在新潟中国総領事館が庁舎の移転先として新潟市中央区の万代小跡地の購入を希望し、同市が売却を凍結した問題で、同市議会の文教経済委員会は15日、「市民の不安を放置したまま売却をしない」ことなどを求めた市民団体の請願について、継続審議とすることを決めた。篠田昭市長は「しばらく状況を見守る」としており、先行きは不透明なままだ。
■市方針変わらず
市が万代小跡地の売却について「年内は難しい」と発表したのは11月18日。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件によって対中感情が悪化し、9月以降、市役所や市議の自宅には売却に反対する電話やファクスが相次いだ。
篠田市長は7日の市議会の一般質問で「日中関係が改善され、早く通常の雰囲気の中で住民に説明したい」と述べ、売却に向けて地元の理解を求めていく姿勢を示した。
跡地は約1万5000平方メートル。市によると、中国側は領事官舎や職員宿舎の建設などを予定しているという。
泉田裕彦知事も県議会の一般質問で「できるだけ早い時期に新潟市が当事者として責任を持って(領事館に)答えていくべきだ」と指摘した。
■市民の理解を
市議会への請願は、市内外の1万4227人分の署名とともに「中国領事館問題を考える市民の会」(深谷成信代表)が提出した。万代小跡地や現在、領事館がある中央区西大畑町周辺の住民らが10月につくった会という。
文教経済委は、請願を可決するか継続審議とするかで割れた。委員長も含めた採決により、7対6で継続審議が決まった。ただ、市議は「市民の理解が得られなければ、売却はできない」と口をそろえる。
ある市議は「市民とは、万代小跡地周辺の住民だけではない。不必要な不安を生まないためにも、市はもっと広く説明することが必要で、簡単にまとまる話ではない」と話す。
■説明会も中断
市は9月、万代小跡地周辺の自治会役員ら住民を集めて計3回の説明会を開いた。しばらくすると、周辺には領事館移転に反対するビラがまかれ、街宣車が走り始めた。追加の説明会は市側の都合でキャンセルされ、約2カ月の空白を経て今月2日、自治会側に「しばらく様子をみる」と伝えてきた。
自治会役員の男性は「求めても、今は説明してもらえない。だから賛成とも反対とも言えない。いつまで中途半端な状態で放っておかれるのか」といら立ちをにじませた。【黒田阿紗子】
==============
今春 領事館建設のため新潟市内の土地取得を希望する中国側に、県と新潟市が公有地など数カ所を紹介
6月24日 領事館が同市中央区万代島のビル内に開館
8月19日 領事館が市に万代小跡地を「年内に購入したい」と申し入れ
9月 7日 尖閣諸島沖で中国漁船衝突事件
9月 市が万代小跡地周辺の自治会などに計3回の説明会
10月25日 領事館が同区西大畑町のビルに移転
11月18日 市が領事館に「年内の土地売却は難しい」と伝えたことを発表
毎日新聞 2010年12月16日 地方版