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保安官停職処分 海保長官「信頼損ねた」 「擁護」世論と板挟み

第5管区海上保安本部から出て記者に囲まれる一色正春元保安官=神戸市中央区(甘利慈撮影) 沖縄県尖閣諸島沖での中国漁船衝突の映像流出事件で、24人の処分を発表した海上保安庁。処分が出るまで揺れに揺れた組織を象徴するように、重苦しい空気が漂った。「あってはならない事態。国民の信頼を大きく損ねた」。鈴木久泰長官は苦渋の表情を浮かべ謝罪した。一方で、書類送検され、停職12カ月の処分を受けた一色正春元保安官(43)は、「後悔していない」ときっぱり言い切り、職を辞した。

 午後6時から始まった海保本庁の会見。顔に汗を浮かべた鈴木長官は「再発防止の取り組みを徹底する」と何度も繰り返した。処分に関して「いろんな声があったことは承知している」と鈴木長官。最終的に停職とした理由を「過去の事案などを総合的に判断して冷静に決めた」と強調した。

 最も重い「免職」か、「停職」にとどめるか。処分をめぐって海保は揺れに揺れた。元保安官が流出を告白した11月10日以降、海保には「辞めさせないで」といった電話が殺到。政府が映像を非公開としたことへの不満も多かった。この一方で「規律違反を許せば組織が成り立たない」という組織論もあった。

 ある海保職員は「元保安官が17日に、自ら辞職を願いを出したことで、停職で依願退職という流れができた」と解説する。

 長官の会見は30分間で打ち切られた。この間、他の職員の処分の詳細や、映像の流出範囲などについて質問が相次いで出された。しかし、鈴木長官は「まだ地検の判断が出ておらず、捜査との関係があるので控えたい」と歯切れが悪いままだった。

 一方、元保安官が所属した第5管区海上保安本部(神戸市)でも、大島啓太郎本部長が「映像の流出はあってはならない行為。深くおわび申し上げます」と沈痛な表情で謝罪した。

 元保安官には午後4時半過ぎに処分書を手渡したといい、「書面を読み上げて渡すと、無言で受け取った」という。元保安官はその後、樋口由幸・神戸海上保安部長の部屋を訪れ、「申し訳ございません」などと頭を下げたという。

映像流出「後悔していない」

 一色元保安官は22日夜、神戸市の自宅で産経新聞の取材に応じ「今回のことは後悔していない。処分の内容を聞いたときは当然だと思った」と話した。

 停職12カ月の懲戒処分については「処分をもらったばかりだが、内容を聞いたときには当然だと思った」という。

 また、22日付で辞職願が受理されて依願退職となったことに対し「今後は仕事を探さなければならない。官舎を出て家も探す必要もあり、どういった方面の仕事をするか見当もつかない」などと淡々と語った。

 一色元保安官はこれまで「政治的主張や私利私欲に基づくものではない」とコメントしていたが、この日も「気持ちは変わっていない」。ただ詳しい理由は「簡単に説明できることではない」とも語った。

【写真説明】第5管区海上保安本部から出て記者に囲まれる一色正春元保安官=神戸市中央区(甘利慈撮影)

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