【ソウル＝山口真典】韓国検察当局は25日、朝鮮半島西側の黄海で中国漁船が韓国警備艇に突っ込んで沈没した事件で、中国人乗組員３人を不起訴処分として釈放した。事件は当初、中国政府が韓国側の責任を主張して賠償を要求したため、韓国内で中国への反発が広がったが、対中関係への配慮を優先した。

　韓国聯合ニュースによると、韓国・群山（グンサン）海洋警察署が特殊公務執行妨害の疑いで24日から取り調べていた３人は25日午前、仁川国際空港で中国側関係者に引き渡された。同日中の航空便で中国の大連に戻る。

　韓国政府は「円満に処理するため韓中政府が緊密に協議する」（外交通商省関係者）として中国との共同調査に応じる意向を表明。中国も協調姿勢に転じており、早期の決着となった。

　今年９月に沖縄県の尖閣諸島付近で中国漁船が日本の海上保安庁巡視船と衝突した際には、中国人船長が逮捕され、日中関係が一気に悪化した。今回は中韓がともに、11月23日の北朝鮮による韓国・延坪島（ヨンピョンド）砲撃で緊迫する朝鮮半島情勢への対応などに直面している状況にあり、関係悪化は得策でないとの判断が働いたとみられる。日中間の尖閣問題への対応との差が際立つ格好となった。

　事件は18日、違法操業を取り締まっていた韓国海洋警察庁の警備艇に中国漁船が衝突して転覆。漁船船長が死亡し乗組員１人が行方不明となった。韓国側の調べでは、取り締まりの過程で中国漁船の船員が鉄パイプなどで警察官に殴りかかり、漁船の方から警備艇に体当たりしたと指摘している。