米国はアサンジ氏に勲章を授けるべきだ

ウィキリークスがもたらした意外な効用

2010.12.15(Wed)  Financial Times

Financial Times

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 未公開の外交公電はまだかなり多く、その中には恐らく爆弾もいくつか含まれているだろう。だが、この2週間に公開された文書には、米国が悪意のある外交政策を展開したり二枚舌を使ったりした証拠がほとんど見られない。これには世界中の陰謀論者が深く落胆しているに違いない。

非公式な議論が公式見解と同じで、陰謀論者はガッカリ?

 米国は公の場で、中国とは相互利益に基づいた強い関係を築きたいが、中国の経済政策の一部が米国人労働者に打撃を与えていることを懸念していると話している。今回の情報漏洩により、米国は非公式な場でも同じことを言っていることが明らかになった。

 例えば米国のジョン・ハンツマン駐中国大使は、米中関係がギクシャクすることを予見した公電の中で、米国人労働者がもっと利益を得られるようにしながら「前向きな関係を維持する方法を我々は見つけなければならない」と主張している。

 中国には、米国が中国の台頭を妨害する計画を練っているという手の込んだ説を唱えている国家主義者やネチズンが少なくないが、ウィキリークスが明らかにした文書にはそんな気配は全くない。

 また、米国はずいぶん前から公の場で、イランは核兵器を開発中だと考えられ、そうした行動は世界平和にとって脅威となっているが、イランの問題には平和的に対処したいと述べている。そしてウィキリークスが暴露した文書は、米国政府内部でも同じことが語られていることを裏づけている。

 実際、イランについての本当に過激なコメントは、米国人でない人の口から出たものだ。イランへの軍事攻撃を主張しているのはサウジアラビアの国王であり、イラン政府を「ファシスト」と評したのは、フランスのニコラ・サルコジ大統領の上級顧問だ。

 さらに、米国は公の場で人権問題汚職に目くじらを立てている。例えば、ケニアからの公電を読めば分かるように、米国は密室でも同じ問題を懸念している。公式の場でも非公式な場でも同じことを話しているとは、米国人は一体、どういうつもりなのか――。

時折あるギャップは二枚舌ではなく、如才ない外交

 米国の公式発言と非公式的な議論の間にギャップがあることがウィキリークスによって示される場合もあるが、それは米国の代表者が二枚舌を使っているからではなく、外交担当者として如才なく対応しているためであることが多い。

 確かに米国は、公の場では、ロシア政府はひどく腐敗していて非民主的だとか、犯罪組織も入り込んでいるなどとは語っていない。そんなことを言ってしまえば無用な対立を招くことになるし、逆効果になる恐れもある。ロシア政府はそうしたコメントを、祖国に対する侮辱であり反ロシアの謀略だと見なすと思われるからだ。

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