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11年度予算案:税外収入、7兆円規模 鉄建機構、剰余金返納で

 政府は21日、国土交通省が所管する独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の利益剰余金(10年度末で1・5兆円)のうち、1・2兆円を国庫返納させることを決めた。野田佳彦財務相と馬淵澄夫国土交通相が同日、最終合意した。特別会計の剰余金・積立金と合わせ、基礎年金の50%国庫負担を維持するために必要な2・5兆円の財源に充てる。

 剰余金の返納が決まったことで、11年度予算案の税外収入が7兆円規模となることが固まった。税収が伸び悩む中、「埋蔵金」頼みの予算編成が続いているが、埋蔵金は枯渇してきており、税外収入は10年度の10・6兆円から大幅に減少する。

 主な税外収入は鉄建機構の剰余金に加え、財政投融資特別会計の積立金と剰余金で約1兆円▽外国為替資金特会の剰余金で約3兆円--など。外為特会は、11年度中に生じる剰余金を前倒しして予算計上する異例の措置を2年連続で続ける。

 この他、日銀や日本中央競馬会(JRA)からの納付金などを合わせて、7兆円規模を確保する。鉄建機構の剰余金以外に、財投の積立金・剰余金、外為特会の剰余金は、基礎年金の50%国庫負担を維持するための財源に充てる方針だ。【坂井隆之】

 ◇JR4社に8490億円 国交省、支援策引き出す

 剰余金返納が決まった一方で、その見返りとして、経営が厳しいJR4社(北海道、四国、九州、貨物)に対し、今後10年で8490億円の支援策を実施することも決まった。国土交通省にとっては返納に応じる代わりに「苦渋の決断」(馬淵澄夫国交相)で引き出した支援策だ。

 支援策では、設備投資に対する助成金・無利子貸し付けとして2390億円を、JR北海道、四国の経営安定基金の積み増しに3600億円を投入する。赤字路線に悩む並行在来線の支援策には1000億円を充てる。

 剰余金の使途については、一部自治体や議員から整備新幹線建設への活用を求める声があった。しかし、今回の支援策では、長野新幹線建設の借金(1500億円)を返済することだけが決まった。

 支援を受けるJR4社は、経営が安定している本州3社(JR東日本、東海、西日本)と異なり、機構が株式を100%保有する事実上の国有会社。政府は4社の完全民営化を目指す方針を01年に閣議決定したが、各社とも赤字体質が続いているため道筋は見えていない。その支援策が決まったことは一定の意義はあるが、馬淵国交相は会見で、「向こう(財務省)の『言い値』の中での調整だったので、満足したわけではない」と不満感をにじませた。【三沢耕平】

毎日新聞 2010年12月22日 東京朝刊

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