沖縄タイムス社は2010年十大ニュースを選定した。第1位は、県民を興奮の渦に巻き込んだ高校野球・興南高校の甲子園春夏連覇。史上6校目の偉業に沖縄中が沸き立った。2位は普天間飛行場移設問題での政府の迷走。政府は県外移設を実現できず、「最低でも県外」を約束した鳩山由紀夫首相(当時)は辞任。日米政府は移設先を名護市辺野古沖に戻した。沖縄差別ともいえる政府の姿勢に9万人の県民が結集した反対大会は3位。普天間県外移設を掲げて仲井真弘多知事が再選を果たした県知事選が4位となった。明るい話題では、全国高校総体の県内初開催が5位、米ツアー年間5勝の宮里藍と宮里美香のツアー初V(国内日本女子オープン)が6位、「組踊」のユネスコ無形文化遺産代表リスト登録が7位となった。
1 興南、春夏連覇
高校野球の甲子園で興南が史上6校目の春夏連覇を達成。沖縄に初の深紅の優勝旗をもたらし「ダブル」の偉業を成し遂げた。
全国屈指の左腕、島袋洋奨投手と強力打線が春の選抜から実力を存分に発揮。強豪校を次々と撃破し、決勝は日大三(東京)を延長12回、10―5で破った。選抜は嘉手納と県勢初の2校同時出場の快挙も果たした。
夏は県勢初優勝の期待がかかる中、その重圧をはねのけた。準決勝の報徳学園(兵庫)戦は5点差を逆転。決勝は東海大相模(神奈川)に13―1で圧勝した。
悲願達成に我如古盛次主将は「県民で勝ち取った優勝です」と喜びを表現。我喜屋優監督の「逆境を友達に」という指導論も全国から注目された。
2 「普天間」迷走 鳩山首相辞任
政権交代以降、県外の移設先を数カ月かけて模索するとしていた米軍普天間飛行場移設問題で政府は5月28日、移設先を再び名護市辺野古とする日米合意を発表した。
この間、数十カ所もの県内外の移設候補地が取りざたされては消えるなど、政府の対応は迷走した。移設候補地の一つだった鹿児島県・徳之島では4月18日、人口の半数以上の約1万5千人が参加して基地移設反対集会を開催。日米合意を受け社民党は連立政権を離脱した。
移設問題は、その後さらに混迷を深めた。鳩山由紀夫首相(当時)は6月2日、米軍普天間飛行場の移設問題や「政治とカネ」問題の責任を取り、退陣の意向を表明した。
3 県内移設反対 9万人が結集
米軍普天間飛行場の県内移設に、県民の怒りが頂点に達した。日米両政府が全面返還を発表しながら、14年たっても膠着(こうちゃく)状態が続く普天間飛行場の移設問題の解決を求める大会が相次いで開かれた。
4月25日、読谷村運動広場で開かれた「米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と、県内移設に反対し国外・県外移設を求める県民大会」は超党派の首長や議員の呼び掛けに約9万人(主催者発表)が参加。仲井真弘多知事は、米軍基地が過度に集中する現状を「差別に近い」と指摘した。
5月17日には、普天間飛行場の無条件返還を求める「普天間基地包囲行動」が行われ雨の中、約1万7千人(主催者発表)が同飛行場を包囲した。
4 知事に仲井真氏再選
今年は選挙の年だった。最大の政治決戦となった11月の県知事選は米軍普天間飛行場の移設問題や経済振興策、来年度で期限が切れる沖縄振興計画に代わる新振計の在り方などを争点に、現職の仲井真弘多氏(71)と新人で前宜野湾市長の伊波洋一氏(58)が対決。仲井真氏が伊波氏に3万8626票の大差をつけ、再選した。
自民、公明の保守中道態勢が4期の県政継続に成功。12年ぶりの県政奪還を目指した革新陣営は苦杯をなめた。普天間飛行場の移設先として仲井真氏が県外、伊波氏は国外を掲げ、県内移設を否定した。
7月の参院選は島尻安伊子氏(自民)が再選。9月の統一地方選を含め、18の市町村長選、30の市町村議会議員選があった。
5 美ら島総体開催
高校生スポーツの祭典・全国高校総合体育大会「美ら島沖縄総体2010」が7月28日から8月20日まで県内で初めて開催された。選手だけで全国から2万6000人余が来県、28競技で熱戦を展開した。
県選手も地元応援を受け活躍。なぎなた団体で知念が優勝。演技も同校の米須陽香・城間さやか組が頂点に立った。重量挙げは南部工の53キロ級玉寄公博と77キロ級久米大輝がトータルV。56キロ級平仲浩也がスナッチを制し、団体優勝も飾った。カヌー男子カナディアンシングル500メートルで當銘孝仁(沖水3年)が優勝、空手男子個人形で上村拓也(興南)も栄冠を手にした。また、高校生が「一人一役」で裏方として奮闘、さまざまな交流があった。
6 「W宮里」活躍
女子プロゴルフの「W宮里」が、国内外で昨年を上回る活躍を見せた。
宮里藍(25)=東村出身=が、米ツアーで44年ぶりの開幕2連勝を含む年間5勝を挙げ、23年ぶりに日本人最多勝を更新。シーズン終盤は苦戦が続いたが、最後まで年間最優秀選手や賞金女王など各部門で上位争いを繰り広げた。平均パット数は1・73で堂々の1位。
宮里美香(21)=那覇市出身=は国内メジャー、日本女子オープンでプロ初勝利(10月)を飾った。平成生まれの日本女子ツアー優勝は初。今季、国内では7戦中5戦(米ツアーを兼ねるミズノクラシックを含む)でトップ10入りした。米ツアーでも獲得賞金は昨年の倍以上の60万ドルを突破し、17位に躍り出た。
7 組踊、無形遺産に
琉球王国時代の国劇「組踊」が11月16日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産代表リストに登録された。
組踊は中国の使節団「冊封使」を歓待するための舞台芸術として玉城朝薫が創作し、1719年に「執心鐘入」などが初めて演じられている。歌と踊り、せりふ(唱え)で構成される伝統的様式を持った演劇で、日本や中国の芸能の影響も受けている。
対象となったのは重要無形文化財「組踊」保持者でつくる伝統組踊保存会(島袋光晴会長、62人)が上演する演目など、修練を積んだ実演家による組踊。
継承と発展に加え、観光資源としての在り方などが課題に挙げられている。
8 尖閣 中国漁船衝突
尖閣諸島の日本の領海内で9月、第11管区海上保安本部所属の巡視船と中国漁船が接触。11管は公務執行妨害の疑いで、中国漁船の船長を逮捕した。中国側は、日本側の対応次第で今後の両国関係に影響すると警告。日ごとに両国の関係が泥沼化する中、那覇地検は拘置期限前に「外交問題」という異例の理由を付け、処分保留で釈放した。
一方、政府が外交への影響に配慮して事件のビデオ映像を一部の国会議員に公開する中、衝突事件の映像がインターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」に流出。その後、神戸海上保安部の海上保安官が関与を認めており、警視庁は国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで書類送検した。
9 名護市長・市議選 辺野古移設にノー
名護市は、米軍普天間飛行場移設問題で、鳩山政権の迷走、辺野古回帰の日米合意に翻弄(ほんろう)される一方、市民が市長選、市議選と辺野古移設反対の民意を明確に示した1年だった。
1月の市長選では、辺野古移設に反対する新人の稲嶺進氏が、V字型滑走路で政府と基本合意した現職の島袋吉和氏を1588票差で破り、当選した。稲嶺市長は「海にも陸にもつくらせない」と強固な反対姿勢を堅持している。
9月の市議選(定数27)では稲嶺市長を支える市長派16人が当選する圧勝だった。改選後の市議会は9月定例会で、県内移設に反対し日米合意の撤回を求める意見書、決議の両案を賛成多数で可決した。
10 不発弾 相次ぐ
今年4月、うるま市の民家敷地内で発見された1964年米国製対戦車りゅう弾が、通報から5カ月たっても放置されている実態が発覚した。沖縄戦後の不発弾は自衛隊の処理対象外で米軍に協力要請するしかないが、県警や防衛局、県、市などは責任の所在を不明確にしたまま放置。発覚後、関係機関は戦後製造の不発弾処理を迅速に行う新たな連絡制度をつくった。
また、10月には那覇市で、国内初となる住宅密集地での不発弾(米国製8インチ艦砲弾)爆破処理が行われ、付近住民約3千人が避難。糸満市や北中城村の米軍施設跡地では大量の不発弾が見つかるなど、戦後65年をへても県民が不発弾と隣り合わせで生活している実態が改めて浮き彫りになった。
次点 99年ぶり震度5相当
99年ぶりに震度5相当の地震が沖縄本島を襲った。勝連城跡では城壁の一部が崩れ落ちるなど各地で被害が出た。