しかし、米国政府内部ではこんな指摘がなされているのだと暴露されたことで、こうした嫌疑の信頼性は公の場で語られた場合よりもずっと高くなっている。
ロシアのウラジーミル・プーチン首相が怒りをほとんど抑えきれずにいる様子は、ウィキリークスで暴露された文書がロシア政府にとっていかに痛いところを突いているかという証明にほかならない。
トルコの首相も、スイスの銀行に口座を開いているとウィキリークスで指摘されたことについて、訴訟も辞さないと息巻いている。
こうした類の暴露は、通常は米国への不信感が強い国々で米国の見解の信頼性を高めるという思わぬ効果ももたらしている。例えばパキスタンでは、インド人の悪口を記した公電がでっち上げられ、ウィキリークスで暴露されたものとして新聞に掲載されている。
もちろん、米国人の名誉にはならない情報も数件暴露されている。例えば国連に出向いている米国の外交官には、国連高官らの個人情報(クレジットカードの番号など)を収集せよとの命令が下されていた(米国が資金不足であることは筆者も承知しているが、果たしてそこまで窮しているのか?)。
公電から浮かび上がる米国の姿は好ましい
だが、スパイ行為を働かれた恐れもある高官の中には、さほど怒っていない人もいるようだ。各方面からスパイの目にさらされることは外交という仕事につきものの不運な現実だと思っているからだ。
総じて見れば、ウィキリークスによる外交文書の暴露によって浮かび上がった米国の姿は好ましいものである。この国の外交政策は筋が通っていて知的レベルも高く、実用主義に徹しているという印象だ。恐らく、それこそが最もしっかり守られていた秘密だったのだろう。
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