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きょうの社説 2010年12月30日
◎金沢の初売り 工夫凝らし都市の「文化」に
金沢市中心部、武蔵、駅前の商業エリアで、1月2日に一斉バーゲンが行われることに
なった。開始も午前9時で統一し、駅前と中心商店街を結ぶ「まちバス」も運行時間が繰り上げされる。4日が仕事始めになる日並びの関係で、初売りが超短期決戦になることから足並みがそろったようだが、大型店などでこれまで開店時間の調整が難しかったことを考えれば画期的といえる。こうした商圏挙げての一体的な取り組みは、消費刺激の相乗効果を引き出し、隣県から もより多くの人を呼びこむことが期待できる。年始に限らず、季節に応じて企画してよいだろう。 商圏全体の求心力をさらに高めようとするなら、県都の正月にふさわしい賑わいの演出 なども共同で考えてはどうだろうか。来年は大和の名物、全館選抜「大福帳」が姿を消すなど、初売りの光景も様変わりしてきたが、商いの効率性だけを追求し、華やかさが薄れてしまっては寂しい。 たとえば仙台市では、藩政期からの伝統を引き継ぐ初売りを、地域の文化行事と明確に 位置づけている。共通のステッカーや装飾用のぼり、初売りグッズを用意し、交通機関も巻き込んだ一体的なキャンペーンを展開している。 荷物一時預かり所や休憩所も充実させ、インターネットの共有サイトには、甘酒やおし るこの提供時間やお得な初売り情報など買い物サービスが満載である。来年は寄席が登場し、初売りに初笑いが加わる新機軸を打ち出した。 仙台と金沢では商慣行に違いがあるとはいえ、商圏が一致協力して正月を賑やかにする 姿勢や、もてなしの創意工夫、広域的な情報発信策は大いに参考になる。 金沢の百貨店や専門店がバーゲンで歩調を合わせれば、安売りに敏感に反応する消費動 向から人出を増やすことは可能だろう。だが、販売イベントの前倒しやバーゲン頼みでは展望を開くのは難しい。大事なのは、初売り商戦の熱気をいかに次へつなげるかである。 そうした観点からも、正月の買い物を盛り上げ、買い物の楽しさを実感してもらえる仕 掛けや演出を商圏全体で考えていきたい。
◎クール・ジャパン戦略 東京中心主義に偏らず
政府は、「クール・ジャパン」と呼ばれて海外で評価の高い日本のアニメやファッショ
ン、日本食などの文化産業の輸出規模を、現在の4・5兆円から2020年には12〜17兆円に拡大する戦略目標を打ち出した。官民の有識者会議で今後、海外に売り込む具体策を協議し、来年5月にも「クール・ジャパン戦略」をまとめる予定であるが、戦略の立案に当たっては「東京中心主義」に偏らず、地方からの視点も重視してもらいたい。「クール(かっこいい)な日本」を象徴するものは、アニメや「かわいい」を売りにし た東京発のファッションに限らない。それらを生みだした日本の伝統的な文化土壌も含めて「クール・ジャパン」というべきであり、石川県が海外の販路開拓に力を入れる伝統工芸品や地域の食文化、和装文化なども重要な要素である。 政府は文化産業を新成長戦略の柱の一つに据えており、クール・ジャパンというコンセ プトの下、官民が連携して新たな主力産業に育てる方針である。 日本の若者のファッションやアニメ、漫画、映画、音楽のコンテンツ産業、和食などは 海外で高い人気を得ている。例えば、アニメなどのポップカルチャーを中心に日本文化を紹介する「ジャパン・エキスポ」が1999年からパリで開かれているが、当初2400人ほどだった来場者は09年で約16万5千人に増加している。 しかし、海外人気がビジネスにうまく結びついておらず、コンテンツ産業の輸出比率は 、米国の約18%に対して日本は2%弱に過ぎない。アジアでは韓国の映画、音楽の海外進出がめざましい。 経産省はこうした状況を受けて今年、「文化産業立国戦略」を策定した。その中で、東 京を世界の文化の受発信拠点にしていくことがうたわれている。東京をファッションやコンテンツ産業など創造性豊かな「文化のハブ都市」にする目標はよいとしても、クールな日本の地域文化を発信し続ける地方の取り組みを軽視してはなるまい。地域産品の海外展開を支援する施策の強化が望まれる。
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