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きょうのコラム「時鐘」 2010年12月30日
梵鐘(ぼんしょう)は、つけばつくほどいい音になるという。裏返せば、できたての鐘の最初の音が一番悪いとも言える
先月、京都の東本願寺の梵鐘が400年ぶりに造り替えられ、先日は高岡で製作された梵鐘が京都の高台寺に納められた。そこでも「最初の鐘の音」の話が出たという。毎日、心をこめて鐘をつき、歳月を重ねる大切さを肝に銘じるような言葉だった 金沢の東西の別院でも梵鐘を造り替えてそれほど年月はたたない。鐘と同時に立派な撞木(しゅもく)(鐘をつく棒)も作られた。最近はハイテク技術の応用で、鐘に当たる先端部だけが木製で、真ん中は金属製の撞木が登場している。いい音を出すには年期も必要だが、鐘と撞木の釣り合いが大事ということだ 年期の入った夫婦、古い友人のような関係である。始まりが一番悪くても毎日良くなると考えれば、こんな楽しい日々はない。つらいことでも希望があれば耐えられる。苦労して、打たれたたかれて強くなる 鐘がいくら立派でも、いい撞木がないと実力が出せない。あすは大みそか。耳を澄ますと、遠くかすかに、色々な人生の呼吸が聞こえてくる。 |