前回、前々回と原人映画が続いたので、同じSFでも少し方向性を変えてみようと観賞した。
ロンドンの地下鉄工事現場から謎の人骨が発見される。調査の結果、なんとその人骨は500万年前の原始人の物であることが判明した……。
また原人か!! なぜこんなにも原人がつきまとう!! 俺は前世で原人を殺したか何かして取りつかれているのか!!
とはいえ、500万年前の人骨とは化石人類学の常識を覆す大発見だった。さっそく調査チームが組まれて本格的な発掘が始まるが、続いて同じ地層から戦時中のナチス・ドイツの新型V兵器の不発弾と思われる物体が発見された。政府のロケット開発チームのリーダーであるクォーターマス教授も調査に参加するが、実はそこに恐るべき真実が隠されていた。
主役であるクォーターマス教授は大変に天才であるようだが、他人に口頭で説明するのを苦手としているようだ。何しろ彼の主張は、劇中人物にはもちろん、見ている観客のこちらにも伝わらない。彼はその物体を「太古地球に飛来した火星人の宇宙ロケットだ」と主張するのだが、なぜそのように思うのか、どういう根拠をもとにどのように筋道立てて結論に達したのかを、まるですっ飛ばして語るので、頑固の軍人のブーリン大佐でなくとも「はあ?」という気分になる。
一方その頃、周辺住民や調査関係者の間で、奇妙な怪物の目撃談が頻発する。調べていくうちに、怪現象は中世以前からその地域で多発していたことが判る。そして謎の物体の内部には、巨大なイナゴの死体がみっちりと詰まっているのが発見された。ヤな宇宙船だなあ。
「見ろ、やはり彼らは火星人なのだ。彼らは自分の星が滅びることを知り、当時地球でもっとも高等生物だった類人猿に脳改造を施して再び送り返し、火星人が地球を植民地化する尖兵としていたのだ。それが証拠に宇宙船の周囲で見た幻覚映像には、イナゴの群れがはっきりと映っているじゃないか!!」
……すみません。先生が何を言ってるのかさっぱり判りません。
だが、我ら凡人が理解しようとしまいと、クォーターマス教授の主張は事実だった。現生人類は火星イナゴによって脳改造された類人猿の末裔であり、宇宙船の発する火星イナゴの残留思念によってDNAに閉ざされた太古の超能力がよみがえり、町中が大混乱に陥る……というようなことを描いているのだと思うが、映像的にも「パニックだ」という以外はイマイチ伝わらない。やがてイデが発動して巨大イナゴ幽霊が出現すると、精神を火星人に支配され、影響を受けていない一部の人間を攻撃し始めるのだ。
で、こういう場合、たいてい主人公は「正常な側」にいるのがセオリーだと思うのだけれど、主役のクォーターマス教授もちゃっかり精神を乗っ取られている。いや、ホント、君の取り得はナニ?
特殊なマシーンによって記録される火星イナゴ大群の映像は、悪夢みたいでなかなかの迫力ではあったが、映画全体が辻褄の合わない夢のような作り。あと、「ネタばれか?」と思った邦題だけど、別に大襲撃してないし、火星人。むしろ「大火星人地球襲撃」とすべきだったのでは……。
2010/12/27
当方、唐沢俊一氏叩きに興味もなければ加担する気もありませんので、トラックバックは削除しました。
出演:アンドリュー・キア
販売元:エスピーオー
発売日:2003-02-07
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なんでも撮った男 【訃報 ロイ・ウォード・ベイカー】
http://www.tobunken.com/news/news20101219112012.html
>低予算ながらこの作品はイギリスはじめとする各国で高い評価を受ける。
>私などはこの作品をベイカーのベスト作品、いや、英国SF映画の五指に
>入る傑作と思っているほどである。イギリス人の好きな悪魔や幽霊ばなし
>が伏線になっており、それにSF的な大風呂敷の解釈がつく、
>という細かい工夫が英国風なのである。終末感にあふれたその画面作り
>は、淡々とした悪夢を思わせ、アメリカ映画とは確実に異る英国風ホラー
>の片鱗を見せていた。
唐沢俊一氏の追悼文での本作に対するこのコンパクトなレビューは全く当を得ていると私は思いますよ。私のレビューでは悪魔伝承の伏線には触れてませんけど。
ところでかの御仁は、自分自身が本作を見たうえで氏の著述を批判しているのかなあ。Twitterでも書いたけれど、誰かを貶めるなら他人のブログを我田引水するのではなく、自分の言葉で責任を持ってやっていただきたい。