救急患者の搬送に手間取って手遅れとなる事態を防ぐため、県は症状の種類や程度に応じて搬送する病院を選択するリストを策定した。搬送を担う消防機関の判断の誤りを防ぐため、全県で統一して傷病の種類や緊急度を把握する「観察基準」もまとめた。来年1月1日から運用する。
県のまとめでは、09年の重症患者の救急搬送の際、最初の照会で受け入れ先が決まったのは86・1%にとどまり、16回断られたケースもあった。拒否された理由は「処置困難」や「ベッド満床」が多いが、約2割ある「専門外」を減らし、スムーズな搬送が期待できるという。
搬送先は心肺停止▽循環器系疾患▽中毒(一酸化炭素や薬物)▽意識障害▽外傷--など13種類を、脈拍や呼吸回数、瞳孔の状態などによる観察基準で38に分類。救急隊員はこれに基づき、リストに載っている最も近い病院から受け入れ要請する。
病院は県北▽県中・県南▽会津・南会津▽相双・いわき--の4地域別にリストアップされている。県は病院名をホームページで公表し、病院側が責任を持って受け入れるよう促す効果を狙う。また、病院にスムーズに情報伝達するため、全県統一して必要事項をまとめる「傷病者情報カード」も作成した。
昨年10月施行の改正消防法は、都道府県ごとの搬送基準策定を義務づけている。県は今年1月、医師会や病院協会などと「県傷病者搬送受入協議会」を設置し、検討を進めてきた。【関雄輔】
毎日新聞 2010年12月30日 地方版