅行代理店の担当者は「日並びの関係 で4日が仕事始めの企業があり、年明け3日以降の宿泊が低調」と説明する。 一方で、国内旅行で特徴的なのは「前倒し」の傾向。24日に休みを取れば、クリスマ ス前後が4連休になるためで、よろづや観光の萬谷正幸社長は「例年ならクリスマスはひ まだが、今年はかなりの予約が入っている」と話した。 全体的には例年通り近場の温泉旅館のほか、東京ディズニーリゾートやユニバーサル・ スタジオ・ジャパン(USJ)などの人気が高い。 今後は低調な3日以降を中心に「間際需要」を狙う動きが活発化するとみられ、宇奈月 グランドホテル(黒部市)は「今年夏から始めた洋食バイキングを個人客や新忘年会プラ ンに加え、売り上げの増加を図りたい」と意気込む。 今回の取材で旅行のパンフレットだけは多く集まったが、我が家の計画はまだ白紙。「 うちは一体どうするの」。そろそろ妻からチクリと言われそうだ。
北陸の経済ニュース |