2010年12月30日11時1分
北朝鮮による韓国砲撃を受け、朝鮮学校への高校無償化制度適用を先送りしている文部科学省は、この状態が長期化して生徒側から訴訟を起こされる事態を想定し、対応策の検討に入った。保留にしたまま引っ張り続けると、行政手続きを遅滞なく行うことを定めた行政手続法に触れる可能性があり、省内には「裁判になれば負ける可能性もある」と早期の手続き再開を求める声がある。
文科省の内部資料によると、今夏の段階で、10校ある朝鮮学校(高校段階)はいずれも無償化の適用基準を満たしていると判断されている。文科省は年内にも無償化適用を決める見通しだった。
しかし、砲撃直後に菅直人首相が適用手続きの停止を指示し、文科省は手続きの最終段階である審査の実施を見合わせている。朝鮮学校に子どもを通わせる保護者や朝鮮学校の校長会などは「生徒と朝鮮半島の事態はまったく関係ない」と抗議しているが、手続き再開の見通しは立っていない。
省内では、適用決定が来年4月以降になった場合、(1)3月に卒業して適用を受けられなかった現3年生から「手続きを早く進めていれば受給できたはず」と損害賠償などを求める訴訟を起こされる(2)来年度の2、3年生から、2010年度分も支給すべきだと提訴される、といった事態が起きないか危ぶまれている。
行政手続法は第7条に「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく審査を開始しなければならない」と定める。「遅滞なく」がどのくらいの期間を指すかについて明確な規定はないが、複数の文科省幹部は「裁判になれば国が負ける可能性も否定できない」。また、ある幹部は「手続き停止をこのまま続けるのかどうか、首相は訴訟で負けるリスクも含めて考えるべきではないか」と話す。