(2010年12月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米国はジュリアン・アサンジ氏に勲章を与えるべき?〔AFPBB News〕
ウィキリークスが米国の外交文書を暴露し始めてから2週間が経った今、多くの米国人はその創設者であるジュリアン・アサンジ氏が鉄格子の向こう側に入ることを望んでいる。だが、米国はむしろ、同氏に勲章を授与すべきだろう。
もちろん、秘密にしてきた外交公電が公にされてしまったことで、米国はばつの悪い思いをしている。アサンジ氏も明らかに、米国のファンではないようである。
だが、それでも同氏とウィキリークスは米国を大いに助けたと言える。意図したわけではないものの、米国の外交政策にまつわる長年の陰謀論が誤りであることを暴いてみせたからだ。
長年渦巻いてきた米国外交の陰謀論
米国人が自国の外交政策について公の場で語っていることはいずれも、何らかの秘密の目的を隠すための作り話にすぎない――。欧州や中南米の左翼たち、そして中国やロシアの国家主義的な右翼たちは、ずっと前からそう思い込んできた。
秘密の目的が何であるかは、そう主張する人の好みによって変わり得る。強力な企業(ハリバートン!*1)の利益だったり、左翼政権の転覆だったり、ライバル国の弱体化だったりする。秘密の目的が何であれ、必ず何らかの隠された狙いがあるとされ、そうじゃないと考えるのは、よほどの世間知らずだと見なされた。
米国大使館の奥で何か良からぬことが行われているとの見方は、英国にさえも根づき、映画やテレビドラマのありふれた題材となった。英国の世論を操作する(1983年の英国映画「プラウマンズ・ランチ」)とか、核兵器の事故を隠蔽する(1985年の映画「ダウニング街の陰謀」)とか、単に英国人の同僚をこき使う(BBCのドラマ「MI-5」)といった話が語られた。
しかし、外交文書の暴露が始まってから2週間、ウィキリークスは意外なことに、どんな問題に関するものであろうと、米国政府の公式見解は大抵、そのまま私的な見解でもあることを明らかにした。
*1=米国の油田サービス大手ハリバートンはかつてディック・チェイニー前副大統領がトップを務めた企業で、湾岸戦争やイラク戦争で巨額の利益を上げたことから、陰謀論が絶えなかった
- 米国株、強気相場の再来か? (2010.12.30)
- 北京の賃上げで一段と高まるインフレ懸念 (2010.12.30)
- 企業の効率追求ゆえに遅れる雇用回復 (2010.12.29)
- 欧米の銀行システムに忍び寄るゾンビ (2010.12.29)
- 風刺メールが浮き彫りにする中国の不平等社会 (2010.12.28)
- ■Financial Times米国株、強気相場の再来か? (12月30日)
- ■技術立国・日本論「ゴルフ」に乗る中国人、乗らない日本人 (12月30日)
- ■国防新防衛大綱に異議あり! 対ロシアから対中へのシフトで済ませていいのか (12月30日)
- ■映画の中の世界日本が無頓着な水で、世界は戦争を始める (12月30日)
- ■結婚のかたちなんだか年をとったなと気付く自分の会話 (12月30日)